7周年で描かれる前作『プリコネ』から『プリコネR』への系譜 ストーリーイベント&アニメ『導きの初花』創作秘話

2025年2月に7周年を迎えた『プリンセスコネクト!Re:Dive(以下、プリコネR)』。ゲーム内では七冠(セブンクラウンズ)のメンバーを描いたストーリーイベント「ダイブ・アストルム 七つの願いと創世の残響」がリリースされ、周年を記念して2月8日(土)、2月9日(日)にオンラインで「プリコネフェス2025」が開催されました。
フェスでは、新作スペシャルアニメ『プリンセスコネクト! 導きの初花 - Fiore Storia -(以下、アニメ「導きの初花」)』を公開。『プリコネR』の前作『プリンセスコネクト!(以下、プリコネ)』から登場するキャラクターであるガイド妖精・フィオに焦点を当て、ゲーム内の世界である架空のVRゲーム「レジェンドオブアストルム(以下、アストルム)」にまつわる物語が描かれます。
制作スタッフによると、ゲーム内ストーリーイベントとアニメ「導きの初花」は、前作『プリコネ』から『プリコネR』へと繋がる物語、運命や因果を描いた物語にしたとのこと。担当者に両作の創作秘話を聞きました。
※記事内にネタバレを含みますのでご注意ください
- プランナーリク
- 2014年新卒入社。入社してから約4年間は別のプロジェクトでプランナーを経験した後、2018年、『プリンセスコネクト!Re:Dive』のリリースと同時期にこの開発チームに合流。現在は作品の世界観やキャラクター、クリエイティブ全般の方向性を決定する業務を担当する。
- シナリオチーム/シナリオ担当シュウヘイ
- ライトノベルの作家活動を経て、2018年にサイゲームスへ合流。以降、『プリンセスコネクト!Re:Dive』のシナリオ担当として、ストーリーイベントやキャラクターストーリーなどのシナリオを手掛けている。今回のスペシャルアニメの脚本も担当した。
- イラストチーム/アニメ担当ナオコ
- フリーランスのアニメーターを経て、2018年にサイゲームスへ合流。『プリンセスコネクト!Re:Dive』運営内にアニメ専門チームを立ち上げることになり、その主要スタッフとして携わる。以降、継続して『プリコネR』のアニメ制作を担当している。
7周年にふさわしい
ストーリーイベントとアニメをお届けしたい
アニメ「導きの初花」の企画が生まれた経緯を教えてください。
リク ここ数年、「プリコネフェス」では3DCGのキャラクターが出演する歌唱ライブを目玉企画として実施してきました。このライブは非常に好評だったのですが、2025年のフェスの企画会議で、「今回は何か『プリコネR』ならではの新しいことにチャレンジしたい」という話が上がったんです。
シュウヘイ 『プリコネR』はアニメRPGですから、周年記念としてフェス用にアニメ「導きの初花」を作るのは自然な流れでしたね。最終的にゲーム内の7周年ストーリーイベント「ダイブ・アストルム 七つの願いと創世の残響」と並行して、TVアニメ1回分のボリュームに相当する新作スペシャルアニメを制作することになるとは思いませんでしたが(笑)。
リク そうですね(笑)。並行して制作するのは厳しそうでしたが、それでも一年で最も盛り上がる「プリコネフェス」で、ユーザーのみなさんにプリコネならではのコンテンツをお届けしたい気持ちが強かったので、「アニメ専門チームがあるからできる!」と団結して制作が始まりましたね。
ストーリーイベントやアニメ「導きの初花」で、七冠(※)やガイド妖精・フィオ(以下、フィオ)を中心に据えたストーリーにすることはどのように決まったのでしょうか?
リク 7周年の“7”の数字にちなんで、ゲーム内のストーリーイベントを七冠の物語にすることに決めました。七冠は、プリコネ全体の世界の根幹をお伝えする上で欠かせない存在です。初期の企画会議の時、「七冠を描くなら、このタイミングがベスト」と意見がまとまったんです。
※ 七冠(セブンクラウンズ)……『プリコネ』の物語の舞台であるVRゲーム「レジェンドオブアストルム」を開発した組織の中心メンバー。迷宮女王(クイーンラビリンス)ことラビリスタや、ネネカ、クリスティーナらを含む7人を指す

