ライセンスビジネスとは?ブランドの発展を担う仕事に必要な知識【サイゲームス仕事百科】
ゲームやマンガ、アニメなどに登場するキャラクターをモチーフにしたグッズが好きな方も多いのではないでしょうか?サイゲームスでも、さまざまなキャラクターグッズが作られており、グッズの企画、コラボレーションなどの多くはライツ事業部が担当しています。
自社コンテンツのグッズは、一体どのように制作されているのか。今回はライツ事業部の仕事とその魅力について、同事業部マネージャーへの取材を基に解説します。
▼ライツ事業部の業務内容
▼コンテンツから派生したグッズの主な制作工程
▼ゲームのイメージにも影響を与える商品
▼ライセンスビジネスに必要な知識
▼ライセンスビジネスのやりがい
▼本来のキャラクターの価値を信じる
▼グッズも充実しているゲーム会社を目指す
国内・海外でライセンスビジネスを展開
ライツ事業部の業務内容
サイゲームスはゲーム事業を中心に展開していますが、ゲーム画面の中だけにとどまらず、エンターテインメント企業として、お客さまに楽しんでいただくためのさまざまな展開をしています。自社で手掛けるゲームやアニメなどのコンテンツに登場するキャラクターやイラスト、音楽などを二次的に活用し、またそれらの権利を守るのがライツ事業部の仕事です。
ゲームの世界観やキャラクターの魅力をより広く、深く楽しんでいただけるよう、現在は主に下記の展開を行っています。
また、国内展開にとどまらず、サイゲームスの海外事業部やパートナー企業様と連携し、海外展開も行っています。
海外展開については海外へのライセンス貸し出しの他、海外イベントへの出展も行っています。自社ECサイト「CyStore」の海外版も鋭意準備中です。
ライツ事業部で展開している商品には大きく分けて、他社へライセンスアウトをするものと、自社で商品開発するものの2つがあります。
■他社へライセンスアウトをする
ライセンスアウトとは、一般的には知的財産(以下、IP)に関わる意匠、著作、商標などを貸し出すことです。
サイゲームスでは、主にキャラクターなどのコンテンツの使用権を他社にお貸しし、他社とのコラボレーションによるグッズ展開もしています。例えば、ラベルにキャラクターイラストが入った飲料水をコンビニエンスストアで販売するといったことです。
他社へライセンスアウトをする場合、以下の業務を行います。
- ライセンシーの獲得・営業
サイゲームスの著作物を使用した商品展開をしてくださるパートナー企業様探し。
企業様からの「サイゲームスの著作物を使用したい」というお問い合わせへの対応。 - 商品化の促進
企画や制作に関して、パートナー企業様の商品化のサポート。 - 商品クオリティーの担保
商品のクオリティーを高めるため、パートナー企業様の商品の監修サポート。 - 販売計画のサポート
販売スケジュールや販売展開先の検討などのサポート。 - 売り場展開の企画
ノベルティの配布や売り場会場の装飾など販売促進の企画サポート。
○ライセンサー/ライセンシーとは?
ライセンサーは、IPを保有する企業や団体、個人を指します(この記事ではサイゲームスのこと)。一方のライセンシーは、ライセンサーよりIPの利用を認可された企業や団体、個人を指します。
■自社で商品を開発する
サイゲームスのIP(ゲーム、マンガ、アニメ)の商品を自社で企画し、製造計画を立案します。
また、自社で商品開発する場合、製造以外にも販売計画やプロモーション計画として以下の業務を行います。
- 販売催事の企画
自社商品の販売展開を行わせていただける小売店様を探す。 - 販売/催事のコーディネート
基本的には自社商品を取り扱う。ゲームの周年記念イベントに合わせた催事を行う場合は、ライセンスアウトの商品展開も一緒に行ったほうが良い場合があるため、その場合には、ご協力いただけるライセンシー企業様を誘致する。
「〇〇円以上ご購入で〇〇をプレゼント」といった購入特典物の選定をする。
ショッピングセンターや雑貨店などの売り場をお借りして商品の販売会をする他に、自社ECサイトでの販売も行います。ECサイトでは、ライセンスをお貸しした商品を自社へ「逆輸入」して販売することもあります。
【自社ECサイト(CyStore)関連の業務】
- 商品販売計画の作成
- サイト運営
- 他社へライセンスをお貸し出しした商品の仕入れ
- CyStoreオリジナル商品の企画
コンテンツから派生したグッズの
主な制作工程
ここからはライツ事業部の業務の中でも、自社で商品開発をする場合のグッズ制作工程をご紹介します。
グッズは、企画、校正、量産、販売の4つの工程を経て制作されます。
■企画
まず、さまざまなクライアントからの提案や自社内での起案を基に、商品企画が行われます。商品企画の段階ではどのようなキャラクターやイラストを使って、どんな商品を作るか、といった概要をまとめます。また、デザインラフの作成、パッケージのデザインや宣伝用Webサイトの作成、同時に展開する商品ラインナップの検討なども行います。
