最高のゲーム開発を支えるアートディレクション ~サイゲームスらしいクリエイティブのあり方とは~

「最高のコンテンツを作る会社」をビジョンに掲げるサイゲームスは、ゲームを構成するイラストや3DCG、アニメーション、ユーザーインターフェイス(UI)などビジュアルに関するものすべてにおいて最高を目指しています。
今回は、サイゲームスのゲーム開発の中でビジュアル要素のクオリティーを管理しながら、完成に向けてチームを導いていくアートディレクターの仕事についてご紹介。『プリンセスコネクト!Re:Dive(以下、プリコネR)』『ウマ娘 プリティーダービー(以下、ウマ娘)』など数々の人気タイトルを手掛けてきたアートディレクターであり、専門役員のタクムに話を聞きました。
- 専門役員 クリエイティブディレクション室 アートディレクタータクム
- 2014年新卒入社。工学系大学を卒業後、趣味で続けていたイラスト制作の経験を活かしてサイゲームスに入社した。
複数のタイトルでイラストレーターの経験を経て、『プリンセスコネクト!Re:Dive』『ウマ娘 プリティーダービー』『プリコネ!グランドマスターズ』、関連会社の新作プロジェクトでアートディレクションに携わる。
2024年10月から専門役員に就任し、開発中の複数タイトルにてアートディレクションや開発のサポートを担当中。
アートディレクターが専門役員に就任
ビジュアル面で会社のブランド力を上げる
数々のタイトルのアートディレクションや開発サポートを経て、専門役員に就任しました。現在の役割はなんでしょうか?
まずはサイゲームスの新規タイトルの開発をしっかりと推進していくことだと考えています。今後リリースされる新作も控えているので、ユーザーのみなさんに最高の体験やビジュアルを提供できるように準備を進めているところです。
現在いくつかのプロジェクトに携わっているのですが、私自身がアートディレクションを担当している場合もあれば、他のアートディレクターをサポートするかたちで参加している場合もあります。
アートディレクション領域の専門役員として、ビジュアルや体験で業界をリードできるような、これまで以上に高品質なタイトルを継続的にリリースする会社にしていきたいと考えています。



サイゲームスにおける
アートディレクターの仕事とは?
続いてアートディレクションの仕事内容について聞きます。サイゲームスのアートディレクターはどんな仕事をしているのでしょうか?
プロジェクトによって異なりますが、サイゲームスのアートディレクターには大きく分けて「方針策定」「アセット監修」「実機確認」の三つの役割があります。
一つめの「方針策定」について。アートディレクターは作品のテーマやコンセプト、ユーザーのみなさんに届けたい体験を明確にし、アートに携わるメンバーに共有します。言葉だけで伝えにくい部分は、コンセプトアートやモックアップを作って視覚化する場合が多いですね。
二つめの「アセット監修」では、言葉のとおり3DやUI、イラストなど様々な制作物を監修しながら完成度を高めていく役割を担います。
三つめの「実機確認」については、アセット(※)がテスト環境に実装されたら、ユーザーのみなさんが実際にプレイされるデバイスでテストプレイをします。当初目指していた体験が実現できているか、確認と修正を何度も繰り返しながら理想のかたちへと近付けていきます。
※ アセット……ゲーム作品を構成する要素や素材を指す
扱うのは静止画のイラストや3DCG、アニメーション、ユーザーインターフェイス(UI)などのビジュアルすべてでしょうか?
基本的にはゲームの画面に表示されるもの、ビジュアルに関するものには一通り携わることが多いです。プロジェクトによってゲームの中身だけではなく、プロモーション映像やWebサイト、広告、リアルイベント、生放送といったゲーム外のクリエイティブに携わることもあります。
アートディレクターの領域は幅広く、一つの作品のすべてを1人でディレクションする場合がありますが、最近の大規模開発では扱うアセットの量が格段に増えたため、複数名が協力して完成させるケースもあります。
アートディレクターと一口にいっても、それぞれに得意分野が異なります。例えばグラフィックやビジュアル面に強い人もいれば、UIや操作感など体験の設計に強い人もいます。最近は、こういった異なる強みを持ったアートディレクターが連携しながら、より高いクオリティーを目指して一つの作品を作り上げることも増えてきました。
続いて、アートやクリエイティブ制作の体制について教えてください。
プロジェクトによって多少異なる部分もありますが、基本的にはアートディレクターの他に、イラストやUI、3Dなど各セクションの制作スタッフを統括するリーダー、実制作を担当するスタッフ、そしてスケジュール管理を担う制作管理のスタッフが集まってチームを結成します。
各セクションでは、リーダーが人員関連の業務プロセス管理や育成といったマネジメントを行うなど、かなり組織化が進んでいます。とはいえ、開発現場においては職種関係なく、密にコミュニケーションや連携を取る一つのプロジェクトチームの一員としてタイトルを作っていきます。

