サイゲームスの“カイゼンおじさん” 会社とコンテンツを支える2大部署の活躍に迫る!

ゲーム、マンガ、アニメなどさまざまなコンテンツを作っているサイゲームス。会社の成長とともに開発規模も拡大し、関わる人数も増加している中で、継続的にクオリティーの高いコンテンツを手掛けるためには、複雑な工程をいかに効率良く進めるか、より有効なシステムを活用できるかが重要な鍵となってきます。

そんなシステムや運用のカイゼンを社内で考案・実装しているのが「開発推進室」と「プロジェクト共通基盤」の2つの部署です!
今回は両部署のマネージャー、通称“カイゼンおじさん”2人に部署発足の経緯やそれぞれの役割を聞いてみました!

開発推進室 マネージャーシュウイチロウ
gutenberg-examples
大手コンシューマーゲーム開発会社を経て、2016年よりサイゲームスに所属。開発プロジェクトのプロセスの改善や、チームマネジメント強化支援、全社的なナレッジの統合など、全体最適のマネジメントに従事。2018年には会社全体の開発プロセス改善を推進する部署「開発推進室」を立ち上げ、社内の開発プロセス・業務プロセスの改善に努めている。
プロジェクト共通基盤 マネージャーマサル
gutenberg-examples
大手コンシューマーゲーム開発会社を経て、サイゲームスに所属。モバイルアプリやVRコンテンツ、ゲームエンジン、グラフィックスなど、幅広い分野の研究開発とプロダクトのマネジメントに従事。2018年には会社全体の開発プロセス改善を推進する部署「開発推進室」、コンテンツ開発を技術支援する部署「プロジェクト共通基盤」を立ち上げ、社内の開発プロセス改善に努めている。

最初は2人からのスタート!
「開発推進室」と「プロジェクト共通基盤」ってどんな部署?

まずは開発推進室とプロジェクト共通基盤、それぞれの部署の役割を簡単に教えてください。

シュウイチロウ 開発推進室は、全体最適を考えたワークフローデザインを行う専門部署で、社内から「ここをもっと便利にできないか」「こういうことで困っている」といった声を集めて、それぞれに合ったカイゼンを考案・提案するのが主な業務です。

マサル プロジェクト共通基盤は、社内を横断的に技術支援する専門部署です。開発推進室に届いた案件の中で必要になった外部サービスの検証や新規ツールの開発を担当しています。

開発推進室がブレーン部隊、プロジェクト共通基盤が実働部隊、といった感じでしょうか。相互協力が大切になってきそうですね。

シュウイチロウ そうですね。設立もほぼ同時期で、コンビのような部署だと思います。実際に設立時は、私たち2人から始まりましたしね。

マサル 最初、社内のフローや、システムのカイゼンを専門に考案・提案する部署として開発推進室が発足したのですが、実際にカイゼンを進めるためには実働部隊も必要だよね、という話になりまして。特定の部署やプロジェクトに関することだけでなく、横断的に活動するエンジニア集団としてプロジェクト共通基盤が独立した、という経緯です。

カイゼンに特化した部署を社内に作ろうと思った理由は何だったのでしょうか?

マサル 発足の背景には、端末の性能が向上したことや、ユーザーニーズの多様化に伴ってコンテンツの開発規模や人員が拡大・増加したことが挙げられます。
近年、端末の性能が上がったことで、さまざまな技術を使った表現をコンテンツに取り入れられるようになってきました。しかし、できることが増えれば増えるほど、情報、知識、コンテンツに関わる人数は多くなりますし、開発フローも複雑になってきます。

コンテンツ内で実現したいことを絞れば開発規模の拡大を抑えることもできますが、「最高のコンテンツを作る会社」というビジョンのサイゲームスで“引き算”のカイゼンはしたくなかったんです。
そこで、効率の良いフロー提案や、より使いやすいシステムの検討・導入・開発を専門に担当する部署が必要だと考えました。

シュウイチロウ 効率や生産性が上がることで、スタッフの工数削減に繋げることができます。そうすることで、コンテンツをより面白くするための時間を確保し、クオリティーの高いコンテンツ作りに注力できるようにするのが狙いです。両部署共に、この「コンテンツを面白くするための時間を確保する」というのは設立時からのビジョンにしています。

カイゼンおじさん誕生秘話!
元カイハツ者だったからこそわかる課題と“今”カイゼンが必要な理由

なるほど。ちなみに構成メンバーはどのような職種の人が多いのでしょうか?

