『プリコネR』の世界を彩るデフォルメキャラたち 愛らしさに込めたクリエイターの思い入れとは

個性豊かなキャラクターが多く登場する『プリンセスコネクト!Re:Dive(以下、プリコネR)』には、等身のイラストからデフォルメされたキャラクターが随所に登場します。今回は、等身イラストの可愛らしさを活かしながら、デフォルメならではのかたちでキャラクターの魅力を広げていく「コンテンツチーム」と「インタラクションデザイナーチーム」のスタッフに、その作り方や愛らしさのポイントについて聞きました。

コンテンツチーム / スペシャリストuki
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フリーのイラストレーターを経て、2014年サイゲームス入社。前作『プリンセスコネクト!』のプロジェクト立ち上げから、今作『プリンセスコネクト!Re:Dive』まで、ゲーム内のデフォルメキャラクターやギルドハウスの家具などのデザイン制作・監修を手掛ける。
インタラクションデザイナーチーム アニメーションデザイナーカズキ
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映像制作や遊技機開発に携わったのち、2016年サイゲームスに入社。現在は『プリンセスコネクト!Re:Dive』のアニメーションデザイナーチームのリーダーを務める。

等身の可愛らしさをそのままに
デフォルメキャラができるまで

まずは『プリコネR』のデフォルメキャラができるまでの簡単な流れを教えてください。

uki デフォルメキャラを作るためには、まず等身のイラストが必要です。それらは、シナリオチームが作成した設定資料を基に、イラストチーム内の原画チームが制作します。そうして出来上がった等身のイラストを受け取り、私が所属する「コンテンツチーム」がデフォルメキャラのイラスト制作を行います。
デフォルメ化にあたり可愛らしさを足すこともありますが、基本は元々のイラストにある可愛い部分をどう再現するかを考えていきます。

▲ペコリーヌの等身イラストとデフォルメイラスト(上から★1、★3、★6のもの)。髪型やリボン飾りなどそのままデフォルメ化されたところがありつつ、デフォルメのデザインも★の数に応じて等身イラスト同様に変化していきます

uki 正面アングルの立ち絵だけでは見えない箇所もありますが、「アニメRPG」を掲げる『プリコネR』は、それこそTVアニメを作るぐらいの豊富なキャラクター資料があるので、そこから背面や側面などの必要な要素を拾っています。

▲アニメパートの「コッコロ」設定資料より

uki また、基本的に「パーツアニメーション」のため、デフォルメキャラの大元を作り、手足や髪の毛などのパーツを動かせるように作成しています。ベースのデフォルメキャラが完成すると、動きを付けてもらうためにインタラクションデザイナーチームにバトンタッチします。あとは動きを付ける上で、適宜追加で必要になったパーツを描き足していますね。パーツの総数は、細かな差分を含めると数百個を超えるキャラもいます。

カズキ ベースとなるデフォルメキャラのイラストを受け取ったら、私たち「インタラクションデザイナーチーム」のアニメーションデザイン担当が、バトルやギルドハウスといったゲーム内でのキャラクターの動き全般を作成していきます。
モーションを付ける流れは、まずプランナーから字コンテをもらうところから始まります。字コンテには動きの要望や表現したいポイントなどが盛り込まれているので、まずはそれを基にプランナーとミーティングをします。仕様的に可能な動きであるか、バトルのテンポに支障がないかなどをすり合わせる場です。
それが終わるとラフの絵コンテを作成して再びプランナーと打ち合わせ、再度修正を加えてディレクターチェックに移ります。そこで問題がなければ絵コンテを清書し、アニメーションを作成します。最後にエフェクトを加え、ディレクターとアートディレクターの確認を経て完成です。

▲ペコリーヌのモーション例

モーションが完成するまでにかなり細かくフィードバック受けながら制作が進んでいくんですね!

カズキ はい。動きを順番に組み立てていく作業なので、作業が進むごとに各所にチェックしてもらい、工程をさかのぼった修正が極力発生しないようにしています。後から「この動きをさせるためには、このパーツが追加で必要」となったら、コンテンツチームに作ってもらうために時間がかかってしまうので。各過程で齟齬をなくせるように進めています。
主に監修してもらうのはディレクターやアートディレクターですが、そこへ確認を回す前にukiさんにも見てもらっています。彼は『プリコネR』の前作、『プリンセスコネクト!』にも立ち上げから携わっていて、キャラや世界観の造詣が深いので。

uki それぞれのキャラにより合うような動きやポーズを提案しています。ディレクターたちもキャラのイメージを明確に持っているので、みんなで意見を出し合いながら良いものに仕上げていく感じですね。

キャラクターの個性を引き出すために
シナリオや設定を活かした演出

ここからは具体的なキャラクターの話を聞いていきたいと思います。デフォルメやモーションの観点から見て、特に注目してほしいキャラクターは誰でしょうか?

uki ニノン(オーエド)は個性をよく出せたと思います。キャラクターの設定資料段階から、本物の忍者ではなく「忍者が大好きな子」というのが押し出したいポイントでした。彼女は日本の文化を勘違いしている愛らしいところがあり、忍術も同様に勘違いしていると解釈しました。そこを上手く表現できたかなと思うので、ユーザーのみなさんにも気に入っていただけるとうれしいです。

