開発運営支援の仕事とは?開発・運営上の課題解決のための相談窓口【サイゲームス仕事百科】

ゲームの開発や運営の過程では、さまざまな課題や要望が生じます。その中にはプロジェクト内だけでは解決することが難しい課題や要望もあります。そこで、そうした課題や要望について「どうしたら解決できるか?」を調べて解決の筋道を立てるのが開発運営支援(通称、デブサポ。デベロッパーズサポートの略称)という部署です。今回はサイゲームスの開発運営支援の仕事について、マネージャーへの取材を基に解説します。

開発・運営に関する困り事なら
何でも相談に乗る部署

ゲームの開発・運営にとって理想的な状態とは、効率化できる作業はなるべく効率化し、コンテンツのクオリティーアップに時間と手間をかけられることです。例えば、同じような単純作業が繰り返し発生するのであれば、ツールを用いて作業を自動化することで、時間的な余裕が生まれる場合もあります。そこで生まれた時間を、コンテンツをもっと面白くするにはどうしたら良いかを考える作業に充てるべきというのが、サイゲームスの考え方です。我々開発運営支援の仕事は、そのようなコンテンツのクオリティー向上のための支援業務です。主にエンジニアリングを用いて、開発・運営上の課題を解決することに努めています。

そう言うと難しく感じるかもしれませんが、簡単に言えば「開発と運営に関するよろず相談所」のようなイメージです。プロジェクト内に解決したい課題や実現したい要望があるけれども、それを実行するための手段がわからないといったときに、まずは相談してもらうという立ち位置です。課題解決や要望実現のための筋道を立て、必要に応じて自分たちで開発に携わったり、あるいは社内外の専門部署に繋いだりすることが我々の仕事です。話を聞いてみないとわからないことも多いので、自分たちの専門ではないと思われることを含め、困り事があったら何でも相談に乗りますよ、というスタンスで運営しています。「デブサポ」という通称も、社内の人に親しみを持ってもらう意味で使用しています。

元々は、プロジェクト内でゲーム開発や運営に直接関わるスタッフとは別に、プロジェクトの枠を超えて業務の効率化や課題解決を専門に手掛ける部隊がいたほうが良いというところから、開発運営支援の前身となる部署が生まれました。以前、本Webメディア「Cygames Magazine(以下、サイマガ)」でご紹介した「開発推進室」と「プロジェクト共通基盤」という2部署体制も、その変遷の一過程と言えます。その後、開発・運営の現場の要望によりフィットできるように組織を再編成して、現在の体制に至っています。

開発運営支援の仕事内容

開発運営支援は、手掛ける内容によって「先端コンテンツ」「プロジェクト共通基盤」「自動化支援」「カンファレンス運営」の4つのチームに分かれています。

■先端コンテンツ

サイネージやARライブといった特殊なコンテンツ作成を支援するチームです。例えば「グラブルフェス2019」で実施したVRコンテンツ、またARライブコンテンツや各種VTuberコンテンツなどが挙げられます。企画の内容によって、技術面のコンサルティングのみを行うこともあれば、コンテンツの制作まで行うこともあります。外部の企業と連携して開発に当たることもあります。

■プロジェクト共通基盤

共通化を念頭に置き、ゲーム開発を支援するさまざまなサービス・ツールを開発します。特定プロジェクトからの要望であっても専用のサービス・ツールとはせず、他のプロジェクトでの利用を想定して、仕様検討や開発を行っています。社内でスライドや動画などの資料データを共有するストレージサービス「CyResource(サイリソース)」や、シナリオチームの台本作成をサポートするツール、以前サイマガで取り上げた「キャラクター相関図アプリ」はその一例です。

▲「CyResource(サイリソース)」画面の一部

■自動化支援

開発・運営の作業について、自動化の観点で支援します。プロジェクトの内部に入ってワークフローを理解し、時間がかかっている箇所を見つけて改善したり、フローの中で共通している作業を見つけて自動化する仕組みを作ったりします。ワークフローに着目するため、複数のセクションをまたぐ複雑な工程の効率化に関われるのも大きな特徴です。