シュウヘイ ただ、現状のゲーム内メインストーリーだと、七冠のメンバーたちって仲違いしているんですよね。その状態で七冠の物語を描くと周年にふさわしくない暗い話になってしまうため、前日譚にしました。
リク そうですね。企画当初、ゲーム内イベントストーリーでは、前作『プリコネ』の物語が始まる直前くらいの時間軸で、七冠の7人が決裂するまでをビターに描くアイディアもありましたよね。しかし、それもシリアスな話で終わってしまうため、さらに時間を遡り、7人が情熱を注いでVRゲーム「アストルム」を開発している頃の話にしたんです。色々なアイディアがありましたが、最終的には七冠のエピソードが前作『プリコネ』のガイド役であるフィオを中心として展開されるストーリーになりました。
ゲームとアニメの連動で
重層的な物語展開を目指す
ゲーム内のストーリーイベントとアニメ「導きの初花」の両方が連動して、世界観に厚みが出ています。シナリオ担当として、物語を書くのは難しかったのでは?
シュウヘイ 企画時には確かに難しそうにも見えましたが、僕は元々、フィオを描きたい想いが強かったので前向きでした。フィオのキャラクターストーリーも僕が手掛けたんです。
7周年のタイミングでフィオがプレイアブルキャラとしてリリースされ、ストーリーイベントとアニメ「導きの初花」の両作でフィオが核となるキャラクターになることも決まっていましたから、「この話を書くのは自分しかいない!」とシナリオづくりに全身全霊で挑みました。


リク 実は当初、ストーリーイベントと「導きの初花」のシナリオは連動させない予定だったんです。ユーザーのみなさんが両作を見なければストーリーがわからないという状況を避けたいと考えていました。「レジェンドオブアストルム」の舞台を掘り下げるというテーマは共通させつつ、別軸の物語を作ろうと計画していましたが、やはりアニメ「導きの初花」のクライマックスシーンには、ストーリーイベントと補間し合う描写を入れたくなってしまい……。結果として両作が連動するかたちになったんです。
ナオコ 確かストーリーのプロットが出来上がったタイミングでしたよね。初稿でシュウヘイさんが提出したアニメ「導きの初花」シナリオの完成度が高くて、「これで決まりだね」という雰囲気になりました。ちょうどその頃にストーリーイベントのシナリオのディテールも決まってきて、それを読んだらゲームの要素をアニメ「導きの初花」にも加えたくなって連動させたんですよね。
リク ストーリーイベントとアニメ「導きの初花」で絡み合う要素を入れたらユーザーのみなさんの気持ちがさらに盛り上がるだろうと思いまして。シュウヘイさんにお願いして、クライマックスシーンを変更してもらいました。
両作どちらか一方だけでも楽しめますが、あわせてご覧いただくとプリコネの世界をより好きになってもらえるような展開が作れたと思います。
アニメ「導きの初花」のクライマックスシーンは、フィオとアメスとの関係性が明らかになる部分ですね。短い時間に重要な情報がたくさん詰まっています。
ナオコ そうですね。このシーンはプリコネ世界の根幹に関わる描写で。特にフィオがアメスになる経緯を、絵としてどのように見せるか非常に頭を悩ませました。
実はこのシーンは、ゲーム内で登場したキャラクター・(幸雨)澄花の姿が、ただ単にアメスの姿に変わるというだけのシーンではないんです。
ここでの澄花はゲーム内とは違うボロボロの状態で出てきて、それがフィオの魂と結びつき、これまたゲーム内とは違う欠損のない状態のアメスになる……というとても複雑な表現になっています。


