『シャドウバース チャンピオンズバトル』発売直前インタビュー 開発チームが語る『Shadowverse』の新たな魅力

『Shadowverse(以下、シャドバ)』シリーズの最新作で、サイゲームス初のNintendo Switch向けタイトル『シャドウバース チャンピオンズバトル(以下、チャンピオンズバトル)』が、2020年11月5日に発売されます。TVアニメ『シャドウバース(以下、アニシャド)』の世界観をベースに、オリジナルシナリオや「カードバトル+RPG」という新たなゲームシステムを実装したこの作品について、開発チームのスタッフに話を聞きました!

『シャドバ』の舞台が家庭用ゲームへ!
サイゲームス初のSwitch向けタイトルが誕生

『チャンピオンズバトル』はNintendo Switch向けタイトルということもあり、スマホ版の『シャドバ』とはまた違ったゲーム体験ができるものになっていると思います。開発中はどんな違いを意識されましたか?

やはり、『シャドバ』をテレビの大画面でプレイできるのは大きな変化です。そのため、今回は家庭用ゲームならではのハイクオリティーな演出を取り入れようと意識しました。

確かに、『アニシャド』にも登場した竜ヶ崎ヒイロの《イグニスドラゴン》など、レジェンドカードのフル3Dのアニメーションは圧巻ですね。

開発チーム内にハイエンドの家庭用ゲームを作っていたスタッフが多くいることもあり、その猛者たちに力を注いでもらいました。ただ、スマホ版でも共通して大切にしている「カードバトルの気持ち良さ」は損なわないよう、リッチな演出にこだわりつつも、プレイの邪魔をしないテンポの良さにもこだわっています。リッチなフル3Dのアニメーション演出を加えながらも、演出自体には時間をかけすぎない、ある意味贅沢な使い方をさせていただきました。

3D制作スタッフも、「あんなに頑張ったのに、これだけしか使ってくれないんですか……!」と嘆いていたそうですね。

そうなんです(笑)。良いものに仕上げてもらったからこそ、プレイヤーの方々が快適にプレイできるように実装することで、長く親しんでいただけるようにしたいと思いました。オプションで3D演出をOFFにすることもできますが、「これくらいならOFFにしなくてもいいかな」と思っていただける絶妙なラインを狙っています。

また、元々タッチスクリーンで操作していたものを、コントローラーの操作に置き換える作業も大変でした。試行錯誤しながら1年ほどかけて今のかたちに落ち着きましたね。結果として、スマホ版と遜色ないレベルで操作していただけるバランスになっていると思いますし、ボタンの手応えがあるなど、スマホ版より優れた面もあると思います。個人的にはJoy-Conを両手に持ってテレビの前で寝そべってプレイするのが最高に快適です。

Nintendo Switchならではのローカル通信を使った機能も特徴的ですね。

みんなで持ち寄って遊べるのがNintendo Switchの魅力でもあるので、何らかのかたちで活用したいと思っていました。カードゲット通信という、お互いに協力することでカードを獲得できる仕組みもその1つです。『チャンピオンズバトル』の大きな特徴の1つとして、「友達同士で協力する」という要素があります。『シャドバ』はカードバトル=対戦ゲームなので、これまではユーザーさん同士でバトルをすることはあっても、協力する要素はあまりありませんでした。ですが今回は、誰かと協力することでより楽しく遊べるような機能を加えました。

▲ローカル通信で見つけた他のプレイヤーと協力することで、カードをゲットできる「カードゲット通信」

『アニシャド』の世界に入り込む
独自ストーリーと新規カードの実装秘話とは?

『アニシャド』は、『シャドバ』のゲーム内の世界観を作品にするのではなく、「『シャドバ』で楽しそうに遊ぶ子どもたち」が描かれた作品でしたが、この『チャンピオンズバトル』でもその雰囲気を大切にしていますよね。

そうですね。『チャンピオンズバトル』では、『シャドバ』本来のゲーム性の「カードバトル」に新しく「RPG」の要素を加えていて、『アニシャド』の登場人物たちが暮らす世界の中に、プレイヤーが入り込むような体験を目指しています。

とはいえ、「RPG」の場合、成長を実感する要素としてレベルが上がりますが、『シャドバ』では「レベルが上がるとステータスが上がる」というRPG的な成長はできません。いかにしてユーザーのみなさんが、ゲームの中で「成長している」と実感できるかを考えていきました。

それは難しい問題ですね。どのように解決したのでしょう?

