「コンテンツ力」の強い作品が受賞!「サイゲームス クリエイティブコンテスト2024」結果発表 「大賞」「部門賞」編

サイゲームスは2024年9月~11月に、学生を対象とした「サイゲームス クリエイティブコンテスト2024」を開催しました。このコンテストは次世代クリエイターの発掘・育成を目的として、2020年から毎年開催しています。
2024年度も「キャライラスト部門」「背景イラスト部門」「3DCG部門」「ゲームコンテンツ部門」「広告・映像・衣装デザイン部門」「高校生部門」の6部門で作品を募集。多彩な作品群の中から大賞に輝いたのは、ペンネーム・おトマさんの作品です。
サイマガでは、コンテストの受賞作を2回に分けてご紹介。前編となる本記事では「大賞」「部門賞」に輝いた作品を講評と共にお伝えします。
決め手は「コンテンツ力」
世界観を感じさせる作品が受賞
「サイゲームス クリエイティブコンテスト2024(以下、クリコン)」は、Cygames 佐賀スタジオが設立された2020年に、次世代クリエイターの育成に向けた施策を行いたいという想いのもとに始まりました。現在はサイゲームスの東京、大阪、佐賀の3拠点合同で開催しています。参加者は毎年増え続けており、今年の応募数は3500点以上。ゲーム系デザイン分野におけるアジア最大規模(※)のコンテストへと成長しました。
※1社提供によるゲーム系デザイン一般の公募コンテストにおいて(当社調べ)
多数の応募の中から、世界観が明確で強いコンテンツ力がある作品が賞を獲得した2024年のコンテスト。前編では、コンテストの運営チームを代表するスタッフ2名に、大賞および六つの部門賞に輝いた受賞作の講評やコンテストの振り返りを聞きました。後編では「審査員賞」「学校賞」についてご紹介します。ぜひあわせてご覧ください。
- サイゲームス 執行役員 デザイナー本部 本部長トシユキ
- DTPを扱う制作会社にて営業職を経験。その後、イラストを独学し、ゲーム制作会社や映像制作会社にてイラスト、UI、ドット、アニメーション、3DCGなどの制作、ディレクション業務やリーダー職の経験を積み、サイゲームスに合流する。2014年より現職。
- デザイン制作室・Webクリエイティブ室 マネージャーマコト
- Web制作会社にてWebプロデューサー・ディレクターとしてのキャリアを経て、サイゲームスには2013年に合流。広告制作を担うデザイン制作室のマネージャーを務める。Web・広告制作の他、イベントの企画制作にも携わり、2023年から「サイゲームスクリエイティブコンテスト」の運営にも参加。
大賞

ペンネーム:おトマさん
未踏の地を探索する調査隊に所属する、地図職人見習いの女の子たちのイラストです。
2人は主に地形や環境を地図に記録する役割を担っています。
空を飛ぶ機械が存在しない世界観のため、人間に友好的な鳥型モンスターと協力し、空からの探索を行っています。
そして作られた地図は、調査隊の探索部隊の手にわたり、これから始まる本格的な探索の基盤になることになります。
『調査の始まり』は、キャライラスト部門から大賞として選ばれました。この作品の講評をお願いします。
マコト これは満場一致で決まりました。最終審査で全員が推した作品です。物語を想像させる作品で巧みであるだけでなく、コンテンツとしての力強さを備えている作品だと感じました。
トシユキ コンテンツとして力強い作品とは、作品自体に拡張性や発展性があり、見る人の心に強く訴えかけ、記憶に残る要素を持っているものだと考えています。
今回のコンテストは審査に際して特にテーマや方向性を定めていたわけではありませんが、結果的にはきっちりとした世界観を感じさせる作品が大賞に選ばれました。『調査の始まり』はモチーフ単体の魅力だけでなく、世界観や作品の奥行き、ここからさらに派生的なストーリーやキャラクターが生まれるような可能性を感じさせる作品です。見る人の想像力を刺激し、その先にある物語を自然と思い描かせる「コンテンツ力」がある作品だと思いました。
マコト 実は、1次審査から見ている中で「今回の大賞はこれになるのでは」と思っていました。最終審査で全員がこれを指したのはさすがに驚きましたけど、「やっぱりこの作品だよね」という納得感はありました。作者が見せたい世界を、きちんとした表現力で描いている作品だと思います。
トシユキ そうですね。全部門を俯瞰して見た中で、頭一つ抜けていたと思います。完成度が高いのはもちろん、キャラクターも魅力的だし、大胆な構図を用いながらも、作品としてしっかりと成立させています。
キャライラスト部門賞


