新しいアイディアを生み出す場 社内コンテスト「Cygames ゲームコンテスト 2024」リポート!

サイゲームスでは2024年、社内コンテスト「Cygames ゲームコンテスト 2024」を開催。本コンテストは、「職種を越えてゲームを作りたい」「普段とは違うジャンルのゲームを作りたい」と考えるスタッフが本格的に開発できる機会として、また新たなゲームや新規IPのアイディアを生み出す場として開催されました。
本記事では、社内イベントの事例として、約6か月間のコンテスト運営の模様を運営事務局長と参加者のコメントを交えてリポートします。

エンジニア推進部 部長/「Cygames ゲームコンテスト 2024」運営事務局長カズユキ
gutenberg-examples
高校卒業後、様々な職種を経た後にWebサイト制作会社でWebフロントエンドエンジニアとして経験を積み、2012年7月にサイゲームス合流。フロントエンドエンジニアのマネージャーとして活躍し、2024年4月には新設されたエンジニア推進部の部長に就任。エンジニア組織の改善推進業務をする傍ら、2024年1月に開催された「Cygames GameJam 2024」や、今回開催された「Cygames ゲームコンテスト 2024」で運営事務局長を務める。

全職種のスタッフが参加可能
「作りたいものを自由に作る」を支援する

サイゲームスではこれまでにも、社内におけるゲーム開発イベントとして「Cygames GameJam 2024(以下、GameJam)」を開催してきました。これは、役職や部署に関係なく社内から有志を募り、2日間という短期間でゲームを作るイベントで、ゲーム制作経験の有無に関係なく、子会社を含む全スタッフが参加可能でした。

▲GameJamの様子

ゲームコンテストが生まれるきっかけになったのは、このGameJamでした。GameJamを開催して、「職種を越えてゲームを作りたい」「普段とは違うジャンルのゲームを作りたい」と考えるスタッフがたくさんいると感じた専務取締役の木村が、さらに本格的にゲームを開発できる場を提供したいと企画したのがゲームコンテストです。

また、昨今のゲームはどんどん複雑化してきており、企画書だけでゲームの面白さを判断することは難しくなっています。そのような中、社内の様々な職種のスタッフが持っているアイディアから新しいコンテンツが世に出ていけば――という想いもあり企画されました。GameJamの運営事務局長を務めたカズユキがこの相談を受け、木村の考えに賛同したことからゲームコンテストの開催に至りました。

gutenberg-examples
カズユキ
GameJamの開催時にも、もっと時間をかけてゲームを作りたいという声が上がっていたんです。GameJamは運営側が選んだチーム編成で行われるため、「自分でチームメンバーを集めたい」「気が合う人と作りたい」といった声も一定数あったんですよね。だからこの企画は私にとっても渡りに船だったので、コンテスト運営を担当することにしました。

2024年に開催された「Cygames ゲームコンテスト 2024(以下、ゲームコンテスト)」は、いわばGameJamの発展版。経験の有無にかかわらず誰でも任意で参加できる点は同じですが、GameJamがスタッフのコミュニケーションを促進する意味合いが強いのに対し、ゲームコンテストは本気度が高め。開催発表の際には、サイゲームスの次を担う新しいアイディアを生み出す場とし、会社で機材・ソフトウェア提供を支援すること、最優秀作品はプロジェクト化を検討することが告知されました。
4月から10月までの6か月間を使い、実際に遊べるもの(モックアップ)の開発を目指します。

作品の評価も本気です。ゲームコンテストの発案者である専務取締役の木村が審査委員長を、社内のクリエイティブ関連部門のマネージャー陣が審査委員を務め、あらゆる角度から作品を評価した上で、最優秀賞(プロジェクト化の検討)、優秀賞、佳作を選出します。

最優秀作品のプロジェクト化とはつまり、モックアップからさらに本格的な開発を行って製品化を目指すということ。自由な発想で新しいジャンルにチャレンジしてみたい、ゲーム開発系の職種ではないけれどアイディアならある──。そんな想いが作品になって世に出るかもしれない、夢があるイベントなのです。

ゲームコンテスト実施の流れ

1.メンバー募集

ゲームコンテストへの参加は、チームまたは個人での参加が可能です。チームで開発をする場合は、自分が中心となって呼び掛けるのも、誰かの呼び掛けに応じて参加するかたちでもOKです。