カズキ 例えばバトル中のスキルで「忍法・影分身の術」があるのですが、本当に分身するのではなく反復横跳びをしているだけとか、勝利ポーズのときも隠れ身の術を使っていながら布が背景と全然違うので隠れられていないとか(笑)。ユニオンバーストでは、カットインアニメで忍術の印を組んでいるのですが、それもまた勘違いして影絵で映すときの犬やキツネの手をしているんですね。このように、コミカルで可愛らしいキャラクター性をふんだんに活かせるように工夫しました。

▲バトルの勝利ポーズで隠れ身の術を使うニノン(オーエド)。確かに隠れられていません……!
▲ユニオンバーストでキツネの影絵の手を忍術の印と勘違いしているニノン(オーエド)

カズキ 他にはクリスティーナを挙げたいと思います。七冠(セブンクラウンズ)と呼ばれるゲーム内で特別なキャラの1人なので、他のキャラとの違いを演出しようと制作初期からチームで話していました。
そこで、クリスティーナには独自の攻撃モーションを作ったり、バトル中の待機ポーズでは堂々と立たせて勇ましさを出したりと特別感を演出しています。その中でもキックの攻撃モーションは、メインストーリーで彼女が壁を破って登場するシーンから発想を膨らませて制作しました。

▲メインストーリー第2章2話で壁を破って「動物苑 自警団(カォン)」のギルドハウスへと入るクリスティーナの登場シーンより

uki 結果的にそれが彼女の特徴的な動きの1つになったのと、それまでのデフォルメキャラになかった動きなので、より彼女の豪快さが演出できたのかなと思いますね。コンテンツチーム側でも、キックの動作が映えるようにパーツを細かく調整しています。
また、パーツでいうと、七冠はデフォルメも他のキャラより装飾が多めで、強そうに見えるデザインを意識しています。クリスティーナであれば、等身イラスト同様に大きくて豪華な剣を強調しました。

そういえば、ジュン(サマー)にもキックの動きが入っていますよね。

カズキ はい、実は狙って作っています。クリスティーナとジュンは「王宮騎士団-NIGHTMARE-」という同じギルドに所属しているので、動きにも繋がりを持たせたいという想いで制作しました。

uki キックによってバトルシーンが映えるようになりましたよね。
キャラの関係性やバックボーンを踏まえたモーションがあることで、ユーザーのみなさんも気付いて楽しんでくださるのではないかなと思っています。

▲クリスティーナとジュン(サマー)の攻撃モーションより

他にもバックボーンを意識した演出があればぜひ教えてください。

カズキ ムイミの勝利モーションはバックボーンを意識して作りましたね。元々明るく活発な性格なのですが、勝利モーションではどこか悲しげな表情や動きをしています。胸のブローチを握り締めて遠くを見つめているような感じです。
前作でムイミの相棒だったオクトーは、今作では彼女のことを忘れてしまっています。そのオクトーからもらったブローチをムイミはとても大事にしているので、オクトーへ想いをはせている様子を表現しました。

▲胸のブローチを握り締め、遠くを見つめるムイミ(右)

uki あと他にも例に挙げると、双子姉妹であるヨリ・アカリや、ユイ(ニューイヤー)・ヒヨリ(ニューイヤー)・レイ(ニューイヤー)あたりもそれぞれ勝利モーションがリンクしています。他にもいますので、色々な編成を試してみてほしいですね。

勝利モーションもキャラクターの個性を引き出す重要な要素なのですね。

カズキ はい。勝利モーションは尺が決まっていますが動きの自由度が高いので、バトル中で表現しきれなかった個性を出すように意識しています。
ネネカとラビリスタが椅子やオブジェクトを出現させて座るなど、初期の頃と比べて表現の幅が広がって豪華になっていますね。

「何気ない仕草や表情を」
バトル以外のデフォルメ

バトル以外についても聞いていきたいと思います。ギルドハウスもデフォルメキャラが可愛らしく動いていますが、ここではどんな工夫をしているのでしょうか?

uki ギルドハウスは、女の子の日常の何気ない仕草や表情を可愛く見せる場を目指して制作しています。
バトル中は真剣に戦っているのでコミカルな表情はなかなか出せませんが、ギルドハウスではキャラごとにたくさんの表情を使って個性を出しています。また、同じ家具に対してもキャラの性格によってとる仕草が違うので、そこを見てユーザーの方々に愛着を持っていただけるとうれしいですね。

▲驚いて目が丸くなるといったコミカルな表情はギルドハウスならではです

配置する家具によってユニークなモーションが見られますよね。可愛い仕草が見られる、おすすめの家具を教えてください!

