今回から始まる新特集「サイ技(わざ)」。本特集では、サイゲームスの「最高のコンテンツ作り」を支える技術的な取り組みや職人的なこだわりなど、サイゲームスの「わざ」の数々をご紹介していきます!

記念すべき第1回は、『プリンセスコネクト!Re:Dive(以下、プリコネR)』のサウンド制作陣に聞いたサウンド作りの内幕を、前後編2週連続でお届けします。

さて、みなさんは、スマホゲームの「音」をフルに楽しんでいますか?
通勤・通学時や深夜にプレイすることが多い方の中には、しっかりした音量でゲームのサウンドを鳴らさないという人もいるかもしれません。

でも実はこれ、ものすごーくもったいないです!だまされたと思って一度、音質の良いヘッドホンやスピーカーをつないでサイゲームスのゲームをプレイしてみてください。その豪華なサウンドに驚くはずです。

そんなスマホゲームの域を超えた『プリコネR』のサウンド作りは、どのようにして実現したのでしょうか? ぜひ最後までお読みください!

サウンド部 プロデューサーアキヒロ
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大手ゲーム開発会社で世界的プロジェクトのサウンド開発に携わった後、2015年よりサイゲームスに入社。 『プリンセスコネクト!Re:Dive』 では作曲家としても活動している。
サウンド部 サブマネージャー リュウタ
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2014年にサイゲームスに入社。『Shadowverse』や『プリンセスコネクト!Re:Dive』等の組み込み、効果音制作、プロモーションを担当。マネジメント業務も行っている。
サウンド部 サウンドミキサー・音響監督ノブト
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音響制作スタジオで複数のアニメーションにサウンドミキサーとして携わり、2018年にサイゲームスに入社。他プロジェクトでは音響監督としても関わっている。

膨大なサウンドをたった2人で担当!?
『プリコネR』のサウンドができるまで

本日は『プリコネR』のサウンド担当者のみなさんにお話を聞いていきます。まずはそれぞれの仕事内容について簡単に教えてください。

アキヒロ 『プリコネR』のサウンドの統括的な立場を務めています。社内外の制作者選定やバジェット管理などのサウンドプロデュース業をはじめ、音作りの方向性を決めたり、サウンドの品質をチェックしたりといったサウンドディレクション業も行っています。

リュウタ 『プリコネR』の効果音制作をはじめ、サウンドのシステム部分を作ったり、ファイル容量と音質のバランスを制御したりといったプログラム寄りの仕事もしています。その他、BGM、SE(効果音)、ボイスなどのサウンド要素をゲーム上で正しく再生させるまでに必要になるさまざまな仕事をしています。また、ゲーム外ではTVCMなども担当しています。

ノブト アニメパートのMA(マルチオーディオ)作業をしています。MAというのは、BGMやSE、ボイスなどの各要素の音を聞きやすく整えたり加工したりして、バランスを調整する仕事です。アニメ業界では「ダビング」とも言われますね。

早速ですが、サイゲームスのサウンドはどのようにして作られているのでしょうか?

アキヒロ 作り方について統一的なルールはなく、プロジェクト(ゲームタイトル)によってかなり異なります。サウンドを内製するか、外注するかについてもプロジェクトの方針次第ですね。

リュウタ ゲーム本体に関する作業工程としては、大まかに分けると「楽曲制作」「SE制作」「音声関連業務」「アセット(各種素材データ)のゲームへの組み込み」の4つです。これらに加えて、ゲーム外のプロモーション、オフラインイベントのサウンド作業、サウンドトラック制作やTVアニメのサウンド制作なども関わっています。

『プリコネR』の場合、どのタイミングでサウンドのチームが組まれたのでしょうか?

アキヒロ プロジェクト初期のメンバーは私だけでした(笑)。まだゲームそのものも試行錯誤している時期で、サウンドの方向性も決まっていなかったので当然かもしれません。
最初は、ゲームの原型であるモックにBGMやSEを付けるような作業を私1人でやっていました。

リュウタ 私は『プリコネR』の形がある程度出来上がってから、SE制作とゲームへの組み込み担当としてメンバーに加わりました。実は、他のスタッフが加わるのは結構後になってからで、ゲームのリリースがかなり迫ってくるまで、アキヒロさんと私の2人で作っていたんですよ。

アキヒロ リリース時点ですでに40時間を超える見込みだったADV(会話)パートにも全て音楽や効果音を付けてましたからね。今考えると恐ろしい(笑)。リリースが近くなって、ADV(会話)パート担当のサウンドデザイナーや組み込み前のSE調整担当、デバッグ担当などが参加してくれて、ようやく人員が揃ってきたという感じです。

ノブト 私が参加したのはリリース直後の時期でした。今は社内だけでも専任兼任を含めて14人がコンテンツに応じて適宜関わっており、社外の作曲家さんにも発注しているので、人員的にはかなり充実していますね。

「スマホゲームのサウンドで日本一を目指す」
数々の楽器で生音源を収録!