■カンファレンス運営

ゲーム開発者向けのカンファレンスである「CEDEC」や、社内スタッフ向けのカンファレンスなど、スタッフが外部イベントに登壇する際の事務対応やカンファレンス自体の運営を行います。公募へのエントリーといった事務手続きだけでなく、スライドや講演内容のリバイズ(校正・校閲)、講演のリハーサルなどを行い、講演の質を上げるサポートをします。

現在、開発運営支援全体で20名ほどのスタッフがいます。「先端コンテンツ」と「プロジェクト共通基盤」は専属メンバーが担当し、「自動化支援」と「カンファレンス運営」は状況に応じて柔軟にスタッフを配置する体制をとっています。

なお、いずれの業務もプロジェクト全体についての広範な知識が求められるため、中途採用スタッフも含め、ある程度キャリアがある人が所属しています。ツールやアプリ、サービスを開発することが多いため、クライアントサイド/サーバーサイドエンジニアの経験者や、Cygames Researchでの就業経験を活かして「先端コンテンツ」に異動した人もいます。

開発運営支援の業務フロー

チームによって業務内容が異なりますし、また案件ごとの差も大きいので、決まったフローはありません。ここでは、1つの典型例として、上で紹介した資料データのストレージサービス「CyResource」の開発過程をご紹介します。

1.各プロジェクトや部署からの相談

プロジェクトが抱えている課題や要望について相談を受けるところから始まります。資料データのシェアやストレージサービスの要望は、サイゲームス全体でかねてから存在していましたが、相談自体はエンジニアからあがっていたものです。社内外での発表や講演の機会が多いため、サイゲームスのスタッフのみが使えるサービス「CyResource」を開発運営支援が主導で開発することになりました。

2.プロダクトのオーナー決定

あると便利なツールとはいえ、スタッフの工数を割いて開発するとなると、「誰の権限で、誰が作るか」を決める必要があります。そこで、開発運営支援が手掛けるプロダクトは、すべて「オーナー」を決めて、その人の権限と責任において開発するという手法を採用しています。各プロダクトのオーナーは、例えばシナリオ作成に関するツールであればシナリオチームのマネージャーのように、関係がある部署の管理職クラスの人になってもらうことが多いです。「CyResource」の場合は、全社的に利用する共益性が高いものであるため、我々開発運営支援自身がオーナーになりました。

3.開発プロダクトの仕様策定

どのような機能やUI、セキュリティーを採用するかなど、プロダクトの仕様を決めます。「CyResource」の場合は、各プロジェクトの要望を「プロジェクト共通基盤」が取りまとめ、実装する機能を詰めていきました。実際には、スライドや動画のアップロード/ダウンロード、Webブラウザ上でのプレビュー、タグ付けなどの機能を持ち、画面を見ただけで使い方が理解できるような直感的なUI設計にしました。

4.プロダクトの開発・実装

決まった仕様に基づいて担当エンジニアが実装を進めます。「CyResource」はWebアプリケーションであるため、Webの知見のあるエンジニアが開発を担当しました。完成したら、実際に稼働させてみて、使った人からのフィードバックを受けながら改善を続けていきます。

開発運営支援に必要なスキル・マインド

ここでは、開発運営支援のスタッフに求められるスキル・マインドについて述べたいと思います。大前提として必要なのは、なんと言ってもコミュニケーション能力です。エンジニアリングの能力も大切ではありますが、開発の作業に入る前に関係各所との調整が生じる仕事なので、関係者を巻き込んで業務を推進する力が必要です。より具体的には、下記の3つのスキルが求められます。

■課題の本質を見極める力

課題の全体像を把握した上で、本質を見極められる能力が必要です。相談者の悩みや困り事をヒアリングしながら、それが何に起因するものなのか、どうすれば解決するかをユーザー視点で見極めるのが仕事の第一歩となります。例えば「自動化支援」の場合は、初めから「○○を自動化する」と決まっているのではなく、プロジェクトの内部に入って、汎用化・共通化できる部分を見つけるところから始めます。そのように、問題の所在を見つける能力が必要です。

■説得力・交渉力

複数のセクションに協力を仰ぐケースが多いため、関係する人たちに「納得」してもらうことを大切にしています。例えば、あるプロダクトのオーナーになってもらう場合、なぜそのプロダクトが必要なのか、なぜその人に頼むのか、メリット・デメリットなどをきちんと伝えて、納得してもらう必要があります。開発を円滑に進め、成功させるためには、相手の理解を得るための説得力・交渉力が大切です。

