シナリオライターは「書くこと」に誠実であれ 先輩から学んだ信念
サイゲームスには、新卒・第二新卒のスタッフにキャリア形成および生活全般のさまざまな悩み相談を行うメンターと業務上必要なスキルを教えるトレーナーが付くメンタートレーナー制度があります。その対象者に、それぞれのコンビで対談していただく連載企画「SJ対談」。
先輩(Senior)と後輩(Junior)、それぞれの立場から見た制度期間中の思い出や成長の軌跡などを話します。
第12回は、シナリオチームのSJ対談をお届けします。
- メンターショウゴ
- フリーのゲームシナリオライターとして数々の人気作品に携わった後、2017年に中途入社。複数プロジェクトでライティングに従事しながら、シナリオチームマネージャーとして現場スタッフの育成やコンテンツ監修を行っている。
- 2017年新卒ヒロキ
- 2017年に新卒として入社。新卒研修後、シナリオライターとしてライティングに従事。現在はチームリーダーとして、監修も行っている。
「雲の上の存在」「精神的に強い人」
お互いの印象
ヒロキ ショウゴさんは、僕にとって雲の上の存在でした。入社前から、担当されていたシナリオが大好きだったので、メンター発表の際は「ショウゴさんが僕のメンター……!」と驚きました。
ショウゴ そうだったんですか?会ってみたら、意外と普通の人だったでしょう?(笑)
ヒロキ そんなことありません(笑)。想像以上の仕事ぶりや人柄でとても尊敬しています。制度期間中、ショウゴさんは気さくに接してくださり、それがとてもうれしく、ありがたかったです。僕も今年からメンターになったので、ショウゴさんの気さくな接し方を見習おうと思います。
ショウゴ なんだか照れますね……。僕がメンターとしてヒロキさんに接して思ったことは、「この人にはメンターは必要ない」です。
ヒロキ そうだったんですか!?
ショウゴ ヒロキさんは精神的に強い人です。反省点を自力で見つけて、何をするべきかを自分で考えて動ける人なので、「ヒロキさんは1人でも成長できる人だな」と思いました。実際、シナリオチームのサブマネージャー(当時)として見ていても、シナリオディレクターやトレーナーから学んだことをきちん吸収し、すべてを自分の糧にしようとしているイメージがあります。
ヒロキ そう言ってもらえてうれしい反面、恥ずかしくなってきました(笑)。
ショウゴさんとのメンター面談はありがたい時間で、業務の合間のリフレッシュタイムになっていました。どんなに切羽詰まっていてもショウゴさんとお話しすることで「締め切りまであとどれくらいか」という思考から抜け出せますし、面談後には「また頑張ろう!」と思えて、すごく力になりました。
ショウゴ 「ヒロキさんの気分転換になれば」という部分は意識していたので、それを聞いて安心しました。
僕が以前所属していたプロジェクトのマネージャーが、よく昼会やミーティングで気分を変えたり、場を和ませたりするような話をよくしていました。きちんと動くスタッフにとっては言われなくても、実はそういう和みだけで良かったりするんです。その経験から、ヒロキさんとの面談では「少しでもヒロキさんの安らぎの時間になれば」と思って対応していました。
ヒロキ そうだったんですね。ありがとうございます!
「経験を埋める」ための月1ディナー
制度期間中の思い出
ショウゴ 制度期間中は、週1回の「メンターランチ」で、色々な飲食店を回りましたね。一緒に食事をする中で、ヒロキさんの素晴らしい長所を見つけました。
ヒロキ えっ、 どこですか?