チームで開発をしたい人たちの助けとなるように、運営事務局はメンバー募集会を3回実施。サイゲームスには複数の拠点があるため、会場での開催に加えて配信も同時に行いました。もちろん、異なる拠点のチームに所属しても構いません。また、メンバー募集・加入希望のオンラインの掲示板が用意され、リアルタイムな募集会以外にもスタッフのマッチングが図られました。

▲メンバー募集会の様子。参加希望者のPRや各チームからのメンバーを募るプレゼンテーション、簡単な交流会などが行われました

今回ゲームコンテストにエントリーしたのは45チーム。ゲームコンテストの運営事務局は15〜20チーム、200名程度の参加を予測していたとのことですが、実際にはその3倍以上がエントリー。約600名が参加しました。
なお、ゲームコンテストに関連する活動は部活動のように業務時間外で行われます。サイゲームスはゲーム好きなスタッフが多い会社ではありますが、業務外活動にもかかわらず「実際にゲームを作りたい」と思う人がここまで多いとは驚きです。

メンバー募集会の第1回では、発案者である専務取締役の木村から参加者に向けて、チームでゲームを作る上で大切にしたい三つのポイントが語られました。

ゲームコンテスト参加の心得三か条

■完成しなくても泣かない
仕事でもないチームでの制作で、「みんなでゲーム作ろうぜ」というノリで1本の作品を完成させるのは至難の業です。だから、完成しなくて当たり前くらいに考えて、前向きな気持ちで挑戦してほしいと思います。

■完成させることが大事
企画を大きくしすぎて、結局完成できないというのは、この種の試みでありがちなパターンです。例えばMMORPG(※)の大作を作ろうとしてもおそらく不可能なので、ゲームコンテストの規模感で実現できそうなものを目指すことが大切です。

■完成したら泣いてもいい
完成させることが大事。でも完成しなくても仕方ない。艱難辛苦を乗り越えて完成した暁には、チームのみんなで泣いてください。それがチームでものを作る喜びです。

※ MMORPG……Massively Multiplayer Online Role-Playing Gameの略。大人数が同時に参加するオンラインRPGのこと

2.開発

チームを組成したら実際の開発に入ります。リーダー(ディレクター)が中心となり、作業の割り振りや進行管理を行います。実際にどのようなプロセスで作業を進めるかはチームによって様々です。

▲コミュニケーションツールであるSlackにはチーム専用のチャンネルが。画像はチームNo.26の一例

在宅でも開発ができる環境を整えるため、参加者にはゲームコンテスト専用のノートPCを貸与。専用のドキュメント共有スペースや開発用ツールのアカウントなども発行され、通常の業務とゲームコンテストの活動を完全に分離させ、会社の秘匿情報を守る工夫がなされました。Slackにはゲームコンテストのための互助会チャンネルも用意され、誰かが困っていると、チームの垣根を越えて助け合う様子も見られました。

また、経験のない領域を担当するスタッフもおり、イラストレーターがUnityで実装をしたり、プランナーが一人で3Dゲームを作ったりと、「やってみたい」という想いに駆られて新しいことに挑戦する人も少なからずいました。成果物を作るだけでなく、こうした体験ができることもゲームコンテストの意義と言えるでしょう。

3.進捗報告

各チームはマイルストーン(中間目標地点)として、開発期間中に企画概要書、α版、β版の任意提出のタイミングがあります。ここでは、ベテランディレクターによるフィードバックが行われました。主なチェックポイントは、実現可能な企画か、権利的・倫理的な問題が生じていないかなどです。各チームはフィードバックを参考にしながら、作品を自由にブラッシュアップします。

gutenberg-examples
カズユキ
参加すること自体が有意義なのは確かですが、「やり始めたけど業務が忙しくて、結局中途半端で終わっちゃいました」となるよりは、「何らかの形にして提出できました」のほうが、体験として良いはずです。進捗を管理するというよりは、参加者にモチベーションを維持してもらうためにマイルストーンを設定していました。

4.作品提出から審査まで

4月からエントリー受付が始まり、作品の提出締め切りは10月23日まで。提出できるのは1チーム1作品のみです。短期間での開発なので完璧に仕上がっている必要はなく、求められる水準は「プレイできる状態であり、審査時に作品としての面白さを伝えられる状態が望ましい」というもの。提出された作品は審査委員の他、社内スタッフも試遊できる環境が整えられました。また、人気投票が実施され、コンテストに参加していない人も含めて会社全体で盛り上がりを見せました。

