モテないおじさんが異世界転移したら美少女に!?『異世界美少女受肉おじさんと』(ファ美肉おじさん)【ヨミコミ!サイコミ Vol.1(後編)】

サイゲームスがお届けしているのは、ゲームだけではありません。マンガ配信サービス「サイコミ」にて、数々の作品を連載しています。サイゲームスマガジンの新連載「ヨミコミ!サイコミ」では、「サイコミ」編集部がおすすめするマンガの魅力に迫ります。
第1回は、「次にくるマンガ大賞2020」のWebマンガ部門にノミネートされた『明日、私は誰かのカノジョ』と『異世界(ファンタジー)美少女受肉おじさんと(以下、ファ美肉おじさん)』をご紹介します。後編は、『ファ美肉』の編集担当者に作品の見どころを聞きました。

【あらすじ】
おじさんが異世界転移で理想の美少女に!?モテないと嘆く会社員・橘日向(32)が、合コン帰りに突如現れた全裸の女神様の手によって異世界転移!しかし女神様のイタズラか、転移後の肉体は金髪美少女になっていた……。
男の姿に戻るため、共に異世界に転移した高身長イケメンの幼馴染・神宮寺司(32)と魔王を倒す旅に出るが、橘は頼りがいのある神宮寺に、神宮寺は絶世の美女となった橘に惹かれそうになってしまう。異世界モノに一石を投じる、おっさんと元おっさんによる狂気のトランスセクシャルラブコメディー。

奇抜なアイディアは言葉遊びから誕生
王道の斜め上を行くファンタジー

この企画はどのように立ち上がったのでしょうか?

まず作者の池澤真さん(絵)、津留崎優さん(作)と「週刊連載をしましょう」と話を始めて、テーマを考えていく中で異世界モノをやりたいと私から提案しました。作者さんもそれには乗っていただけたのですが、「ただの異世界モノにしてもつまらないし……」とさらにアイディアを出していきました。
すると、作者さんから「男と“元”男のラブコメってどうですかね?」とお話があったんです。ちょうどバーチャルYouTuberが流行りだした頃で、ネット上で美少女のアバターになることを「バーチャル美少女受肉」と言い始めた時期だったと思います。この言葉を略すと「バ美肉」で、そこから「ファンタジー美少女受肉」、「ファ美肉」というように、言葉遊びから物語が作られていきました。

▲モテないおじさん橘(左)と、高身長のイケメン神宮寺(右)。正反対なキャラクター性を持つ幼馴染の2人が異世界に転移され、冒険が始まります

かっこいいおじさんと美少女になった元おじさんが、互いを好きにならないように異世界を冒険するという奇抜な設定が魅力だと思いますが、前例がない分、反響が読みづらかったのではないでしょうか?

最初に設定を聞いたときは、やっぱりニッチだと思いましたね。正直、編集部内でも「これは厳しいんじゃないか?」という声もありました。

ただ、「ファ美肉」という言葉が作者さんから出たとき、読者の方々を惹き付けるセンセーショナルな文言だと感じました。連載企画の打ち合わせをしていたのがサイコミの再創刊直後だったこともあり、新規の読者を引き付けるためには作品をアピールする面白いフレーズが必要だと考えていたんです。「『ファ美肉おじさん』なら目を惹くはず!」。そんな想いで企画を通しました。実際、第1話を載せたときから反響が大きく、うれしかったのと同時にほっとしましたね。

▲第1話の冒頭のシーン

印象に残っているシーンはどこですか?

第4話で盗賊が出てくるところです。序盤は山の中で異世界の感じが薄かったのですが、人里に行ったら急に盗賊が出てくるところあたりから、この作品の方向性が決まっていきました。方向性というのは、冒険ファンタジーの王道を活かしつつ、そのラインに乗っかりすぎないことです。
盗賊から村を助けたら村娘と恋に落ちたり仲間が加わったりするのが王道のパターンですが、神宮寺の圧倒的な強さを見せつつ橘の能力も使ってバトルし、最終的にはドタバタ劇で終わるようにまとめています。

▲盗賊と戦うシーン

王道を外すという点でいうと、バトルシーンは独特な戦い方をしますよね?

