木村唯人専務が語るサイゲームスはこんな会社。 「最高のコンテンツを世界中に!」

Cygames Magazine(サイゲームス マガジン)の創刊に際し、第1回の企画として、創業時からのメンバーであり、数々のプロデューサーも歴任している専務取締役の木村唯人に、会社の変革・歴史からサイゲームスが大事にしているマインド、今後の展望まで、「サイゲームスとはどんな会社なのか」を語ってもらいました。

サイゲームス専務取締役木村唯人
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東京大学大学院卒業後、カナデン、シリコンスタジオを経て、2011年に代表・渡邊耕一とともに、サイゲームスを設立。『神撃のバハムート』をはじめ、『グランブルーファンタジー』『Shadowverse』『プリンセスコネクト!Re:Dive』のプロデューサーを務める。2019年4月より専務取締役に就任。経営と並行して、各代表タイトルのプロデューサーとして、ゲーム開発にも深く携わっている。

サイゲームスの成長と変革にみる
ヒットコンテンツの生み出し方とは?

さっそくですが、2011年5月の設立当初について教えてください。はじめは『神撃のバハムート』の開発からはじまったんですよね?

そうです。最初はたった5人でスタートしました。特にこだわっていたのが『神撃のバハムート』の推しポイントでもある「美麗グラフィック」です。「これまで誰も見たことのないクオリティのゲームを作ろう!」と、代表取締役の渡邊耕一やプロジェクトのメンバーとひたすら作り込んでいきました。2011年9月にリリースしてから2019年現在まで多くのユーザーの方々に遊んでいただいて、開発メンバーとしてはうれしい限りです。

設立からたった4か月でのリリースには驚きました。『神撃のバハムート』リリース後はどのような歩みだったのでしょうか?

いくつかのタイトルを開発・運営しながら、2012年夏ごろに『グランブルーファンタジー』の企画が立ち上がりました。渡邊とCyDesignationの皆葉英夫代表取締役が「こんな世界観のゲームを作りたい」とキービジュアルを描き起こしたことがきっかけです。
当時は「ブラウザでどこまでできるか」という挑戦の連続でした。自分たちがやりたい盛大な演出を実装すると、負荷がかかってゲーム自体が動かなくなってしまうので、したい演出と実装可能な演出をエンジニア陣と繰り返し擦り合わせていきました。音楽も鳴らしたかったのですが、ブラウザゲームでBGMやSE、ボイスなどすべてを同時に鳴らすという前例がなかったので、そこでも試行錯誤を繰り返し、実現する方法を模索しました。

そんな苦労があったんですね。そこまでしてブラウザゲームにこだわった理由は何でしょうか?

ブラウザゲームとしてサイゲームスの代表作となっていた『神撃のバハムート』の次にあたる位置づけのタイトルを作ろう、という意図で開発がスタートしたことが1つの理由です。ブラウザゲームは機能追加や改善など、ユーザーのみなさんにより楽しく遊んでいただくための更新もスピーディーに行えるというメリットがあることも大きな理由でした。せっかくブラウザゲームを作るのであれば“限界に挑戦しよう”とチーム全体が熱意を持って開発に取り組んでいましたね。

その後、2016年には『Shadowverse』をリリースされましたね。スマートフォンで遊べる対戦型TCGということで、当時かなり珍しかった印象があります。

『Shadowverse』はまさに「今まで挑戦したことのないジャンルのものを作ろう」と思って立ち上がった企画でした。私が元々カードゲーム好きなのと、社内メンバーからも「作りたい!」という声があり、ファンタジーカードRPGの『神撃のバハムート』を対戦型カードゲームとして展開したいと考えました。
開発をしていく中で、既存のカードゲームと差別化をするために導入したのが「進化システム」です。すべてのフォロワーカードが進化できるというのはそれまでなかったですし、演出にもこだわり、一度大幅な作り直しを行いました。

2年後の2018年2月には『プリンセスコネクト!Re:Dive』がリリースされましたが、『Shadowverse』とは同時並行で開発を進めていたのでしょうか?