最終的に提出されたのは38作品。予想より遥かに多くのチームが完走した結果となりました。
提出された作品はモンスターRPGからリアルタイムシミュレーションゲーム、3Dアクションゲーム、恋愛パズルアドベンチャー、ホラーアドベンチャーゲームまで、「作りたいものを自由に作る」というゲームコンテストのコンセプト通り、多種多様なジャンルのゲームが集まりました。

5.表彰式

提出から約2か月かけて審査委員による評価がなされ、12月17日に表彰式が開催されました。審査員を務めたのは木村専務取締役をはじめ、プロデューサー、ディレクター、エンジニア、イラストレーター、UIデザイナー、プランナーの部署でリーダーを務める経験豊富なスタッフです。各チームが自由な発想で作った作品をシンプルに「面白いかどうか」で審査。最優秀賞1作品、優秀賞4作品、佳作6作品が選ばれました。

▲運営事務局長と、審査員長を務めた専務取締役の木村。世に送り出せるような可能性を感じる作品が受賞作に選ばれました
▲表彰式会場では、受賞チーム代表者から喜びのコメントや本コンテストへの感想などが発表されました

コンテスト期間中の運営事務局の対応

ゲームコンテスト運営事務局は、参加者になるべく充実した環境で開発に取り組んでもらえるよう、様々なサポート体制を提供。在宅作業のために(通常業務で使用するものとは別に)ハイスペックのノートPCを貸し出したり、開発用のソフトウェアを用意したり、勤怠システムとSlackを連携させてゲームコンテストのために使った時間を簡単に記録できるようにしたり……。さらに、参加者からの各種問い合わせに速やかに回答するよう心掛けました。

もちろん、これらのサポートは運営事務局だけでは対応しきれないものであったため、社内の各部署の力を借りました。ハードウェア・ソフトウェア周りを管轄するシステム管理をはじめ、社内アプリ開発、デザイン制作室、労務部、経理部など、まさに社内全体の協力があって実現した体制です。サイゲームスで行われる全社的なイベントには、様々な関連部署が前向きに取り組みます。こうした「動員力」も、サイゲームスが持つ大きな強みであり魅力と言えます。

gutenberg-examples
カズユキ
期間中は、3~4時間に数十件の問い合わせが来ることがあり、その内容によっては担当部署のマネージャーに私が直接聞きに行く対応をしていました。通常の問い合わせだと数日かかることも、直接聞いてすぐ解決できる場合があります。
私自身もゲーム開発に携わっていたので、開発で行き詰まって問い合わせをしたとき、すぐにレスポンスがほしい気持ちがわかるんです。そのため、なるべく迅速な回答を目指していました。

その他にも、コンテストを楽しく最後まで完走してもらうために、細かな気配りを大切にしていたそうです。

gutenberg-examples
カズユキ
このコンテストが、新しいものを世に送り出す良きモデルケースとなるよう運営スタッフも気を配っていました。
何度もしつこいかなと思いながら、業務が最優先であることなどコンテストのルールをきっちり守ってもらうための注意喚起を定期的に行っていましたね。また、楽しんで取り組んでもらいたいのですが、参加者がコンテスト活動に没頭しすぎて体調を崩さないように見守っていました。

