サイゲームス流、おすすめインプット法Vol.1「ゲームプランナー編」
サイゲームスでは、「最高のコンテンツを作る会社」というビジョンを掲げています。そして「最高のコンテンツを作る」ためには、多種多様な「インプット」によってスキルを磨いていくことが大切であるという考えから、行動規範の1つに「良いアイディアは圧倒的なインプットから」があります。職種を問わず常に貪欲に知識やスキルを吸収して、コンテンツ作りにつなげる姿勢を大切にしています。
本連載では、個人の「インプット」にフォーカスを当てて、サイゲームスで各職種の採用・育成に携わるスタッフたちが推奨する「インプット方法」をご紹介していきます!
連載初回となるVol.1では、ゲーム作りで各職種をつなぐ存在である、「ゲームプランナー編」をお届けします!今回はプランナーセクションを取りまとめるマネージャーからの声を直接お届けします。
今回は、プランナーのスキルを「企画を考えるスキル」と「企画を形にするスキル」に分けて、それぞれのスキルを伸ばすためのインプット法を紹介していきたいと思います。
「企画を考えるスキル」を伸ばすインプット法
優れた企画を考えるためには、たくさんのコンテンツに触れることが重要です。当たり前かもしれませんが、ゲームの企画力を伸ばすなら、やはり多くのゲームをプレイすることが最も重要になってきます。そして、単にゲームをプレイするだけではなく、開発者の意図を考えながらプレイするとインプットの質は向上します。
ゲームの仕組み、演出、何気ない数値の設定に至るまで、ゲームを構成する要素には、開発者の意図が込められています。ここでは「開発者の意図」を意識したインプットの例として、サイゲームスが運営する『プリンセスコネクト!Re:Dive(以下、プリコネR)』を一例として取り上げます。
『プリコネR』を遊んでいると「気楽に遊べる」と感じる方が多いのではないでしょうか?そこで、開発者がどうやってその感覚を生み出しているかを考察しながら、ゲームをプレイしてみることにします。
例えば、「スタミナ」に注目してみましょう。『プリコネR』ではスタミナの回復速度は6分間で1、つまり1時間に10回復する設定になっています。プレイヤーLvが80時点のスタミナの上限値は138なので、スタミナを使い切ってから上限まで回復するのに必要な時間は14時間程度かかる計算です。そして、Lvが上がるとスタミナ上限値は上がり、全回復するのに必要な時間も長くなっていきます。
別の要素として、「ログインミッション」に注目してみます。「デイリーミッション」にあるログインミッションは、「12時以降にログイン」と「18時以降にログイン」と1日に2回設定されており、18時以降にログインすれば一括でミッション報酬を受け取れる方式になっています。
この2つの要素からは、「『プリコネR』は、あまり頻繁にログインしなくても遊べるゲームになっている」ことが読み取れるのではないでしょうか?実際に、『プリコネR』の開発当初は「朝と夜の1日に2回ログインすれば楽しめるゲームにしよう」という方針を立てていました。そのため、1日に2回ログインすれば、スタミナが上限を超えない(=スタミナを無駄にすることなく遊べる)設計になっています。
その他にも注意深くゲームを遊ぶと、時間経過でアイテムを受け取れる「ギルドハウス」の報酬でも、「時間あたりの生産数」と「上限値」が同様の設計になっていることがわかります。さらに、「クランバトル」や「ダンジョン」などのコンテンツも、同じ方針に基づいて設計されています。
このように、ゲームには、その作品ならではの開発意図が込められています。実際に考察する際には、「具体例」を出すことと「他のゲームとの比較」がポイントです。例えば、「映像がカッコ良かった」という感想だけではなく、「この演出にこういう工夫がある」「他のゲームに比べて、こういう点で優れている」など、なるべく詳細まで踏み込んで考察すると、開発者の意図に近づきやすくなります。
■さらにインプットの質を高めたい場合…
考察したことを文章に落とし込むのもオススメです。文章化することで考えが整理されて、新しい発見にも繋がります。また、この「ゲームの考察の文章化」は、プランナーにとって必要とされる「面白さを伝える能力」の向上にもつながります。
開発において、「面白さを伝える能力」があれば、ディレクターに企画を提案する際、その面白さを正しく理解してもらうことで企画は通りやすくなりますし、エンジニアやデザイナーに企画の実装を依頼する際も、その企画の面白さを理解してもらえるかどうかで、成果物のクオリティーは変わってきます。質の高いインプットを繰り返すことで、「企画を考えるスキル」以外の能力も伸びていくのです。
最初は、どんな些細なことでも構わないので自分の発見を大切にすると良いかもしれません。
「企画を形にするスキル」を伸ばすインプット法
プランナーが企画を形にしていくためには、「コミュニケーション」「進行管理」「資料作成」など、多くの能力が必要になってきます。これらの能力は、基本的にはプロジェクトに所属して仕事をしていく中で自然に身に付いていくものではありますが、行き詰まったときには「ビジネス書」を読んでみるのも参考になります。また、「ビジネス書」から知見を得ることは、社会人でも学生でも、誰でも可能なお手軽なインプット法です。
下記に、いくつかのビジネス書をご紹介します。
■「コミュニケーションスキル」〜1冊目〜
「人を動かす」
著者:D・カーネギー / 訳:山口 博
出版:創元社
こちらは、「良き人間関係をつくるには?」について書かれた本です。
