「佐賀にはないものがない(暴論)」 『ゾンビランドサガ リベンジ』放送記念!社長×プロデューサー対談
佐賀県を舞台に、ゾンビと化した少女たちがアイドルグループ「フランシュシュ」として活躍するTVアニメ『ゾンビランドサガ(以下、1期)』。その続篇となる『ゾンビランドサガ リベンジ(以下、2期)』が現在放送中です。
2期の放送を記念し、代表取締役社長・渡邊 耕一とアニメ事業部で『ゾンビランドサガ』シリーズのプロデューサーを務める竹中 信広の対談を実施。アニメにまつわる佐賀トークや企画立ち上げ当時の振り返り、佐賀拠点でのアニメ制作の可能性について2人に語ってもらいました。(※対談は4月初旬に実施)
- 代表取締役社長渡邊 耕一
- 佐賀県出身。社長として経営を行いながら、サイゲームスタイトルの制作にもアートディレクションを中心に様々な面から携わる。『ゾンビランドサガ』にも企画の立ち上げから関わっている。
- アニメ事業部竹中 信広
- TVアニメ『神撃のバハムート GENESIS』や『マナリアフレンズ』などを手掛ける。『ゾンビランドサガ』シリーズには、サイゲームスのプロデューサーとして企画から担当。
フランシュシュがアルバイト
「1期とは違うインパクトを」
本日はよろしくお願いします。
- 渡邊
- よろしくお願いします。
- 竹中
- お願いします。渡邊さんまだ3話まで見てないって聞きましたよ。
- 渡邊
- いや見たよ。データもらった当日に。でもまだOPは見てない。
- 竹中
- OPはまだできてないんですよ。ただ、チェックムービーは手元に。
(楽曲が流れる)
- 渡邊
- ……あれ、これEDじゃん(笑)昔っぽくしてるね。
- 竹中
- そうですね。本編とはまたちょっと違う感じで。
- 渡邊
- 1話の小島食品の歌しか聞いてなかったけど、EDも良いね。
1話の話も出たところで、渡邊さん、まずは2期を見ての率直な感想を教えてください。
- 渡邊
- なんか、『ゾンビランドサガ』とは違うね。1期とは違うけど、ちゃんと『ゾンビランドサガ』の続篇って感じ。
- 竹中
- 1期から想像していたものとは違ったって意味ですか?
- 渡邊
- とりあえず、奇襲を仕掛けようとしてる感じはないなと。
- 竹中
- ああ、なるほど。
- 渡邊
- だからそういう意味では『ゾンビランドサガ』ではないけど、『ゾンビランドサガ』の続篇だなって感じ。
- 竹中
- あはは。それは良い意味ですか?
- 渡邊
- 良くも悪くもだね。インパクトは薄れたけど、自然に話が続いているとも言える。
- 竹中
- 1期は主人公がいきなり車に轢かれますからね。2期であれほどのインパクトを超えるのは難しいなとなって、でもまた違ったかたちで衝撃を与えたいなと色々考えた結果、フランシュシュのみんながアルバイトしてるっていう。「どういう状況なんだ?」って見た人を思わせるような始まり方にしました。
1期の最終回で500人規模のライブを成功させ人気が出たかと思いきや、2期では駅スタ(駅前不動産スタジアム)でのライブに大失敗し借金地獄に。確かに1期とは毛色の違うインパクトがありましたね。
- 渡邊
- 駅スタのライブ、500人は少なすぎ。1000人は集まるだろって思った。
- 竹中
- そこは1期の「アルピノライブ」から間を開けずに駅スタでライブを開催してしまったからなんです。アルピノライブにきた500人の客がそのまま駅スタにきたって感じですね。
『ゾンビランドサガ リベンジ』の「リベンジ」は、駅スタライブへのリベンジでしょうか?
- 竹中
- はい。それが2期のメインテーマですね。ただ、佐賀を舞台にしているのでいろんな意味を含んでいます。
- 渡邊
- そうなんだ。まあ何個か意味があるだろうなとは思ってた。ところで2話に出てきたホワイト竜の声って白竜さんだよね?
