音楽業界の常識を打ち破る人材活用術!? サイゲームスが目指す最高のサウンド制作<後編>

インタビュー前編では、『プリンセスコネクト!Re:Dive(以下、プリコネR)』のサウンド制作陣に、同作のサウンドが生まれるまでの過程や、サウンドを作る上でのこだわりを聞きました。

後編となる今回は、サウンドチームの体制について聞いていきます。2018年度、2019年度入社の若手を積極的に起用し、アシスタント的な業務ではなく制作のメイン部分を任せているという、驚きの人材活用方法に込められた意図とは?

サウンド部 プロデューサーアキヒロ
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大手ゲーム開発会社で世界的プロジェクトのサウンド開発に携わった後、2015年よりサイゲームスに入社。『プリンセスコネクト!Re:Dive』では作曲家としても活動している。
サウンド部 サブマネージャーリュウタ
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2014年にサイゲームスに入社。『Shadowverse』や『プリンセスコネクト!Re:Dive』等の組み込み、効果音制作、プロモーションを担当。マネジメント業務も行っている。
サウンド部 サウンドミキサー・音響監督ノブト
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音響制作スタジオで複数のアニメーションにサウンドミキサーとして携わり、2018年にサイゲームスに入社。他プロジェクトでは音響監督としても関わっている。

新卒スタッフにメインの仕事を任せつつ
サウンドの質と量を担保する

あらためて基本事項から確認させてください。『プリコネR』のサウンド制作チームは現在何人体制なのでしょうか?

アキヒロ 社内では私たち3名を含む14名が関わっています。BGM担当は8名で、専任スタッフもいれば1曲のみ担当しているスタッフもいます。サウンドデザイン担当は6名で、同じく専任スタッフもいれば他プロジェクトと兼任しているスタッフもいます。それ以外に社外の作曲家や編曲家の方などにも発注しているので、チームの規模としては20名以上になります。

20名以上も関わっているんですね!それだけ人数がいる場合、どういった業務の割り振りをされているのでしょうか?

リュウタ 社内外ともに、コンテンツの内容やスタッフのスケジュールによって常に最適な配置を考えて調整しています。BGMで1曲のみ担当しているスタッフがいるのもこのためですね。

ノブト メインストーリーのアニメパートのMA(マルチオーディオ)では、社外の音響効果の方にも一緒に作業していただいています。他のサウンドデザインについては、社内の専任スタッフ1名と他5名のスタッフで対応しています。こちらも同様に、内容に応じて最適な配置になるように業務が割り振られています。

アキヒロ 1本のスマホゲームのサウンドチームとしてはかなり大規模ではありますが、スタッフ一人ひとりのワークライフバランスを考えながら『プリコネR』のサウンドの質と量を両立させるためには必要な規模だと考えています。

『プリコネR』のサウンドチームには若手が多いと聞いているのですが、実際はどうなのでしょうか?

アキヒロ BGMに関わる8名のメンバーのうち、2018年度の新卒入社スタッフが3名、2019年度の新卒入社スタッフが2名います。現在、大部分の仕事は新卒スタッフがやっていますね。

新卒スタッフがメインの仕事をしているんですか?それはゲームのサウンド制作では普通のことなのでしょうか。

アキヒロ 異例だと思いますよ(笑)。新人は見習いとかアシスタント的な立場で経験を積むというのが一般的です。昔のゲーム会社や小規模プロジェクトで、人員不足から新人がメインで担当するようなことはありましたが、『プリコネR』のような規模と質を求められたら、普通は怖くて新人には任せられないでしょうね。

具体的にはどのような業務を新卒スタッフが担当しているのですか?

