TVアニメ化が決定した『群れなせ!シートン学園』をはじめ、『TSUYOSHI 誰も勝てない、アイツには』『Forward!-フォワード!』などを好評連載中のマンガ配信サービス「サイコミ」
今回は、サイコミ編集長にゲーム会社でマンガ配信が始まった経緯や、創刊から現在までの軌跡を直撃取材しました!

サイコミ編集長葛西
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大手WEBコミックサイトの立ち上げを経験し、2016年にサイゲームスに入社。サイコミ編集長として、掲載されるコンテンツ全ての統括を行う。

マンガからコンテンツを広げる!
サイゲームスが漫画事業部を設立したわけとは?

本日はよろしくお願いします。まずは簡単に自己紹介をお願いします。

サイコミ編集長の葛西です。前職からWebコミックの編集をしていて、サイコミ創刊から半年ほどたったタイミングでサイゲームスへ入社しました。募集を見た際、ゲーム会社なのにマンガ編集部がある、というのはかなり意外だったのを覚えています。

サイゲームスに転職しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

マンガを原作としたコンテンツを広げていく仕事がしたかったからです。前職のときに担当マンガのTVアニメ化を経験していて、これからはマンガ単体だけでなく、そこからアニメやゲーム、ドラマなど、新しいコンテンツに派生していく時代なんだと感じました。
アニメ事業部があったり、アニメの美術背景会社である株式会社草薙を子会社化したりなど、ゲームに加えてアニメにも本気で力を入れているサイゲームスなら、自分のマンガ編集という経験を活かして幅広いコンテンツづくりができると思いました。

実際に今回、サイコミ初となる『群れなせ!シートン学園』のTVアニメ化が決定しましたね!

▲TVアニメ『群れなせ!シートン学園』ティザービジュアル

そうですね。スタッフ一同、とても楽しみにしていますし、うれしく思っています。漫画事業部設立の意図も実はそこにあるんですよ。

と言いますと?

漫画事業部は「サイゲームスの10年後、20年後を支えるコンテンツを作りたい」という想いから発足した部署なんです。ゲームだけでなく、きちんとIPを育てていこうという代表・渡邊(耕一)の意向がそもそものきっかけでした。マンガであれば、単体はもちろん、そこからゲームやアニメといった別コンテンツとして盛り上げることができます。そういった「原石」のようなものを社内でしっかり作っていこうという想いは設立から現在まで変わっていません。

だからこそ今回、『群れなせ!シートン学園』がマンガからアニメというコンテンツに広がってくれたことは漫画事業部としてとてもうれしいです。2018年11月に「再創刊」と銘打ってシステムから掲載作品までサイコミ内を大幅リニューアルしたのですが、『群れなせ!シートン学園』は、創刊前からずっとサイコミを支えてくれている作品の1つなので、とても感慨深いです。

「もっと幅広い層に、もっと面白いマンガを」
再創刊までの経緯

TVアニメ『群れなせ!シートン学園』も楽しみにしています!今触れていた「再創刊」について詳しく聞きたいのですが、2016年の創刊から1年半程度経ったタイミングで、再創刊に至った経緯を教えていただけますか?

創刊当初は、「ゲームのIP展開を支える」というミッションもあり、ゲームのコミカライズを中心に据えて連載していました。そして創刊から1年程経った頃、編集部の人員も増え、「サイコミ」の地盤も固まってきました。そこで、部署発足時からのもう1つの想いである「新しいIPを作り、育てる」という面にももっと本格的に取り組んでいこう、オリジナル作品の連載数を増やしていこう、という想いが強くなりました。

ちょうどそのタイミングで、Webマンガのブランディング経験者である石橋(和章)さんにアドバイザーとして参画していただくことになったこともあり、思い切ってオリジナルマンガ中心の内容に方向転換し、もっと幅広い層に「王道の少年マンガ」を届けられるアプリにしようと決めました。石橋さんは小学館で「裏サンデー」や「マンガワン」の立ち上げを担当している方で、そのノウハウを学ばせていただいてます。

具体的にはどういった変更をしていったのでしょうか?

