サイゲームスでは、『Shadowverse(以下、シャドバ)』や『プリンセスコネクト!Re:Dive(以下、プリコネR)』『ドラガリアロスト』『グランブルーファンタジー ヴァーサス』といったタイトルを海外でも展開しています。中でもアジアのユーザーの方々には盛んにプレイしていただいており、サイゲームスとしても韓国・台湾に支社を設け、注力して事業を展開しています。今回はアジア事業統括としてサイゲームス本社アジア事業部と2つの支社を取りまとめる担当者に、サイゲームスタイトルのアジア展開のきっかけや運営面の違いについて聞きました。

海外事業部アジア事業統括 ユカ
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2015年入社。広報チームの立ち上げを経験後、17年の海外事業部設立を機に、事業責任者として韓国支社を立ち上げる。現在はアジア事業統括として、サイゲームス本社アジア事業部と韓国支社と台湾支社を統括。1年のうち3分の2を韓国、残りを日本や台湾などで過ごす。

サイゲームスコンテンツを世界へ
アジア事業部発足のきっかけや仕事を紹介

海外展開が始まったきっかけはなんだったのでしょうか?

2016年の『シャドバ』リリースです。同作は元々eスポーツタイトルとして世界展開を視野に入れて制作しており、リリース翌年には、海外での展開をより強化するために海外事業部が発足しました。これを機に、『シャドバ』以後のタイトルも海外展開を視野に入れながら制作することが多くなりました。

海外支社設立の契機は、17年に韓国で開催した『シャドバ』韓国語版の制作発表会でした。サイゲームス初の海外での発表会で、現地メディアの注目度の高さから、同作のプロデューサーである木村(唯人)も韓国での可能性を強く感じたようでした。韓国だけでなく、アジア地域はスマホゲームのユーザーが多く、文化的にもサイゲームスのコンテンツが受け入れられやすいベースがある最重要市場の1つです。各地のユーザーの方々に近いところでしっかりと腰を据えて事業を展開していこうと、17年に韓国支社、18年に台湾支社と、拠点を増やしていきました。

ユーザーの方の近くに拠点を置いたメリットは何でしょうか?

一番はユーザーの方々と現地特有のコミュニケーションが取れることですね。アジアの各地域では、ユーザーの方々とのコミュニケーションのあり方がかなり独特で、双方向型のやり取りが好まれます。日本の運営もユーザーの方々とのコミュニケーションは盛んですが、韓国や台湾、中国などのアジア市場ではユーザーからの発信やリクエストに運営が反応することも強く求められるからです。また、情報発信や交流に使われるSNSの種類にも地域の特色があるので、地域ごとにどのSNSを強化するのか精査する必要があります。

特に、掲示板型のSNSは特徴的だと思います。例えば、台湾最大手のゲームメディアもニュースメディアというより掲示板のような側面があり、ユーザー同士のコミュニケーションが活発です。韓国もそれに近い状況で、韓国ではさらに、掲示板型のSNSを公式が運営することが必須とされます。そこで情報発信やコミュニティーイベントを頻繁に行い、ユーザーの方々とコミュニケーションを取っています。オフラインでも交流の場を維持するのが大事で、ユーザー懇談会を開くなどの地道な活動こそが支持に繋がっています。

▲『シャドバ』韓国語版のSNS
▲台湾で開いたオフラインイベントの様子

アジアでサイゲームスタイトルはどのように受け入れられているのでしょうか?

これまでは日本のカルチャーが好きな方だけに知られていましたが、ここ2年間でより広範囲に認知されてきたように感じます。やはり、『プリコネR』の影響が大きいのではないでしょうか。繁体字版、韓国語版の順にリリースされ、1年以上経過した今もなおアップデートの際にはランキングの上位に入っています。
また、20年の4月に配信を開始した簡体字版も事前登録者数が600万を超え、同作はアジア地域での連続したヒットに成功しました。実際に、各地の街中でプレイしている人を見ることも多く、そういうときはうれしくなりますね。

海外でも人気が出た理由はなんでしょうか?

直近の『プリコネR』簡体字版の場合は、現地でパートナーシップを結ぶ中国のエンタメ企業bilibiliさんが、中華圏でゲームのリリースとアニメの配信をほぼ同じ時期に始めたことで相乗効果が生まれました。

アジア地域では、ゲームの続編やリマスターといった展開の手法は多いものの、サイゲームスが得意とする「メディアミックス」という手法は過去にあまり見られませんでした。サイゲームスではこれまでも、『グランブルーファンタジー』や『シャドバ』などで、ゲームから派生してアニメや漫画など多面的に展開してきました。それらはアジアの各地域でも楽しまれており、海外のユーザーの方々にもサイゲームスのメディアミックス展開を喜んでいただけたことが人気の一因であると分析しています。

▲『プリコネR』簡体字版のタイトル画面

メディアミックス展開で相乗効果が生まれているのですね。海外でゲームの運営はどうされているのでしょうか?

