先端コンテンツチームの仕事とは?先端技術で新しい体験を創り出す【サイゲームス仕事百科】

ゲームの開発をしていく上で生じる様々な課題や要望を解決する部署、開発運営支援(通称、デブサポ。デベロッパーズサポートの略称)。先端コンテンツチームはこの部署内の1つのチームで、VRやAR(※)などに関わるコンテンツ、VTuber配信コンテンツなど、サイゲームスのIPと先端技術を掛け合わせた様々なコンテンツの開発運営支援をしています。今回はこの先端コンテンツチームの仕事について、マネージャーへの取材を基に解説します。

※ AR……Augmented Reality(オーグメンティッド・リアリティー)の略。実際の風景にバーチャルの映像を重ね合わせて表示することで、自覚的に現実世界を拡張する技術のこと

最新技術のことならお任せあれ
プロジェクトを超えたコンサルタントチーム

ここでいう「先端コンテンツ」とは、メタバース、360度動画、3DCGホログラム、空中ディスプレイ、プロジェクションマッピング、VRやARなど最新の技術(先端技術)を用いて制作されたコンテンツを指します。

2023年1月に行われた「グラブルフェス2022-2023」では、「グラブルフェス Special Character Live」で『グランブルーファンタジー(以下、グラブル)』のキャラクターたちによるライブステージが繰り広げられました。

▲【グラブルフェス2022-2023】Day1生中継:「グラブルフェス Special Character Live」パート

このステージは『グラブル』のキャラクターとARの技術を掛け合わせたライブコンテンツであり、このコンテンツのキックオフにおいて技術面を支えたのが今回ご紹介する先端コンテンツチームです。ARライブコンテンツやオフラインイベント向けのXR(※)コンテンツ、VTuber配信コンテンツなど、 サイゲームスのIPと先端技術を活用した様々なコンテンツ制作支援を行っています。

※ XR……クロス・リアリティ。VR、ARなどの技術の総称

先端コンテンツチームは、専門性の高い技術を用いたコンテンツを開発するために発足しました。このチームが存在することで、プロジェクト業務の負担を軽減できます。例えば、ゲームの開発・運営中に「今話題の先端技術を使ってコンテンツを作れないか?」とプランナーが考案したとします。しかし、プロジェクト内でこの企画を進行するには普段通りの業務を受け持ちながら、同時に最新技術について実現可能かを調べて外部の協力会社へ依頼する、またはツールやソフトを導入して自分で制作する……といった、負担の重い作業が別途必要になります。それゆえ開発・運営中のスタッフはこうした業務にあてる時間を十分に持てずに、プロジェクト内のみで最新技術を用いたコンテンツ制作は困難になりがちでした。

先端コンテンツチームはプロジェクトが抱えるこのような課題を解決するため、2019年に設立されました。プロジェクトの枠を超えて最新技術に関わる調査から検証、コンサルティング、コンテンツ制作、イベントでは設営、現場対応までを受け持っています。

先端コンテンツチームの体制と主な仕事内容

先端コンテンツチームは、社内で「デブサポ」の愛称で呼ばれる開発運営支援の中の1チームです。
開発運営支援はサイゲームス全体のコンテンツの品質向上に貢献するため、プロジェクトから独立したかたちで開発・運営中のプロジェクトにおける課題解決、要望実現、作業の効率化を促進しています。
今回ご紹介する「先端コンテンツチーム」をはじめ、「プロジェクト共通基盤チーム」「自動化支援チーム」「サポートチーム」の4つに分かれています。

【チーム体制】
■先端コンテンツチーム
ARライブやVRコンテンツなど、先端技術を用いたコンテンツ開発を支援します。企画の内容によって、技術面のコンサルティングのみを行うこともあれば、コンテンツの制作支援まで行うこともあります。外部の企業と連携して開発に当たることもあります。

■プロジェクト共通基盤チーム
様々なプロジェクトへの転用・流用を念頭に置き、ゲーム開発を支援する様々なサービス・ツールを開発します。特定プロジェクトからの要望であっても専用のサービス・ツールとはせず、他のプロジェクトでの利用を想定した仕様検討や開発を行っています。

■自動化支援チーム
開発・運営の作業について、自動化の観点で支援します。プロジェクトの内部に入ってワークフローを理解し、時間がかかっている箇所を見つけて改善したり、フローの中で共通している作業を見つけて自動化する仕組みを作ったりします。

■サポートチーム
部署外からの相談や問い合わせ対応や、ゲーム開発の進捗管理で使用するJiraの活用サポートなど、様々なオペレーション業務、ドキュメント整理を行います。

将来的に必要になる技術の研究に特化した先端コンテンツチームは、現在のスタッフ5名で、それぞれの分野で秀でた才能豊かなスペシャリストが揃っています。

先端コンテンツチームの仕事は大きく分けて以下の2つです。

■技術トレンドの調査・検証
プロジェクトから相談があった際に適切に回答し、また先端技術を活用したコンテンツ制作の提案ができるよう、XR、メタバースなどの先端技術へ先行投資し、調査、検証を行います。プロジェクトから離れ、独立したサポート専門チームとして担当することで、会社全体で技術を活かしやすくする側面もあります。