商品を企画する際は、販売時期や季節性も重要な要素となります。クリスマスやバレンタインデーといった季節イベントに合わせる、フェスなどのリアルイベントに合わせるなど、ユーザーのみなさんのニーズを考慮しながら、商品化を検討します。
この企画の段階で、プロデューサーやコンテンツ担当部署の監修が行われます。これから作られる商品について、機能や安全性の面で問題がないか、オリジナルのデザインとのギャップがないかなどをコンテンツ側の担当者とともに監修します。
■校正
その後は校正(品質チェック)の段階に移ります。この段階では、試作品を見ながら、色味に問題がないか、元々平面だったイラストを立体物に起こしたときにデザインや装飾などに違和感がないか、といった細かなチェックを行い、商品としての質を担保します。
■量産
校正の段階が終わると、ユーザーのみなさんへ届けるため、商品が量産されます。自社商品の場合でも、製造については、パートナー企業様である専門メーカーが担当します。この際も、品質のバラつきが出ないように専門メーカー様からサンプルを提供してもらい、品質チェックを行います。
■販売
こうして出来上がった商品を、さまざまなかたちでお客さまの手元に届けます。販売したら終わりではなく、お客さまが商品を手に取るまで見届け、どんな感想を持たれたかをアンケートやSNS上の反響などをもとに分析します。また、販売結果の振り返りを行い、次の商品化に向けて改善します。
ちなみに、他社様へ権利をお貸し出しするライセンスアウトの場合、サイゲームスが担当するのは「監修」のみの業務となります。
ゲームのイメージにも影響を与える
キャラクター商品
ライツ事業部ではさまざまな商品を制作しています。代表的なものとしては、CD(BGMを集めたサウンドトラックやドラマCD)、クリアファイルといった文房具、タオルやTシャツなどのアパレル商品、キャラクターのぬいぐるみなどなどで、この他にも特徴的な商品が数多くあります。
キャラクター商品は、ゲームユーザーではないお客さまに対してもゲームを知ってもらえるという点で「広告」のような側面もあります。お客さまにとって、「これは自分も楽しめそうなゲームだ」と思ってもらうために、ゲーム本来のブランドイメージを慎重に考えながら、同時にビジネスとしても成立させるバランス感覚が必要になってきます。この仕事の難しい面でもあり、だからこそ面白いとも言えます。
お客さまに喜ばれる商品や施策がどんなものなのかは、毎回手探りです。仮に「勝ち筋」が見えたとしても、そればかりやってしまうとブランドイメージが下がり、結果的に先細ってしまうことになります。ブランドを守り、そして発展させるために、目先の利益にとらわれないよう常に意識しています。そのためには、いつも仮説を立てて、試して、結果をきちんと次に活かす。これを繰り返すように心掛けています。
ライセンスビジネスに必要な知識
ライツ事業部が担当するライセンスビジネスにおいては、「ものづくり」「権利・ビジネスモデル」「流通」の3つの知識が必要です。
■ものづくりの知識
1つ目はものづくりに関する基礎的な知識です。特に印刷に関する知識はものづくりで汎用的に使うため、とても大切です。
商品化する原作キャラクターのデータは2Dのイラストが多いのですが、商品化するときには立体物に印刷、もしくは立体物を制作することが多いです。そのため、どうしても原作のイラストと、仕上がった商品とで違いが出てきます。
例えば、商品の色味を確認するとき、PCでデザインのデータを扱うときにはRGB(※1)のデータを使用しますが、実際に印刷するときにはCMYK(※2)が使われます。RGBとCMYKの違いや、色味を整えるためのデータの変換方法などについて知っておく必要があります。
その他にも「紙の材質に応じて色味がどう変わるか」など、ものづくりをしていく上での基本的な知識があることは強みになります。
こうした知識を持っていることで、正しく監修できます。またそれだけではなく、メーカーさんとの調整や交渉の際にも、より具体的なやり取りができ、業務を円滑に進められるのです。
※1 赤・緑・青の3種類の原色を数値として混ぜ合わせて色を表現する方法。画面上でのカラー表示に用いられることが多い。
※2 シアン・マゼンダ・イエロー・ブラックの4成分によって色を表現する方法。主に印刷物のカラー表示に用いられる。
■権利やビジネスモデルの知識
2つ目は権利関係の知識です。自社コンテンツの権利を守り、利益を生み出すことはライツ事業部が担う重要な役割です。ここまで紹介したライセンスアウトや自社商品開発などのグッズを製造するビジネス、音楽ビジネスなど、コンテンツに関わるビジネスは基本的にはそれぞれビジネスモデルが決まっています。自身が関わるビジネスがどのような仕組みなのか、ビジネスモデルへの十分な理解が求められます。
■流通の知識
そして3つ目は流通に関する知識です。ライセンスアウトでも、自社商品開発でも大切なことは、お客さまの目にとまり、購入してもらうことです。ライセンスビジネスでは基本的に、商品を世の中に多く流通させ、さまざまな場所で販売することで、商品の露出を増やし、ユーザーのみなさんが買いやすい環境を作ることを目指します。その際に、ユーザーのみなさんや自社だけでなく、メーカーさんを含めた関係者すべてにメリットがあるかたちが理想です。
