サイゲームスがお届けしているのは、ゲームだけではありません。 マンガ配信サービス 「サイコミ」にて、数々の作品を連載しています。サイゲームスマガジンの新連載「ヨミコミ!サイコミ」では、「サイコミ」編集部がおすすめするマンガの魅力に迫ります。
第1回は、「次にくるマンガ大賞2020」のWebマンガ部門にノミネートされた『明日、私は誰かのカノジョ(以下、明日カノ)』と『異世界美少女受肉おじさんと』をご紹介します。前編は、『明日カノ』の編集担当者に作品の見どころを聞きました 。

【あらすじ】
「1週間に1回、私は【誰か】の彼女になる」。彼女代行として日々お金を稼ぐ女子大生と彼女に魅せられた男たちの、恋愛のリアルを描くビターラブストーリー。彼女代行をする雪を中心にすえつつ、第1章「彼女代行」、第2章「パパ活」、第3章「整形」、そして現在(2020年9月時点)連載中の第4章「ホスト」編と、“今”の女性にまつわるさまざまなことに焦点を当てて物語を紡いでいく群像劇となっている。

リアルな描写は
実体験と取材がベース

この企画はどのように立ち上がったのでしょうか?

作者の、をのひなおさんが「お金の絡んだドロドロした恋愛ものが得意です」ということで、どんな作品にするか色々話し合う中で、「レンタル彼女」をテーマにしようと決めました。
ネーム(※)の第1稿をいただいて最初のページを見たときに「これはウケるぞ!」という確信がありましたね。主人公の雪のセリフが、共感できるなと思いました。

※コマ割りやセリフ、人物の配置などを大まかに描いたもの

▲冒頭のシーン

印象に残っているシーンはどこですか?

たくさんありますが、第1章であれば、雪が客である壮太と群馬県の伊香保温泉へ旅行に行くところです。旅先でロープウェイも美術館も牧場も全部休館だったという話、全部実話なんですよ(笑)。をのさんと取材に行ったとき、冬場だからどこも閉まっていて、作中にそのまま使いました。伊香保のシーンの描写はすべて、取材先で撮った写真を基にリアルに描いています。

いつも作者さんと一緒に取材しているのでしょうか?

一緒のときも別々のときもあります。第2章はマッチングアプリが出てくるので自分でも色々試しましたし、第4章はホストクラブが出てくるので、抵抗感はありましたが行ってきました。第4章の主人公の萌が初めてホストクラブに行って、「どうしよう。全然楽しくないんだけど……」というセリフがあるのですが、あの気持ちは自分たちが実際に味わったから描けたのだと思いますね。
とにかくこの作品は、ほぼすべてのシーンが実体験か取材に基づいているので、読者のみなさんにもリアルさを感じていただけているとうれしいです。

描いているのは
等身大の女性の“今”

作者さんとどんなやり取りをしながらストーリーを作っていくのですか?

第1章は「レンタル彼女」をテーマに話を進めていって、第2章からは先に結末をなんとなく考えてから中身を詰めていっています。第3章は海でアヤナと雪が2人で話すシーンで終わろうと初めから決めていて、「その結末にたどり着くにはどうしたらいいだろう?」と想像を膨らませていきました。あとはラストに行き着くまでのキャラクターの動きや感情がリアルかどうかも重要視しています。

▲第3章のラストでアヤナ(右)と雪が海に行くシーン

章ごとにメインキャラクターが変わる群像劇にしようというのは、最初から決めていましたか?

ずっと雪をメインでいこうとも思っていなかったのですが……第1章がきれいにまとまって終わるので、困ったなと思いました(笑)。週刊連載って毎回、次の話をどうするかで精一杯なので、自分たちにも先が読めなかったですね。
結果的に群像劇になりましたが、メインキャラクターは変わっても、あくまで雪という漫画全体の主人公は他の章でも絡んでくるようにしています。

章ごとに変わるメインキャラクターやテーマをどのように選んでいるのでしょうか?

例えば、第2章は雪の友人のリナが主人公です。第1章でリナが出てきた段階で次はこの子をメインにしようと考えていたのですが、第3章と第4章は誰にするか迷いました。それでこれまでの話を見返して、テーマと照らし合わせて決めましたね。

テーマに関して言うと、ハッピーエンドがをのさんも私も好きじゃないんですよ。幸せな結末で終わるということは、そこで物語が完結してしまうということでもあると考えているので。この作品は現代の等身大の女の子たちをリアルに描いているわけで、本来であれば章が完結しても彼女たちの人生はずっと続いていきます。だから「こういう現実がある」と今をありのままに描くことで、マンガで描いた先にも彼女たちの人生が続いていくのだと感じていただけるように作っています。

テーマについて、美醜にまつわる心理描写が細かいですよね。

よくそう言われますが、実はこの作品では、美醜にまつわる話を通しで描いているわけではないんですよ。確かに整形を扱った第3章は美醜が絡んできますが、第1章も第2章もテーマは別のものを置いています。

第2章のマッチングアプリやパパ活をするリナは「承認欲求」、第4章の萌は「モブキャラで主人公になれない私」というテーマで描いています。雪は超越的というか、かなり精神的に強い存在なので特殊ですけど、他の女の子はどこかに心の隙間があるという点では共通しています。

▲リナの承認欲求が描かれるシーン
▲萌が平凡な自分に悩むシーン

また雪がメインの話もあるのでしょうか?今後の展開を教えてください。

もちろん再び雪がメインになる話も考えています。とにかく非現実的な要素をあまり入れずに現代を描いてきたので、連載中の第4章は新型コロナウイルス感染症の影響で登場人物がマスクをしていますし、これから萌がホストクラブにハマっていくかどうかも彼女の気持ちに嘘のないように描いていきたいと思っています。

最後に、読者の方にメッセージをお願いします。

とにかく今をありのままに描くことに徹しているので、今後もリアルな描写にご期待ください。また、いろんなところに“仕掛け”があるので読み込んでいただきたいです。例えば作中に登場する化粧品はモデルがあるので、何のブランドか好きな方が見たらわかるようになっていますし、サブキャラだと思っていた人物が物語に深く絡んでいくこともあり得ます。他にも洋服や小道具の描写にも力を入れているので、細かいところまで見ていただけるとうれしいです。

あと、をのさんとよく話すのですが、この作品のもう1つの見どころは「おじさんたちの造形」です(笑)。1章につき1人はクセの強いおじさんが必ず出てきます。若い女性向けのマンガではありますが、男性が女性からどう見られているかというのもしっかり描いているので、女心を知りたい男性にも読んでいただきたいです!

『明日、私は誰かのカノジョ』

後編は、モテないおじさんが異世界に転移して美少女になる異色ファンタジー『異世界美少女受肉おじさんと』をご紹介します。

▼第1回後編はこちら
モテないおじさんが異世界転移したら美少女に!?『異世界美少女受肉おじさんと』【ヨミコミ!サイコミ Vol.1(後編)】