リク この澄花のボロボロの姿は、アバターから魂が抜けて長い時間が経っていることを表しています。そこにフィオの魂が合わさることでみなさんの知る「アメス」が誕生するという流れなので、生まれたばかりのアメスはキレイな羽根を持っています。
ナオコ そういった複雑な背景を表すシーンであり、フィオの身に起きた奇跡を視覚的にも盛り上げる必要があったので、作画・仕上げ・撮影それぞれに時間がかかりました。
シュウヘイ 非常に悩まれていましたよね。
アニメ「導きの初花」の配信後、あのシーンはユーザーさんからの反響も大きかったですね。
ナオコ このシーンはアニメだからこそ表現できると思っていましたので、アニメ担当として最も力を入れました。ユーザーのみなさんに伝わる表現ができたようでホッとしました。
他にも、アニメならではの表現としてご注目いただきたいところがあります。実は、今回初めてアストルムがゲーム内の世界であることを明示的に描いたんです。HPゲージや操作系のメニューが表示されたり、キャラクターがUI(ユーザーインターフェース)を操作するような振る舞いをしたりするシーンを入れました。アニメ「導きの初花」でこのような描写をユーザーのみなさんに見せられたのは、とても意義があったと思っています。
シュウヘイ 言われてみれば、今までそのような描写はなかったですね。プリコネの世界観への理解が深まるシーンだと思います。ユーザーのみなさんに、VRゲームとしてのアストルムのリアリティーを感じてもらえていたら、作り手としてうれしいですね。
今回描かれたプリコネの世界の根幹や、フィオとアメスの関係性については、いつ頃から構想があったのでしょうか?
シュウヘイ 前作『プリコネ』の頃から、アストルムはクリアした人の願いを叶えるゲームで、七冠はそれを開発した人々、という設定はありました。7周年のストーリーイベントは、その設定を一から読み直して、小さなエピソードを拾い上げながらシナリオを書いたんです。
フィオとアメスの関係は『プリコネR』以降に明言されたのですが、前作のラストで何が起きてフィオがアメスとなったのか。7周年記念のアニメ「導きの初花」のシナリオは、その関係性を詳細に、明らかにしていくように書きました。
ナオコ 『プリコネR』から始めたユーザーの方は、フィオのことをよく知らない状態だったと思います。そんなフィオを主要キャラクターに据えて、どうやってシナリオを書いたんですか?
シュウヘイ おっしゃる通り、フィオってちょっと難しい立ち位置なんですよね。アメスを突然フィオに戻したりすると、アメスが好きな人をがっかりさせてしまう懸念もありましたし。
どうやってフィオの物語を伝えるか悩みましたが、やはり主人公の一番近くにいて、気の置けない友人のような間柄の「ガイド妖精」としての始まりを描き、そこから彼女の願いや、バックグラウンドを明らかにしていくのが良いだろうと思ってシナリオを書きました。
ゲームとアニメそれぞれの強みを活かして
プリコネ世界の解像度を高める
7周年記念として、イベントストーリーとアニメ「導きの初花」が公開され、そしてプレイアブルキャラとしてフィオが発表されました。プリコネの世界が明らかになっていくような展開でしたね。
リク 前作からプレイしてくださっているユーザーの方々に喜んでもらうためにこのような展開にしました。前作『プリコネ』から『プリコネR』への系譜、運命や因果の導きを物語として描いてお伝えしたかったんです。
今回アニメに初登場した澄花もプリコネの世界をお伝えするのに欠かせないキャラクターですので、ユーザーのみなさんが世界観を理解するのに役立てられればと思いながら人物像を明確にしていきましたね。澄花のキャラクターとしての設定は初期の頃からありましたが、彼女の名前や見た目、性格、声(キャスト)などは今回のイベントを機に肉付けしていきました。
簡潔に言い表すと「フィオ+澄花=アメス」なんですよね。元々、前作にフィオはいて、『プリコネR』で出てきたアメスは、「フィオがベースになっているけれども、何かの体に入ってこのアメスになっているらしい」とか、「どうやらフィオの先祖のような存在の“始まりのガイド妖精”がいるらしい」といった設定は断片的に明かされていました。
それらの謎を解き明かすようなかたちで、澄花というキャラクターの色々な部分に「アメスにはあるけれども、フィオにはない要素」をちりばめています。
ナオコ 澄花のキャラクターデザインも「フィオ+澄花=アメス」を基にしていて、そこから引き算的に考える特殊なキャラづくりでしたね(笑)。フィオの赤いスカートや黄緑の髪、髪の毛が二つに分かれている要素などが加わってアメスになっており、逆に澄花はアメスからそれらの要素を引いたデザインになっています。