サイゲームスは、コンテンツを保持するライセンサーとして、どのように商品を流通させるかアイディアを出し、商品が届くまでの流れを設計し、理想のかたちを作り上げていきます。
例えば、量産はできないけれど高いクオリティーで作れるフィギュアの商品があり、「これをお客さまへ届けたい!」という想いを持っているとします。その場合、理想のかたちを目指す1つの案としては、応募型キャンペーンの景品としてフィギュアがもらえるようにし、フィギュアとは別の商品を買えばそのキャンペーンに応募できる、といった企画が考えられます。
商品によっては、流通の都合で製造のスケジュールが決まることがあります。
例えば販売する時期が決まっている、ハロウィンやクリスマスなどの季節もののイラストを用いた商品や、ゲームの周年記念などに合わせた商品がこれにあたります。流通に関する基本的な知識があることで、商品開発の段階から流通の事情を考慮できます。そうすると、製造スケジュールもスムーズに決まるのです。
サイゲームスでライセンスアウトをする場合に、特に商品の展開先になりやすいコンビニエンスストアでは、独自の商習慣があります。コンビニに関する流通の知識があると、商品企画の実現性がより高まるのです。
【ものづくりに興味関心を持ち続けること】
知識も重要ですが、それよりも大切なことは「間口は広くアンテナは広く、何にでも興味を持つ意識」です。ライセンスビジネスは、私たちの身近なところで多く見つけることができます。街中へ買い物に行ったりするだけでも、さまざまなライセンスアウトの商品が販売されていますし、その販促企画などを目にすることもしばしばあります。
コンテンツだけではなく、身の回りにあるさまざまな事柄に興味関心を持つことが、ライセンスビジネスを推進するうえで大きな支えになります。その感度の高さがあれば、専門的な知識は後からついてくるものです。
これぞ醍醐味
ライセンスビジネスのやりがい
ゲームメーカーでありながら、キャラクターをはじめとしたコンテンツをきっかけに、さまざまなものづくりに携われる。これがライツ事業部の仕事の魅力だと感じています。
例えば、『グランブルーファンタジー』に登場するキャラクターをイメージした香水を作ることで、ゲーム作りの中ではできないものづくりの経験ができます。香水という現実の商品を用いることで、キャラクターの魅力にさらに深みを与えることができるわけです。
サイゲームスのライツ事業部に向いている人は「自立・自転できる人」。つまり、自分で企画を立てて、回し、振り返ることができる人です。
良い意味で、自分の考えが及びもしなかったことに取り組める刺激的な環境です。「なんでもやってみたい」という向上心と好奇心を持っていれば、きっと楽しめる仕事だと思います。
そして、「自分でやってみたい企画があるからクライアントを獲得してきた」ということができるようになったら、ライツ事業部としては一人前ではないかと思います。逆に、言われるがままだと振り回されることになってしまいます。そうではなく、「これがやってみたい!」という自発的なマインドを持ち続けていれば、きっとライツ事業部の仕事が楽しめるはずです。
本来のキャラクターの価値を信じる
これまでライツ事業部で仕事をしてきた中で思い出深い企画は、牛丼で有名な飲食店「なか卯」さんとのコラボレーションです。なか卯さんの店舗で行われた『グランブルーファンタジー』のキャンペーンで、キャラクターのイラストが入ったどんぶりのプレゼント、店頭ののぼり、券売機の周辺のお知らせなど、さまざまなコラボレーションをしました。このときは、いくつもの企画やアイディアをなか卯さんと出し合い、議論しながら、最終的にはキャラクターの魅力だけで勝負できる企画に焦点を絞りました。
一方で、ゲーム内のアイテムなど、ゲームデータを商品特典として提供する企画も時々あります。ゲームをプレイしているユーザーさんを中心に盛り上がっていただけますが、 企画によってはキャラクターの価値を高めることには繋がりにくく、結果的に特典自体を目当てにしたゲームのキャンペーンに留まってしまうことがあります。あくまでもコンテンツの資産を活用するかたちで、ゲームやキャラクターの付加価値を高めたり、新しく生み出したりするのが、ライツ事業部の仕事です。
なか卯さんとの企画は、キャラクターを中心に据えた企画によって、そのキャラクターが持つ潜在的な価値を引き出すことができた事例と言えます。
ゲームだけでなく
グッズも充実しているゲーム会社を目指す
サイゲームスにはゲームやアニメのキャラクターといったライツ資源がたくさんあるため、まだまだできることがあると思っています。「コンテンツだけでなく、グッズも最高」というイメージをユーザーのみなさんに持ってもらえることが今後の目標です。そのためにも、もっとライセンスビジネスのさまざまな実績を積んでいきたいと考えています。
以上、サイゲームスのライセンスビジネスについての解説でした。
今後のライツ事業部の展開に、ご期待ください。