シュウイチロウ 開発推進室はエンジニアとサポート業務を主とするアシスタント陣で構成されています。この他、デザイナー分野専門の開発推進室が独立して存在します。そちらはデザイナー数名で構成されています。

マサル プロジェクト共通基盤は全員がエンジニアです。かく言う私たちもエンジニアで、元々はどっぷり開発側にいた人間でした。

そうなんですか!てっきり開発以外の部署でキャリアを積んできているのかと……。

シュウイチロウ バリバリのカイハツ者でしたね(笑)。

マサル 今ではもうカイハツ者というよりバリバリの「カイゼンおじさん」になっちゃいましたが(笑)。

ぜひ、お二人の経歴を教えてください!

マサル 私は新卒から現在までずっとゲーム業界にいて、最初は愛知の会社で働いていました。実はその会社ではプランナー採用だったんですが、私はプログラマーで採用されたと思っていて(笑)。学生時代に3D関連の研究をしていたことと、当時3Dゲームが流行り始めていたことが理由でプランナーからプログラマーになりました。そこがキャリアのスタートですね。
その後、別のゲーム会社に転職し、引き続き3D関連のプログラマーとしていくつかのタイトル開発に携わりつつ、ネットワーク関係やツール周りの仕事もするようになりました。さらにそこから再び別のゲーム会社に転職をしたのですが、その会社が事業をたたむことになってしまって……。それをきっかけにしばらくフリーランスとして働いていました。

事業解散を経験されていたんですね……。その後、サイゲームスへ?

マサル はい。2014年に合流し、プロジェクト共通基盤が立ち上がるまでは色んなプロジェクトにエンジニアとして参加していました。高度な技術が必要な案件やスケジュールがタイトな案件に携わることが多く、その中でゲームのカイゼンをする何でも屋さんのような動きをしていました。

本当にがっつりカイハツ者だったんですね!シュウイチロウさんのご経歴も教えていただけますか?

シュウイチロウ 最初は、デスクトップアクセサリーを制作する会社にアルバイトで入り、色々あって1か月後にフリーランスのエンジニアとして働きはじめました。就職氷河期ということもありましたが、社会人としてはなかなかめちゃくちゃなスタートだったと思います(笑)。
フリーランス時代は、Webサイト制作やゲームのプログラミング業務などを受注していましたが、少し経ってから出版社に入り、書籍に付属するCD-ROMのアプリケーションを開発していました。主にC++でたくさんミニゲームを作りましたね。基本的なアプリケーションの作り方はそのときに学びました。当時は激務で、毎月30個ほどのアプリケーションを作っては毎日のようにリリースする日々でした。会社に連泊することも珍しくなかったです……。

時代もあるのかもしれませんが、大変な経験もされてきているんですね……。

シュウイチロウ そんな生活を5年ほど続けた後、別のゲーム会社へ転職をしました。そこではシリーズタイトルの開発に携わり、バトルシステムやキャラクターのカスタマイズ機能などの開発を担当していました。
そして、その会社が分社化したのをきっかけに、バックオフィス部門に異動しました。当時いた会社で、「プロジェクトマネジメントを良くしよう」という動きがあり、それに参画するかたちでした。

また、新会社のバックオフィスということもあり、プロジェクトマネジメントだけでなく人事、経理、経営企画など、あらゆる業務を担当させてもらい、同社の海外拠点開拓にも携わりました。
エンジニアとしての14年のキャリアプラス、バックオフィス系業務は、大変ではありましたが、自身の仕事の幅を広げる経験になったと思っています。