例えばプロジェクトで新しい機能を開発することになった場合、担当プランナーがその機能の仕様書を作り、その仕様をエンジニアやデザイナー、デバッガーに説明して作業を開始してもらいます。また、開発の中で出てきた疑問や不具合の情報は、まず担当プランナーに集約されます。つまり、プランナーというのは、プロジェクトの中でハブ(中継地点)となる働きを求められます。
そうしたハブとなる働きを求められるプランナーにとって、コミュニケーション能力は必須のスキルと言えます。ここでいうコミュニケーションというのは、礼儀や説明の仕方に始まり、相手に良い仕事をしてもらうための、「チームビルディング」や「モチベート」なども含んだスキルです。「人を動かす」は、多くのビジネスマンが推薦する人間関係の原則について書かれた古典です。単なる小手先の技ではない、チームの中で良い仕事をするためのヒントが数多く記されています。
■「コミュニケーションスキル」〜2冊目〜
「考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則」
著者:バーバラ・ミント / 監修:グロービス・マネジメント・インスティテュート / 訳:山崎 康司
出版:ダイヤモンド社
わかりやすい文書の書き方について解説した本です。この本で書かれている論理構造を学ぶことで、自分の考えを整理する手法も身に付けることができます。ただ、高度な内容であるため、まずは「入門 考える技術・書く技術――日本人のロジカルシンキング実践法」から始めるのがオススメです。
新人プランナーからよく聞く悩みの1つとして、「ディレクターにうまく説明できない」というものがあります。例えば新しいイベントの提案であれば、「何が面白いのか?」「どういう仕組みなのか?」「開発にどれだけ時間が掛かるのか?」など、慣れていないと、意外と説明に苦戦するものです。文書の書き方も口頭での説明も、論理構造が重要である点は同じなので、この本を通して相手に論理的に説明をする力を身に付けることができるでしょう。
■進行管理スキル
「ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か」
著者:エリヤフ・ゴールドラット / 訳:三本木 亮 / 解説:稲垣 公夫
出版:ダイヤモンド社
製造プロセスの改善をテーマとしたベストセラー書籍です。改善を測る指標の考え方から、全体最適の方法まで、具体的に書かれています。モチーフは工場の立て直しですが、ゲーム開発においても得るところは多く、また、小説仕立てになっているため読みやすいのも長所です。
ゲーム開発のプロジェクトというのは、常に複数の機能開発が同時並行で進んでいます。また、一つひとつの開発に複数のセクションが関わっており、「プランナーが仕様作成」⇒「デザイナーが素材作成」⇒「エンジニアが実装」⇒「デバッガーがテスト」のように、それぞれの業務が鎖のようにつながっています。このようなゲーム開発において、業務プロセスの改善は重要なテーマです。「情報共有の方法は?」「どこに人を補充すべきか?」「スケジュール管理の方法は?」など、業務プロセスを改善していくことで生産性は大きく違ってきます。業務を効率化することで時間的な余裕が生まれ、ゲームクリエイターはゲームを少しでも良くすることに時間を掛けられます。
■資料作成スキル
「ノンデザイナーズ・デザインブック」
著者:Robin Williams / 訳:吉川典秀 訳 / 監督:小原司、米谷テツヤ
出版:マイナビ出版
この本は、名前の通り「デザイナーではない人に向けて書かれたデザインの本」です。本の中で書かれているのは、4つの基本原則のみ。ただ、この基本原則を守るだけで劇的に資料は見やすくなります。サイゲームスの開発現場で、最もプランナーに薦められることが多い本かもしれません。
ゲームプランナーの仕事では、「仕様書」や「発注書」などの資料を作成する場面が多くあります。「仕様書」は、新しく開発する機能がどういった仕組みかを記した設計図、「発注書」は、デザイナーやイラストレーターに素材の作成をお願いする際に、素材のイメージやフォーマットを記載した資料です。こうした多くの人が目にする資料は、見やすさがとても重要です。見やすい資料はメンバーの認識のズレを減らし、無駄な作業をなくすだけでなく、不具合の発生を防止することもでき、最終的にゲームのクオリティー向上に繋がります。
どんなインプットもゲームで活かせる可能性があり
常に好奇心を持ちインプットを続けることが大事
「ゲームは総合芸術」と言われるように、絵やシナリオ、プログラミング、サウンドなど、多種多様なクリエイティブで構成されます。そのため、ゲームを企画するプランナーにも、多種多様なスキルが求められます。そこで、サイゲームスの新卒研修では、ゲーム開発をより深く理解してもらうために「プログラミング研修」や「Photoshop研修」なども行っています。また、長期にわたってインプットを続けるコツは、そのコンテンツをまず楽しむことです。あらゆるコンテンツはプランナーのインプットになり得るので、「好奇心」はプランナーにとって重要な資質といえます。
プランナーセクションマネージャー直伝のインプット法、いかがでしたでしょうか。本記事によって、少しでもゲームプランナーという職種に興味を持っていただけた方、少しでも良いコンテンツを作りたい!という熱い意志をお持ちの方には、ぜひ今回紹介したインプット法をお試しいただければと思います。
次回Vol.2では、おすすめインプット法「デザイナー編」についてお届けする予定です。お楽しみに!
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ゲームプランナーの仕事内容についてはこちらの記事にて紹介しています。
「ゲームプランナーの仕事とは?面白いゲーム作りに必要なスキルとマインド【サイゲームス仕事百科】」