はい、進めてはいました。……ただ『プリンセスコネクト!Re:Dive』は、『プリンセスコネクト!』の続編ということもあり、前作からのユーザーの方にも今作から初めて遊んでくださる方にも楽しんでもらうためにはどうしたらいいかという部分や、既存のRPGとの差別化をどうするかといった部分でかなり悩みました。そこで「アニメRPG」というジャンルを思いつき、開発を進めていったのがリリースから1年半ほど前です。
また、基本オートで誰でも簡単に進められるゲームシステムや、アニメの良さが最大限活きるようなUIを考案し、ライトユーザーの方にも楽しんでもらえるゲームにしようとこだわりました。

一番リリースが近いタイトルだと、2018年9月に任天堂との協業タイトル『ドラガリアロスト』のサービスが開始されましたね。

はい。『ドラガリアロスト』は、人と竜の絆を描いた王道ファンタジーのアクションRPGです。サイゲームスでは、王道を常に追い求めるということを大事にしています。また、本作は任天堂さんのアクションゲームに対してのナレッジも詰まったゲームとなっていて、そういう意味では『ドラガリアロスト』は協業タイトルとして非常にお互いの良さが詰まったゲームになっていると思います。
リリース後の反響としても、日本だけでなく、香港・マカオ・台湾のApp Storeランキング1位を獲得し、アメリカを含むその他の国々でも多くのユーザーのみなさんにご好評いただけているタイトルとなっております。

こうして聞くと、本当にさまざまなゲームをリリースしているんですね。これらのゲームをヒットさせるコツのようなものはあるのでしょうか?

これといったコツはありません。ただ、どのゲームもユーザーの方々に「新鮮な驚きを届けたい」「最高に面白い!と思ってもらいたい」という想いは一貫しています。私は「ゲームはそもそも楽しいもの。ゲームが楽しいのは当たり前のことだ」と思っていて。そこに何をしたらユーザーのみなさんの心は動くのだろうかを常に考えている感じです。

なるほど。「何をするか」を考えるときに重要視していることはありますか?

今の時代に合ったもの、今求められているものを取り入れるようにしています。たとえ面白いゲームだったとしても、やりたい人がいなければ意味がなくなってしまうので。
また、コツではありませんが、「ジャンルをきちんと意識すること」は大切にしています。例えば、Aのジャンルで好評だったシステムをBのジャンルに導入しても、ジャンルが違えば求められるものも違うので、ユーザーのみなさんの期待に応えられない可能性が高いです。そのため、各ジャンルを好きな人たちが“何を求めているか”はゲームごとに強く意識していますね。

そのためには、ジャンルごとの特徴や面白さを理解する必要があると思うんですが、それらを知る方法はありますか?

やっぱりたくさんゲームをすることだと思います。いろんなゲームをして、いろんな「面白さ」を知ること。そうすると「このゲームはどこが面白いのか」がわかるようになってきます。そしてその感覚はゲームを作る現場で必ず役に立ちます。ゲームを作るときに自分で「これは絶対面白い!」と思えるかどうかはすごく重要なんですよ。

サイゲームスが大切にしていること
ビジョンやミッションステートメントに込められた想い

「たくさんゲームをする」という言葉はサイゲームスのミッションステートメント(行動指針)にも入っていますよね。その他のミッションステートメントやビジョン(会社理念)について教えてください。

まず会社の柱となるビジョンは「最高のコンテンツを作る会社」です。これは本当にそのままの意味で「誰が見ても“最高だ”と思えるコンテンツを作るぞ」という気持ちを込めています。“ゲーム”ではなく“コンテンツ”としているのは、創業時からゲームを含む、エンターテインメントコンテンツ全般を作っていきたいと考えていたことが理由です。
そして、そのビジョンを実現するために立てたミッションステートメントは3つあります。1つは今挙がった「みんなでたくさんゲームをやる」、残る2つは「常に「チーム・サイゲームス」の意識を忘れない」「最強のブランドを目指す」です。