マサル 経歴が異色すぎて、私の中では「わけのわからない人」ってイメージですね(笑)。

シュウイチロウ 自分でもそう思います(笑)。前職の開発プロジェクトの区切りがついたところで、縁あってサイゲームスに合流をし、技術広報サポートや情報共有ツールの解析・検証などをしていました。その後、プロセス改善のため、ある開発プロジェクトへ参加したときにマサルさんと出会い、「前職でのアジャイル開発推進やプロセス改善経験をサイゲームスでも活かしてほしい」という話をされたのをきっかけとして、プロジェクトを横断したカイゼンに取り組むべく、開発推進室を立ち上げようと思いました。

マサル 開発現場もバックオフィスも両方経験している人ってなかなかいないじゃないですか。開発現場にいたからこそ理解できることや見える課題がありますし、そこへさらにカイゼンできるスキルがある、というのはかなり貴重だと思いました。

シュウイチロウ 面と向かって言われると恥ずかしいですね(笑)。私よりもむしろマサルさんこそ特殊だと思います。ずっと現場第一線だった人がカイゼン畑に行こうと思った理由は何かあるんですか?

マサル 1つは自分のキャリアの中で、会社全体に関わるカイゼンに取り組めるのは最初で最後だと思ったからです。小規模のチーム改革はきっと他社でも経験できると思うんですが、2000人以上の規模の会社でカイゼンに取り組める経験はサイゲームスだからこそできることだと感じましたし、自分自身も「チャレンジしてみたい」と思ったんです。
これまでの経験上、ゲームを作ることも会社を続けていくことも、どれだけ大変かはわかっていました。その両方をカイゼンというアプローチで支えていけたら最高だなと。

シュウイチロウ 私もマサルさんもたしかにいろんな種類の苦労はしてきてますからねぇ……。その経験ゆえに「何が大変なのか」「どうして大変なのか」ということがすごくよくわかるんです。そんな自分たちだからこそできるカイゼンがあるんじゃないかと思って今は仕事に取り組んでいます。サイゲームスという会社がより良くなるために、そこで働くメンバーがイキイキ仕事できるようにサポートしていきたいですね。

サイゲームスは設立8年とまだまだ若い会社ですが、今カイゼンが必要だと考えた理由は何でしょうか?

シュウイチロウ これまでフリーランス時代や前職で大・中・小のさまざまな企業を見てきた経験から「これって何でそうなっているんだろう」と疑問に思う感覚がなくなったときに、組織の形骸化、そして停滞が始まると考えています。私が合流した当時から、サイゲームスは会社としてさまざまなことにチャレンジをしていましたが、この成長速度やチャレンジできるという会社の良さをどうしたら維持できるかと考えたときに、「組織として常に停滞しない状態にする必要がある」と感じました。

マサル サイゲームスには、現時点でそこまで緊急性の高い問題はないとは思っていますが、設立から8年という短い時間であっても培われた歴史に意味が出てきて、それに重きが置かれるようになってきています。これからさらに人数が増え、設立から時間も経って……となっていくと組織を変えることはどんどん難しくなります。そのため今から、フラットな目線で会社やコンテンツを見ることのできる部署を育てておくのは重要なのではないかと思います。

カイゼンおじさん2人のイマ
2400人超えの組織をカイゼンしていく日々とは

両部署は、具体的にどのようにカイゼンを進めているのでしょうか?

シュウイチロウ まずは現場から相談が来るところから始まります。相談内容は、ツール要望やフロー改善などさまざまです。その後、詳しい内容を相談者からヒアリングするのですが、開発推進室ではこのヒアリングを一番大事にしています。例えば、とあるツールがほしいと相談を受けたとき、そのツールを作ってしまうのは実は結構簡単なんです。ですが、それでは表面的な解決にしかなりません。根本的なカイゼンに繋げるために「なぜそのツールが必要なのか?」「別の解決方法は他にもないか?」など、“カイゼンが必要な理由”を明らかにするようにしています。
その後、必要なツールやプロセスを考案して、サービスの導入検討・検証、ツール開発、プロセス提案などに移るという流れです。

マサル ただ、実際にその流れですんなりいくことはあまりありません。実際に作業を進めいていくうちに「やっぱり違っていた」ということもありますし、実現不可能な案件ももちろんあります。その場合は少しでもカイゼンできる方法を模索するようにしています。
また、ツール開発とプロセス改善、両方のカイゼンが複雑に絡まり合った案件というものも多いですね。そういったときもやはり開発推進室とプロジェクト共通基盤で連携をしながらカイゼンを進めていきます。結構地道で泥臭く動いています(笑)。

実際にカイゼンした事例を教えていただけますか?

