芸能界の闇に立ち向かう!『ヒナ 値付けされた子役たち』【ヨミコミ!サイコミ Vol.5】

サイゲームスがお届けしているのは、ゲームだけではありません。マンガ配信サービス「サイコミ」にて、数々の作品を連載しています。「サイコミ」編集部がおすすめするマンガの魅力に迫る連載「ヨミコミ!サイコミ」第5回は、新人芸能マネージャーと天才子役が芸能界の闇に立ち向かうお仕事マンガ『ヒナ 値付けされた子役たち(以下、ヒナ)』をご紹介します。編集担当者に作品の見どころを聞きました。

【あらすじ】
「5億、私の財産にしたい」芸能事務所のマネージャーに就職した烏丸が出会ったのは天才子役と呼ばれる7歳のヒナ。一見無邪気の塊のような彼女だがその実は、金にこだわり、大人に異常なヘイトを抱く冷たい心の持ち主。7歳とは思えない、人生2周目の異世界転生者のような大人びた振る舞いに驚く烏丸だったが、そんな彼女の閉ざした心の救済を決意する。金、スキャンダル、汚い大人事情が渦巻く芸能界が舞台のお仕事ストーリー。

天才子役×新人マネージャー
子どもが大人の導き手

企画はどのように立ち上がったのでしょうか?

作者の鈴音ことらさんと新連載の打ち合わせをしていて、鈴音さんが過去に芸能事務所の養成所に通っていたことがあると知りました。「子役の子たちの厳しい現実を見た」とおっしゃっていたので「それをマンガにしてみましょう!」と企画がスタートしました。

7歳とは思えないほど大人びているヒナですが、キャラクターをどのように作り上げていったのでしょうか?

ヒナのキャラクター像は割と早い段階から鈴音さんの頭の中にありました。子役の世界のお金にまつわる話を生々しく描こうと構想していたので、そのストーリーに合うキャラクターを鈴音さんが最初から相当作り上げられていた印象があります。ヒナが「5億財産にしたい」と言うのも、鈴音さんの発想から出てきたものですね。

▲両親のいないヒナは、子役でいられるうちに一生分のお金を稼ごうとしています

ヒナのマネージャー・烏丸は、どのようにキャラクターを作っていきましたか?

最初から明確にキャラクター像があったヒナに対し、烏丸の人物造形は悩みましたね。まず、子役の経験は多くの人にないので、ヒナをはじめとした子役に感情移入するのが難しいのではないかと考えました。そこで、烏丸を業界未経験の新人にすることで読者の方々の目線に近づけるようにしたんです。
物事の考え方や芸能の経験で言うと、ある意味ヒナのほうが烏丸より大人です。そのため、ヒナが導き手となり、烏丸の成長を後押ししていく構図を心掛けています。

▲テレビっ子だった烏丸が、初めて撮影スタジオを訪れるシーン

印象に残っているシーンはどこでしょうか?

第60話「信頼」でのヒナと烏丸のやり取りがすごく印象に残っています。その前の話で、子役のソウジと彼の家庭を巡る問題を、烏丸はヒナに頼らず1人で解決しようとしていました。「私が最初から協力していたほうが早く解決できた」と主張するヒナに対し、「自分のことだけ考えていてほしい」と烏丸が気遣うシーンがあります。
ヒナはそれまでお金や大人への“復讐”に執着していましたが、子どもらしさを見せるようになるきっかけになった出来事だと思いますね。特に、忙しくしていた烏丸から「寂しかった?」と聞かれ、ヒナが烏丸の足を踏むところが気に入っています。

あと、強いて言うならテレビ局の樋口プロデューサーから持ち掛けられた不正な取引に烏丸がはっきり「ノー」を突き付ける場面です。そこから樋口プロデューサーと対立して次の展開に移っていきますし、特にこの樋口プロデューサーにまつわる話はどこも印象に残っていますね。