ペンネーム:楓さん
全体としてはLP(ランディングページ)風に制作しました。
主にストーリー・キャラクター紹介・天使としての仕事(登場人物たちの行動)の3部構成で、世界観の紹介をしつつ「ゲームの紹介ページ」を意識して制作しました。
「アメリカの警察がドーナツをよく食べる」イメージから、モチーフを警察→警察犬→警察犬になった犬種とドーナツに、キャラクター自体は天使イメージにすることで天使の特徴であるヘイローと羽等に犬モチーフを散りばめました。全体のデザインもキャラクター同様、ドーナツの要素を散りばめました。2枚目はキャラクターデザインについてのメイキング、補足資料です。
※ドーナツが「dognuts」表記なのは意図的にしています。
『DOGNUTS AND ANGELS(ドーナツアンドエンジェルズ)』はどのような点を評価しましたか?
マコト キャラクターの設定や周辺情報までを一連の流れで見せています。各キャラクターを個別に紹介するのではなく、それぞれの繋がりや関係性が見えてくるような表現をしていて面白いですね。世界観を効果的に伝えている点が非常に魅力的な作品です。
トシユキ 天使のキャラクターで、「天使の輪」がドーナツになっているんですよ。ドーナツに合わせてキャラクターを構築しているところに独自性があり、「おっ」と目を引く。審査の中でも目立っていました。
マコト キャラクターそのものの魅力に加えて、アプローチの斬新さが評価された面はあるかもしれませんね。キャラクターだけ取り出して描いていたら、もう少し弱い印象で終わったかもしれないですが、一連の流れの中で見せることで背景にいろんなストーリーがあるように感じました。この作品には、すべてのキャラクターにドーナツをもぐもぐしているカットが必ずあるんですよね。食べる表情にそれぞれのキャラクターの性格が出ています。
トシユキ そういうところも面白いですよね。キャラクターって、立っているだけの絵だと魅力を伝えにくいんです。仕草や表情、何かのシチュエーションにおけるポーズなどを描くことで、そのキャラクターの性格や考え方が見えてきます。キャラクターの魅力をどう見せるかという部分で、本作は効果的な見せ方をしていたと思います。
また、老若男女を幅広く描いているため、物語に深みが出ています。様々な登場人物がいて世界観が伝わりやすく、コンテンツ力がある作品だと思いました。
背景イラスト部門賞

ペンネーム:Zonさん
充満するソースの熱気、近づいては遠ざかる笛囃子、彼方にきらめく大輪の花。
いつまでもここにいたいけど、いつかは抜け出さなくてはいけない。和服を着た少女に導かれ、終わらない夏祭りの出口を探すのだ。
『夏の果て』についての講評をお願いします。
トシユキ 荒削りな部分はありつつも、魅力がギュッと詰まった作品です。ダンジョンものみたいな、いろんなものが組み合わさって混沌とした迷宮の中を探索している雰囲気。そういう世界のイメージの切り出し方に魅力がある作品だと思いました。浮き輪や扇風機といった夏の定番の小道具に混じって、なぜかだるまが描かれていることで、この世界がちょっと異質な場所だと感じさせます。
マコト 夏の夜の雰囲気を感じさせるこの作品は、パッと見は日常風景のように思えて、実は非現実であるところが面白いですね。魚眼レンズで見たような画角になっているのも効果的で、普通の画角で描いていたらこの込み入った感じは出なかったかもしれません。
トシユキ そうですね。ただ、欲を言えばもう少し奥まで表現してほしい気はしました。例えばですが、建物から何か巨大なものが飛び出てシルエットを崩してくれたりすると、もっと雰囲気が出たんじゃないかと。まだまだ伸びしろがある作品だと感じます。
マコト 混沌としたオブジェクトの組み合わせで、非日常に迷い込んでしまった感じを演出していて、若干の違和感を含んでいるところが魅力に繋がったのかなと思います。
その違和感があるからこそ、異界の夏に迷い込んだ感じが出たのかもしれませんね。
3DCG部門賞