マサル 全社的に使われているものでいうと、ストレージサービス「CyResource(サイリソース)」があります。さまざまなファイル形式の資料をアップロード・閲覧できるサービスで、フリーワードやタグで資料の検索ができます。このサービスは社内スタッフから「社内講演資料を管理するサービスがほしい」という要望に応えて作りました。現在では社内講演資料だけでなく、コンテンツ向け画像ファイル、オーディオファイル、研修用資料の管理に使われている他、閲覧できるという点でも社内の知識・情報共有に役立っています。

▲「すら読」の愛称で親しまれ、さまざまな情報共有に利用されています

フロー改善とツール開発、両方を併せ持って作られた例だとローカライズ支援サービス「CyLoc(サイロック)」があります。ローカライズ担当部署からの問い合わせが発端で、依頼者側と密に連携を取りながらローカライズフローを相談・整理し、そのフローに合ったツールを開発しました。ローカライズの進捗をグラフで表示したり、コメントを付けられたりといった作業支援機能に加え、依頼者・翻訳者といった役割ごとで権限が設定できるため担当業務に集中できるデザインになっています。こちらはローカライズ専用サービスとして社外の協力会社とのやりとりでも利用されています。

▲「CyLoc」はコンパクトでありながらワークフローを網羅したサービスとなっています

現場の声から生まれたサービスなだけあって、より実践的で、すぐ役に立つものが多いですね!お二人がお仕事でやりがいを感じるのはどんなときでしょうか?

シュウイチロウ 「本当に助かりました!!」と言われたときは素直にうれしいですし、やって良かった!といつも思います。あと、個人的には依頼者側と「どうしよう」と一緒に悩んでいる時間が結構好きです。お互いに“カイゼン”というゴールに向けて「こうしたら良いんじゃないか」「こっちの方が良いんじゃないか」と言い合えるのは社内の環境としてありがたいですし、楽しい瞬間ですね。

マサル 私は「正解はこれだ!」とカイゼンの本質にたどり着けたときが一番やりがいを感じますね。本質さえ見えれば、方法はいくらでも思いつきます。

シュウイチロウ セクショナリズムにとらわれず、“みんなで”最善の方法を探すのはサイゲームスの文化ですよね。方法が見つかると大体マサルさんがサッ!と作業に移ってくれます。

マサル 短気なので、「すぐ直したい!」って思っちゃうんですよね(笑)。

シュウイチロウ ……で、うまく進まない理由があると解決するようにそれとなくこちらににおわせてくる。

マサル バレてましたか(笑)。2人とも考え方が逆なんだと思います。私は「どんな方法でも」「すぐに」という直接的な考え方で、シュウイチロウさんはゴールまでのプロセスを考えたりニーズをとらえたりすることが得意で。そういう逆のタイプ、つまり凸凹の2人だからうまくいっているのかなと。二人三脚って感じです。

最後に、今後の両部署の目標や展望を聞かせてください。

シュウイチロウ 開発推進室としては、まだまだ潜在的な悩みや課題は現場にたくさん落ちていると思うので、今後は現場との連携をより強化してもっと拾っていける部署になりたいですね。草の根レベルかもしれませんが、そういったことをコツコツ積み上げて行った先に、会社がもう一回り二回り成長できるきっかけがあると思います。

マサル 推進、という意味ではプロジェクト共通基盤も開発推進室と同じで、部署としては今後もっと能動的に課題解決をしていきたいです。サイゲームスを支えているのは今も昔もゲームをはじめとするコンテンツです。その開発・運営の環境や体制をより良くしていくことは、コンテンツを作っていることと同じだと思っています。
開発推進室、プロジェクト共通基盤ともに、今後も会社一丸となって最高のコンテンツを作れるようにこれからもカイゼンしていきます。