■エンジニアリングの知識

「カンファレンス運営」以外の3チームは、基本的にエンジニアリングの力でプロジェクトの課題を解決していく業務であるため、それぞれの専門領域における知識やスキルが求められます。「プロジェクト共通基盤」であれば、フロントエンド、サーバーサイド、インフラなど、Webサービスの開発に関する知識が必要です。「自動化支援」であれば、ゲームエンジン「Unity」やCIツール「Jenkins」(※)の知識など。「先端コンテンツ」は、新しい技術やトレンドを追いかける好奇心と、それに関するハードウェアの知識がある人が適しています。

※CI……継続的インテグレーション(Continuous integration)の略で、ソフトウェア開発において、コードの変更をメインの保管場所(リポジトリ)に頻繁に統合し、自動的にビルド・テストを行う手法。「Jenkins」は代表的なCIツールの1つ

開発運営支援の
仕事のやりがいとは?

ゲームの開発・運営で困っている人の相談に乗り、課題を解消するのが我々の仕事です。作ったツールやサービスをたくさんの人が便利に使ってくれたり、新しい試みを評価してもらったり、カンファレンスのサポートをした人の講演が上手くいったりするとうれしいです。上で紹介した「CyResource」も、社内の誰もが当たり前のように使ってくれているので、作って良かったなと思います。

直接お礼を言われることもあれば、社内での「Slack」でのやり取りの中で感謝の言葉をもらったり、外部向けのコンテンツであればインターネット上で話題になったり、良い反応があるとやりがいを感じます。自らがスポットライトを浴びるのではなく、浴びる人をサポートする仕事が多いですが、開発や運営の効率化に貢献できたという実感を得られるのは、大きな喜びです。

▲社内外のカンファレンスにおいて、公募へのエントリーから講演当日までサポートしています

今後の課題としては、我々の取り組みの社内的な周知をもっと図っていきたいと考えています。Web社内報で取り上げられたことでツールの存在を知り、「うちでも使いたい」という問い合わせをもらったことがあるので、開発運営支援がどんなことをしているのか、広く知ってもらう必要があると考えています。

開発運営支援の
キャリアパス

開発運営支援は、エンジニアとして幅広い領域の知識が必要な仕事であると同時に、既存の知見を活かしつつ、さらに自分が伸ばしたい領域のスキルを伸ばしていける部署だと思います。要件定義やソフトウェア設計、開発から運用など、すべての業務を1つの部署で行っているため、得意な個所を伸ばしつつ、不足している箇所を補うことができます。

また、人々のニーズを汲み取ってツールやサービスといったプロダクトを生み出し、課題を解決するまでの全プロセスに責任を負うプロダクトマネージャー志向の人、社内に蓄積された知識を効率的に活用するナレッジマネジメントの仕事に興味がある人にも向いています。実際に、そうした志向を持つ人が集まっています。

キャリアとしては、各々の得意分野を中心に経験と実績を積み重ね、より専門性の高いスペシャリスト、もしくは経験を生かしてリーダー・マネージャーへとステップアップしていきます。

開発運営支援を
目指す人へのアドバイス

開発運営支援としては、色々な得意分野を持つ人がいる多様性のある部署にしていきたいと考えています。採用の面接では、持つべき資質として、ロジカルに考え、人に説明ができるかどうかを重視しています。それに加えて「必要なスキル・マインド」で述べたように、関係各所との調整が必要な仕事なので、コミュニケーション能力も求めています。

この他、エンジニアとしての専門性の高さを見るために、バックボーンや主軸、キャリアの長さなどを尋ねています。ただし、より重要なのは「専門分野以外の軸を伸ばしたい意欲があるかどうか」です。自分の知っていることしかやりたくない、という人には向いていない部署なので、専門性を持った上で、他の分野にも挑戦したいという人に来ていただきたいと思っています。

現状ではある程度のキャリアを積んだスタッフが中心となっていますが、ベテラン揃いの環境で成長したいという若手の方も歓迎します。
さまざまな個性を持つ人が集まり、共に最高のコンテンツを作っていけたらと考えています。


以上、開発運営支援の仕事についての解説でした。
現在サイゲームスでは、一緒に働く仲間を募集しています。この記事で興味を持った方は、ぜひ一度こちらをチェックしてみてください。

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