『プリンセスコネクト!Re:Dive』オリジナル文字開発秘話

『プリンセスコネクト!Re:Dive(以下、プリコネR)』のゲーム内には、看板や手配書、魔法陣などに描かれ、『プリコネR』の世界を表現するオリジナルの文字が登場します。
このオリジナル文字はどのような経緯で生まれ、どのような法則が隠されているのでしょうか。制作時の着想やデザインのこだわり、そして作中にひっそりと仕込まれた小ネタについて、制作に携わったスタッフにたっぷりと話を聞きました。

イラストチームワオ
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ゲーム会社で3Dとイラストを担当した後、2014年にサイゲームスに合流。『プリンセスコネクト!』から『プリンセスコネクト!Re:Dive』にかけて、キャラクター、敵モンスター、武器、小物などのデザインを主に担当し、プリコネチームのイラストリーダーとして活躍。現在は採用部門と育成部門に所属し、新卒および中途イラストレーターの採用活動や、新卒スタッフの育成に携わっている。

始まりは「説得力を持たせたい」という
現場のこだわり

まずは、プリコネ文字を制作することになった経緯を教えてください。プランナーからの依頼があったのでしょうか?

いえ、実はプランナーやディレクターからの依頼ではなく、現場である私からの提案(思いつき)がきっかけでした。

プリコネ文字を作るきっかけになったのは、2016年頃、開発中のゲーム内のショートアニメで「転送魔法陣」の設定画が必要になったことでした。当時はデザイナーが毎回魔法文字のようなものをデザインして作ってくれていたのですが、アニメになると大きく映るため「細部まで説得力のあるものにしたいな」と思ったんです。

加えて、魔法陣以外にも手配書やお店の看板など、文字情報を含む設定資料を大量に作る必要がありました。毎回他の要素に合わせたデザインにすることもできたのですが、この機会にちゃんとしたオリジナル文字のルールを作れば、ゲーム全体で統一感が出て、世界観に深みが増すのではないかという話になったのが始まりです。

ワオさんからの発案だったのですね。そこからどのように進めたのでしょうか?

もちろん、異世界であることを文字でもしっかりと表現したいという意図がありました。それに加えて、私自身が昔からアニメやゲームに出てくるオリジナル文字が大好きだったので、いつかプリコネでもオリジナル文字を作れたら素敵だなという憧れを持っていたんです。当時、思いついてすぐにアートディレクターやプランナーに「やっていいですか?」と直談判して作り始めました。

アルファベットとひらがなが合体!
プリコネ文字のルール

文字を作るにあたり、最初はどのようなリサーチをしたんですか?

まずはオリジナル文字が出てくる作品を探して資料を集め、ゴールのイメージを固めました。様々な作品のオリジナル文字を調べていく中、『プリコネR』の制作ルールとして実在する文字を置き換えて制作することにしたんです。

また、神秘的なエッセンスを入れるために実在するルーン文字や梵字(ぼんじ)、印鑑やお店の看板などに使われる篆書体(てんしょたい)なども参考にしました。

文字の法則やルールについて教えてください。

基本的にはアルファベットの「AからZまでの26文字」に対応した単一換字式暗号になっています。英語や日本語と同じように、左から右へと読んでいくルールです。句読点や濁点は存在せず、単語の間は少し隙間を空けて配置しています。また、数字も0から9まで用意しています。

ゲーム内での使い方としては、マップ名をはじめ短い単語は英語から変換し、長文の場合はローマ字表記から変換していることが多いです。

▲「ハロウィンパーク(昼)」 ADV背景
▲「グランドリームパークガイド」 マップ背景
▲プリコネ文字の使用例

文字の造形(デザイン)はどのように作っていったのでしょうか?