『チャンピオンズバトル』では一般的なゲームと同様、物語が進むにつれてNPC(ノンプレイヤーキャラクター)が強くなっていきますが、独自の要素としてスマホ版『シャドバ』にもあった「デッキコード」を導入しています。『チャンピオンズバトル』の世界は、『シャドバ』が大人気の世界なので、ここでは商店街のおばちゃんや公園にいる小学生など、マップ上のさまざまな場所にシャドバプレイヤーが存在していて、それぞれが色んなデッキを持っているんです。そして彼/彼女たちにバトルで勝てれば、その人のデッキコードやカードがもらえます。さまざまな相手に勝利すればするほど、レアリティの高いカードや複雑なデッキコードが手に入るので、その結果より高度なプレイが可能になって、成長体験を感じていただけるようになっています。

また、初心者の方用に「このカードをプレイするといいよ」とAIがアドバイスしてくれる機能もあります。序盤はこの機能を使い、慣れたら自分で考えるようにしていくだけでも、プレイヤーのみなさん自身の上達を感じていただけると思います。

物語を進めてカードを手に入れることが成長体験に繋がるんですね。今回お話としては「シャドバ部の廃部」をテーマにしたゲーム独自のものになっていますよね。

ストーリー部分は、スマホ版やTVアニメ版のシナリオも担当しているシナリオチームが執筆しています。 シナリオチームが制作した物語に沿って一つひとつのボスバトルを設計しました。

TVアニメの登場人物・ヒイロたちを操作するのではなく、彼らと同じ世界にプレイヤーが入っていくようなかたちになっているのはなぜなのでしょう?

まず第一に、「アニメで描き切れなかった部分を描きたい」という想いがありました。TVアニメは主人公であるヒイロを中心にシナリオが展開されていくため、他のキャラクターの魅力を引き出しきれない部分もありました。ですので、『チャンピオンズバトル』では主人公を別に立てることによって、『アニシャド』の世界をまた別の角度から描けるようにしました。 次に、「王道RPGを目指したから」です。RPGではよく、主人公の名前を自分で決めて物語を始めますよね。そうすることで作品の世界に入りやすくなると言いますか。『チャンピオンズバトル』は「カードバトル」と「RPG」という本来異質なものを組み合わせているからこそ、混ぜるものはシンプルにしよう、と考えました。

▲プレイヤーは主人公(中央右)として、ヒイロ(中央左)たちと一緒にシャドバ部の復活を目指していきます。主人公は男の子と女の子のどちらでも設定が可能です

また、ゲームの世界に入り込んでいただくため、マップに関しても、「そこまで作り込まなくても……」というところまで作り込んでいます。たとえば、ある場所で出てくるフードコートに置いてあるドーナッツも、たくさんのドーナッツが並んだテクスチャーをペタッと貼り付けるのではなく、1つずつ3DCGで作っています。こういった作り込みは、処理負荷やロード時間とのトレードオフになりがちですが、そうならないように工夫するのが大変でした(笑)。ですが、よりゲームの世界に入り込んでいただくためにも、そのクオリティーは落としたくないと思い、エンジニアとアーティストが一丸となって頑張りました。

可能な限りクオリティーの高いグラフィックを目指したのですね。また、『チャンピオンズバトル』には、『アニシャド』で出てきたカードや、ゲームオリジナルのカードも実装されています。まず、『アニシャド』に登場したカードについては、どのように実装を進めていったのでしょう?