- 竹中
- 白竜さんです。歌声も生歌なんですよ。声量があって、すごく透き通ってますよね。
- 渡邊
- 声が若い。もっと渋い声のイメージだったから「本当に白竜さん!?」って感じだった。なんかボンネットに乗ってたね(笑)。
- 竹中
- はい(笑)。本当はだめだけど、アニメとして面白く見える演出の線引きは結構悩みながら作ってますね。そもそも1期で警察官が拳銃撃ってるんですけど……。
- 渡邊
- まあね(笑)。
人気アイドルグループの前座ではあるものの、3話でフランシュシュのライブが決まりましたね。
- 竹中
- そうですね。3話は「サガアリーナ」でのライブに向けてフランシュシュが動き出す回でした。
- 渡邊
- 実際に佐賀にアリーナができるんだよね。
- 竹中
- そうなんです。まだ先ですけど、盛り上げていきたいですよね。『ゾンビランドサガ』を長く愛されるコンテンツにして、いつか佐賀のアリーナで実際にライブできたら夢が広がるなと。
- 渡邊
- 『ゾンビランドサガ』は特殊な進化を遂げてるよね。2月にフランシュシュの声優さんたちのライブに行ったときに痛感したけど、みんな上手いなって。もうアーティストになってるんだよね。
- 竹中
- そこは声優さんたちの努力の結果ですよね。
- 渡邊
- 練習したってのが伝わってきて、ライブとして楽しめた。「コンテンツ」じゃなくて「ライブ」だなって。結成当時のライブは「大丈夫……?頑張って頑張って!」って感じだったけど。
- 竹中
- わかります。ドキドキしながら見守る感じでしたね。
- 渡邊
- いまはそういうのがないね。普通に安心して聴いてた。もうアーティストのライブにきてる感じで、『ゾンビランドサガ』ってこと途中で忘れてたもん。アニメの動きに極力近づけようとしてるのもすごいね。
- 竹中
- あの姿勢はサイゲームスの考え方に通ずるとこがあると思ってます。お客さんに届けるためにはできるだけのことをやるというスタンスなんで。フランシュシュを演じる声優陣を見て、もっと仕事を頑張らなきゃとよく思わされます。
- 渡邊
- あとは改めて楽曲良いなって。この間のライブ見て、色々伝わってくるものがあったよね。
- 竹中
- それで言うと僕もプロデューサーで入ってるにも関わらず、やっぱ見てるときはいちファンですもんね。ただただ感動してもらい泣きしちゃいそうになるみたいな。2期もふんだんに新曲があるので楽しみにしてほしいです。
何もないようで何でもある
アイキャッチで佐賀を発信
『ゾンビランドサガ』の大元の企画は、なかなか渡邊さんのOKが出なかったそうですね。1期の立ち上げ当時のお話を聞かせてください。
- 竹中
- 「アイドルゾンビ」やりたいって言って、渡邊さんに企画持っていったんですけど……。
- 渡邊
- そもそも『アイドルマスター シンデレラガールズ』シリーズ (配信元:バンダイナムコエンターテインメント) の開発をやってるから、「少なくとももっと時間があかないと無理だよ」って言ったね。でも竹中が何回も企画書持ってきてさ(笑)。
- 竹中
- 最初はそうでしたね。
- 渡邊
- ゾンビだからダメなんじゃなくてアイドルだからダメって言ってんのに。しょうがないから「佐賀と絡めるんなら良いよ」って言ったんだよ。そしたらしばらくして、「佐賀ハマりました」ってきた(笑)。
- 竹中
- 「佐賀ハマりました」って言うより、アニメに落とし込むために渡邊さんに「ロケハン行きましょう」って言ったんです。
- 渡邊
- いやいや、「佐賀ハマりました」って俺にきたよ。
- 竹中
- ああ、確かに言ったかも。ただ、アニメチームが誰も佐賀に行ったことないのに佐賀の話ばっかりしてるから「じゃあ渡邊さんと佐賀へ一緒に行きましょう」ってなったんです。
- 渡邊
- で、アニメチームと俺でロケハンした。
- 竹中
- 佐賀で連れて行きたいところをまず渡邊さんに聞いて、そこを見に行く感じでしたね。そのとき真っ先に行ったのが「牧のうどん」と「ドライブイン鳥」でした。やっぱドライブイン鳥って店構えとかインパクト強かったですね。これはもうアニメ映えするなと。
他にロケハンから大きく本編に反映された場所はありますか?