コンテスト参加者の声

ここで、コンテスト終了後の参加者の声を一部ご紹介します。

gutenberg-examples
最優秀賞 チームNo.29 代表者
自分の作りたいゲームを好き勝手に作るのは本当に楽しかったです。
チームのメンバー同士で励まし合いながら、通常業務がある中でもみんなが自身の開発担当に追い込みを掛けて、なんとか作品を完成させられました。
また、こんなに楽しんで取り組めたのはカズユキさんを中心とした運営のみなさんのおかげだと思います。ありがとうございました。
gutenberg-examples
優秀賞 チームNo.4 代表者
チーム人数は6名で、少人数でゲームを開発しました。
作品について改善すべき点はもちろんありますが、楽しくプレイできるものをしっかりと作り切れたので本当に良かったと思っています。会社のみなさんにも遊んでいただける機会をもらえて、ありがたい経験でした。
gutenberg-examples
優秀賞 チームNo.12 代表者
ゲームづくりの色々なパートの勉強をしたかったので、チームを組まず一人でコンテストに出場しました。
一人チームでしたが、他にもゲームを作っているチームがあると思うと、最後までモチベーション高く活動を続けることができました。しかし、一人だけでゲームを開発するのは本当にしんどいので、またこのような機会があるときにはチームを作って挑んでみたいと思います。
優秀賞をいただきありがとうございました。
gutenberg-examples
優秀賞 チームNo.14 代表者
エントリーする時、遊んでくれるであろうスタッフのみなさんに「ネタバレなしのびっくりな体験を届ける」という目標のもと、企画の大枠を決め切ってスタートしました。
その分、チームメンバーにはご苦労をお掛けしてしまったかもしれませんが、最後まで自分を信頼いただき、本当にブレることなく良い作品に仕上げられたと思っています。
そして何より、ゲームを遊んだ方から「びっくりした」と言っていただけたのがうれしかった。メンバーと、遊んでくださったみなさんに感謝いたします。
gutenberg-examples
優秀賞 チームNo.21 代表者
素晴らしい作品ばかりの中、優秀賞をいただきありがとうございます。
僕自身はずっとアニメの業界で仕事をしていて、あまりゲームづくりをしたことがなかったんです。チームメンバーが集まるかすごく不安でしたが、たくさんのプロフェッショナルな方々に集まっていただけました。ここまで完成度を高められたのは、チームのみなさんのおかげです。
今回、本当に色々なことを学ばせていただきました。この経験を活かして、またゲームを作っていきたいです。
gutenberg-examples
参加者A
開発した作品の満足度について。不具合ややり残したことはあれど、形のあるものを完成品として提出できたうれしい気持ちと、開発スタートする前にやってみたいと話していたものの多くが盛り込めず終わってしまった悔しさの気持ちと、両方あります。
gutenberg-examples
参加者B
運営のサポートがありがたかったです!機材の貸し出しについてアナウンス回数が多く、滞りなく進行できました。また、カズユキさんのアナウンスはなぜか親近感が湧くといいますか、硬すぎないところが良いなと感じていました。運営事務局も制作期間に一緒に走っている感じがしました。
gutenberg-examples
参加者C
なかなかできない経験で面白かったです。期間的には半年ありましたが、実際に開発に動けた時間はかなり短く、もう少し期間がほしい気持ちもありました。とはいえ、あまりだらだらと長く続けていても意味はないかなと思うので、これで一区切りできて良いかなとも感じています。
gutenberg-examples
参加者D
会社の規模が大きくなって、部署を越えてリアルでコミュニケーションをするハードルが高まっているように感じていたので、ゲームコンテストは部活動のような感覚で新しいことに挑戦できる良い機会になったと思います!
gutenberg-examples
参加者E
みなさんが持つゲーム開発への情熱を垣間見られたような気がして心躍りました。そういった温度が伝わったのか、社内での雑談の話題でもゲームコンテストの話題が何度も上がり、参加されてない方たちの関心も高いと思いました。また、社内のモニターやポスターなどにもゲームコンテストの情報がちりばめられていて、ふと業務の合間にお祭の準備のようなワクワク感を味わえたのも、素敵で貴重な時間だったと感じます。
gutenberg-examples
参加者F
素晴らしい作品制作に関われて非常に多くの学びがあり、参加して本当に良かったです。どのチームも主に横の繋がりを通じてメンバーを集めることが多かったと思うのですが、ベテランの方々の動きを間近で見られる貴重な機会でもあったので、新人の方々にも参加してもらえると、さらに良い経験になるのではないかと思います。機会があればぜひ次回も開催していただきたいです。

ゲームコンテストを終えて
自発的なゲーム開発の気運が高まる

今回、「レギュレーションをもっとわかりやすくしてほしい」「機材の貸し出しをもっと柔軟に対応してほしい」など、運営側に寄せられた改善に関する意見もありましたが、第2回があればまた参加したいという声も多くありました。
最後に、運営事務局長であるカズユキに次回コンテストの開催予定はあるのか、展望を聞きました。

gutenberg-examples
カズユキ
今回のゲームコンテストをきっかけに、コミュニティーのようなものが生まれてゲーム開発をする人たちが増えたら良いですよね。そこから生まれたものをプロデューサーに提案しても良いと考えています。
レギュレーションや運営の対応など意見をいただいた部分は改善しつつ、このようなゲーム開発の気運が高まるイベントをまた計画できればと思います。

今後もサイゲームスは、ゲームコンテストのような、スタッフが楽しみながら新しいアイディアを生み出し、お客様へ還元することに繋がっていく施策にチャレンジしていきます。