『アニシャド』のカードの場合、ゲームの仕様やゲームバランスなどの制限をあまり考慮せずに、映像としての見栄えを重視してカードの能力を設定しています。例えば、《強引な買収》というカードは、TVアニメの中では「使うたびに手札に戻ってくる」という能力になっていて。もちろんそれは、TVアニメを面白く観ていただくための表現なのですが、実際のゲームでは「強すぎてバランスを壊してしまう」カードになってしまう可能性がありました。ゲームが破綻しないよう能力を調整する必要があり、これは本当に大変でした……。

▲『アニシャド』に登場する《強引な買収》は、「使うたびに手札に戻ってくる」という強力な能力をもっています

TVアニメで映えるカードを、そのままゲームに持ってくるのは至難の業なのですね……。

そうですね。ただ、ユーザーさんの中にはきっと「TVアニメで観たあのカードを使いたい!」と思ってくださる方がいると感じたので、僕らも「TVアニメに登場したカードは、何とか実装しよう!」と試行錯誤を重ねました。その結果、非常に多くのTVアニメ登場カードを実装することができました。何度も何度もテストを繰り返しながら解決策を探った、スタッフの努力の結晶ですね。

▲能力調整を経てプレイアブルなカードとなった《強引な買収》

ゲームオリジナルのカードについてはいかがですか?

ゲーム専用のカードとしては、(蛇神)コウや(九鬼)ズオウ、ジュスティーヌ姉妹(ヴァネッサ&ビビアン)のように、TVアニメではゲストキャラとして登場して、今回の『チャンピオンズバトル』でも実装されたキャラクターたちのカードがあります。この辺りも、TVアニメでのシーンを意識しながら改めて考えていきました。

また、今回の『チャンピオンズバトル』は、第1弾~第3弾のカードが使える『シャドバ』の初期の環境に、ゲームオリジナルのカードを加えたものになっているので、『シャドバ』を昔から遊んでくださっている方にとっては懐かしく当時のことを思い出していただける部分もあるでしょうし、同時に新しい要素が加わったものにもなっています。そのため、当時のデッキをそのまま、ということだけでなく、新しいカードも使っていただいて、色々と考えていただければうれしいですね。

では、その他の機能についても教えてください。今回の『チャンピオンズバトル』には、「特殊バトル」や「パズルクエスト」などの機能も実装されています。

「特殊バトル」では、「特定の条件を満たすと手札のコストが大きく下がる」というような、通常の『シャドバ』にはない特殊なルールを持つNPCが複数いて、刺激的なバトルが楽しめます。

▲普段のルールとは異なる対戦が楽しめる「特殊バトル」

また、「パズルクエスト」は詰将棋(つめしょうぎ)的にクリア条件を1ターンで解決する「詰シャドバ」とも言えるコンテンツです。初心者の方が遊び方を覚えるのにも最適なので、「このカードはこんなふうに使うんだな」と遊びながら知っていただけると思います。

▲詰将棋のような「パズルクエスト」

ますます広がりゆく『シャドウバース』の宇宙に
新たな魅力を加えてくれる作品

最後になりましたが、開発スタッフとしては今回の『チャンピオンズバトル』を、どのように楽しんでいただきたいと思っていますか?

アドバイス機能や、パズルクエストなど、カードゲーム初心者の方にも遊びやすい機能をたくさん用意しているので、カードゲームであまり遊んだことのない方でも、ぜひプレイしていただけるとうれしいです。もちろん、基本はカードバトルですから、途中で相手が倒せずにつまずくときもあるかもしれません。そんなときには、「『チャンピオンズバトル』の半分はRPGでできている」ということを思い出していただき、マップを探索したり、買い物をしたり、いろんなNPCとバトルしてみてください。そうすることで、カードやデッキコードが集まり、倒せなかった相手が倒せるようになると思います。

また、そうやってマップを回る中で、TVアニメでは描かれていない『アニシャド』の登場人物たちの知られざる一面や魅力も、色々と垣間見えると思います。既に『アニシャド』を楽しんでいただいている方は、そうした部分に注目していただけるとうれしいです。

なるほど。ゲームだからこそ、個々のキャラクターを掘り下げられる部分もある、と。

はい。『アニシャド』や『チャンピオンズバトル』はスマホ版の『シャドバ』とはまた違った世界観の作品になっています。ですが、魅力的なキャラクターと白熱のカードバトルという「シャドバらしさ」は健在です。
スマホ版、TVアニメ版、Switch版と、それぞれに異なる『シャドバ』のシリーズ全体をリンクさせながら『シャドバ』のすべてを楽しんでくださると、とてもうれしいです。

『シャドウバース チャンピオンズバトル』公式サイト