アキヒロ ほぼ全工程をやってもらっています。BGMの作曲はもちろん、スタジオでの楽器収録では演奏者へのディレクションも自分でしますし、仕上げの工程であるTD(トラックダウン)でもディレクションをしています。
また、出来上がった曲をゲームへ組み込み、最適な状態で音が鳴るように実装するのも彼らの仕事です。ADV(会話)パートについて、250曲くらいある既存曲の中から選曲するのも彼らが行なっていますね。
私は、新卒スタッフが行うスタジオでのディレクションや、彼らが作った制作物のクオリティーをチェックして、改善点や懸念点があれば随時指示を出しています。任せっぱなしにして不安にさせることはありません。

リュウタ 他にも外部の作曲家や編曲家の方とのやり取りやスケジュール管理などもそれぞれが自分で考えて対応しています。一通り全部の作業を新卒スタッフがこなしています。

にわかには信じられないのですが……。正直、実務経験がない人がすぐに戦力になり得るものなのですか?

アキヒロ 普通であれば絶対に無理ですよね。サイゲームスでは細かいHow To だけでなく、モチベーションも向上するような研修をしているので、彼らはやる気に満ち溢れていて、かつ結果も出していますよ。

▲オーケストラによる収録現場の様子。新卒スタッフが制作した楽曲は、演奏のディレクションを自分で担当します

ゲームサウンド業界の通例では、入社して1~2年の新人が大人数の収録スタジオに入ってディレクションし、自分の曲が生まれ変わる経験をするチャンスはほぼないです。そもそも打ち込みのみで楽器収録がないプロジェクトを任されることが多いと思います。収録スタジオに行く機会もなく、外部で活躍されている作曲家やエンジニアの方と話すこともまずありません。そのため、普通はどうしてもアシスタントや見習いの扱いになってしまうと思います。
その点、サイゲームスの新卒スタッフはアシスタントどころかメインで仕事を回す立場なので、スタジオでも作曲家やエンジニアの方と相談しつつ主体となって収録を進めています。新人のうちにこれだけ仕事を任されるというのは、なかなか経験できないことだと思います。その分成長も速いですよ。

そう聞くと、何だか厳しい環境のようにも思えますが……。

アキヒロ いえいえ、育成方針としてはむしろその反対だと思いますよ。無駄な回り道をしないので、不要な焦りや心配、不安や疑念にとらわれることがないですから。みんな楽しく合理的に、そして心に適度な緊張感とゆとりを持って仕事をしていますよ。
業界でよく聞く話なのですが、「BGM4〜5曲を1週間で作ってください」というような無理な納期設定を課すこともしていません。1曲に1か月かかっても良いと言っています。その代わり、質の高い曲を作りなさいと。実際には数日くらいで出来上がってくることが多いですが、焦らせることは絶対にしません。スピードを求めず、1つを高いクオリティーで完成させることに重きを置いています。

リュウタ もちろん、ゲームの更新スケジュールは決まっているので、一定期間内に曲数を揃えることも必要です。『プリコネR』は、月に7~8本の新曲が実装されるので、そこはスタッフの人数を増やしたり、外部の作曲家の方に発注したりすることでカバーしています。スタッフ業務量を考慮しつつ、任せるところは任せることで、人材育成の観点でもプラスに働いていますね。

アキヒロ テーマ曲を作っていただいた田中公平先生をはじめ、外部で協力していただいている作曲家の方たちは一流ばかりで、その方たちが作った曲と並べて遜色ないクオリティーの曲を作る必要があります。焦っても良いものはできないし、じっくり取り組まないと身に付きもしません。むやみにプレッシャーをかけても良いことはなくて、つぶれていくばかりなので。

ノブト 中堅だってプレッシャーでつぶれますからね。新人ならなおさらです。プレッシャーをかけられると怖くなって、上司に相談しなきゃいけないこともしなくなって、それでまた怒られるという、悪循環に陥ってしまいます。

仕事にじっくり向き合わせてもらえるのは良いですね。とはいえ、新人ゆえに適切なスピード感というのがわからず、無意識に急いでしまうこともありそうですが?

