杖なしの魔法使いによる王道少年ファンタジー!『黒影のジャンク』【ヨミコミ!サイコミ Vol.7】

サイゲームスがお届けしているのは、ゲームだけではありません。マンガ配信サービス「サイコミ」にて、数々の作品を連載しています。サイコミ編集部がおすすめするマンガの魅力に迫る連載「ヨミコミ!サイコミ」第7回は、劣等生の主人公が英雄を目指して成長していく王道少年ファンタジー『黒影のジャンク』をご紹介します。担当編集者に作品の見どころを聞きました。

【あらすじ】
魔法使いを統べる十二勇将(パラディン)の1人を父親に持つジャンクは、父親と比べられ将来を期待されることに苛立ちを感じていた。そして迎えた魔法使いになるための儀式中、思わぬ襲撃を受けてしまう。窮地に立たされるジャンクに反応し、「杖」が姿を現した―。劣等生のジャンクがパラディンを目指す王道少年ファンタジー。

才能を表す“杖”
魔法の世界の光と影

魔法使いの世界が舞台の本作は、どのようにして誕生したのでしょうか?

作者の中尾拓矢さんが元々少年マンガを手掛けていらっしゃった作家さんで「ファンタジーを描きたい」という想いを強くお持ちでした。サイコミとしても「王道の少年マンガを掲載したい」と考えていたので、中尾さんと私たちのやりたいことが一致したことで連載がスタートしました。

この物語の世界では「杖」が覚醒することで魔法を使えるようになります。ただ、魔法が使えない“杖なし”と呼ばれる人たちと、魔法使いの対立も多く描かれていますよね。

魔法の才能が「杖」として現れるファンタジーの世界が舞台なので、自ずと格差の描写が出てくるものだと思っています。
落ちこぼれで杖を持たない弱い立場のジャンクと、そのライバルで王家出身のエリートであるカミヤの関係性もそういった世界観があるからこそ生まれてきたものです。
国の英雄であるパラディンを目指すジャンクは、才能豊かなカミヤに自分を認めさせたくて強くなっていきます。一方、カミヤもジャンクの存在が大きくなることで偏見を持っていた杖なしの見方が変わっていきます。
格差や差別をテーマに描くというより、正反対のキャラクターがお互いを刺激し合うことで成長していく物語を意識していますね。

▲川を挟んで左は魔法使い、右は“杖なし”が暮らす地区。家のたたずまいに格差が見られます
▲ライバルとして対峙するジャンク(左)とカミヤ

印象に残っているシーンはどこでしょうか?

魔法学校の生徒たちがバトルを繰り広げる伝統行事「大決闘会(メンズーア)」で、影使いのジャンクと“光剣”を持つカミヤが戦うところです。主要キャラクターのライバル同士がぶつかり合うので、少年マンガとしては熱い展開になっていると思います。私自身、打ち合わせをしながら中尾さんの原稿を楽しく読んでいましたね。特に第78話でお互いの必殺技がぶつかり合うところが見どころです。

メンズーアは各キャラクターが個性を活かして戦います。特にヒロインのアイリスが挫折を味わう場面に感情移入する人も多かったと思います。

アイリスは勉強ができて戦闘能力も高く、杖が覚醒してからはパラディンになれるほどの才能を発揮します。しかし、メンズーアの戦いでアクシデントが起き、ある意味で弱者側に立ってしまうんですよね。アイリスはジャンクにとって身近でまぶしい存在だと思いますが、メンズーアを通して立場が逆転していきます。
どんどん成長していくジャンクの姿を見ながら焦りを募らせるアイリスの立ち振る舞いは、制作している私たちもかなり悩みました。今後、挫折を味わったアイリスがどう立ち上がっていくかに期待していただきたいです。

▲メンズーアでアクシデントに見舞われるアイリス

何でもできるからこそ
人の性根にスポットを

ファンタジーを描く上で、かなり想像力が求められるのではないでしょうか?

そうですね。特にバトルシーンはいつも悩んでいます。ファンタジーは何でもできるけど何をやっても良いわけではありません。制約を設けないと何でもアリになってしまうところが難しいです。

ファンタジーの世界にリアリティーを持たせるために、キャラクターの劣等感であったり信念だったり、人間の性根の部分で感情移入できる点を見出せるようにしています。そういった人間性を深めることで技にも繋がっていくことがあるんです。例えばメンズーアでアイリスと戦ったエイデンは、壮絶な家庭環境で育ったことで愛情に執着し、闇を使う魔法に目覚めています。

バトルに限らず、キャラクターも色々な個性が出せるので難しいです。登場人物に必然性を持たせるため、物語上での明確な役割を与えるようにしています。また、能力によってどこまでのことができるかキャラクターごとに決めていて、その設定から逸脱しないようにしています。ファンタジーは色々と設定が必要になるので大変ですね(笑)。

▲リリ(左)は師匠として、ジェイド(右)は兄貴分としてジャンクに成長を促し、共にパラディンとして国を守る役割を担っています

落ちこぼれのジャンクが成長したり強力なライバルがいたり、まさに「王道」を突き進んでいますよね。

この作品はよく「王道ファンタジー」と言っていただけますし、そう思っていただけることはありがたいです。ただ、王道への抵抗感と言いますか、王道だからこそ予想できる展開にしたくないと思っています。良い意味で読者のみなさんの期待を裏切っていくことは意識していますね。

メンズーアがまさにそうです。例えばジャンクとカミヤのバトルは、「どうせ主人公のジャンクが勝つんでしょ?」と思われたくありませんでした。そこで、我々も連載時に勝敗を決めず、ジャンクとカミヤのそれぞれにピンチとチャンスを作って読者の方々にハラハラドキドキしながら読んでいただけるような展開を考えていきました。

予想を裏切る点で言うと、ジャンク自身の重大な秘密が発覚しましたね。

そうなんです。このマンガは秘密や伏線をたくさん散りばめていて、サイコミの中でも特にネタバレに気を遣わなければいけない作品だと思っているので「ぜひ読んでください」としか言いようがないのですが(笑)。
杖なしのジャンクがなぜ魔法を使えるのか、それもなぜ影使いなのか、ジャンクの過去を知る新しい敵とどうなっていくのかに注目していただきたいです。

最後に、読者のみなさんにメッセージをお願いします。

この作品を少年マンガの王道ファンタジーとして突き抜けたものにしたいと思っています。今こんなに直球のファンタジーとしてバトルを繰り広げるマンガはそうそうない気がしていて、だからこそバトルシーンには特に力を入れていきます。中尾さんの技術も上がっているのでますます面白くなることは間違いないですし、衝撃展開もあるので楽しみにしてください。

『黒影のジャンク』

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