シュウヘイ ストーリーやキャスティングについてもそのような足し算や引き算をして、イメージを膨らませていきましたね。
ゲーム内ならでは、アニメ「導きの初花」ならではの要素はなんでしょうか?
リク ゲームとアニメに共通して、7周年記念コンテンツではプリコネの舞台であるアストルムをもっと知ってもらって、好きになってもらいたいと考えていました。この世界でプリコネのいろんな物語が生まれたんだと感じてほしかったんです。そのために、ゲームとアニメそれぞれの得意領域で解像度を高めていくことを意識しました。
例えばゲームならではの要素として、ミニコンテンツの「アストルム開発録」が挙げられます。七冠によるゲーム開発裏話のようなショートストーリーの詰め合わせで、モンスターの設定資料や彼らが行ったリモート会議の記録など、あの手この手で細かい情報を詰め込みました。マニアックすぎますが、ユーザーのみなさんには楽しんでもらえたようでうれしかったですね。



ナオコ アニメならではといえば、フィオの妖精らしさが引き出せたことでしょうか。妖精といってもゲーム画面だとどのくらいのサイズなのかわかりにくいんですが、アニメだと主人公のそばにいて彼女がとても小さいことがわかりますし、羽ばたきなんかでもかわいらしさが表現できたと思います。
シュウヘイ ピルピルピル……みたいな、羽ばたきの効果音も小さく入っていますよね。


ナオコ そうなんです。主人公の肩やミネルヴァの手の上に乗るシーンもあるので、フィオの妖精らしさはアニメのほうが良く表現できたと思っています。また、アニメ「導きの初花」序盤のミネルヴァとフィオが現実世界を見学するシーンでは、デジタル世界の住人が現実世界に現れたことがユーザーのみなさんに伝わるよう、2人の輪郭が青白く光る処理をしています。これもアニメならではの表現だと思いますね。
シュウヘイ ミネルヴァとフィオは人間からは見えない設定なので、アニメでどう表現するんだろうと気になっていました。普通にいても違和感がありますし。
ナオコ 色々と試行錯誤しましたね。試しにゲームのUIを入れてみたりしたんですけど、結果として今の表現に落ち着きました。
さらに詳しくお伝えすると、あのシーンではあえてミネルヴァの足下の影をなくして、その場にいるけど存在しないような不思議な見た目にしています。


作品に詰め込んだ
作り手としての「プリコネ愛」
アニメ「導きの初花」でユーザーのみなさんにご注目いただきたいシーンはどこですか?
リク やはり最後のアメスが誕生するシーンですね。アニメ「導きの初花」には生放送版と、その後追加シーンを入れた完全版があって、完全版はフィオが実装される日にYouTubeで同時公開しました。
本当は、完全版で手を加えるのは追加シーン部分のみの予定だったんですが、ここのシーンだけはつい欲張ってしまって、生放送版よりエモーショナルに仕上げてもらっています。


シュウヘイ アニメ「導きの初花」では、そこが前作『プリコネ』の舞台であることがわかる描写が端々に出てきます。例えば、ビーチベースボールのシーンで主人公が着ている水着は無地なのですが、これは前作の時代に遡っているから無地の水着なんですよ。
ナオコ 『プリコネR』ファンなら、主人公の水着はパイナップル柄だと思うところですよね。


リク そうなんです。でも実は、主人公がパイナップル柄を着るようになったのは、『プリコネR』でコッコロが選んでくれたからなんです。アニメ「導きの初花」は前作の舞台を描いた作品だから、水着は無地が正解。
また、モンスターのジャバウォックのデザインが前作の仕様になっています。その他にもマニアックなネタを色々と仕込んでいます。


