世界で活躍する次世代クリエイターを育てる CTO芦原が「東京理科大学」客員教授に就任
2026年4月1日、サイゲームスCTO・芦原が、東京理科大学に新設される「創域情報学部」の客員教授に就任。同時に、Cygames Research所長・倉林と共同で「先端ニューラルモデル研究室」を立ち上げました。今回サイマガでは、客員教授への就任の経緯や研究内容、そして自らが教壇に立ち次世代クリエイターの育成に注力する想いについて、芦原に聞きました。
- CTO(最高技術責任者)芦原 栄登士

- 東京理科大学ではプログラミング言語を学び、コンパイラ(※)を作る研究をする。その後、ゲーム会社に入社し日本のインターネット黎明期からネットゲームづくりに携わる。業務と並行して筑波大学に通い、MBAを取得。ゲーム会社数社を経て、2012年にサイゲームスのCTOに就任した。クライアントからサーバー、インフラ、マネジメントまで幅広く責任者を務める。
※ コンパイラ……プログラミング言語で書かれたソースコードを、コンピュータがわかる形式に変換するソフトウェア
講義から研究へ
東京理科大学とのこれまでの歩み
東京理科大学の客員教授に就任した背景を教えてください。
これまで東京理科大学とは、2020年から2022年までの「DX特論」、そして2024年・2025年の「ゲーム開発学特論」といった講義を通じて関わってきました。そうした取り組みを重ねる中で、単発の講義というかたちにとどまらず、研究・育成まで含めた連携を深められないかという話が進み、今回の教授就任と研究室の設立に至りました。
これまでどんな講義を実施してきたか教えてください。
東京理科大学での最初の講義は「DX特論」でした。オムニバス形式の講義で、自社のサーバーシステムや内製ゲームエンジン「Cyllista Game Engine」など、開発効率をアップさせるための取り組みを紹介しました。
※ デジタルトランスフォーメーション(DX)……デジタル技術を活用して商品や業務プロセス、生活様式などを変革すること
その後、寄附講座として「ゲーム開発学特論」を立ち上げました。全14回の講義で、計算機科学からゲームエンジン、ネットワーク、データベース、CGなど、ゲーム開発の全体像を体系的に学べる構成です。
この構成にした理由は、ゲーム会社の知見を体系化し、学問として教育現場に浸透させたいと考えたからです。そこで、現場の最新知見を整理・体系化し、実務で活用している私を含む現役クリエイター(マネージャー層)が中心となって講義を担当しました。一部の回では外部講師も招き、多角的な視点を取り入れています。
■「ゲーム開発学特論」概要
全14回構成。概論・講義本編・グループワークと成果発表で構成され、各回で実習を実施。
【主なテーマ】
・計算機科学とゲームハードウェア
・ゲームエンジン・アーキテクチャ
・ネットワークゲームと分散コンピューティング
・クライアントサイド開発とインタラクション
・データベース管理システム
・チーム開発手法
・コンピュータグラフィックス
「ゲーム開発学特論」の実習ではグループワークを重視していたと聞きました。
はい。社会に出ると、ものづくりは基本的にチームで行われますので、学生のうちにその経験をしてほしいと考えたのです。そのため実習では、チームで協力しながら段階的に開発を進める構成にしました。
具体的には、自由にカスタムできるゲームを用意し、各回のテーマに応じて「このゲームにこういう機能を付けてください」「次回はこの機能を」と段階的に進み、最終的にはネットワーク対戦まで実装する、というものです。受講生にはコミュニケーションツールを使用してもらい、私たち講師陣もそのやり取りを見守り、チーム内のメンバーが役割分担や協力をしているかなどを評価していました。
また、役割分担や作業の状況を客観的に把握するため、開発に利用した「GitHub(※)」のログも提出してもらいました。そこに記録された作業履歴をもとに、各学生がどの部分にどのように関わったかを確認し、成績評価の参考としたのです。こうした実務に近いかたちで評価を行う取り組みは、「現場の最新知見を整理・体系化する」という特色が表れていたと思います。
※ GitHub……ソフトウェア開発のためのプラットフォーム。複数の開発者が共同でコードを管理・共有でき、作成や変更の履歴を記録できるため、誰がどの作業を行ったかを把握しやすい
講義を通じて、技術だけでなく「協働の大切さ」を理解してもらう、こうした事柄も教育現場で伝えるべきことの一つだと捉えています。