「サイゲームスはクオリティーへのこだわりが強い」という点は、多くのユーザーのみなさんも感じていると思います。アートディレクターとして、どのようにクオリティーを高めているのでしょうか?
先ほどお話ししたように、まずはアートのコンセプトを明確にすることを重視しています。最近では、数百人が参加して一つのタイトルを作り上げることも珍しくありません。そのような大規模な開発を進める中でクオリティーを高めていくには、メンバー全員が同じ目標に向かいながらそれぞれの強みを最大限に発揮できるように導くのが重要だと考えています。
例えば、タイトルごとに「ユーザーのみなさんにどんな体験をさせたいのか」「その体験をさせるために何を作るのか」を具体的に言語化し、方針として伝えています。
また、開発の過程では特にメンバーとこまめにコミュニケーションを取るようにしています。制作物を作っているときに積極的に対話すると、当初自分一人や周りのメンバーだけで想定していたものよりずっと面白いアイディアを、意外なところから提案してもらうことがあります。逆に、いざ作ってみると想定どおりにはならないことも頻繁に発生するんです。この場合も対話をしながら着地点を探り、素早く理想のかたちに近付けていきます。
クオリティーを上げるために「目標を明確にする」「対話をしながら精度を上げていく」。普段からこの二つの考え方を意識しながらアートディレクションをしています。

特別なことをするのではなく
「当たり前」を徹底的にやり抜く
アートディレクターを長く務めてきたタクムさんから見て、サイゲームスの特徴はどんなところにあると思いますか?
何か取り立てて変わったことをしているわけではありませんが、「やり抜く力」が強い会社だと思います。ユーザーのみなさんのために「これをやろう」と決めたら全員が手を抜かず、最後まで愚直にやり抜く。そんな会社だと思います。
例えば、『ウマ娘』は発表からリリースまでお時間をいただいてしまいましたが、メンバー全員が「絶対にリリースを諦めないし、最高の作品に仕上げる」という覚悟を持って開発に臨んでいました。
また、Cygames Magazineで何度も出ている「THE PROJECT(※)」も、やり抜く例の一つです。社内で「こうしよう」と決めて作られた行動規範を、みんな仕事の中で実践できるようにしています。そんな「やり抜く力」がサイゲームスの強みではないでしょうか。
※ THE PROJECT……サイゲームス社内で定めている、スタッフが日々実行すべき25項目の行動規範。社内の各フロアにポスターが掲示されている

タクムさん自身がゲームのアートディレクターとして大切にしていることはなんですか?
サイゲームスのアートディレクターはアートを作る仕事ではありますが、アート単体の質を上げるのではなく、ゲーム全体の質を上げるという目線で仕事をしています。
例えば、ゲーム内でどんなにすごいビジュアルが表示できたとしても、ロード時間が長かったり処理落ちをしてしまったりすると、プレイした際のゲーム体験に大きな影響を及ぼしてしまいます。
このようなデータのロードにまつわる処理はエンジニアリングの領域ではあります。しかし、アートチームとしても容量を工夫したりデータ保持の仕組みを提案したりするなど、職種の垣根を越えてエンジニアと一緒に改善を進めるようにしています。それは、我々の仕事はユーザーのみなさんに楽しんでいただいてこそ成り立つと考えているからです。
良いアートを作るのはもちろんですが、常にその先にいるユーザーのみなさんの目線に立ち、ゲームの“遊び心地”まで配慮する。アートディレクターとしてこれを大切にしています。

クオリティーへのこだわりとスピード感
開発業務の改善に取り組む
タクムさんがこれまでに関わってきたプロジェクトの中で、困難を乗り越えた印象深いエピソードがあれば教えてください。
どのタイトルも思い出深いですが、特に印象に残っているのは2022年に『プリコネR』のエイプリルフール施策として公開した新作ゲーム『プリコネ!グランドマスターズ』(※)です。
※ 『プリコネ!グランドマスターズ』……『プリンセスコネクト!Re:Dive』のエイプリルフール施策として2022年4月1日〜8日まで公開されたアプリ
エイプリルフール企画だったので4月1日のリリースを1日もずらせませんでしたが、期間限定で遊べるゲームとは思えないほどのボリュームを詰め込みました。3Dのキャラクターモデルは新規で58体分を制作し、数百点のモーション、フルボイスのストーリーパート、さらには歌付きのオープニングムービーやエンディングムービーと盛りだくさんにしたんです。
開発は東京本社だけではなく大阪サイゲームスやグループ会社のCysharp、国内外のパートナー会社さまにもご協力いただきながら、通常の『プリコネR』とは別のチームを編成して開発しました。
スケジュールはタイトでしたが、チーム内にはプリコネが大好きな開発者が非常に多く、メンバー全員が熱量高く開発していた姿が印象的な現場だったんですよね。そんな熱量の高いチームだったので、みんなから新たなアイディアや仕様のブラッシュアップ案がどんどん提案され、それがどんどん実装されていき、当初の想定を遥かに上回るボリュームになったのですが……(笑)。
大変でしたが無事にリリースされ、ユーザーのみなさんからも好評で達成感がありました。私自身『プリコネR』には立ち上げから参加していたため、大好きなIPの新作を出せたことはとても感慨深かったです。
スケジュールを守りながらクオリティーを高めるために、アートディレクターとして、専門役員としてどのようなことを意識していますか?
クオリティーとスケジュールのバランスについては、開発現場において、今まさにスピード感アップのための取り組みをしているところです。コンテンツの提供速度もクオリティーの一部だと考えていますので、より早く、より良いものをお届けできるよう現場では日々、試行錯誤と改善を繰り返しています。
アートディレクターとしてはコンセプトを明確化して着地点を定めることで全体の手戻りを減らしたり、開発状況に応じてワークフローの改善を推進したりしているところです。
また、昨今は作品の高クオリティー化が加速しており、それに伴い膨大なアセットをスピーディーに制作する必要があります。そのため、人員を確保するべくサイゲームスだけではなく、国内外のたくさんの協力会社さまに参加いただきながら一つのチームとして開発を進めています。
リリースまでお時間をいただくこともありますが、サイゲームスは1本1本のタイトルを大事にしながら、メンバー全員が「絶対に面白いものを届けたい」という気持ちで開発に臨んでいます。今後も、長く愛される最高のコンテンツを最高のタイミングで提供し続けていきたいと考えています。