曲数の多さや多彩な声優陣によるフルボイスなど、『プリコネR』のサウンドはとにかく豪華という印象があります。

アキヒロ そうですね。ゲームのいたるところで異なるBGMを用意していますし、ストーリーに対してもメイン、キャラクター、ギルドといった場面ごとに曲を作っています。他に声優さんが歌うキャラクターソングもあります。ユーザーのみなさんのために業界最高レベルを目指したらそうなってしまったという感じです。

リュウタ ゲームをリリースしてから1年半くらい経過しているのですが、すでに250曲近くを投入していて、さらに毎月の新規イベントに合わせて新しい曲を追加しているので、毎月7~8曲のペースで増え続けている状態です。

アキヒロ 通常のBGM制作に加えて、アニメパートの一部では「フィルムスコアリング」という作曲手法も取り入れています。これは、アニメパートの絵ができた後に、シーンの雰囲気や長さに合わせて曲をつけていくもので、主に海外の映画などで使われている贅沢な手法ですね。

ノブト クオリティー、曲数ともにスマホゲームとしては破格の規模だと思います。

しかも、『プリコネR』では楽器での収録にこだわっているんですよね?

アキヒロ はい。BGMは基本的に全曲、オーケストラ楽器をはじめ、ドラム、ベース、ギターも録音しています。ゲームの方向性が決まったときからそうしようと決めていました。生音源にするか、コンピューターを使った打ち込み音源にするか、両者を併用するかは、どれが正解ということはありません。ゲームのテイストや方向性によっても変わりますし、かけられる時間やコストも影響します。

リュウタ 生音源を採用する場合でも、一部の曲だけとか一部の楽器だけを生にするというやり方もあるのですが、『プリコネR』では音源のほとんどを楽器で録音するという、贅沢な作り方をしていますね。

アキヒロ 新曲を毎月スタジオで収録していますし、季節によっては琴、三味線、尺八、スティールギター、テルミン、三線、篠笛なども収録することがあります。大変なことも多いですが、その分高品質のサウンドを実現できていると思います。おかげさまでユーザーのみなさんからも好評をいただいていますし、同じゲーム業界のサウンド担当者からサイゲームスの制作環境をうらやましがられることもあります。

メインテーマ『Lost Princess』から始まった
サウンドの方向性とクオリティーライン

『プリコネR』のサウンドの方向性が決まったのはいつですか?

アキヒロ 作曲家・田中公平先生によるテーマ曲ができたときですね。田中先生の起用はプロデューサー・木村(唯人)たっての希望だったのですが、田中先生から届いた『Lost Princess』を聴いた瞬間に、『プリコネR』のサウンドはこの方向性でいこうと思いました。

▲ 『Lost Princess』 視聴動画

リュウタ テーマ曲はポジティブで明るい『プリコネR』の世界観そのものです。この曲を軸に据えることで、どのパートのどの曲にも『プリコネR』らしさを感じるような統一感のあるサウンドに仕上がっていると思います。方向性や軸が定まっていると、作曲の精度が上がって全体的なクオリティーも上がりやすいんですよ。

アキヒロ 初めはメインテーマに寄せて他の楽曲を制作していたのですが、今ではあえて少しメインテーマから外してみるなど、サウンドに幅を持たせることもできるようになりました。

ノブト 毎月の新コンテンツに合わせて次々に新曲を追加していますが、1曲1曲のクオリティーはどんどん上がっていると感じますね。

プログラムの仕組み作りから関わる
SE制作のフローを効率化

SEの制作では効率的なワークフローを採用されているそうですね。具体的にはどういった工夫をされているのでしょうか?

リュウタ 工夫したのは、システマチックにSEを組み込める仕組みを用意したことです。SEの制作では、開発側から必要なSEのリストを渡されて、それに合わせて作るというケースが一般的だと思います。でも、ゲームによっては別のフローのほうが効率的に進められる場合があります。

例えば、キャラクターのユニオンバースト(『プリコネR』における必殺技)用のSEを付ける場合、キャラクターの攻撃モーション自体に音を付けたり、ファイアーボールのような飛び道具に音を付けたり、画面全体を覆うオーラのようなものに付けたりと、さまざまな場合があります。
それを毎回プランナーの方に確認してから作業して、次にエンジニアさんに依頼して……と進めるのは避けたかったんです。ソーシャルゲームの更新作業は、品質を保ちながらの効率化が非常に重要なので、サウンド側と開発側で確認作業にかける時間を削減することで、その分クオリティーを上げることに時間を使うことができればと思いました。
そのため、モーションやエフェクトの情報をサウンドデータの名前と紐付けることで、サウンドデザイナーの方で、自由にモーションやエフェクトへ音を当てられるようにしました。

サウンドを作る手前の段階の、仕組み作りから関わっていくわけですね。それはエンジニアの方と協力してやるのですか?