ショウゴ 食べ物の好き嫌いが全くないところです。健康な体を作るには「食」はとても大切です。好き嫌いをなくし、野菜もたくさん食べることで体が丈夫になります。
どんなに優れた能力を持っていても、体調不良によって仕事ができなくなっては意味がないですし、体調不良で欠席ばかりしてしまうと人からの信頼を得ることは難しくなります。だからこそ「好き嫌いをせずに、ご飯をしっかりと食べる」は当たり前ですが、仕事をする上でも重要なことです。
ヒロキ 「好き嫌いがない」で褒められたのは小学生のとき以来ですが、そう言ってもらえるとうれしいです(笑)。
あと、月に1度、ディナーを食べに連れて行ってもらいました。僕はまだまだ人生経験が浅く、知らないことが多いため、その経験を埋めるためにも色々なところに行くことができたのは本当にありがたかったです。
ショウゴ 「メンターとして僕にできることは、ヒロキさんのシナリオライターとしての経験値を上げることだ」と思い、一緒にいろんな店を食べ歩きました。駆け出しのヒロキさんの経験を埋めるのはもちろんですが、僕も自らそういうお店に行く機会は少ないので、自分にとっても良い経験になりましたね。
これまで行ったことのないお店に行き、店舗の外観や内観を知り、どんな料理があるのか、それはどんな味なのかを知ることは確実に「シナリオライターとしての経験」へと繋がります。もし登場人物がおしゃれな飲食店に行くシチュエーションを書くことになったら、この経験が糧となり、よりリアリティーのあるシナリオや設定を作ることができます。
ショウゴ それから、面談では「シナリオライターとは何か」といったお話もしましたね。僕はメンターなので、基本的に業務を教えるポジションではありません。実務を教えない代わりにヒロキさんには、シナリオ業界の歴史や事情、シナリオライターとして注力しなければいけないことなどをよくお話ししました。経験の長い自分がライター歴1年目のヒロキさんにできることは、その経験を伝えることだと思いました。
ヒロキ ショウゴさんの話は、これからシナリオライターとして仕事をする上で、とても勉強になりました!特にシナリオライターの環境の変化は、あまり意識して考えていなかった部分なので、大変参考になりました。
ショウゴ それは良かったです。20年以上シナリオ業界で頑張ってきましたが、今と昔ではシナリオライターの活躍の場はだいぶ変わってきましたから。僕が業界に入った1990年代は、日本でノベルゲームが流行り始めた頃でしたね。それから、RPGや女性向けゲーム、アイドルゲームなど、シナリオが重要となるさまざまなジャンルのゲームが出てきました。
その後、モバイルのソーシャルゲームが数多く生み出されるようになり、「運用のためのシナリオ」へのニーズがたくさん生まれ、「ゲームシナリオライター」という職業が改めて確立されたような気がします。その状況は今も変わっていませんが、ヒロキさんにはこれからも業界の変化に応じて生き残れるだけの知識や経験を蓄えてほしいです。
ヒロキ ありがとうございます!まだまだ力が足りないと思うので、今後も頑張ります!中でも「センス」の部分は勉強中なので……。
ショウゴ 面談では服装のセンスの話もしましたね。シナリオライティングには、キャラクターの服装の設定も含まれている場合が多いです。特に女性キャラの私服の設定は、男性シナリオライターにとって難しい部分で、意識的に学んでいくしかないところです。自分とは立場や経験が全く違う相手の服装を考えることは難しいと思いますが、ぜひ磨いていってください。
ヒロキ はい!登場人物たちに流行遅れの服装や似合わない格好をさせるのは嫌なので、今後もセンスを磨いていきます。ショウゴさんとそのお話をしてから、ファッション誌は定期的にチェックするようになりました。
ショウゴ ファッション誌は大事な資料で、最先端の知識を得る道具の1つです。服装の参考になるだけでなく、「今の若者が使う言葉はどんなものか」「どういう色使いが好まれているのか」などの勉強になります。その意気で頑張ってください!
「読者の心に刺さるテキストを書く」
印象に残っている話
ヒロキ ショウゴさんとの話の中で、最も印象に残った言葉があります。
ショウゴ 中身のない話が多かったイメージなので、そう言われるとうれしいですね(笑)。
ヒロキ いやいや、そんなことはありませんよ!