サラリーマンモノに一石
子役を通した大人の世界

子役をどうマネジメントするかだけでなく、その親との関係性も烏丸に立ちはだかる壁になっていますよね。

子役の仕事は子どもだけでなく、親も関わってくるものだと思います。もし親の方針が子どもの気持ちと違ったとしても、基本的に親は子どもの味方ですよね。だけど、どこかで子どもが反発しなければいけないという難しさはありました。
ただ、先んじて家庭問題の話としてお伝えしたソウジの父親に関して言うと、子どもの収入で私腹を肥やしていたり妻に暴力を振るったり、「悪者」としての立ち位置が色濃く出ています。悪役を退治するというシンプルなストーリーにした結果、ヒナがソウジの父親を懲らしめたときは読者のみなさんから多くの反響をいただきましたね。

芸能界や子役の裏事情のディテールはどのように詰めているのでしょうか?

芸能事務所のマネージャーの方に取材をさせていただいたことはあります。ただ、最近は芸能方面ではなく、「サラリーマンモノ」としての描き方を意識しています。
私はサラリーマンの経験がそれなりにあるので、会社員の理屈や考え方など、自分がわかることは全部お話ししていますね。そういう意味では、私が鈴音さんからサラリーマンの取材をされているのかもしれません(笑)。
会社員の構図はこちらから話を出すことが多いのですが、鈴音さんは子どもの感情を描くのがすごく得意な方なので、上手く登場人物の感情に乗せながらストーリーを展開してくださっているなと感じています。

本編とは別に、サイドストーリーも充実していますよね。

本編だけではサブキャラクターの話を展開しづらいので、スぺコン(※)にも力を入れています。

※本編とは別に、描き下ろしのイラストやサイドストーリーなどを掲載するスペシャルコンテンツ

鈴音さんはキャラクターの魅力を引き立ててストーリーを転がすのが上手なので、連載形式で短編を作っています。スペコンでもサブキャラクターを掘り下げているので、本編と合わせて丸ごと『ヒナ』だと思って楽しんでいただけるとうれしいです。

▲スぺコン「お泊り」では、あすなの日常が描かれています

作者の方とはいつもどんなやり取りをしながらストーリーを作っていますか?

元々は子役を巡る話が多かったので、打ち合わせで子役やその家族をどうしていくかの話で終始していました。
ただ、ソウジとその家庭の話を連載していた頃から、次の新しい展開を探っていました。色々と考えていった結果、先ほどお話ししたようにサラリーマンモノにより振っていくことにしたんです。

キャラクター造形の部分で触れたように、読者の方が子役に感情移入するのはなかなか難しいと思います。しかし等身大の烏丸やその上司の京極、取引先であるテレビ局のプロデューサーに対しては、大人ならどこかに共感できる部分があるはずです。大人の人間関係を構図として描きつつ、たくさんあるサラリーマンモノの中からオリジナリティーを出すために「子役」の要素を武器にしていこうと鈴音さんとお話ししました。

第61話からは烏丸が所属する芸能事務所「フライトフェザー」と樋口プロデューサーが敵対していく「フライトフェザー、動乱編」に入り、烏丸サイドと樋口プロデューサーの攻防をどのように展開していくかを毎回詰めていますね。

今後、フライトフェザーはどうなっていくのでしょうか?

「フライトフェザーとAテレ・井上プロデューサーのタッグ」VS「東都テレビ・樋口プロデューサー」の戦いが続いていきます。
烏丸たちの仕事が軌道に乗るかと思いきや、樋口も黙っておらず攻撃を仕掛けてきますし、その攻守逆転が繰り返される様子を楽しみにしていただきたいです。

最後に、読者のみなさんにメッセージをお願いします。

やはりこの作品の魅力は、まっすぐだけどちょっと未熟な烏丸と、天才的な演技力や大人顔負けの頭脳を持つヒナのタッグだと思います。烏丸たちは今後も芸能界の闇という壁にぶつかると思いますが、持ち前の2人の良さを活かして数々のピンチを乗り越えていきますので、これからもご期待ください。

『ヒナ 値付けされた子役たち』

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