ペンネーム:fumiyaさん
創作に挫折している小説家の主人公が書斎でうなだれている作品です。作品を観る人がキャラの不安定な心情を感じ取れるように、モデルのレイアウト、画の色味、カメラの画角、コンポジットなど各工程に細部までこだわりました。
『創作の断片』ついて、評価ポイントを教えてください。
トシユキ 全体的にトーンが暗い作品ですが、目を凝らすと倒れた本棚と散らばる本のようなものがあります。奥には主人公と思われるキャラクターがいて、周りの雰囲気から、悲壮感や絶望感、創作が上手くいかなかったのか当たり散らした様子がうかがえます。ただ、不穏な空気みたいなものがありながら、廊下からほのかに明るい暖色のライトが差し込んできていて、絶望の中にも希望が残るような。ものづくりの葛藤みたいなものが表現されていると思いました。
マコト 物語を想像させる作品ですよね。巧さだけではなくて明確で魅力的な世界観や人を引き付ける力があり、この画面の中で色々なことが起こっていると感じさせるところが評価されました。技術的に優れた作品は他にもありましたが、この作品にはそれだけではない強さがあります。
トシユキ 3D作品はその性質上、一見すると綺麗にまとまっていてクオリティーが高い印象になりやすいんですよね。我々クリエイターは、ツールを使いこなすことよりも「誰に何を届けるか」が大事です。それを踏まえると、この作品は見る人に届けるものが明確でした。画角、カット割り、物の置き方などが周到に計算されていて、奥の人物に目を引かれながらも、周りのシチュエーションも目に入るように設計されています。この1枚だけでも物語を見せる絵の力強さを感じました。
マコト 今年の3DCGは、いかにもCGらしいSFチックな作品と、日常の風景の延長線上のような作品の、大きく2パターンに分かれた印象ですね。本作のようにトーンが暗めの作品も多かったです。
3Dで絵を描くことを目的にするのではなく、表現手段として巧く3Dを使っているかどうかで受賞の明暗が分かれたと思います。評価された本作は、「頑張って描いた」「良いものが描けた」を超えて、訴えかけるものがありましたね。
ゲームコンテンツ部門賞


ペンネーム:じろうさんさん
この度は部門賞を賜り、大変光栄に存じます。本作品は、人間が無意識のうちにかけている「見ているつもり」のフィルターを外したとき、身の回りでは何が起きているのかを想像して制作いたしました。気づかないうちに日常に溶け込んでいる「じろうさん」を、ぜひ探してみてください。
作品URL:https://jiro.hungry.jp/jirosancollection/index.html
『じろうさんコレクション』はどのような点を評価しましたか?
トシユキ これは難しいことを考えずにそのまま見て触って楽しめばいい作品です。他の応募作品がいわゆるゲームらしい作りを意識したものが多かった中で、この作品は異質でした。
ゲームコンテンツ部門は企画書の形式でも応募可能なのですが、今回はゲームとしてプレイできる作品が多くて、実際に良くできていると感じる作品もありました。ただ、サイゲームスのクリエイティブコンテストではいわゆるゲームのコンテストとは違う視点で見ていて、ゲームとして楽しいだけでなく、さらにそこにワクワク感とかインパクトとか、何か光るものがほしいと思っています。その意味では、本作が入賞するところがこのコンテストの特殊性を表しているのかもしれません。
マコト この作品はバランスが良かったというのもあるかもしれないですね。他の応募作品もかなり遊べるものはありましたが、本作はインタラクションにフォーカスして、触って楽しめるという端的なわかりやすさ、キャラクターのキャッチーさ、不可思議な世界観が上手く融合して一つのコンテンツになっていて、完成度の高さが光っています。
信号機とかスイッチとかお店の券売機とか、日常にあるものに「じろうさんは潜んでいるんだよ」って言われているみたいですよね。ついついリアルでも、スイッチを押した瞬間にじろうさんが出てくるんじゃないかって想像してしまう。そういう魅力にあふれた作品です。
広告・映像・衣装デザイン部門賞