カズキ やはり「シンフォニックスターステージ」かなと思います。「シンフォニックスターステージ メインユニット」と「シンフォニックスターステージ サイドユニット」を3ユニットすべて設置することで特別な演出を見ることができるものです。
他のキャラでもその演出は見られますが、リリース当初に「カルミナ」のギルドの3人を配置して撮影した動画をSNSに投稿してくださる方もいて、大きな反響がありとてもうれしかったですね。

▲ 「シンフォニックスターステージ」上で、歌に合わせて「カルミナ」の3人が踊る様子

カズキ あと、個人的には、「リマのぬいぐるみ」もおすすめです。キャラが着ぐるみの中に入り込んでもふもふ動くのが可愛らしいですよね。

uki 私は「ゆらゆら楽しい木馬のプチグリフォン」が好きですね。子ども向けの遊具ですが、年上キャラの子が無邪気に乗っているとなんだか癒されます(笑)。

ユーザーのみなさんには、ぜひ色々な家具を配置して試していただきたいですね。ギルドハウスの他だと、ストーリーイベントのミニゲームでもデフォルメキャラが活躍しますよね。

カズキ そうですね。例えば2020年7月末に開催されたストーリーイベント「ミサトサマーエール!夢追う真夏のナイン」では、「ミサトの猛訓打撃道!ホームランドリル」という野球のホームラン競争を楽しめるミニゲームをリリースしました。爽快感やにぎやかさをコンセプトに、ストレスなく繰り返し遊べるものを目指しました。
ミニゲームに登場したキャラは過去最多の8人で、それぞれに固有のピッチングやバッティングフォームを用意するのが大変でしたね。ただ、野球ファンの方にも楽しんでいただけるものを目指して作ったので、ギルドハウス内のゲームテーブルからぜひプレイしていただきたいです。

uki 『プリコネR』では珍しい男性デフォルメキャラ制作だったので、デザイン面では少し肩幅を大きくしたり、太ももを太くしたりなど体形を男性的になるように調整しました。
ところで、ミニゲームと言いつつ、毎回ミニではないボリュームですよね(笑)。

カズキ (笑)。プランナーやエンジニアも含めて、ストーリーイベント本編だけでなくミニゲームも本当に力を入れて作っています。ユーザーのみなさんに喜んでいただきたいという一心で、どのミニゲームも開発メンバーみんなで楽しそうに作っている印象ですね。

▲ミニゲーム「ミサトの猛訓打撃道!ホームランドリル」より

「削ぎ落とすところと誇張するところを見極める」
デフォルメするためのインプットとアウトプットのコツ

ゲームの随所に登場するデフォルメキャラですが、その表情や仕草はどのように着想しているのでしょうか?

カズキ ゲームや映画など最新のものや話題になっているものはなるべくチェックしています。特に『プリコネR』は可愛らしいキャラがたくさん登場するのでアイドルのライブ映像も参考にしています。
また、気になった演出や動きがあったらスロー再生やコマ送りし、エフェクトのタイミングや動きの溜めなどを自分の中で理解できるまで観察します。最近はインターネットであらゆる映像が見られるので、人間だけじゃなくて動物や虫など、気になった動きを何でもチェックして、疑問点をそのまま残さないように意識しています。

uki 動きを付けるのはアニメーションデザイナーの仕事ではありますが、自分からもこうしてほしいという要望が伝えられるようにしています。そのために、日頃から『プリコネR』のキャラだったらこういう動きをするだろうと想像して、“たられば”の落とし込みをしています。もちろんデザインの上でも、そういった動きが一番魅力的に見えるようにパーツやデザインの見え方を研究しています。

▲デフォルメキャラのポーズ例。一番魅力的に見える方法を考え、必要に応じてパーツを描き足しているとのこと!

等身とデフォルメでは動きが違うと思いますが、等身の資料でもデフォルメの参考になるのでしょうか?

カズキ はい。デフォルメキャラもベースはあくまで等身の人間です。等身の動きをデフォルメで再現していく中で、生々しい動きを削ったり大げさな動きをつけたりして、違和感なく馴染めるモーションにしていくのが重要です。情報量を減らすところと誇張するところを見極めることで、より魅力的なデフォルメを作ることができます。

色々なものが制作の糧になっているんですね!最後に、今後の目標を教えてください。

uki 私は前作から引き続き『プリコネR』に関わっていて、今作になってデフォルメキャラがとても豪華な仕様になったと感じています。
前作はデザインで完結していた部分も多かったですが、今作では表現できる幅が広がり、「このキャラをどう動かそう」と個別のモーションまで想像を膨らませてデフォルメキャラをデザインしていく必要があります。そのため、引き続きアニメーションデザイナーとのコミュニケーションを大事にしつつ、原画チームやアニメ制作チームなど各セクションに寄り添っていけるようなチーム作りを大切にしていきたいと思います。

カズキ 魅力的なシナリオやキャラクター、イラストを作っている他のセクションに負けないよう、キャラクターの魅力を引き出すアニメーションを今後も作っていきたいと思います。
また、モーションのクオリティーが進化し続けているので、今後、現在出ているどんなゲームにも負けないようなアニメRPGを目指して真摯に取り組んでいきたいです。


以上、『プリコネR』のデフォルメキャラ制作に関わるデザイナーインタビューをお届けしました。
取材を通して、キャラクターの一人ひとりを本当に大切にしている様子が伝わってきました。これからも『プリコネR』の可愛らしいデフォルメキャラに注目していきたいですね!

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