まずはオリジナルの新作マンガを20~30作品ほど一気に作りました。その他にはシステム面も大幅改修をして、更新作品をわかりやすく表示したり、「サイコミ漫画賞」や「サイコミコラム」といったマンガ以外のコンテンツを載せられるページを作ったりしました。
また、本編とは一味違ったおまけマンガや、小説、バイノーラル録音音声などが楽しめる「スペシャルコンテンツ(スペコン)」も導入しました。
そうしたさまざまな調整、改修を繰り返し、2018年11月に再創刊に至りました。

再創刊に際して、コンセプトのようなものはあったのでしょうか?

コンセプトとまではいかないかもしれないですが、「とにかく面白いマンガを作ること」ですかね。面白さの基準は人それぞれだと思いますが、サイコミの場合は「人を感動されられるかどうか」だと考えています。読んでいて楽しい、泣ける、笑える、切ないなど、どんな気持ちでも良いので、読んだ読者の方の心を動かせるかどうかは常に意識しています。
あとはそれを週刊で運営!……というのが実は一番大変だったんですけどね(笑)。

週刊連載というのはやはりスケジュール的に大変ということでしょうか?

スケジュールはもちろん大変です。そのスケジュールを守りながら面白いマンガを作るために、編集者の力が必要なのですが、週刊連載を経験している編集者って意外と少ないんですよね。
次週の展開を期待させながら十数ページを作る週刊連載と、数十ページかけて起承転結をきちんと作って1回分の満足度を高められるように作る月刊連載とでは作り方、進め方ともに全然違います。そのため、当時20本を超えるさまざまなジャンルのタイトルを一気に作りながら「週刊連載の作り方・進め方」というものを模索しながら運営していました。

▲社内打ち合わせの様子

そういった運営を続けていく中で、現在のような形になっていったんですね。

そうですね。運営を続けていくうちに『TSUYOSHI 誰も勝てない、アイツには』のような人気マンガが誕生していき、徐々に「スポーツものやバトルものに強いアプリ」という現在のサイコミの色が出てきたように思います。アプリ利用者もほとんどが20歳前後の男性なので、人気作とニーズがマッチしているなという実感もあります。私たち世代からするとスポーツものやバトルものは「マンガの王道」というイメージがあるんですが、若い世代からすると近年あまり見かけなかったジャンルだからか「新鮮!」といった声もいただいていて、驚きつつうれしい気持ちでいっぱいです。

確かに10~20年前は各誌で、スポーツやバトルもののマンガがもっと多く連載されていた記憶があります……!減ってしまった理由はあるのでしょうか?

2010年頃までは電子書籍やアプリではなく、紙の雑誌やコミックスがマンガ媒体の主体で、「いかに書店で売るか」が重要視されたんです。売場のラインナップに選ばれやすいものが売れた時代ですね。そういうラインナップにはちょっとニッチなものや目新しさを感じるジャンルの作品が選ばれやすい傾向があって、わざわざ選ばれない王道のスポーツやバトルものを編集者も作らなくなってしまったんです。作られない時期が続くと、作れる編集者もどんどん減ってしまい、さらに作られなくなって……と悪循環になってしまったと。

なるほど!そのような中、サイコミであえてスポーツやバトルものに挑戦しようと思ったのはなぜですか?

再創刊の際は、「面白いマンガを作ろう!」と考え、とにかくいろんなジャンルの作品を作ったのですが、スポーツやバトルを中心に据えよう、という考えは当時からありました。
スポーツやバトルものにはわくわく感を演出しやすい特徴があるんですよ。スポーツは点を取って取られて……バトルは攻撃して反撃されて……。「どっちが勝つの?」「チャンス!ピンチ!この後どうなるの?来週が気になる!」ってなるんです。それが週刊連載に合っていたんでしょうね。石橋さんの「マンガアプリってスポーツとバトルが強いよね」っていう経験もあって、やっぱりニーズがあったんだなと思いました。

▲人気の2作品 (左)『TSUYOSHI 誰も勝てない、アイツには』/(右)『Forward!-フォワード!』

サイゲームス“らしくない”?
サイコミ流マンガの作り方と編集部の雰囲気

ゲーム会社内部署のインタビューのはずが、いち出版社にインタビューをしているような気がしてきました(笑)。

私たちも「部署」というより「編集部」という意識の方が強いかもしれません。サイゲームス内ではかなり特殊な部署だと思いますよ。

具体的にはどういったところが特殊なのでしょうか?