リュウタ そうですね。開発の早い段階でエンジニアさんと話をして「モーションとサウンドの音を紐づけられませんか」という提案をしました。初めにその仕組みを作っておけば、後が楽ですからね。

アキヒロ そのあたりの体制づくりって結構ちからわざだったよね。当時はサウンドのことを専門にやってくれるエンジニアさんがいなかったので。

リュウタ そうですね。話を持っていきやすそうなサウンドに関する意識の高いエンジニアさんを見つけて、少し仲良くなってから相談して開発してもらいました。そうやって関係性を築いてきたからか、開発側の意識も徐々に変わってきて、以前よりかなり話を進めるのがスムーズになりました。

職人的なスキルで仕上げられる
アニメパートのサウンド

アニメがふんだんに使用されているのは『プリコネR』の大きな特徴ですが、ゲームパートとアニメパートではサウンドの作り方は違ってくるのでしょうか?

ノブト BGMやSE、ボイスなどの要素を用意するのはゲームパートもアニメパートも同じですね。ただし、ゲームパートは各サウンド要素をユーザーの方の操作に合わせて鳴らす形式、アニメパートはすべてのサウンド要素を映像と融合した「完結したコンテンツ」として視聴していただく形式という違いがあるので、サウンドの作り方も異なっています。

リュウタ 『プリコネR』のアニメパートでは、TVアニメと同様のサウンドミキシング、MA作業をしています。このMAを担当しているのがノブトさんです。

▲社内スタジオでのMAの様子。アニメを見つつ、リアルタイムでMAミキサーを調整しながらBGM、SE、ボイスの音量バランスを整える繊細な作業です

ノブト MAでは、コンポーザーが映像に合わせて選曲・編集して当て込んだBGMや、サウンドデザイナーがキャラクターの動きや映像演出などに付けたSE、そして収録したキャラクターボイスを受け取って、映像に合わせて各要素のタイミングを調整し、ノイズの除去など加工を施すとともに、全体の演出を加味した音量バランスをとる作業を行っています。

アキヒロ MAの専任としてノブトさんが入ってくれたので、すごく助かっています。MAはかなり職人的なスキルを要する作業なので。

ユーザーのゲームへの没入感を高める
サウンド担当者としてできること

『プリコネR』はゲームシステムやUIなどでも「ユーザーの遊びやすさ」や「没入感」にとことんこだわっていますよね。サウンドに関するこだわりを教えていただけますか?

リュウタ 色々とありますが、例えばバトルの早送り時のSEなんかはそうですね。『プリコネR』では現在、最大4倍速でバトルを実行できるのですが、単純に早回しするだけでは音が高くなるなどして聞きづらくなってしまうんです。

▲音の長さを半分にすると周波数が高くなるため、音程が高くなったり、音質に影響があったりします

そのため、鳴っている個々の音の長さは変えずに、音と音の間隔を短くすることで再生時間を縮めるという手法をとっています。その他、さまざまな方法で音の重なりや長さを制御して、できる限り違和感のないように工夫しています。さすがに4倍速では違和感はありますが、破綻はしないようにできています。

▲左が通常再生、右が2倍速のイメージ。各音の素材は極力変えず、各音の間隔やフェードを調整して、音の高さを変えないようにしています

これにはサウンドを制御するソフトウェア(ミドルウェア)レベルでの対応が必要で、当時のミドルウェアのバージョンでは未対応だったので、ミドルウェアのメーカーに掛け合ってこの機能を搭載してもらいました。

ノブト 他には音量調節もそうですね。『プリコネR』ではBGM、SE、ボイスの音量を個々に調節可能なのですが、この設定がゲームパートとアニメパートの両方に適用されるんですよ。

いちユーザーとして今まで気付いていませんでした……!技術的には難しいことなのでしょうか?

リュウタ ゲームパートはBGMやSE、ボイスが別々のファイルになっているので、それらの音量を個別に設定するのは簡単です。これに対して、アニメは映像と音が組み合わさった1つの動画ファイルなので、BGMの音量は下げずにSEだけを下げるようなことは普通は難しいんです。
これは、多言語対応用の音声チャンネルを利用して実現しました。本来、外国語の音声を入れるためのチャンネルに、BGM、SE、ボイスを分けて入れているので、個別の音量で再生できるというカラクリです。

裏ワザ的な手法ということですよね。そこまでやるんですね……!

アキヒロ ユーザーのみなさんが気持ち良くプレイできるように、やれることはなんでもやりたいと考えています。
これらに限らず、『プリコネR』のサウンドにはまだまだ改善できる余地がたくさんあるので、これからもユーザーのみなさんに楽しんでもらえるように、より良いコンテンツを追求していきたいと思います!

後編では、「新卒スタッフが活躍するBGM制作の裏側」についてお届けします。