CEDEC2019リポート

9月4日〜6日の3日間、ゲーム開発者が集う国内最大級のカンファレンス「CEDEC 2019」が開催され、大きな盛り上がりのうちに幕を閉じました。

CEDEC(セデック)は「Computer Entertainment Developers Conference」の略称で、国内の有名ゲーム会社やインディーズメーカーなどからエンジニア、アーティスト、事業担当者などが参加し、最新の知見を披露するイベントです。講演やラウンドテーブル、ワークショップなどのさまざまな形式で200件近いセッションが開かれ、8000人近い聴講者が訪れます。

以前の記事 でもお伝えしたとおり、CEDEC 2019にはサイゲームスの開発陣も多数登壇。ゲームの開発や運用のみならず、eスポーツイベントや体験型アトラクションのオーディオ事例といったさまざまな分野において、これまでの取り組みで得た知見を共有しました。ここでは、サイゲームススタッフが登壇した各セッションの様子をダイジェストでお届けします!

なお、開発者向けコンテンツ『Engineer’s Blog』では、各セッションの資料やフォローアップ記事を順次公開していく予定です。講演内容の詳細についてもっと知りたいという方は、こちらもご期待ください。

Shadowverseのeスポーツ展開
—ゲームがつなぐコミュニティと地域活性化について—

リリースから3周年を迎えた『Shadowverse』は、eスポーツタイトルとしても確かな地位を築きつつあります。このセッションでは、これまでに実施した『Shadowverse』の大会と、それによって地域やコミュニティーにどんな波及効果があったのかが語られました。『RAGE』や『Shadowverse World Grand Prix』のような大規模大会の他にも、オフラインイベント「ES大会」が日本各地で開催され、地域の活性化に繋がっていることは、あまり知られていない事実かもしれません。

▲『Shadowverse』を10年、20年と続くタイトルにするためには「コミュニティーの形成」が重要と考え、さまざまな施策に取り組んでいます

日々の業務から少しずつ始める!
TA育成について話すラウンドテーブル

テクニカルアーティスト(TA)の育成をテーマとしたラウンドテーブル(複数参加者によるディスカッション)です。ゲーム会社各社から有志で集まった7名のTAが登壇し、「TAとして成長する上で自信につながったエピソードは?」「TAになって学べたことは?」「学生のうちに学んでおいたほうがいいことは?」といった質問に対し、体験談や実感を語りました。こうして複数の会社の現場の声を聞けるのも、CEDECの醍醐味の1つです。

▲「TAになって学べたものは?」という質問に対する、「聞き取り力と伝える力」「目的意識」「相手目線で考える力」といった回答には、なるほどといった様子でうなずく人が多く見られました

ゲームを面白くするためのプロセス改善と組織デザイン
~最高のコンテンツを実現するためのカイゼンとは~

サイゲームスが現在進行形で取り組んでいるプロセス改善と組織デザインについて語ったセッションです。業務や組織の改善というとコスト削減に意識が向きがちですが、サイゲームスでは「ゲームコンテンツを面白くするための時間を確保する」という発想のもとに2つの専門部署を立ち上げ、最適な業務や組織づくりを進めています。この取り組みが始まるまでの経緯と、その実践方法を紹介しました。

▲コンテンツの質を高めるためには、業務内容だけでなく、プロセスや組織のあり方も見直す必要があるのではないか、という視点で改善を進めているサイゲームス。今回発表した知見がお役に立てば幸いです!

グランサイファーライド制作事例
〜体験型アトラクションはオブジェクトベースのマルチチャンネル音響で攻略せよ!〜

サイゲームス主催のイベント「グラブルフェス2018」にて実施された体験型アトラクション「グランサイファーライド」のサウンドシステムを紹介。大規模なマルチチャンネルのシステム構築の過程は、実体験したからこそ得られる知識やノウハウが詰まっており、またゲームとは全く勝手が違うサウンド作りに手探り状態で挑んだスタッフ陣の苦労が伝わってくる部分もありました。

▲合計44個のスピーカーを配置した世界最高クラスのシステムが実現するまでの経緯と、それによって得られた知見を披露。「グランサイファーライド」はさらにバージョンアップして再登場する予定なので、ご期待ください!