1つは、非常にオープンな作り方を取り入れているところです。一般的にIT企業にとって、「情報」は財産であり、漏洩などには細心の注意を払うことが多いです。サイゲームスも、専用IDによって執務室エリアへの入退室管理を徹底していたり、制作スタッフが内部でしか知り得ない情報を発信することが絶対にないようにしたりと、守るべき情報をしっかりと守る体制が整っています。

ですが、サイコミの場合、社外の方である作家さんに来社してもらい、執務室エリア内にある編集部内のあちこちで打ち合わせが行われています。それどころか専用のブースがあるネーム室も社内にあるので、作家さんが打ち合わせの後、そのまま残ってネーム作成することも多いです。ネームができたらまた編集者とすり合わせて……と社内で一通り制作が進められる環境ができています。もちろん守るべき情報は守るというのが大前提ではありますが、気軽に、フラットに打ち合わせできる雰囲気や体制を作ることで、編集者と作家さんとの間で密にコミュニケーションを取れるようにしています。

▲実際のネーム室。室内は1作業スペースごとに半個室となっています。ネーム作業が佳境の日はいつも満室なんだとか!

また、「サイコミコラム」といった編集者、つまり社内スタッフが表に出るコンテンツを扱っていることもサイゲームス内では珍しいと思います。ただ毎日マンガを更新するだけではどうしても無機質になりがちなので、「サイコミ編集部をもっと身近に感じてもらいたい。マンガだけでなくサイコミというメディアを楽しんでもらいたい」という想いで始めたコンテンツではあるのですが、ちょっとおバカなテイストのコラムも多く、今ではある意味、ものすごくサイゲームスらしくないコンテンツになったなと(笑)。

かーくんはじめ、コラムはいつも楽しく読ませていただいています!

ありがとうございます(笑)。あともう1つはチーム内の雰囲気でしょうか。例えば、ゲーム開発・運用を行うプロジェクトであれば、プランナーやエンジニア、デザイナーなどさまざまな職種のスタッフが1つのゲームを開発・運用するために動いています。
一方、漫画事業部の場合は、サイコミという1つのアプリの中で編集者がそれぞれの担当マンガを持っていて、自分の担当作品を一番人気にするべく切磋琢磨しているチームです。こういうチーム形式や雰囲気はゲーム会社であるサイゲームスの中ではかなり特殊なものかなと思います。
ですが、その「チーム内でのライバル意識」がサイコミらしくて良いところだとも思っています。「あの人に負けないぞ!自分ももっと良い作品作るぞ!」って。

▲新メンバーに原稿チェックの方法を伝授しているところ。「助け合うところは助け合い、張り合うところは張り合う」というのが部署内の雰囲気だそうです

なるほど。では逆に、漫画事業部のサイゲームスらしいところはありますか?

はい。サイゲームスのビジョンである「最高のコンテンツを作る」という意識をしっかりと持っているところです。これはサイゲームスの一員として、プロジェクトメンバーや他のスタッフとも変わらない想いですね。
ライバル意識があるということが編集部としてのチーム力で、切磋琢磨して、一人ひとりが良い作品を手掛ければ、結果的にそれがサイコミ全体の盛り上がりに繋がります。最高のマンガを作るためなら妥協しない、それが例えサイゲームスらしくない方法であっても取り入れる、という姿勢自体がすごくサイゲームスらしい部分かもしれません。

最後に、今後のサイコミの展望をお願いします!

これまでと変わらないところではありますが、ひたむきに作品づくりに向き合って、ヒット作を作っていきます!現在『TSUYOSHI 誰も勝てない、アイツには』がおかげさまでたくさんの読者の方々から支持いただいています。編集部一同追い付け追い越せの気持ちで、本作に続く面白いマンガを作っていけたらと思っています。

▲『TSUYOSHI 誰も勝てない、アイツには』 作者・丸山恭右先生と

また、『群れなせ!シートン学園』のTVアニメ化のように、マンガの領域を飛び越えたコンテンツ化やメディア展開も目指していきたいですね。
今後も「このマンガが面白い!」「更新が楽しみ!」と言ってもらえるようなマンガをお届けするとともに、サイコミというメディア自体を楽しんでもらえるようにがんばっていきます!