続いて、チームビルドについて聞きます。育成やサポートをする上でどんなところに気を配っていますか?
ユーザーが求めているタイトルを作るという前提はありますが、その中でも「各チームやメンバーが持っている強みをしっかり出し切れるように導いていくこと」を意識しています。
例えば3Dに精通したメンバーが集まっているタイトルでは3Dを前面に押し出した演出を提案しますし、逆に2Dに強いメンバーが集まっている場合は2Dの良さを魅せる画面を作っていく……といった具合です。
プロジェクトごとに強みが異なる中で、メンバーそれぞれが持っている力を最大限に発揮できるよう、アートディレクターとして気を配りながら企画立案や画面づくりをしています。それと同時に、今までやってこなかった新しい表現にチャレンジしてもらったり、得意な技術にさらに磨きをかけてもらったりもしています。
個人の能力発揮と成長の結果がチーム全体の強みとなり、そこから新しい表現が生まれると考えています。
アートディレクターの知見共有や人材育成に関して、意識していることはありますか?
知見共有に関しては、アートを作るための具体的なテクニックや方法論を伝えることもあります。しかし、それよりもゲームを作る上での本質的な考え方や、会社が大事にしていることを優先して伝えています。
サイゲームスのアートディレクターは、ディレクションを通して会社の考え方を現場に展開していく立ち位置でもありますから、アートの推進力と同時に、時としてサイゲームスという会社の視点に立つことが求められるんです。
そのため、アートディレクターを育成する際には、アートにおける「考え方」を会社のビジョンやミッションステートメントと照らし合わせながら、チームメンバーに浸透させる役割を担ってもらうための取り組みをしています。各自が現場で「会社としてはこれを大事にしているから、こちらに舵を切ろう」と導けるようになることが目標です。
これにより、ユーザーのみなさんの期待を超えるような最高のアートをお届けできると考えています。
世界中へ最高のコンテンツをお届けしたい
今後の展望とメッセージ
専門役員として、グローバル展開なども含めたサイゲームスの中長期的な展望やビジョンを教えてください。
我々は「最高のコンテンツを作る会社」をビジョンとして掲げており、一人でも多くの方々に「最高」と思っていただけるものを届けたいと考えています。
まずはサイゲームスのタイトルを楽しんでいただいている国内外のユーザーのみなさんに、これまで以上に面白いと思ってもらえるコンテンツを提供していくこと。それに加えて、まだサイゲームスのタイトルを遊んだことがない方や、サイゲームスのことを知らない海外の方にも興味を持ってもらえるよう、グローバル展開に対応した開発に力を入れて取り組んでいます。
国内拠点の部署間連携を強化するだけでなく、世界中にあるサイゲームスの各拠点と協力しながら様々な準備を進めているところです。
グローバル展開において、開発として何が必要と考えますか?
言語やデバイスの違いによって体験が損なわれることのないように、徹底的にチューニングを行っていくことが大切だと考えています。
国や地域による言語の違いはもちろん、普及しているデバイスも異なりますし、ライフスタイルやゲームの遊ばれ方も異なります。
我々開発としては、どの言語、デバイスであっても、なるべく等しく快適なプレイ感を提供することによって、ユーザーのみなさんの選択肢を広げていきたいと考えています。
そのため、現在は多言語対応やマルチプラットフォーム対応を前提とした設計や開発に取り組んでいます。

最後に、サイゲームスのユーザーのみなさんに意気込みやメッセージをお願いします。
サイゲームスでは今後も様々なタイトルのリリースを予定しています。
いずれのタイトルも、10年、20年、30年……それ以上長い間愛されるようなタイトル、キャラクターを目指して、スタッフ一同が日々の開発に励んでいます。
運用中のタイトルでは10年以上続いているタイトルもありますし、”Shadowverse”のように新たな展開として新作がリリースされるタイトルもあります。
みなさんに楽しんでいただける最高のコンテンツを提供し続けられるように尽力していきますので、ぜひ今後のタイトルにもご期待ください。

以上、専門役員によるサイゲームスのアートディレクションについてのご紹介でした。
今後のサイゲ―ムスの作品にご期待ください。