新しい機材が必要なときや機器のトラブルが起きたとき、クリエイターが対応していると作業はどんどん遅れてしまいます。クリエイターにはあくまでコンテンツの制作に専念してほしい。そんな想いから、サイゲームスのサウンド部には機材の手配やトラブル対応にあたる専門のスタッフ「サウンドアドミニストレーター」がいます。働く環境をより良くするため、サウンドとITの知識を兼ね備えたスタッフが現場をどう支えているのか。また、ゲーム業界ではまだ少ない、サウンド制作におけるサポート部門の必要性について解説します。

「サウンドアドミニストレーター」って?
サウンド部を支えるサポートスタッフ

まず、「サウンドアドミニストレーター」という言葉に聞き馴染みのない方が多いかもしれません。ネットワークやコンピューターを管理する人を「アドミニストレーター」と言いますが、それをよりサウンド分野に特化させたのが「サウンドアドミニストレーター」です。サウンド部のクリエイターが制作に専念できるよう、働く環境を整える役割です。
また、サウンドアドミニストレーターがいることは、サイゲームスのサウンド部でクリエイターとして働くメリットにもなっていると言えます。

サウンドアドミニストレーターの主な仕事は以下の通りです。

■機材の購入・導入

作業者とのヒアリングや相談を基に、必要なソフトウェアやハードウェア、楽器を迅速に準備。また、作業者がスムーズに使えるようにセットアップする。

■トラブルサポート

サウンド機材のトラブルが発生したとき、原因を特定して解決する。

この他、社内の新サウンドスタジオ群の設営にも携わったり、ゲームタイトルのリアルイベントで使うサウンド機材の選定やセッティングなどを担当したりすることもあります。

▲サイゲームスの新サウンドスタジオよりスタジオAの様子
▲「グラブルフェス 2019」の「グランサイファーライド」

リアルイベント「グラブルフェス」では、『グランブルーファンタジー』の騎空艇に乗れるアトラクション「グランサイファーライド」の音響機材の選定から運用、管理に協力しました。イベント中、万が一音響機材に不具合が発生した場合、現場での即時的な対応が必要です。映像と音をリンクさせて楽しむ当アトラクションの仕組みは複雑で、サウンドとITの高い知識やスキルが求められるので、サウンドアドミニストレーターの力が大いに発揮されます。

サウンド部にサポートスタッフが
配置された経緯

サイゲームスのサウンド部は楽曲を作る「ミュージックチーム」と効果音を含めた曲以外の全ての音をデザインする「サウンドデザインチーム」に分かれています。どちらのチームもPCでの作業が中心なため、サウンド制作に応じたハードウェアやソフトウェアの準備が多く必要な部署になります。また、用意すればそのまま使えるわけではなく、ソフトウェアのインストールやライセンスの認証といったセットアップも必要です。

サウンド部の設立当初は、機材周りに詳しかったマネージャーが普段の業務のかたわら、情報システム系のサポートを行う部署「システム管理」と連携して機材の手配やトラブルのサポートをしていました。ただ、サウンドの専門性が高くシステム管理のスタッフでは対応しづらい部分も多いことや、サウンド部の業務量・スタッフが増えていったことで、サウンド制作とITの知識を兼ね備えたサポートスタッフを本格的に配置することになりました。
3年前からサポート専門のスタッフがサウンド部の環境整備を始め、2019年4月から「サウンドアドミニストレーター」として正式に役職が誕生しました。2020年12月現在、約60名が所属するサウンド部をサウンドアドミニストレーター3名でサポートしています。

ゲーム業界でサウンドの部署がある会社に、サウンドアドミニストレーターに似た職種はほぼありません。この役目を誰が担っているかというと、以前のサイゲームスのようにマネージャーだったり“機材マニア”のスタッフだったり、個人がベースになっているのが現状です。しかし、それだと担当スタッフに大きな負荷がかかります。
また、専属のサポートスタッフがいないことで起こる弊害として一番考えられるのは、クリエイターがコンテンツ制作に割く時間を奪われてしまうことです。

例えば機材で何かトラブルが起きたとき、社内のスタッフで対応できない場合、次はメーカーサポートへ連絡することになります。ただ、音楽機材は海外メーカーが多く、問い合わせても数週間返答がないこともあります。そうなってしまうと、コンテンツの制作が滞り、成果物のクオリティーを下げることにも繋がりかねません。
サウンドアドミニストレーターは、そもそも機材が使えないという状況、本当に使いたい機材を諦めて別のもので対応するといった状況に陥ることを防ぎ、最高の環境でクリエイターが制作に専念できるようにする縁の下の力持ちなのです。

スピーディーに対応するために
業務フローの効率化

サウンドアドミニストレーターが配置されてから、機材の購入やトラブルサポートの効率化を図り、スピーディーに対応できるようになりました。何をどう改善したのかご紹介します。

■機材の購入

新しい機材を購入するときは、いかに早く作業者の手に届くかが重要です。サウンドアドミニストレーターが配置される前は、サウンド部のマネージャーから社内の資産管理購買チーム(当時はシステム管理)に必要な機材を依頼していました。すると、購買チームは稟議を通す上でさまざまなことを確認しなければなりませんでした。依頼された機材がなぜ必要なのか、コンテンツにどう反映されるのか、どのように管理するのかなど、音楽知識がない購買チームのスタッフが一から調べて発注に回さなければならず、確認事項の多さが購入までに時間がかかってしまう要因になっていたのです。