アキヒロ  そういったことがないように、サイゲームスのサウンド部では「スピード=最良ではない」という考え方を徹底しています。
昨今の曲の制作難易度は高いですし、ユーザーのみなさんにとって1曲の制作期間の短さというのは全く関係のないことですから。ユーザーのみなさんに満足いただけることが最大の目標です。

▲スタジオMAに立ち会っていたサウンドチームの若手メンバーと一緒に

リュウタ そのため、いつまでに何曲必要で、そのうち何曲は自分で作って、何曲は外部の作曲家の方に発注して……といった計画を、新人のうちから自分でスケジュールを立てて管理するかたちをとっています。

アキヒロ もちろん、最初からすべてを完璧にできるわけではないので、納期が遅れそうになったりクオリティーが不十分だったりということはあります。私の仕事は、そうなったときにどうすれば良いかを考えて的確な施策を施し、精神的にも実務的にも現場の支柱になることです。
とはいえ、みんな優秀に育ってくれているので、なかなか私が現場まで降りていく機会はなくなりましたね。

すべては本人のやる気次第!
サイゲームスらしい育成術とは

厳しいようでいて、すごく大事に人を育てているんですね。他に、人材育成の面でサイゲームスらしい部分って何かありますか?

リュウタ 何かをやりたいと声を上げたら任せてもらえることですね。「このパートを担当したい」とか「この仕事をやりたい」といった希望を出せば、「じゃあやってみて」となる。基本的に、本人の意思を尊重して仕事を任せてくれます。

ノブト サウンド職の中でもカテゴリーによって適性があるので、一般的には一度入社したらずっと作曲だけとか、ずっとSEだけという人もいます。サイゲームスの場合は、SEの人が曲を作りたいと言えば作らせてもらえるし、その逆もあります。もちろん1つのカテゴリーを専門的にとことん突き詰めてもかまいません。本人の「やりたい」という気持ちがあれば、さまざまなことに挑戦させてもらえる環境です。

アキヒロ これはサウンド職に限ったことではなくて、サイゲームス全体がそういう風土です。『プリコネR』のサウンドチームにいる新卒スタッフの1人に、実は総合職として入社した者がいます。サウンドを含むクリエイター職と総合職とは採用枠が別で、双方の垣根を越えた異動というのはあまり前例がなかったのですが、彼の意欲が買われてサウンド部への配属が実現しました。もちろん、趣味の一環として独学でサウンドの知識は身に付けてはいたのですが、このような転向を許容する会社というのは珍しいのではないでしょうか。

ノブト 経歴としてはかなり異色ですが、今では彼も、他のサウンドの新卒スタッフと一緒にバリバリ仕事をしていますからね。頼もしいです!

挑戦を後押しした結果が成長に繋がっているのは良いことですね。それでは、サウンドチームとして仕事をするうえで大事にしていることを教えてください。

アキヒロ 「チームを大切にする」ということです。一人ひとりが個として立ったうえで、誰でも得手不得手はあるので、お互いの良いところを出し合ってより良いものを作るようにしています。会社のミッションステートメント(行動指針)の1つである「常に「チーム・サイゲームス」の意識を忘れない」ですね。みんな本当に仲がいいんですよ。

最後に、サイゲームスで働くことに興味を持っている人たちに、メッセージをお願いします!

リュウタ 新人が働く環境としては、サイゲームスはとても恵まれていると言えると思います。先ほど出てきた新人の話もそうですが、チャレンジしやすくて、何事も自分次第という会社はなかなかないと思います。

ノブト チャンスはそこら中に転がっている会社です。基本的にクリエイターがやりたいと言ったことをやらせてくれますし、後押しもしてくれます。だから、やる気のある人、やりたいことがある人にとってはとても良い環境だと思います。

アキヒロ キャリアの有無も関係ないです。本当の意味で、好きなことや楽しいことが仕事になります。新卒スタッフたちも「この会社に入って良かった」と全員が言ってくれています。興味がある方、いつでもお待ちしております!