『シャドバ』のように自社でゲーム開発・提供しているものもあれば、『プリコネR』のように、繁体字ではSo-net台湾さん、韓国ではカカオゲームズさん、簡体字ではbilibiliさんと、各地域で現地のパブリッシャー様がサービス展開しているゲームもあります。各地域での運営経験が豊富なパートナーと密に連携を取り合い、サイゲームスらしい最高のクオリティーで世に出せたのもアジアのユーザーの方々に遊んでいただけている要因だと考えています。

日本で培ってきた手法と、パートナー企業の力が合わさったことが大きかったのですね。

はい。ただ、ゲームによって海外展開の戦略は違います。例えば『シャドバ』は150か国を超える国と地域でサービスを提供しながらも、一部の国以外は自社でゲームの運営・提供をしています。これは同作が対戦型のゲームで、対戦相手の多さがゲームの面白さに繋がるからです。地域ごとに運営元を分けず、アプリやサーバーを全ユーザーで同一の環境にすることで世界のユーザーの方々と対戦できるようにしているのです。
また、同作は世界規模でのeスポーツタイトルを志向しています。そのため、全地域で統一された運営をすることが競技として重要だと考えています。

▲『シャドバ』繁体字版のゲーム画面
▲『シャドバ』韓国語版のゲーム画面

キャラやイベントは各地域で変化が
文化に合わせて運営を調整

イベントやキャンペーンなどのアップデート・運営面において日本と違いや変わらない点はありますか?

キャラクターのイラストや季節もののイベントは各地域の文化や行事に合わせて調整することもあります。例えば日本ではお正月にキャンペーンを行うことが多いのですが、アジアのその他の地域では旧正月や旧盆に開催することが多いですね。また、中国では倫理的な観点から『シャドバ』のルナのイラストを調整しています。

▲中国大陸版の『シャドバ (影之詩) 』(左)と日本版(右)のルナ。倫理上の理由からドクロのイラストが変更されています

現地の文化を尊重しつつも、パブリッシャー様の要望に対して譲れなかった部分もあります。その一例がキャラクターを使って発信をしないことです。アジア地域では、ゲームのお知らせやSNSなどをキャラクターがユーザーの方々に直接話しかけているような見せ方にするところが多いです。しかし、それぞれのキャラクターの性格が案内すべき内容と合っていないことがほとんどです。サイゲームスはキャラクターのイメージやゲームの世界観を守ることをなによりも大切にしているので、この手法にはNGを出しました。 そのような管理をパートナー企業にも理解していただくのは、海外協業の重要な課題の1つといえます。

ゲームの世界観を守るために細かい気配りがなされているのですね。日本版のクオリティーを海外版でも保つために気を付けていることはなんですか?

サイゲームスは「最高のコンテンツを作る会社」をビジョンに掲げており、海外でもサイゲームスの基準をクリアしているか厳格にチェックしています。海外版としてリリースするには、テキストだけでなくイラストや運営といったさまざまな面で現地の文化や習慣に合わせて最適化することが必要となります。中でも翻訳のクオリティーは重要です。サイゲームスのゲームは世界観やキャラクターを大事にしているので、ストーリーやセリフも世界観やキャラクターの性格に合った適切なテイストにする必要があります。

そうした高品質な海外版サービスとユーザーのプレイ障壁最小化のために、多言語の「ローカライズチーム」が常在しています。また、海外のパートナーが運営するコンテンツでも、サイゲームス側で時間をかけて監修をします。サイゲームスはIPホルダーとして、タイトルだけでなくキャラクター一人ひとりに自分の子どものような感覚を持っています。パブリッシャー様にも同じ感覚を持っていただけるよう日々努力しています。文化やビジネス習慣の異なる海外パブリッシャー様との意思疎通は最初から上手くいくことがほとんどなくて、サイゲームスとして求めるものを根気強く伝えることが非常に重要です。その監修過程の積み重ねにより、サイゲームスが求める水準とパブリッシャー様の品質が近づいていきます。

アジア事業部では今後の活動拡大のため、一緒に働く方を募集中と聞きました。どのような方であれば活躍できるでしょうか?

まず1つは、ありきたりかもしれませんが「新しい挑戦」という刺激を求めている人にはとても向いていると思います。
私が海外支社を立ち上げる際も、サイゲームスにとって初の海外法人設立だったため、当時は社内でそのような経験のある部署、担当者はいませんでした。そのため物件探しから現地での手続き、人材採用などを自分発信で進めていかなければならず、大変でしたが非常に貴重な経験となりました。元々グローバルメーカーや商社でコンプライアンス関連の管理業務や海外ビジネスの経歴があり、そのときの経験や学んだ知識・スキルをサイゲームスでも活かせたので、人生には無駄な経験はないとあらためて思いました。そんな韓国支社も今年の5月で設立3周年を迎え、さらに刺激的な日々を送っています。

もう1つ、ディフェンシブな方にも向いています。最高のコンテンツを作る人だけでなく、ビジネスとして成り立たせる人も海外進出をより拡大させていくためには必要です。国際取引には社会情勢や商習慣、倫理など、さまざまなリスクが存在します。そのため、リスクや状況をしっかり把握・分析し、丁寧にプロジェクトを組み立てていく能力が求められます。クリエイティブな会社でありながら、ディフェンスが得意な人の輝ける土台が海外事業にはあります。
もちろん、ゲームやアニメが好きなことが前提ですが、私自身がそうであるように、ぜひ、多様な経歴やバックグラウンドを持った人と一緒に働きたいと常々考えています。

最後にアジア事業部の今後の目標を教えてください。

引き続き、さまざまなサイゲームスのコンテンツをアジアで広めていき、サイゲームスをアジアNo.1のブランドにするのが目標です。日本だけでなく、他のアジアの地域でも「サイゲームスのゲームだから遊んでみよう」と思っていただけるユーザーの方々をもっと増やしたいですね。

海外でのサービス展開や法人設立には、「失敗したらすぐに撤退するのでは?」という懐疑的な視線が常につきまといます。そういった不安を各地域のユーザーの方々に抱かせないよう、満足していただける品質のものを10年、20年と長期的に提供していき、アジア地域のユーザーのみなさんに信頼される会社として地に足を付けてやっていきたいと思います。

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