コンシューマーエンジニアの仕事とは? プログラムによってゲームの「手触り」を作り出す【サイゲームス仕事百科】

サイゲームスでは、スマホ向けゲームの他にコンシューマー(家庭用ゲーム機)向けのゲームも制作しており、開発はコンシューマー専門のエンジニアが担当しています。一般的には彼らのことを「ゲームエンジニア」「ゲームプログラマー」などと呼びますが、サイゲームスでは「コンシューマーエンジニア」と呼称しています。

コンシューマーエンジニアの仕事は、主に文書などでまとめられたゲームの仕様を、実際にゲーム機で動くようにプログラミングすることです。ディレクターやプランナーが生み出した「面白さ」をかたちにして、ユーザーのみなさんが最高の体験ができるまでに作り上げる役割を担っています。今回はコンシューマーエンジニアの仕事について、マネージャーへの取材を基に解説します。

サイゲームスのコンシューマータイトルの
存在感を世界レベルで高めていく

コンシューマーエンジニアは、コンシューマーゲームにおけるUIやクエストなどのコンテンツ開発の他、ソフトウェアの一部であるライブラリの設計・開発、テスト、運用などを行うエンジニアです。中規模からハイエンドタイトルに至るまで、幅広いコンシューマーゲームを開発します。
つまり、ゲームをプレイする際にユーザーから見える・聞こえる部分、いわばゲームの「手触り」に関わる箇所のほぼすべてを作っています。ゲームの面白さに直結する要素を開発する仕事であり、やりがいも責任も大きい職種と言えます。「最高のコンテンツを作る会社」というサイゲームスの掲げるビジョンを実現するため、クオリティーの高いゲームを作り、ユーザーのみなさんに届けることが我々コンシューマーエンジニアのミッションです。

▲2024年2月に発売されたコンシューマーゲーム『グランブルーファンタジー リリンク』もコンシューマーエンジニアが制作に携わりました

サイゲームスは2011年の設立当初から、「最高のコンテンツ」として『グランブルーファンタジー』や『Shadowverse』などのフィーチャーフォン(ガラケー)やスマホ向けタイトルを開発してきました。しかし、最高のコンテンツを作る上でプラットフォームを限定していたわけではありません。2014年のCEDECでコンシューマーゲームの開発を発表して以降、大阪サイゲームスの設立などを経て、2016年にはコンシューマーエンジニアの専門部署が発足。以来、『グランブルーファンタジー リリンク』(2024年2月発売)をはじめとした様々なタイトルの開発に取り組んできました。現在は、サイゲームスのコンシューマータイトルの存在感をワールドワイドで示すことを長期的な目標として、さらに力を入れています。

コンシューマーエンジニアの体制と業務内容

サイゲームスのコンシューマーエンジニアの組織体制と業務内容について、もう少し詳しく解説します。

■組織について

サイゲームスに在籍している約1100名のエンジニアのうち、コンシューマー開発に関わるエンジニアは約160名です。

このうち、コンシューマーエンジニアは東京と大阪の2拠点に分かれて在籍していますが、業務内容に大きな違いはありません。プロジェクトには、場所に関係なく適切なスキルを持ったエンジニアが加わり、拠点をまたいで協力して業務にあたっています。
なお、ハイエンドコンソール(コンシューマー)向けの内製ゲームエンジン「Cyllista Game Engine」を開発している「ゲームエンジンエンジニア」も、コンシューマー開発に関わるエンジニアといえます。

昨今のコンシューマーゲーム開発はどんどん大規模化しており、その上分業化が進んで各分野の専門性が高くなっています。高い専門性を持つ人材を集めることは容易ではないため、外部から募集するだけでなく、自社で専門性の高いスペシャリストを育成していくことが重要な課題となっています。

■業務内容について

上でも触れたように、コンシューマーエンジニアはゲームシステムをはじめとしたコンテンツ開発全般を担っています。下記はその具体例です。ゲーム開発の大規模化に伴い、ゲームそのもののプログラムに加えて、開発を効率化するためのツールやゲームエンジン開発も業務に含まれます。

・既存のゲームエンジンやハードウェア性能の調査
・技術選定・導入
・ゲームエンジニアリング
・グラフィックス、サウンド、サーバーなどのエンジニアリング
・独自技術の開発
・開発環境の整備・ツール開発

プログラミング言語としてはC++、C#、Python、Luaなどを用い、ゲームエンジンはプロジェクトによって内製エンジンと他社製の汎用エンジンを使い分けています。

我々が大切にしているのは、エンジニア目線からの「提案」です。前提として渡された仕様を実現することはもちろんですが、それ以外にエンジニアだからわかることもあります。仕様書の段階ではディレクターやプランナーが気付いていないことでも、「ハードウェアの性能を考えたらこういうことができる」「こうしたらもっと面白くできるのではないか」などと積極的に提案するようにしています。