そうですね。実はこの作品、敵とまともに戦ったことがほぼないんですよ(笑)。盗賊との戦いも神宮寺が「そい!!!」と言ってあっさり投げ飛ばして終わりますし、エルフの頭目との戦いでも、決して殴ったり蹴ったりせずに石を投げて終わっています。毎回、どんな面白いバトルになるか注目していただきたいですね。

異世界をRPGのようなテイストにしたのはどうしてでしょうか?

RPG風にしたいというのが作者さんの意向でした。ゲームのような世界にする一番のメリットは、作品の空気が重くならないことです。異世界モノでありがちなのが、相手との駆け引きや殺し合いで緊迫感が漂う展開ですが、ゲームテイストだったらコメディーに合った世界観が作れる思い、そのようにしました。

見た目と中身のギャップが
キャラクターを作る

ストーリーは作者さんとどんなやり取りをしながら作っていくのですか?

打ち合わせは毎回、白熱しますね。まず「どんなお話にしますか?」というところから話し合いが始まります。それからプロット(※)の初稿が上がってきて、さらにブラッシュアップしていくという感じです。

※キャラクターや世界観、ストーリーの構成など作品全体の設計図

例えば第26話からの「イカ」の町編は、元々1話で終わる短編の予定でしたが、最初に上がってきたプロットからやりたいことをまとめていったら、どんどん話が膨らんでいきました。エルフの頭目を登場させて、頭目と主人公を出会わせるために橘と神宮寺を離れ離れにさせたいというのが作者さんのイメージだったので、「それなら1話で閉じずに見せどころを作りながら話を伸ばしていきましょう」と話しました。そのようにして、結果的に中編になりましたね。

作家さんが想像するやりたいことと、それを週刊連載として落とし込んだときの面白さや作品の設定に合っているかなど、毎回かなり話し合って詰めています。

美少女になった橘ですが、この可愛らしいビジュアルはどのようにして生まれたのでしょうか?

最初に髪と目の色を決めました。あとはもう、歯のギザギザなんかは作家さんの好みですね。そこから、橘の見た目に合う異世界の服について話し合いました。ピンクや白、オレンジ、緑などいろいろ案が出ていった中で、女の子らしい見た目のほうが中身とのギャップにもなるだろうということでピンクにしました。あとは、頭が何か物足りなかったので髪飾りをつけました。

美少女だけど中身はおじさんの橘、美しいけどとげのある頭目など、見た目と中身が一致しないのがキャラクターの魅力になっていますよね。

そうですね。キャラクターのパターンは2つに決めていて、1つはファンタジーに出てくるような王道のキャラクター。もう1つは、見た目と中身が異なる裏表のあるキャラクターです。このどちらかに振り切り、中途半端にならないようにしています。

▲圧倒的美貌を持つが、腹黒いエルフの頭目(右下)。見た目と中身のギャップがキャラクターの魅力を引き立てています

異世界での冒険は今後どうなっていくのでしょうか?

魔王を倒すためには情報収集が必要で、そのために橘と神宮寺が王都へ向かいます。今はまだ冒険が始まったばかりのところなので、2人のたどる道筋の一つひとつでどんなことが起こるのか楽しみにしていただきたいです 。

最後に、読者の方にメッセージをお願いします。

異世界モノの王道を走りつつも本筋からあえて外していくので、長い目で見て応援していただけるとうれしいです。今後も読者のみなさんの想像を良い意味で裏切れるように頑張っていきます。

『異世界(ファンタジー)美少女受肉おじさんと』

▼第1回前編はこちら
恋の痛みが心に刺さるビターラブストーリー『明日、私は誰かのカノジョ』【ヨミコミ!サイコミ Vol.1(前編)】