■先端技術を活用したコンテンツの開発
先端技術とサイゲームスのIPを組み合わせてコンテンツ制作を行っています。別会社に制作を依頼するような直接的に制作へ関わらない場合でも、企画時点で実現可能かどうかの判断、外部相談の際の技術的なコメント、プロジェクトからの相談対応など、コンサルタントの役割を果たします。

【先端コンテンツ制作実例】

  • 「グラブルフェス」の「VR四騎士」「VR天司」「キャラクタートークスポット」の開発・運用、「Special Character Live」のAR技術コンサルティングやテクニカルディレクション
  • 『プリンセスコネクト!Re:Dive』の「スペシャルキャラライブ」におけるAR技術コンサルティング
  • 「ぱかチューブっ!」のサポート
  • その他オフラインイベントに設営するコンテンツの企画立案と要件定義、実装、当日の設営
  • その他、開発中コンテンツ
▲「グラブルフェス2022-2023」より「キャラクタートークスポット」

オフラインイベントでは施工を実施する企業と連携しての会場検討、機材の選定、設置確認、イベントの現場対応、撤収作業を行うこともあります。制作会社とのミーティングに同席した結果、やはり先端コンテンツチームが担当となる場合もあり、開発・運用のフローはケースバイケースです。

先端コンテンツチームの業務・制作フロー

次に、先端コンテンツチームの制作フローをご紹介します。
前述の通り、案件によってどこまで何名がサポートに入るか、どこまで制作に関わるかなどが大きく異なります。
今回は一例として「グラブルフェス」から、キャラクターとのおしゃべりを楽しめるアトラクション「キャラクタートークスポット」(※)の制作例を基に、大まかなフローを説明します。

※ キャラクタートークスポット……「グランブルーファンタジー」のリアルイベント「グラブルフェス」のアトラクションの一つ。ジークフリート、サンダルフォン、ナルメアといった複数のキャラクターの中からランダムで一人がスポットに登場し、希望者が挙手してキャラクターから指名をもらえたら1対1で会話を楽しむことができる他、「歌って」「踊って」などの要望に応えてもらうこともできる

1.各プロジェクトや部署からの相談

プロジェクトから先端技術を使ったコンテンツ制作の相談が来たら、何の技術を使ってどのようなことをやりたいといった、目的を明確にする要件定義を行います。多くの場合、相談者はエンジニアではないので先端技術については詳しくない人がほとんどです。したがって、相談者が想像する「やりたいこと」を事細かにヒアリングし、どうすればどこまで実現できるのかを見定めることが重要です。

「キャラクタートークスポット」の場合は『グラブル』のプロジェクトから「最初のミーティングに出てくれませんか」と相談を受けたところから始まり、このミーティングを経た結果、社内で制作することになりました。

2.開発プロダクトの仕様策定

社内で制作するのか外部へ依頼するのかといった目星が付いてきたら、プロジェクトメンバーと一緒に検討・相談しながら機能や使用ツールなどの仕様を決定します。普段から先端技術に先行投資をして研究を進めることにより、該当の技術に「どんな機能がある」「何ができる」などが把握でき、提案をスムーズに行えるようになります。

3.開発

プロジェクトと相談をしながら仕様に基づいてプロダクトを開発します。お客さまにどんな体験をしてほしいかといった、感覚や体感で判断が必要なプロダクトについては、文字でやり取りするのではなく、モックを作って「AとBどちらが良いか」選んでもらうなど、判断しやすい方法でプロジェクトに提案するようにしています。

4.実装・デバッグ

開発したプロダクトに対し、プロジェクトから出されたフィードバックを反映しながら、デバッガーと連携して実装・デバッグを行います。

5.設営・撤去

イベント会場で設営し、現地でも正常に動くかテストを行います。イベント終了後の撤去まではなるべく先端コンテンツチームのスタッフが付き、エラーが起きたときすぐに対応できるようにしています。

制作フロー1.の「各プロジェクトや部署からの相談」は専門知識が必要なので、スタッフそれぞれの得意分野によってアサインすることが多いですが、案件内容や抱えている業務によって柔軟に変えています。
コンテンツ制作についてプロジェクトや部署から相談を受ける他に、先端コンテンツチームが提案することもあります。また、特に先端技術を使った展示型コンテンツは設営場所ややりたいことによって求められる技術や費やす時間が大きく異なるため、フローは案件ごとに同じものはほとんどないと言っても良いかもしれません。

制作フロー1.でも述べましたが、コンテンツ制作の依頼者は基本的にエンジニア以外のスタッフがほとんどです。しかしながら確認事項が多く発生するので、モックを作ったり、動画ツールなどを駆使したりして、確認の手間を減らすよう心掛けています。