アートディレクターと相談しながら全体のルールを決めました。具体的には、「元のアルファベットの一部」と「その発音」を組み合わせています。

例えば、「A」ならアルファベットの「A」の1画目と、ひらがなの「え(Aの発音)」をくっつけてデザインしています。「B」ならアルファベットの「B」の縦棒と、ひらがなの「び」を組み合わせ、邪魔になる濁点は文字の上部にくるっと丸めたり棒に付けたりして配置しました。「C」は「C」とひらがなの「し」の組み合わせですね。これをAからZまで26文字分作っていきました。

法則がわかると解読のヒントになりますね!制作時に苦労した点があったとお聞きしましたが……。

そうなんです(笑)。A、B、C……と順番にデザインしていって、「これは面白い文字になるな」と順調に進めていたのですが、途中でとんでもないことに気が付きました。

アルファベットを日本語の発音にしたとき、「F(エフ)」「L(エル)」「M(エム)」「N(エヌ)」「S(エス)」「X(エックス)」など、「え」から始まる発音の文字が7個もあるんです。LやMを作っているあたりで「ヤバい、全部『え』の形になっちゃう!」と焦りました。

その結果、「M」はひらがなの「え」とカタカナの「ム」を組み合わせたり、「X」は旧仮名遣いの「ゑ」を組み合わせたりと、自分の決めたルールとあれこれ格闘することになりました。また、「E(イー)」もひらがなの「い」だとシンプルすぎて文字っぽくならなかったため、旧仮名遣いの「ゐ」を組み合わせて作るなど、私なりの……チャーミングな試行錯誤が詰まっています(笑)。

▲プリコネ文字の一覧表を初公開!

数字のデザインについてはいかがですか?

数字も同じ1対1の対応ルールで、「1」はカタカナの「イ」、「2」は「ニ」、「3」は「サ」、「4」は「ヨ」、「5」は「コ」に濁点を上下に分けて配置しています。数字は視認しやすくするために、文字の周りを丸で囲むデザインにしました。

ただし懸賞金やレストランのメニューなどで数字を出す際に、丸がズラッと並ぶと見栄えが悪くなるという懸念があり、一部TVアニメ制作チームのほうでさらに省略・アレンジした数字を作って使ってくださっていますね。

▲TVアニメ『プリンセスコネクト!Re:Dive』第1話に登場した懸賞金貼り紙(上)の全体図(下)。数字は崩した表記になっている
▲TVアニメ『プリンセスコネクト!Re:Dive』第10話より。コカトリス亭のメニューにも簡易版の数字表記が

杖や指で描くことを想定したデザイン
フォント化による業務効率化

デザイン面で『プリコネR』の世界観と調和させるために意識したことはなんですか?

『プリコネR』はかわいい女の子がたくさん登場するポップな世界観なので、それに合うようにアール・ヌーヴォー調といいますか、柔らかく有機的なラインを採り入れています。

また、ルーン文字や梵字は筆記用具(筆やペン)によって形が変わりますが、プリコネ文字は「杖の先や指でなぞって空中に描く」ことを想定したため、線の太さは均一のほうがそれらしいだろうと考えました。小さく縮小されたときに潰れないか、ズラッと並んだときに細かすぎないかといった視認性も意識しています。最初に「ペコリーヌ」と試し書きをして、文字の線の間隔などを微調整していきました。

完成した文字は、ゲーム内にどのように組み込んでいるのでしょうか?

初期は、私が作ったアルファベットの対応表をイラストレーター間で共有し、手作業で配置していました。しかし、毎回手動で配置するのは大変でしたし、第3部のストーリーから裏世界(ジオ・テオゴニア)に「鏡文字(1文字ずつ左右反転した文字)」が登場するようになり、配置がさらに複雑になってしまいました。

▲魔方陣に描かれた鏡文字

そこで現在は、ツールを使ってオリジナル文字をフォントデータ化しています。フォント化する際も、私が最初に書いた際の「ガタガタした揺らぎ」を味として残しつつ組み込んでいます。

TVアニメ版でも同じ文字が使われているのでしょうか?

基本的には同じですが、TVアニメ版では手書きでサラサラッと書かれた「筆記体」のようなアレンジや、少し丸っこく崩されたかわいいアレンジも登場しています。例えばコッコロが書く文字は手描きのニュアンスを残した丸文字風になっていたりします。サイピクさんによる素敵なアレンジですね。

▲TVアニメ『プリンセスコネクト!Re:Dive』第3話より

ゲーム内に潜む「読める」仕掛けと小ネタ

作中で、ユーザーのみなさんが解読して楽しめる仕掛けや小ネタはありますか?