CTOが教育の現場に立つ理由
なぜ大学教育に力を入れるのですか?
講義を行う傍ら、高度な技術の集合体である「ゲーム」を、大学で研究分野として扱う機会を増やしていきたいと考えていました。日本発のソフトウェアの中でもゲームは海外で評価されている分野の一つですが、体系的に学べる機会が限られている現状があります。ゲームは娯楽として親しまれる一方で、学問や研究の対象としては、まだ十分に位置づけられていない面もあると感じています。
しかし、ゲームは人々を楽しませ精神的な充足をもたらす可能性があり、コミュニティーの形成や人と人とのコミュニケーションを促進する役割も担っています。娯楽でありながらも、ゲームを生活に欠かせないものとして捉えている人も多いのではないでしょうか。
エンターテインメント・クリエイティブ産業としての価値も高まっています。中でもコンテンツ産業は今後も世界的に中長期的な成長が見込まれており、「ゲーム」は成長させていくべき重要な産業だと捉えています。ゲームは研究に値する分野であり、ゲーム開発者を志すことは社会的に価値のある意義深い挑戦であることを直接伝えるために、こうした取り組みを続けてきました。
※ エンタメ・クリエイティブ産業戦略 ~コンテンツ産業の海外売上高20兆円に向けた5ヵ年アクションプラン~, 経済産業省(2025年7月1日)
新たに設立される「先端ニューラルモデル研究室」では、どのような研究・教育を行う予定でしょうか。
「先端ニューラルモデル研究室」は、2026年4月、東京理科大学に新設される「創域情報学部」に所属する研究室です。新設学部のため、2026年4月に第1期生を迎えます。研究室への本格的な配属は3年生以降となる見込みですが、当面は前身である「創域理工学部」の3・4年生も受け入れる予定です。
研究室では、データ解析や予測を行うモデルの設計と、その効率的な運用手法の研究に取り組みます。研究テーマとしては、NPC(※)の自律的な振る舞いの設計や、プレイデータの解析を通じたゲームバランスの最適化などを想定しています。学生が自ら設計・実装に挑戦できるよう、実践的な技術力の習得を重視した指導を行っていきます。
※ NPC……ノンプレイヤーキャラクター(Non Player Character)の略。ゲームにおいて、プレイヤーが操作しないキャラクターを指す
芦原さん自身は、どのように関わる予定ですか?
ゲーム開発の技術を現場で積み重ねてきた経験と、サイゲームスのCTOとして事業や組織を見てきた視点の両方を、講義や研究に活かしたいと考えています。
これからの時代は技術の専門性を高めるだけでなく、それをどう事業に繋げ、社会に届けていくのか。そうした両面を考えられる力がより重要になると思います。テクノロジーが進化する中で、技術とビジネスを横断できる次世代クリエイターの育成に、橋渡し役として関わっていきたいですね。

次世代クリエイター育成の先に描く未来
ゲームを研究分野としてさらに発展させていく取り組みについて、長期的にどのような変化を生み出したいと考えていますか?
現在は、開発現場で磨かれてきた専門性や経験が十分に体系化されているとはいえません。ゲーム開発に携わる企業が自らの知見を整理し、教育や研究の中で共有し続けることが、業界の持続的な発展に欠かせないと感じています。
サイゲームスでは知見を蓄積し、共有可能な資産として活かす取り組みを進めています。より多くの方が高い水準でクリエイティブな挑戦に取り組めるようにすることが目的です。ゲーム業界の技術交流会「CEDEC」といった社外のカンファレンスにも積極的に参加しています。こうした取り組みの積み重ねが、産業全体の基盤を強め、世界で活躍するクリエイターの育成へと繋がっていくと考えています。
教育現場において、サイゲームスはどのような存在でありたいと考えていますか?
企業が良いゲームを生み出すために技術力を高め、強い組織を築いていくことはもちろん重要です。一方で、大学においてゲーム研究がさらに進み、新しい技術が生まれ、クリエイターが育っていけば、日本のゲーム業界はより一層活気づいていくと考えています。
サイゲームスのビジョンは「最高のコンテンツを作る会社」です。最高のコンテンツで世界中の人たちを楽しませたいという想いのもと、日々開発や組織力の向上に取り組んでいます。私自身の取り組みも、現場で培った知見を次世代へ還元していく試みの一つです。教育や研究との連携を通じて、ゲーム業界全体の発展に貢献できる存在でありたいと思っています。


最後に、次世代を担うクリエイターへメッセージをお願いします。
学生のみなさんには、現時点のスキル以上に、情熱や気概を大切にしてほしいと思っています。困難に直面したときにどう向き合うか、自分は何を成し遂げたいのかという姿勢が、将来の可能性を広げていきます。コンテンツでも、テクノロジーでも、事業づくりでもかまいません。大切なのは、自分の強みを活かして誰かの役に立ちたい、世界に良い影響を与えたいという想いです。自分の得意分野を軸に、世の中を少しでも前向きにできる挑戦をしてほしい。その仲間が増えていくことを願っています。

以上、東京理科大学への客員教授への就任、ならびに研究室の立ち上げに関する芦原へのインタビューをお届けしました。
サイゲームスは今後も、コンテンツ産業の未来を担う次世代クリエイターの育成に取り組んでまいります。研究・教育を通じた新たな挑戦にも、ぜひご注目ください。
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