- 渡邊
- フランシュシュが住んでる洋館だね。モデルになった建物は住宅街の中にあるんだけど、角を曲がった瞬間に現れて「なんじゃこりゃ」って感じだった。
- 竹中
- あそこは渡邊さんも知らなかったって言ってましたね。
- 渡邊
- 他にも銀行の跡地(旧唐津銀行「辰野金吾記念館」)とか色々行ったけど、やっぱりあの洋館が一番グッときたね。
- 竹中
- あそこへ行ったとき、本当に僕らの心は固まりましたよね。「佐賀でアイドルゾンビをやるぞ」って。
- 竹中
- 普段は休館中だけど特別に中も見せていただいて、雰囲気にすごく引き込まれました。あと海沿いにあるのも良いんですよね。建物内の一部は旧唐津銀行の内装を参考にしてたりします。
ロケハン時、竹中さんの佐賀への印象はどうでしたか?
- 竹中
- 失礼ですけど、ど田舎だなって。佐賀空港の周辺って、見渡す限り田畑が広がってるんですよ。大体空港は市街地から離れてるから当たり前なんですけど。車で走りながら、「佐賀って何もないですね」ってところからロケハンがスタートして。
- 渡邊
- アクセス的には福岡空港のほうが便利なこともあるしね。
- 竹中
- ああ、福岡が隣県ですもんね。でも、佐賀の何もない感じがちゃんと作品に反映できるから良いなって降り立ったときに思ったんですよ。過疎化対策で地域振興に取り組む佐賀県と、ゾンビになってアイドルとして佐賀を救おうとするフランシュシュの姿がリンクすると面白いなって。
それぞれに聞きますが、佐賀のどんなところが魅力だと思いますか?
- 渡邊
- ご飯が美味しいところだね。佐賀と戦えるところってなかなかないと思う。
- 竹中
- 僕は佐賀出身じゃないから客観的に見て思うんですけど、やっぱ佐賀のすごいところは海が2種類あることなんですよ。北と南に海が面してる県ってほとんどないんじゃないかと。しかも北と南で海産物が違うじゃないですか。その魅力が大きいかな。
- 渡邊
- 確かに。北にはイカ、南にはノリがあるね。
- 竹中
- 僕はもう、佐賀は生活する上ですごく良い場所だと思ってます。
- 渡邊
- Cygames 佐賀スタジオ(以下、佐賀スタジオ)に行った人はみんな「きて良かった」って言ってるからね。何もないと思ってたけど何でもあるじゃんみたいな。言い過ぎだけど。
- 竹中
- むしろ、ないものがないんじゃないかな。農業も盛んですしね。タマネギの生産量なんて日本で2位だし。ただ、1位にはなれないんですよね。
- 渡邊
- 1位はだいたい北海道だから(笑)。まあだから、アイキャッチでしっかり佐賀の魅力を出していこうって話はしたよね。
- 竹中
- それで思い出した。2期の3話、渡邊さんがリクエストした「井手ちゃんぽん」と「伊万里ちゃんぽん」をアイキャッチで出しましたよ!
(アイキャッチを見せる)
- 渡邊
- 椎茸が入ってない。
- 竹中
- (……椎茸?)
- 渡邊
- 伊万里ちゃんぽんの最大の特徴は椎茸だから。
- 竹中
- ここに入ってるじゃないですか、椎茸。
- 渡邊
- いや、薄い。
- 竹中
- いやこれ、今から直せるかな……。ちょっと1回現場に確認して良いですか。「椎茸足せますか」って。
佐賀の名産品とのコラボ商品を出したりラッピングバスが走っていたり、これまで佐賀にまつわるさまざまな施策を行ってきました。今後やってみたいことはありますか?
- 竹中
- さっきも触れましたが、やっぱり佐賀でもっと大きなライブをやりたいですね。アリーナもできますし。そのためには多くのファンの方々が佐賀まできてくださる状況を作らなければいけません。コンテンツとしてしっかり継続して人気を広げていければ可能性は出てくるのかなと。
- 渡邊
- これは言っておきたいけど「佐賀って『SAGA(エスエージーエー)佐賀』でしょ?」って言われたら嫌な県民もいるからね(笑)。
- 竹中
- 佐賀と言えば未だにそのイメージが根強いみたいですね。
- 渡邊
- 当時は良かったけど、10年以上も同じことを言われ続けるとね……。
- 竹中
- それで言うとアニメが短期的な人気で終わらないことが重要だと思っているので、「佐賀と言えば『ゾンビランドサガ』でしょ?」って言われるようにしたいですね。
佐賀でもアニメ制作を?