スマホゲームリリース時に
絶対サーバを落とさないための負荷試験

スマホアプリの負荷対策に関する知識を提供したセッションです。ゲームを運用する会社としては、アクセス集中などの過負荷によってサーバーがダウンし、ユーザーの方々をがっかりさせることは絶対に避けなければなりません。「絶対落とさないサーバー」を実現するために、想定アクセス数をどのようにして見積もるか、どのような項目をどんなツールを使って試験するかといった数々のノウハウを紹介しました。

▲試験では「安全率」という指標を設け、それが最低でも2.0以上になるように負荷対策を図っています。サーバーの安定性へのこうしたこだわりは、ユーザーのみなさんに安心して遊んでもらいたいという強い思いがあるからこそです

モバイルゲームのテキスト作成術
~シナリオ外のテキストで魅せるには?~

ゲームの世界観を伝えるツールとして、シナリオ以外のフレーバーやカードコメントといった細かなテキストに着目し、その作成方法を紹介したセッションです。キャラクターやアイテムを象徴づけるテキストであるフレーバーテキストや、イベントのタイトル、サブタイトルといった各種のテキストを分類し、種類に応じた作成方法について実例を交えて解説。「レア度と文調を合わせる」「コンセプトを立てる」「短く少なく単語連想」といったルールに沿ってテキストを作っていく手法が語られました。

▲「シナリオ外のテキスト」に焦点を当てて語った本セッション。明確なルールを設けることで、統一感のあるテキストをスピーディーに量産することが可能となります

個性的で魅力的なモンスターを量産するためのデザインの秘訣と開発手法紹介
~プリンセスコネクト!Re:Diveにおけるモンスターデザイン制作事例~

『プリンセスコネクト!Re:Dive』に登場する数々のモンスターは、作品の世界観を支える大切な要素。本セッションでは、「ビジュアル」と「モーション」の2つの観点から、同作の個性豊かなモンスターを効率的に生み出す制作手法・開発体制を紹介しました。プレイヤーを魅了し続けることが重要課題である運営タイトルとして、質の高いモンスターをいかに効率的に量産していくかのノウハウが詰まった講演でした。

▲ゲームの世界観にマッチするビジュアルとモーションを備えたモンスターを、どうやって大量に作り出していくか。これも、ユーザーのみなさんに質の高いコンテンツを継続的に提供したいという思いの現れです

Shadowverse流開発手法
~QAコスト削減と堅牢性強化を実現するプランナーによるテスト駆動開発~

デジタルカードゲームにおけるQA(デバッグ)コストの大幅削減を実現する開発手法を紹介したセッションです。『Shadowverse』はすでにカード総数2000枚以上、スキルの総組み合わせ数1000万通り以上という状況にあり、今後もカードは増え続けていきます。カード・機能の追加に伴って発生する膨大な量のデバッグを効率化する方法を模索してきた開発陣がたどりついた「プランナー主体のテスト駆動開発」や、取り入れたツール群、ビルド環境などについて紹介しました。

▲AIや独自のテストツールを用いたデバッグ手法には多くの方から質問が寄せられ、講演後の質疑応答も盛り上がりました。こうした地道な施策を続けることで、『Shadowverse』を10年、20年と続くタイトルにしたいと考えています

「現場最優先のススメ」
~最高の開発環境を生み出す情報システム部門の在り方~

社内の各部署からのさまざまな要求に対して、情報システム部門がどのようにして迅速にサポート対応しているかを紹介した講演です。開発スタッフがクリエイティブな作業に割ける時間を最大化するためにスピードを追求する「現場最速」と、ストレスなく作業に集中できるような環境を整える「満足度最重要」という2つの考え方を徹底している点は、サイゲームスの情報システム部門の強みです。