先端コンテンツチームのスタッフに
求められるマインドとスキル

続いて、先端コンテンツチームに求められるスキルやマインドについてご紹介します。

■新しいものへのチャレンジ精神

最新技術を活用するというチームの性質上、新しいものを追いかけることが好きな人、誰も試したことがないことにも躊躇せずにチャレンジできる人が向いています。「とりあえずやってみよう!」というマインドが大切です。

■コミュニケーション能力

制作の過程で最も起こりやすいミスは、「コミュニケーションミス」です。言葉でやり取りしていても依頼者との解釈がずれ、そのまま気付かず制作が進んでしまうケースもあります。モックを始めとした制作物を作って認識を合わせると同時に、相手が何をしたいと考えているか、何が課題になっているのかを見定めて、的確に提案していけるコミュニケーション能力が必須です。

■行動力

上記2つのスキル・マインドと合わせて、自分からアクションを起こせる行動力も重要です。通常のプロジェクトの業務に+αとして介入する先端コンテンツでは、新規技術の導入やコミュニケーションに関する待ちの姿勢が制作進行の遅延に直結します。少数精鋭のチームですので、結果を出すためには目的を把握して率先して行動することが求められます。

先端コンテンツチームの仕事のやりがい

今まで誰も世に送り出したことのないコンテンツを作り上げたときにやりがいを感じます。世の中に似たコンテンツはあってもここまで作り込んだものがなかったり、誰も思い付かなかったような制作物を自身で考案し実際に動かしたりしたとき、面白さと達成感を得ることができます。
さらに、フェスの現地でお客さまがコンテンツを体験して喜んでいる姿をみたときは、コンテンツを制作して良かった、と心の底から思えるはずです。「キャラクタートークスポット」の開発は数年前から進んでいたのですが、新型コロナウイルスの拡大防止で「グラブルフェス」自体が延期になり、お客さまに体験していただくタイミングが想定より遅くなってしまいました。その分、日の目を見たときの喜びもひとしおでした。

現在チームとしてはまだまだ小規模なので、「キャラクタートークスポット」をはじめとしたコンテンツでキャラクターの体数やモーションが多くなってくると大変だと感じる部分はあります。今後はキャラクターの追加をより効率的にできるよう開発していくと同時に、さらに新しい技術や手が出せていない分野にも挑戦していくため、今のチームのスタッフにいないスキルを持った方にも合流していただきたいと考えています。

先端コンテンツチームのキャリアパス

現状、先端コンテンツチームのメンバーは全員中途採用のスタッフで、ゲーム業界のみならず異業界から合流している方も多くいます。例えば広告業界で先端コンテンツを制作していた方、ゲーム業界出身でUnityに強い方、IT業界出身でSNS・サーバーに強い方など、得意ジャンルによって出身業界は様々です。

また第二新卒のような未経験者でも、先に述べたようなマインドが備わっており、後々業務を任せられそうだと感じた方は積極的に採用しています。未経験の場合、技術コンサルや相談のヒアリング、展示、設営、デバッグができるようになるにはかなりの年月が必要になりますが、約2~3年あれば要件が上がってきたときに何を対応すべきかを考え、自発的に動けるようになるでしょう。合流後はチーム内のトレーナーとOJTを経て業務のやり方を学んでいただくことになります。

キャリアとしては、コンテンツ制作の技術的なディレクションやアーキテクトを確定していく上で裁量が持てるようになっていきます。コンテンツ制作において、どんなコンテンツを作るかはプランナーやプロデューサーに主導権がありますが、どんな技術を使うか、組み合わせるかはエンジニアに主体的に進めていきます。先端コンテンツが制作に関わるコンテンツは特殊なものが多く、自分で開発プロセスやスケジュール、チームタスク管理を把握する必要があるため、いわゆるプロダクトマネージャーのようなキャリアが築けるでしょう。

案件ごとに担当も柔軟に対応しているように、スタッフの希望の働き方に合わせたチーム編成も行っています。スタッフのうちの男性1名は2021年6月から2か月の育休を取得し、その後もお子さんの事情などに合わせてチームで相談しながら業務にあたっています。

先端コンテンツチームを
目指す人へのアドバイス

サイゲームスは「最高のコンテンツを作る」ため、設備や環境整備への投資を積極的に行っています。機材やクラウドサービスなども必要であれば手厚いサポートがあり、先端コンテンツが先行投資を行うべきだと判断した技術に対しても、会社の全面的なバックアップが得られます。

採用面接ではみなさんに「(サイゲームス以外のタイトルを含む)ゲーム全般をプレイしているかどうか」を聞いています。既にリリースされているゲームから新しいコンテンツを作ることが多いため、普段ゲームをする方のほうがアイディアの引き出しが多く提案しやすいと考えるからです。
経験やスキルも重要ですが、3つのマインド「新しいものへのチャレンジ精神」「コミュニケーション能力」「行動力」を持った方にぜひ来ていただきと考えています。


以上、先端コンテンツチームの仕事についての解説でした。
現在サイゲームスでは、一緒に働く仲間を募集しています。この記事で興味を持った方は、ぜひ一度こちらをチェックしてみてください。

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