3つのミッションステートメントについて、それぞれの意図を教えてください。

サイゲームスでは「ゲームをやっている人の肌感」というものをとても大切にしています。自分自身で経験をして「面白い」「すごい」と感じたことをゲーム作りに活かしてほしいので「みんなでたくさんゲームをやる」というミッションステートメントを掲げています。
「常に「チーム・サイゲームス」の意識を忘れない」は、どんな時も全員がチームのために動ける会社であるために掲げています。最高のコンテンツはたったひとりでは作れません。一人ひとりがそれぞれ持っているスキルや経験、感性を集結させてはじめてできるものです。それらを最大限に活かすためにも、一緒に働くメンバー全員を尊重し、一致団結できる会社を目指しています。
そして、「最強のブランドを目指す」は、コンテンツだけでなく、会社としても「最高」を目指していくための指針となります。いくら作り出すコンテンツが最高であっても、書く仕様書が適当だったり、スタッフのモラルがなっていなかったりすればそれは最高のコンテンツを作る会社とは言えません。コンテンツも、そして会社自体も「最高のブランド」を目指す企業としてこのミッションステートメントを掲げています。

現在サイゲームスは従業員数が2000人を超えています。正直、ここまで人数が多いとこういった意識の浸透はなかなか難しい気がするのですが……。

それが、私も常々驚いているのですが、全くそんなことがないんですよ。全スタッフが、前向きにビジョンやミッションステートメントを受け止めて、日々さまざまな業務で活躍しています。
例えば、『プリンセスコネクト!Re:Dive』は従来のゲームにはない操作性を目指し、システムやUIに徹底的にこだわったというお話をしましたが、やはりその分ぶつかる壁も多くて……。そこで、全社スタッフからUI案のアンケートに協力してもらったり、ゲームは好きだけど上手にできないという人にプレイをしてもらって意見をもらったりと試行錯誤を繰り返して少しずつ答えを探していきました。そして、さまざまな意見に対して、開発チーム内で「もっとこうしたら面白んじゃないか」「だったらこういうのはどうだろうか?」と各職種のプロたちがさらにブラッシュアップを続けてリリースに至りました。
このように、最高を目指してやり抜く姿勢が全スタッフに浸透していることは、サイゲームスの特徴であり、強みでもあると思っています。

さまざまな立場の人の意見を採用している、まさに全社で“1つのチーム”という雰囲気が伝わります。となると、職場の雰囲気もかなり風通しが良いのではないですか?

そうですね、かなり良いと思います。私を含む、経営陣がスタッフと同じフロアに席があって、何かあればすぐに声をかけてもらえます。また、チーム・サイゲームスという意識が全員にあるので、チーム内はもちろん、セクションや年齢、職種をまたいだ交流や依頼も活発に行われています。「頼み事をした時に嫌な顔をする人が誰もいない」という声をよく聞きますね。一人ひとりが妥協せずに「もっと良くなるならぜひやりたい」と声をあげてくれるんです。

「最高のコンテンツを作り続ける」
サイゲームスが目指す未来

それは素敵です!それでは、その他の事業も含めて、今後のサイゲームスの展開を伺えますか?

今リリースされている運用タイトルを引き続きしっかりと楽しいコンテンツにしつつ、『ウマ娘 プリティーダービー』などの新作タイトルも最高のコンテンツとしてお届けできるよう開発を進めています。

また、今後はコンシューマー事業やマンガやアニメへの展開もしていきたいですね。すでに発表されているものだと、コンシューマーでは『Project Awakening』『グランブルーファンタジー ヴァーサス』『グランブルーファンタジー Relink』を鋭意制作中です。

『プリンセスコネクト!Re:Dive』のTVアニメ化や『グランブルーファンタジー』のTVアニメ『GRANBLUE FANTASY The Animation Season2』の公開も決定しています。

どのコンテンツも楽しみです。最後に、今後のサイゲームスの展望や意気込みを聞かせてください。

創業時から変わらないサイゲームスの想いは「最高のコンテンツで世界中を楽しませたい」ということです。そのために今後も面白いゲームやコンテンツを作り続けていきます。また、近年では、ゲームの枠を超えて、アニメやマンガ、eスポーツへの展開などより幅広い領域でコンテンツを提供できるようになってきました。
今後も、ゲームを軸としたさまざまなエンターテインメントを最高のクオリティで提供し続けます。そして、より多くの方にサイゲームスを知っていただき、コンテンツに触れていただけたらとてもうれしいです。
いつかは「ゲームといえばサイゲームス」と言われるよう、これからもチーム・サイゲームス一同、がんばっていきます。