ペンネーム:髙橋さん
この衣装は、「蘇生」をテーマに制作しました。私は「蘇生」について、困難や苦難の中で努力を重ね、それを乗り越えることで自分自身が変化し成長していく姿と考えました。
「蘇生」という過程は、自己の成長に留まらず、他者の苦しみを理解する心を育むとともに、その挑戦する姿勢が周囲に勇気や希望を与えるものだと考えています。
努力や忍耐力といった自己への厳しさは、羽の鎧で表現し、他者への共感や希望の灯火を象徴する優しさは、柔らかなシルエットで表現しています。このデザインで、「蘇生」を経て強さと優しさを合わせ持った姿を表現しました。
『凛凛』の講評をお願いします。衣装作品が受賞したのは今回が初めてですね。
トシユキ そうですね。本作は翼をモチーフにした赤いドレスです。シルエットもドレープの具合もきれいですし、とてもファンタジー感のある作品ですね。
マコト 非常に雰囲気のある衣装ですよね。この部門全体としては映像作品の応募が多かったんですが、そういった競合と比べても強い印象を残す作品でした。衣装については服飾関連の学校からの応募が多数を占めており、本作はその中でも完成度が非常に高かったですね。
トシユキ 現代ものでもファンタジーものでも、ゲームの世界観を作り込むとなったら、その服を着るキャラクターはどんな文化の中でどういう生活をしているのか、しっかりイメージする必要があります。どこでどんな生き方をしているかによって身に着けるものや必要な機能も異なり、それを考えるのもデザインの仕事です。やはり専門的にファッション分野を学んできた方は、知識面でのバックグラウンドがあるし、時代考証もきちんとできる。
そうすると、「こういう理由だからこのデザインなんです」と説得力のある提案ができるし、クオリティーの高い衣装を作れるんですよね。服飾デザイナーとして現実の服を作るだけでなく、ゲーム内の衣装を作る仕事もありますので、ゲームが好きであれば将来その道を目指すことも考えてもらえたらと思っています。
マコト ゲームの世界のような架空の話の中にもリアリティーや実在感は必要ですからね。服飾の歴史や様々な文化の衣装を学んで、アレンジしてゲームの世界に持ち込むわけで、専門知識の有無が作品のクオリティーに大きな影響を与えます。
今はコスプレ衣装も非常に進化していて、見た目だけでなくきちんと動けるものとして考えて作る人も珍しくありません。衣装作品の応募も年々増えてきている中で、本作は機能面を押さえつつ、ファッション性と異質さを組み合わせた意欲的な作品だと思いました。
高校生部門賞

ペンネーム:バチオさん
「麻辣ロード」は主人公「ラン」が世界で一番美味しいと言う噂のマーラータンを食べるためにマーラータンの材料を守る守護者たちを倒して、材料を集める旅を描いたアクション・料理アニメーションです。
キャラクターたちには全てモチーフがあります。主人公「ラン」はマーラがモチーフです。店長は蛇がモチーフで、守護者たちは彼らが守る材料がモチーフです。戦い方も材料の形や味を参考にして構想しました。背景、服、建物など全体的なデザインは中華風です。
「麻辣ロード」は歌のリズムに合わせて演出を作ったので、3分と言うかなり長い時間にもかかわらず軽く見られるように作りました。そして戦闘パートと料理パートが分かれているので、二つの楽しみを感じることができます。
最後は、高校生部門賞を獲得した作品『麻辣ロード』です。「アクション料理アニメ」という一風変わった作品ですが、どのような点を評価しましたか?
トシユキ これだけのものを一人で作りきる熱量の大きさと執念ですね。これを「高校生が一人で作るなんて」という驚きを持って、審査員一同が推した作品です。
絵の中にしっかりとスピード感や重みがあるんですよ。そういう表現はけっこう難しいんですが、手描きのアニメーションでそれをしっかりと表現してきたところに相当なレベルの高さを感じました。
マコト 3分強の尺の中で自分が作りたいものを作りきったのが、率直にすごいなと思いました。物語がきっちりとまとまっていて、カット割りや緩急の付け方も上手いですし。導入部分を丁寧に描いたかと思うと途中はすごく省略されていて、テンポや抑制の利かせ方が見事です。非常に考え抜かれたんだろうなと感じました。
トシユキ これは韓国の高校生の作品なんですよね。海外からのハイレベルな作品が年々増えている中で、本作はその象徴のような作品でもあります。高校生の方々は全体的に、テクニックはあっても「何を伝えたいのか」の部分がまだ弱い人が多い中、きれいな絵を描くことだけに満足しない、執念ともいえる力の入れ方を感じました。
マコト 高校生部門は他の部門と異なり、この部門に作品を応募してもらうのではなく、全部門のエントリーの中から高校生の方の作品を見て選んでいます。本作はその中でも図抜けて完成度が高かったですね。「高校生」という枠を外しても、映像としてクオリティーの高い作品だと思います。
表彰式が開催されました
受賞者のみなさんをお招きして表彰式を開催しました。
表彰式後には社内見学ツアーと歓談の時間が設けられ、社内スタッフと受賞者同志の交流がありました。


あらためて、受賞したみなさま、おめでとうございます!
以上、「大賞」「部門賞」作品と表彰式の様子をご紹介しました。
「審査員賞」「学校賞」の作品はこちらの記事でご紹介しておりますので、ぜひご覧ください!