印象に残った言葉は「シナリオライターは、全テキストで読者の心を刺しにいかなければいけない」です。シナリオを書き始めたばかりの頃、物量の多さに戸惑い、業務を捌ききれない状況に悩んでいた際に、この言葉をもらいました。
ショウゴ シナリオは何のごまかしもできないもので、手を抜けばすぐに読み手に気付かれてしまいます。だからこそ、読者の心を刺すポイントは偶然に作れるわけではなく、しっかりと展開を考えたり、「これでもか!」というくらいに調べたりしてやっと見つかるものなんです。
さらに、そのポイントを見つける前準備として、書くための体力をきちんと付けた上で、頭を柔らかくする必要があります。そして、何よりも「書くこと」に対して誠実であり続けないといけません。
シナリオを書くためには、いろんな要素が必要であり、常に「刺しにいくシナリオ」を作り続けることはすごく難しいことだと思っています。
ヒロキ 20年以上も第一線で活躍されているショウゴさんからこの話を聞けたことが本当に贅沢だなと思いました。このお話を聞いたときに「ショウゴさんは今までずっとその信念を持たれてきたからこそ、たくさんの人の心に残るシナリオが書けるんだな」と感じました。この言葉は、これからも心の中で何度も反芻していきます。
ショウゴ シナリオの道は長く険しいです。そしてサイゲームスのシナリオライターにはさまざまな道があります。ヒロキさんはシナリオチームのマネージャーになれるほどのポテンシャルを持っていると思いますし、その上、書き手としての潜在能力も高いです。もしマネージャーになったとしても、そこで立ち止まらずにもっと大きな夢を見てほしいです。未来のヒロキさんは、どんなシナリオライターになっているのか楽しみです!
ヒロキ ご期待に添えるように頑張ります!ありがとうございます。
ショウゴ あと、ヒロキさんは入社当初に比べて、自分の思ったことを言えるようになりましたね。元々ヒロキさんは人の気持ちを考えられる人なので、提案するにしても受け手のことを考慮し、適切な言葉を選んで発言することができていました。その持っていた力に、良い意味で遠慮がなくなった結果、今では人の気持ちを考えつつも、遠慮せずに自分の考えや意見を提案できるようになったのは素晴らしいと思います。
僕に対しても、出会った当初より、ツッコミが冴えてきています!
ヒロキ え、ショウゴさんに対してですか?
ショウゴ そうです。初めて会った頃はなかなかツッコんでくれなかったんですが。
ヒロキ いやいや、僕はショウゴさんを尊敬していましたし、神様のような存在でした。そんな方に「なんでやねん!」と気安くツッコめませんよ!
ショウゴ 今のは良いツッコミですね(笑)。
ヒロキ (笑)。
お互いへのメッセージ
ショウゴ ヒロキさんは運用プロジェクトのシナリオチームのリーダーに就任されましたよね。おめでとうございます!
ヒロキ ありがとうございます。ただ、責任感で胃がやられそうで……今こそメンターが必要な気がしています(笑)。
ショウゴ 「ヒロキさんならできる!」と信頼されているからこその大抜擢です。シナリオリーダーが出席するリーダーミーティングは、ヒロキさんにとって本当に良い経験になると思います。
リーダーミーティングでは、たくさんの経験を積んできたリーダーたちが培ってきた経験談を聞くことができます。ヒロキさんはそういった経験を上手く自分の糧にできる人だと思うので、これからの成長がさらに楽しみです。
ヒロキ ありがとうございます。他のリーダーのみなさんから色々学んでいきます。
ショウゴ そしてリーダー業務に慣れた頃には、また一緒にご飯を食べに行きましょう!
ヒロキ ぜひ、お願いします!メンター期間は終わりましたが、ショウゴさんにはこれからもたくさんお世話になっていくと思います。もっと成長して、憧れのショウゴさんに認めていただけるくらいに一人前になったら、今度は僕がショウゴさんにディナーをごちそうします!
ショウゴ 約束ですよ?言ったからには実行してくれるのを楽しみにしています!
ヒロキ かしこまりました(笑)。今後もよろしくお願いします!
ショウゴ よろしくお願いします!