そこで、サウンドアドミニストレーターが購買チームの確認事項を減らし、スムーズに発注を進められるよう業務改革を図りました。現在は、新しい機材を購入する意図を作業者と綿密にすり合わせ、対応がスピーディーな機材販売代理店にあらかじめ相談するようにしています。そして社内で購買の依頼をするときは、代理店との相談内容を基に購入理由や用途などを明確に伝えて、購買チームの確認事項が少ない状態で発注できるようにしています。

▲サウンド機材の発注フロー

また、購入した機材の管理もサウンドアドミニストレーターの大切な仕事です。会社として何を保有していて、それがどう使われているのかなど、資産管理ツールを使って明示化しています。

サウンドアドミニストレーターが入ったことで、バックオフィスとのやり取りだけでなく、サウンド制作の現場にも変化が表れています。欲しい機材は作業者からサウンドアドミニストレーターに提案するのが基本ですが、最近では「〇〇をやりたいのだけど、どんな機材があれば実現できるかな?」と作業者からの相談を受けて最適なものを提示するケースも増えてきました。これは現場におけるサウンドアドミニストレーターの信頼や重要性が高まっている証だと言えるでしょう。

■トラブルサポート

機材トラブルに関しては、先ほど述べた社内のシステム管理との連携が主になります。何かトラブルが発生した際、サウンドアドミニストレーターかシステム管理のスタッフが対応していますが、そのすみ分けは「トラブルがサウンド機材に起因しているかどうか」です。過去にシステム管理が対応した実績のある事例は任せ、サウンドの専門性が求められる問題にサウンドアドミニストレーターが対処することで、よりスピーディーなサポートを実現しています。

▲サウンド関連トラブルの対応フロー

音楽機材でよくあるトラブルでも、ゲーム制作に特化した使い方をしていることで独自に解決しなければならない問題も発生します。そんなとき、社内で知見を溜め込み、解決策を共有していれば迅速に対応できるのです。

サウンドアドミニストレーターに
必要な知識

サウンドアドミニストレーターには、サウンド制作の知識とIT知識の両方があるのが理想です。ただ、どちらかというと必要なのはITの知識やスキルになります。サウンド制作は主にPCでの作業になるため、下地として情報システムの技能を持っていることが前提となる業務が非常に多いのです。特別、資格が必要な職種ではありませんが、「ITパスポート」を取得できるくらいのスキルが最低限あると、入社後スムーズに業務を覚えていけるでしょう。また、オンサイトサポートやユーザー対応といった実務的な経験があると現場で役に立ちます。

サウンドの知識に関して、サウンドアドミニストレーターは音楽や効果音制作の高いスキルが求められるわけではありません。それより大切なのは、「サウンド制作に興味がある」ことです。入社後は、現場でどんな機材がどういった理由でどのように使われているのかを理解するのが最初の目標になります。そのため、サウンド制作の舞台裏に興味があり、なおかつ情報システムの基礎がある人には特に向いています。

▲サウンドアドミニストレーターが実際に導入した機材

また、人材育成はOJTを中心に、スタッフのスキルに合わせて個々に行っています。機材を購入してセットアップし、トラブルのサポートをするという仕事の大まかな流れはあるものの、個々の業務内容はルーティーンのようでそうではないからです。例えば毎月同じ機材の発注やセットアップの依頼があるわけではなく、トラブルの内容も多岐に渡ります。そのため、基本的には発生した案件に応じながらその都度教えていきます。

支援者としてコンテンツクオリティーに貢献する

最後に、「サウンドアドミニストレーターに興味があるけどサウンド制作も続けたい」という方へ。楽曲や効果音の制作スキルを持っていたら、それをクリエイターとして発揮したいと考える方が多いと思います。ただ、サウンドだけでなく、ITの知識を使って多面的な仕事をしたいと思う方にはサポート側に回る道もあります。

実際、サウンドアドミニストレーターには元々フリーで作曲や編曲をしていたスタッフがいます。情報システムの仕事を経験していたこともあり、サウンドアドミニストレーターとしてサイゲームスに合流することになったのですが、最初は「クリエイターとしてサウンドを制作したい……」という気持ちがゼロではなかったそうです。ただ、仕事をしていく中でサウンドと情報システム両方の知見が溜まっていくことや、それをクリエイターに共有することでコンテンツのクオリティーアップに貢献している実感があるので、裏方である意識は少ないと言います。

これからゲーム業界にもこの職種の必要性が認知され、業界全体のコミュニティーとして発展していければというのがサイゲームスのサウンドアドミニストレーターの願いです。


サイゲームスとしても、サウンドアドミニストレーターがサポートを続けることで、作業者自身が対応できるレベルの平均値を上げていくのが今後の課題です。また、恒常的な業務に対応できるサウンドアドミニストレーターを増やし、作業者・支援者が共に新しいことに挑戦していけるよう環境整備を続けていきます。
サイゲームスのサウンド制作に携わりたいというみなさんからのご応募をお待ちしています。

サウンドアドミニストレーター/東京 募集要項

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