アニメ事業部の展望
2020年4月に佐賀スタジオが稼働しました。今後、佐賀拠点でアニメを制作する可能性はありますか?
- 渡邊
- 将来的な可能性の話だよね。まずは佐賀でアニメを作れる人たちを増やすことからかな。それでスタジオと呼べるくらいになったら佐賀拠点で制作するかもしれないねって。
- 竹中
- コロナ禍の影響で、アニメ制作の環境も思わぬところでリモートワーク化してるんですよ。だから想像していたより早く、佐賀での制作環境を整えられるかもしれません。佐賀と東京で仕事するのは実際にサイゲームスがやってることですし。ゲームの他にアニメ制作でも可能なんじゃないかなと今は思ってますね。
- 渡邊
- Cygames 佐賀デバッグセンター(以下、佐賀デバッグ)を作って思ったけど、佐賀にも優秀な人たちがいるんだよね。佐賀にいると、ずっと佐賀で暮らすのが当たり前みたいな雰囲気が少なからずあって。
- 竹中
- 佐賀というか、地方のあるあるかもしれませんね。
- 渡邊
- 何となくだけど、佐賀から福岡に出るのは許されるっていうか。そしたら「あいつは福岡で頑張ってる」ってなる。でも俺、東京に出てきたでしょ。だから「あいつは東京で遊んでる」って言われてた。
- 竹中
- まあ、言ってることは何となくわかりますよ。
- 渡邊
- 佐賀デバッグを機にいろんな事情で地方に残る人はいるんだなって改めて知ったね。だから、地方に残った優秀な人たちに働いてもらえたら良いな。
- 竹中
- そうですね。アニメ制作会社のCygamesPicturesで新卒採用をしていると、将来的には地元に戻りたいって気持ちを持っている人も多いので、そういった人たちの受け口を作ってあげられると良いですよね。
- 渡邊
- 確かにいずれは九州に帰りたいって人は多いね。やっぱり、自分の親の面倒はちゃんと見なきゃって。
- 竹中
- 僕自身、地元ではないですが早く佐賀で仕事したいなって思ってるので。だから佐賀で仕事できる環境を自分で作って、将来的に佐賀スタジオで勤務するのが僕の夢ですね。
最後に4話や今後の見どころについて教えてください。
- 竹中
- 3話で愛が「アイアンフリル」にスカウトされていますが、その後の展開はみなさんのご想像通りかもしれません。ただ、そこをどう描くかが『ゾンビランドサガ』だと思っているので楽しみにしてください。
- 渡邊
- 俺はゆうぎり回が気になるね。どんな話になるのか。
- 竹中
- ゆうぎり回があるのかないのかってところからですね。
- 渡邊
- あと、ゆうぎりが働いてる「スナック千夏」に行きたい。ゆうぎりだったら悩み聞いてくれそう。
- 竹中
- それは実現できるようにしたいなと。
- 渡邊
- 嘘!?
- 竹中
- ゆうぎりがVTuberになるので。スナックを舞台にゆうぎりとお話しができます。
- 渡邊
- そういうことか。あ、ふと思ったけど、3期があるとしたら、アイキャッチは佐賀の偉人が良いかもね。鍋島直正とか江藤新平とか、色々すごい人たちがいるんだよ。
- 竹中
- なるほど。佐賀って歴史があるから、掘り下げれば色々出てくるんですよね。調べていくと結構面白くて。佐賀はやっぱり良いですね。
以上、渡邊と竹中の対談をお届けしました。コロナ禍なのですぐには難しいかもしれませんが、落ち着いたらぜひ佐賀に遊びに行ってほしいと2人は口をそろえていました。
先日YouTubeの「CygamesChannel」で放送したVTuberのゆうぎりにもご期待ください!
©ゾンビランドサガ リベンジ製作委員会