ナオコ ゲームがアリーナから始まるところも、実は前作そのままなんですよね。ムイミことノウェムやラビリスタなど、前作から登場しているキャラクターはちゃんとその前作の衣装を着ています。そんなところもファンの方々に楽しんでもらえるとうれしいですね。


アニメ「導きの初花」のシナリオで工夫したところはありますか?
シュウヘイ 工夫した部分はフィオの台詞です。初期の設定を踏襲するため、基本は前作のゲーム内で使われていた台詞をそのまま使用することを考えていましたが、アニメ化にあたり台詞を加筆する必要がありました。
ゲーム内だとツッコミのような台詞が多いんですが、アニメ「導きの初花」では主人公との絆を感じられるような会話を足しています。例えば、アニメの前半で主人公とフィオがほぼ同じ台詞を言う描写を入れていて、あれは2人の思考回路が似ていることを表しているんです。
ナオコ 「暇だなぁ」って言うところですよね。
シュウヘイ そうです!
リク 「導きの初花」はフィオ目線の作品にすると決めてから、色々なことが上手く噛み合った感じがありますね。主人公がたくさんしゃべるシーンがありますが、あれは前作の主人公のイメージなんです。そのため、『プリコネR』から入ったユーザーさんは新鮮な感じがあったかもしれません。例えば、もしもこのアニメを主人公中心に作っていたら、彼が話すシーンがさらに増えて、『プリコネR』の主人公とのギャップを大きく感じる作品になっていたのではと思います。フィオ目線の物語にすることで、前作の設定を加味したちょうど良いバランスになったのではないでしょうか。
シュウヘイ 阿部敦さん(主人公役)の演技の塩梅も絶妙でしたし、ユーザーの方の反応にもそれが表れていましたね。
ゲームとアニメの相乗効果で
感動を増大させたい
ストーリーイベントとアニメ「導きの初花」の相乗効果という部分で工夫した点があれば教えてください。
リク 今回のアニメは、ストーリーイベントを見ていなくても楽しめるように、アニメ単体で完結するものにしようと考えていました。そのため前作の世界を舞台として、フィオと主人公、他のヒロインたちとのやり取りというお祭り的なパートが大部分を占めつつ、最後に『プリコネR』に繋がる部分やアメス誕生の真相を描く構成にしています。
単体でも楽しめつつ、ストーリーイベントを読んだ上でこの光景を目にすると、単に楽しいだけじゃなくて胸に迫る光景に感じられる、1作で2度おいしい作り方を意識しました。
ナオコ 例えば、「“アストルム”を訪れたみんなを導きたい」「フィオたちにその役目を引き継いでほしい」という澄花の願いが叶っているところですね。
リク そうなんです。七冠のメンバーが並々ならぬ情熱を注いでアストルムの世界を作り上げたからこそ、この光景があるんだと思っていただけるように工夫しました。
ナオコ 七冠やフィオがどんなキャラクターか、ゲームとアニメの相乗効果で厚みを持たせて伝えられたのではないでしょうか。
『プリコネR』から始めた人に向けて、アニメ「導きの初花」でフィオがどんな子なのかお伝えできるように制作しました。前作『プリコネ』を未プレイの方に、前作での出来事を追体験していただけていたらうれしいですね。
主人公やフィオのキャラクター性を伝えるために工夫したことはありますか?
シュウヘイ ストーリーイベントのほうで、過去の主人公と現在の主人公が向かい合って力を渡すシーンがありますが、その時の主人公の笑い方を、今の主人公の優しい「ふふっ」という笑い方ではなくて、前作の主人公のように「へへっ」という感じに阿部さんに演じていただきました。この演技がとてもしっくりきています。過去を取り入れることで新しい像が見えてくる感じを上手く表現いただけたと思います。