意外と大きく文字が映る場面は少ないのですが、ありがたいことに解読してくださっているユーザーの方もいらっしゃるので、ちゃんとした意味のある言葉を入れるようにしています。

解読のヒントになる代表的な場所としては、ガチャ演出の中で貼り出される紙があります。あそこには「APPLICANT(志願者・応募者)」と書かれており、その下には実は「ABCDE……」とプリコネ文字が順番に書かれています。同じ文字が続いていたりするので、ここから法則をイメージしやすいかもしれません。また、転送魔法陣の周囲には「PORTAL(ポータル)」と書かれています。

▲ゲーム内で比較的大きくプリコネ文字が観測できるシーン
▲転送魔方陣の大きな文字は「PORTAL」と読める

他にも、気付くと面白い小ネタなどはありますか?

第3部の「ジオ・テオゴニア」で背景に出てくる巨大な魔法陣には、「gate open and data load and enemy pop and enforce and enchant…」と永遠に文字が書かれています。

それから、第3部から登場する「ルルィ」というキャラクターのデザインにも小ネタがあります。彼女の足元をよく見ると、片足だけ履いているサンダルに鏡文字で「W.C(トイレ)」と書かれています。ストーリー上でトイレに関するエピソードがあるわけではないのですが、片足だけトイレのスリッパを履いて出てきているという、クスッと笑えるかわいいデザインになっています。

▲ルルィの足元にご注目
▲メインストーリー第3部で登場する大きく描かれたプリコネ文字。ここまで読んだあなたはこれがどんな呪文かわかるはず

日常のインプット方法
イラストレーターを目指す方へのメッセージ

ワオさんのことについても教えてください。好きなオリジナル文字はありますか?

好きなオリジナル文字は、子どもの頃に夢中になったとある人気アニメ・ゲームに登場するオリジナル文字です。当時は解読表が出回っていなかったので、カードやキャラクターの名前を見て「最後の2文字は共通しているから、モンスターを表す言葉だろう!」と自分で推理して解読していました。
最近プレイした、未知の言語を1文字ずつ解き明かしていく海外のインディーゲームも、まさにそういった読解がメインで非常に面白かったです。

日常的なインプットで意識していることはありますか?

インプットは「質より量」派です。勉強になりそうな作品だけを選ぶのではなく、好き嫌いせずになんでも素直に吸収するよう心がけています。漫画と映画が大好きで、漫画は絵の勉強というよりストーリーを楽しむ読者としてたくさん読んでいます。映画は色々観ますが、洋画のアクション映画が大好きです。

また、職業柄どうしてもタイトルロゴなどには目がいってしまいます。有名な漫画のロゴをじっくり観察すると、例えば篆書体のようなふにゃっとしたフォントで謎めいたかっこよさがあったり、明朝体とゴシック体が混ざったような一風変わったロゴになっていたりして、こだわりが感じられて楽しいです。

最後に、ユーザーのみなさんへ向けてメッセージをお願いします。

いつもサイゲームスのコンテンツを遊んでいただき、誠にありがとうございます。今回の記事は「オリジナル文字」というかなり狭い範囲にフォーカスした内容でしたが、楽しんでいただけましたでしょうか?
『プリコネR』はかわいい女の子がたくさん登場するカジュアルな雰囲気のゲームですが、実は世界観や敵キャラなど、細かい部分までしっかり作り込まれていて魅力的なんだ!ということが少しでも伝わっていたらうれしいです。

ユーザーのみなさんの日常に少しの潤いと刺激を与えるべく、スタッフ一同、これからもこだわりと愛情をたっぷり込めて開発に取り組んでまいります。今後の展開にもぜひご期待ください!


以上、プリコネ文字についてのインタビューをお届けしました。
ゲームをプレイする際は、ぜひ背景や魔法陣の文字にも注目してみてください。

© アニメ「プリンセスコネクト!Re:Dive」製作委員会

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