▲セッションには他社の情報システム部門の方も参加されていました。サイゲームスの手法が参考になれば何よりです

プリンセスコネクト!Re:Dive運用事例
~リリースの高頻度化と安定化を両立させるプリコネRの運用体制~

『プリンセスコネクト!Re:Dive』の、高頻度のアップデートを考慮したアプリ設計や、大量のリソースファイル・開発環境・ブランチ管理コストのCI(継続的インテグレーション)を用いた改善手法を取り上げました。本作では、メンテナンスに入ること(=ユーザーの方がプレイできない状態)を極力避けながら、大小合わせて月に8〜10回という極めて高頻度のアップデートを実現しています。同じように運用タイトルに携わっている方々に多数ご参加いただき、大量のアップデートを安定的に捌くための考え方や実践手法をお伝えすることができました。

▲セッション終了後には質問者の長い列ができていました。開発者同士が直接的に触れ合うことができるのも、CEDECの魅力と言えます

AAAタイトル開発における
ハイエンドオーディオ制作技術の研究成果と取り組み事例

ワールドワイドに向けたAAAタイトルに必要なゲームオーディオ制作技術について、サイゲームスでの研究成果と取り組み事例を紹介した講演です。(1)音の距離減衰や遮蔽を表現する手法に関する研究成果、(2)ゲームオーディオのオプション設定に関する提案、(3)海外のスタジオを使用した収録での課題と解決案という3部構成で、盛りだくさんの内容を披露しました。

▲高度な技術的研究から人間味あふれる収録エピソードまで、「話のダイナミックレンジ」が極めて広いセッションとなりました

プロシージャルゲームコンテンツ制作ブートキャンプ2019 Part 2 機械学習

2コマ連続で開催された、高生産性・高品質性を促進する「プロシージャル法」に関するセッションの第2部です。主催は3DCGソフト『Houdini』の開発元であるSideFX社で、サイゲームスのスタッフが講演者の一人として登壇。現在取り組んでいる、火・煙・液体といった「流体」を高品質かつ高速にシミュレーションする機械学習の手法を題材に、その機械学習の運用フローを『Houdini』で作る試みを紹介しました。

▲機械学習のデータセット、学習、実装までを全て『Houdini』内で完結させることを目指して、パイプライン(処理手順)の構築を進めています

フォトグラメトリーとプロシージャルを用いた最新ハイエンドゲーム3DCG背景制作手法
~ハイエンドゲーム開発の経験がない会社がいかにしてそれらを生み出したか~

現在サイゲームスで鋭意開発中のハイエンドゲーム『Project Awakening』における、写実的な背景の制作手法とノウハウを紹介したセッションです。「フォトグラメトリー」と「プロシージャル」という2つのテクノロジーの融合を実現するまでの過程や、伝統的な背景制作のノウハウの活用方法について取り上げました。熱のこもった話しぶりに、会場も徐々にヒートアップしていき、セッション終了後には大きな拍手が起こりました。

▲技術やセンスを磨くことに加え、「絶対にいいものを作るというマインドが大事」だとする演者の主張が、力強い口調で語られました

CygamesのSlack設計&運用から学ぶ
~Slackを使うと、なぜ生産性向上を促進できるのか?〜

ビジネスコミュニケーションツール『Slack』を用いた、大規模組織におけるコミュニケーション基盤の構築・運用について紹介したセッションです。サイゲームスおける運用事例を紹介しつつ、『Slack Enterprise Grid』の導入の成果や、社内の情報共有をよりスムーズに進めるためのポイントについて語りました。立ち見が出るほどの人気ぶりで、企業内コミュニケーションツールとしての『Slack』の注目度の高さを感じました。

▲Slack社はもともとゲーム開発をしていた人が始めた会社で、『Slack』にもゲーム開発から得た知見が活かされているそうです

以上です。サイゲームスは、自分たちが得た知見や成果を共有することでゲーム業界全体の発展に貢献していきたいという思いから、CEDECに積極的に参加しています。ありがたいことにどのセッションも大人気で、とても充実した内容となりました。会場に足をお運びいただいたみなさま、ありがとうございました!