ナオコ 笑い方ひとつでそれを表現できる阿部さんの技も、この作品の見どころです。ユーザーのみなさんも、「これ前作の主人公だ」とすぐに気付いていらっしゃいましたね。とても愛されている主人公ですね。
シュウヘイ そういうのに気付いてもらえるのってすごくうれしいですよね。それは前作のことを覚えてくださっているからこそですね。
リク 作り手としてもやりがいがありますよね。そんなユーザーのみなさんとのキャッチボールのようなコミュニケーションが成立しているのはうれしいですね。
シュウヘイ シナリオ担当として、アニメを作り終えてからハッと気付いた部分がありました。ご存知のとおり前作『プリコネ』は、惜しまれつつサービスを終了し、その後『プリコネR』として復活した作品です。『プリコネR』は前作からのキャラクターを引き継ぎつつ、7年にわたって新しい物語を作り続けてきたんですが、主人公とフィオの関係をきちんと描けていなかったんです。それをアニメ「導きの初花」でようやく描くことができて、長年の想いが叶った気持ちです。
長期にわたる運営でも
ブレない物語やキャラクターにするために
続いて制作の現場について聞きます。ゲームの開発チームとアニメチームで連携するにあたって、工夫した点などはありますか?
シュウヘイ まずはシナリオがないと次の工程に進めないので、連携というよりは連携をするための前段階で、とにかく早くシナリオを書こうと心掛けていました。シナリオをメンバーに共有した後も色々な質問が来るので、素早く返事をするようにしていました。
ナオコ 返事が早く欲しいときは、こちらからシュウヘイさんの席に突撃していました(笑)。わからないことを放置してしまうと後から大変になるので、シナリオとアニメチームの間に齟齬がないように気を付けていましたね。
前作『プリコネ』から数えて10年と、非常に長い運用の中で、物語やキャラクターに一貫性を持たせるコツはあるんでしょうか?
シュウヘイ 僕なりのやり方ですが、自分がキャラクターになりきって台詞を口に出しながらシナリオを書きます。憑依型といいますか、その世界の住人になりきることでシナリオに一貫性を持たせています。
ナオコ キャラクターになりきるのは大事ですね。実はアニメーターも、作画する前に一度そのお芝居をやってみることって結構あるんです。鏡の前で演じてみたり、動画撮影をしてみたりしますよ。
リク アプローチの仕方は、アニメとシナリオで通じるものがあるんですね。
ナオコ そうですね。それに加えて、キャラクターを理解するために自分たちでもゲームをしっかり遊んで、ストーリーをきっちり追いかけておくのも大切です。
プレイヤーに楽しさだけでなく
「お土産」を渡せるゲームにしたい
最後に、プリコネファンのみなさんにメッセージをお願いします。
リク メインストーリーの第3部もここからどんどん盛り上がっていきますし、ストーリーイベントも色々と準備しているところです。個人的には、個々のイベントやストーリーを見終わったときに単に「楽しかった」「面白かった」で終わりにはさせず、何か「お土産」になるものをユーザーのみなさんにお渡ししたいと考えています。
例えば、ストーリーを読んだりイベントをプレイしたりしたことによって、価値観や人生観が豊かになるような、そんな体験を与えられたら良いなと思っています。
シュウヘイ 7周年で『プリコネR』の過去となる『プリコネ』の世界を描かせてもらいました。過去は人間にとっての地面みたいなものだと思っていて、何度も踏み固めていくことで確かな地盤になっていきます。
『プリコネR』はこの先に、第3部を含めた未来があります。これからも現実とVR、過去と未来がどんどん描かれていくので、シナリオ担当としてそれを楽しんでいただけるものを生み出していきたいです。
ナオコ 7周年を迎えられて感謝しております。
『プリコネR』に登場するキャラクターみんなを好きになってもらえるように、アニメーションでより深く魅力を伝えるのがアニメ担当としての使命だと思っています。今後も「このキャラクターのこんなところが推せるよね」というポイントを描いて作品に貢献していきたいと思っています。
以上、『プリコネR』7周年記念コンテンツの創作秘話でした。
今後の『プリコネR』の展開にご期待ください。