ボードゲーム会社社長が異世界転移したら魔王軍の奴隷に!?『異世界社長 魔王軍で成り上がる!』【ヨミコミ!サイコミ Vol.8】

サイゲームスがお届けしているのは、ゲームだけではありません。マンガ配信サービス「サイコミ」にて、数々の作品を連載しています。サイコミ編集部がおすすめするマンガの魅力に迫る連載「ヨミコミ!サイコミ」第8回は、異世界転移した社長が魔王軍で出世していく異色マンガ『異世界社長 魔王軍で成り上がる!』をご紹介します。担当編集者に作品の見どころを聞きました。

【あらすじ】
ボードゲーム会社社長が、ある日突然異世界に!?しかも転移した場所には人なんていない魔物領で……。異世界転移だけどチート能力なんてものは一切なし。頼れるのは現世で培った、会社経営のマネジメント術と経験だけ!!なんとか元の世界に帰るため、なぜか会社組織化されている魔王軍の最下層からスタートし、目指すは魔王になって勇者に勝利!?

異世界に会社組織!?
魔王軍で出世を目指す主人公

会社経営者のナルセが、異世界でビジネススキルを使って奴隷から成り上がっていくストーリーが独創的です。この発想はどのようにして生まれたのでしょうか?

最初は「異世界に社会的地位のある人が行ったら面白いよね」と作者の都田彩人さんと話していました。「異世界×社長」で想像を膨らませていった感じでしたね。また、異世界の世界観を考える中で、都田さんがお好きだったボードゲームを設定に取り入れることにしました。

▲ナルセの会社が作ったボードゲームのルールが、異世界にも反映されています

魔王軍が会社組織化されている点もこの作品の特徴ですね。

その点はまず、社長が異世界に行くなら魔法ではなくビジネススキルを使うほうが面白いだろうと考えました。次に魔王軍がどんな組織だったらビジネススキルを活かしやすいか想像すると、やはり「会社」だなと。また、会社は会社でも、いきなり大出世できるような環境にしたかったので、成熟した企業ではなく発展途上な企業をイメージしました。

ナルセのキャラクターについて、構想時はもっと“意地汚い”社長像でした。ビジネスで大成功してお金も地位もあって、何もかもを自分の思う通りにしてきた人。そんな主人公が異世界ですべてを失って、ゼロからスタートする話にしようと思っていたんです。

ナルセは仕事熱心で努力家な印象です。構想時とは異なるキャラクターになったのはなぜでしょうか?

構想を練っていたのはサイコミが再創刊した2018年でした。当時、少年マンガを押し出していくのが編集部の方針で、“少年マンガらしい”主人公にしたかったからです。金の亡者のような主人公より、ひたむきに努力してきたキャラクターのほうが読者の方から感情移入をしていただけるのではないかと考えました。

主人公が勇者軍ではなく、魔王軍で勇者を倒そうとする点も少し変わっていますね。

勇者として戦う話は多々あるので、差別化を図る意味でも人間が魔王軍で戦う話にしました。また、このマンガで描いているのは基本的に会社組織での闘争です。ビジネススキルを使い、魔王軍の奴隷から下剋上を果たしていくような展開のほうが、勇者としてバトルをしていくよりナルセらしい描き方ができると思いました。

印象に残っているシーンは?

第7話でガルア係長が理不尽なノルマを課し、絶対に達成するよう圧をかけてくるところです。お仕事モノとしてどんな展開にしていくかネームの段階で悩んでいたときに、「できるできないじゃねぇ。やるんだよ。上司の命令だぞ」という係長の一言を引き出せたことで、ナルセの闘う相手が明確化しました。魔王軍で出世し勇者を倒すという大きな道筋はあるものの、この作品で実際にナルセが闘っているのは悪質な組織の体制や上司なんです。

読めばビジネススキルが得られる?
「車輪の再発明はしない」

ビジネススキルを発揮し異世界を乗り切ろうとする物語ではあるものの、制作陣に会社員の経験が少なく苦労されたそうですね。

そうなんです。私はフリーの編集者としての経歴が長く、連載の立ち上げ時、都田さんは専門学校を卒業したばかりでした。そのため、仕事にまつわるノウハウや会社組織の体制について知識が乏しく……。物語に説得力を持たせるため、サイゲームスのスタッフや、それこそ代表取締役の渡邊(耕一)社長にも話を聞きにいきました。

社長にも!相談した内容が活かされたエピソードはありますか?

第33話ですね。次期係長を決める班対抗戦に参加しなかったキラードールを、上司のカノンが叱るシーンがあります。班のみんなを裏切ったキラードールを簡単に許してしまっては、班員の不満を拭えません。そのためカノンはあくまで中立的な立場として叱り、キラードールに心から班員たちへ謝罪するよう促すんです。その上で、キラードールを許してあげるよう上司としてカノンから班員たちにお願いします。この流れは社長からアドバイスをもらって作った展開です。

▲キラードール(右下)を叱るカノン(中央)

また、会社は個人ではなくチームで成果を上げることが必要です。異世界での安定した食料調達のため、ナルセは各班が持っている狩猟や採集のノウハウを集めようとします。このときにナルセが話した「車輪の再発明はしない」という言葉は、サイゲームスが大事にしている指針でもあるんです。既に確立された技術やノウハウを一から作り直していると効率が悪いので、部署間で情報共有を促すための大事な指針だと考えています。

▲ナルセが情報共有の重要性を説明する場面
▲サイゲームス内で共有されているポスター

ナルセは魔王になれるのか
新部署の係長に就任

食料の調達局に部署を新設し、係長に就任したナルセ。出世するほど責任や魔物たちからの人間差別が大きくなります。今後の見どころは?

よく会社経営者がビジョンを明確化してから実行に移していくように、ナルセも最初に「元の世界に戻る」と指針を決め、そのために何をするべきか逆算しながら行動しています。勇者に勝てば元の世界に帰れると仮説を立て、魔王になろうとしているものの、いずれ計算通りにいかなくなることもあるはずです。問題に直面したとき、ナルセがどういった決断を下していくのかは1つの見どころです。

読者のみなさんにメッセージをお願いします。

異世界モノではありますが、大魔法を使ったり派手な攻撃をして相手を倒したりという話ではありません。ナルセが社長として、あるいは社会人としてのスキルを活かして厳しい世界をどのように生き抜いてくかが一番の魅力だと考えています。小手先ではないビジネスノウハウを話に盛り込んでいるので、ちょっとでも読者の方の参考になったらうれしいです。

『異世界社長 魔王軍で成り上がる!』

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