▲『リリンク』のプレイ画面
▲Nintendo Switch™から2020年に発売されたコンシューマーゲーム『シャドウバース チャンピオンズバトル』のプレイ画面

コンシューマーエンジニアの業務フロー

ここでは、プロジェクトの始動からリリースまでの作業プロセスを例に、コンシューマーエンジニアの業務フローをご紹介します。

全体を通してプランナーから渡された仕様書を技術的に検証し、「そのゲームで実現したいことが本当に反映されているか」という企画職的視点と、「そのアイディアに不整合は潜んでいないか」というエンジニア的視点の両面から分析。その上で、実装や変更を行った後の影響や運用までを考慮しながら最終的な実装仕様に落とし込み、アーティストが作った3DCGやサウンドなどの素材をプログラムに組み込んでいきます。
各工程をディレクターやプランナーと連携しながら進めると同時に、2の「調査・設計」についてはアーティストとも議論しつつ、「最高のコンテンツ」をかなえる最適な技術を選定します。

1.立ち上げ

ディレクターやプランナーと相談しながら、ゲームの大まかなイメージがわかるプロトタイプを作成します。最初に試作品を作ることで、ゲームの完成形のイメージをチーム内で共有し、その作品でどのような面白さを目指すのか認識を合わせます。

2.調査・設計

ゲームをプログラムとして実装していくにあたり、どんな技術が必要なのか、現在ある技術でどこまでのことができるのかを調査し、必要に応じて技術の習得を図ります。調査の結果見当を付けた技術をどのように組み合わせれば最適なかたちを実現できるのか、パズルを組み立てるイメージで設計します。

3.開発・実装

設計した内容に沿って実際にプログラミングを行います。ゲームを目に見え、手で触って動かせる状態にします。実際に動かして、イメージと違う部分があれば作り直し、再度動かして感触を確かめる……という作業を繰り返して理想に近付けていきます。

4.チューニング

コンシューマーゲームはハードウェアごとに描画性能や処理性能などの様々な制約があるため、設計通りに作っても最初からイメージ通りに動くことはまずありません。そもそも動かない、動きはするが重い、特定の操作をするとフリーズするなどのトラブルを解消して、ゲームとしての完成度を上げていくチューニングが非常に重要となります。コンシューマーエンジニアにとっては肝となる工程です。

5.デバッグ

チューニングを経た状態でも、細かい部分の不具合やバランスの不整合は数千件、時には1万件を超える単位で残ります。そうした細かい問題を数十人から100人以上のデバッガーを動員して洗い出し、調整していきます。

その後、いよいよリリースとなり、ユーザーのみなさんへゲームをお届けできる、最もうれしい瞬間を迎えます。
しかし、昨今のコンシューマーゲームは、リリース後も追加コンテンツなどを提供するタイトルが増えています。チームは、引き続きさらなる楽しさを提供するために開発を続けるメンバーと、新プロジェクトにて再びゲーム開発の始点に立つメンバーなどに分かれ、それぞれの思いと共にゲーム開発は続いていきます。

コンシューマーエンジニアの仕事のやりがい

コンシューマーエンジニアがやりがいを感じる瞬間はいくつかあって、開発段階では、ゲームがある程度かたちになってくるとみんなのテンションが急激に上がります。極論かもしれませんが、エンジニアは自分が書いたプログラムが思い通りに動いたら楽しい人たちの集まりだと思っています。そういった喜びは共通ではないでしょうか。

その他、ツール開発を担当している担当者であれば、自分が作ったツールをプランナーやデザイナーから「使いやすいね」と言ってもらえるのはうれしい瞬間です。作業効率が良くなったとか、自動化に成功したとか、制作物が役に立っているのを感じるのはうれしいですね。

そしてもちろん、タイトルのリリースは大きな到達点です。リリース後にプレイの感想やレビューの評価などを見ると、「自分たちが作ったものが世に出たのだ」という実感が湧きます。

それから、量販店などの店頭をこっそりリサーチして、お客さんがパッケージを手に取る姿を見ると非常にうれしくなります。これはコンシューマータイトルならではの感覚でしょう。さらにゲームのレビューで良い点数が付けられたり、世界中の雑誌や情報サイトで話題になったりすると、私たちのこだわりや仕事ぶりが評価されたのだと感じますね。

▲パッケージ版の実物を見ると、ゲームがリリースされた喜びはさらに強い実感になります

コンシューマーエンジニアは仕様書に沿ってゲームを開発しますが、手触りはエンジニアがこだわるべきところです。もし携わったゲームの手触りが良くなかったとしたら、我々はそれをエンジニアの責任だと考えます。ユーザーの目線に立ち、エンジニアが自らの感覚と経験を頼りに、意図したユーザー体験を仕上げていく必要があります。そこがこの仕事の難しさであり、やりがいに繋がる部分だと言えるでしょう。

コンシューマーエンジニアに
必要なスキルとマインド

ここでは、サイゲームスのコンシューマーエンジニアに求められるスキルやマインドについてご紹介します。

■コミュニケーション能力

相手の話をきちんと聞くことと、それに対して適切な提案ができること。その際、専門的な話を、エンジニアにだけわかる言葉ではなくみんなに伝わる言葉に変換して伝えることが大切です。サイゲームスのコンシューマーエンジニアが大切にしている能力の一つです。

■探究心

デジタルの技術は進歩が早く、新しい技術が続々出てきます。そうした技術のトレンドをキャッチアップする姿勢は大切です。新しい技術を常に採用するとは限りませんが、少なくとも現状使っているものと新しいものを比較・検討して、より良いほうを選べるだけの知識を持っておく必要があります。

■業務を完遂する力

コンシューマーゲーム開発は数年単位の長丁場です。様々なトラブルや進路変更、停滞なども起こります。それでも途中で気力を失うことなく、リリースまでやり切る持久力・忍耐力はコンシューマーエンジニアにとって必須条件と言えます。

■「手触り」へのこだわり

ゲームが触って気持ちの良いものになるかどうかは、エンジニアのプログラミングの腕にかかっています。どういう手触りになるかはトライ&エラーの積み重ねなので、途中で妥協すると微妙なクオリティーになってしまいます。徹底して手触りにこだわれることが、良いエンジニアの条件です。

コンシューマーエンジニアのキャリアパス

現状では、コンシューマーエンジニアの8割ほどが中途採用で、残りが新卒や第二新卒で入社しています。中途合流者はほぼゲーム業界出身で、一部、重工業や証券会社といった異業種から入ってきたプログラマーもいます。

新卒は入社後にゲーム開発に特化した技術研修を受け、その後セクション配属となります。未経験者は基本的にOJTで、パートリーダーのもとでキャリアを積んでいきます。早ければ2〜3年ほど現場で経験を積みパートサブリーダーになる方もいます。それくらいの実力がつけば一人前と言って良いのではないかと思います。

コンシューマーエンジニアのキャリアパスには大きく二つの方向性があり、各々の個性や得意分野を生かして成長していきます。一つめは、比較的多く見られるスペシャリストタイプ。特定の分野に特化して経験を積み、高い技術力を持ったシニアエンジニアなどとして活躍していきます。二つめは、ジェネラリストタイプ。ゲームを構成する技術全域において広い知識を持ち、メンバーへの業務割り当てや新人育成などのマネージメントを得意としたエンジニアとして、組織を率いていきます。

コンシューマーエンジニアを目指す人へのアドバイス

サイゲームスのコンシューマーエンジニアとして働く大きな魅力は、最高のコンテンツを作るために、あらゆるチャレンジが許されているところです。何かにトライした結果失敗しても、「このやり方では面白くならないことがわかった」とポジティブに捉える風土があります。また、優秀な先輩や仲間がいて様々なチャレンジができる環境は働いていて得るものも多いです。

仕事をする環境にも恵まれています。ハイパフォーマンスのPCやディスプレイなどのハード面からソフトウェアなどのツールまで、高性能なものを導入してくれます。また、新しい機材の導入の際はシステム管理の部署が手厚くサポートしてくれますし、開発に集中できる環境であることは間違いありません。

現在我々は、そんな環境で一緒に働く仲間を募集しています。採用の面接で重視しているのは、プログラミングの能力や技術面の知識はもちろんですが、「きちんと会話ができること」です。繰り返し述べているように、サイゲームスのコンシューマーエンジニアはコミュニケーションを大切にしています。
コミュニケーション能力に関して、面接で毎回聞くのは今までに遭ったトラブルをどんなふうに解決したか。そういうときに独力で解決しようとせずに周囲を頼ることができる人は、ほぼ例外なくコミュニケーション能力が高い人だからです。

あとはやはり、どんなゲーム好きかを聞かせていただきたいです。やっぱりゲームが好きであってほしいですし、何よりプレイヤーの気持ちがわかることが大切だと考えています。面接では、「そのゲームがどれだけ好きか」を熱量高く語ってくれるとうれしいです。


以上、コンシューマーエンジニアの仕事についての解説でした。
現在サイゲームスでは、一緒に働く仲間を募集しています。この記事で興味を持った方は、ぜひ一度こちらをチェックしてみてください。

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