クリエイターの成長の糧となるインプットを 社内勉強会「デザイナーズトーク」

サイゲームスでは定期的に社内勉強会を開催しています。以前、その一例としてエンジニアが開催している「スキルサーズデー」を取り上げました。同様の取り組みとして、今回は「デザイナーズトーク」をご紹介します。毎月1回開催されているこの「デザイナーズトーク」はどんな目的で運営されているのか、担当者に話を聞きました。

制作事例から業務に活かせる趣味の話まで
幅広いテーマを扱うインプットの場

「デザイナーズトーク」がスタートしたのは、2019年初頭のこと。それ以前から、UIやアニメーションなどを担当するインタラクションデザイナー(※)のチームは月に一度勉強会を開催していました。他のデザインチームも同じような勉強会を不定期に開催していたため、貴重な知見をチーム内だけに留めておくのはもったいないと、それぞれの会を統合することに。サイゲームスのデザイナー全体に向けて月に一度開催するイベントとして現在のかたちになりました。

※インタラクションデザイナー……ゲーム内のウィンドウやボタン類、メニュー項目など、ユーザーの方々が見たり操作したりする部分である「User Interface(ユーザーインターフェース)」やキャラクターなどのモーションを作る仕事

【デザイナーズトークとは】

・毎月第3または第4金曜日に開催
運営側は、定期開催するこの場を用意しておくことが大事だと考えていて、現在は毎月欠かさず開かれています。業務が忙しい時期と重なり登壇者の応募が少ない場合には、各デザインチームに持ち回りで登壇者を立ててもらうようにしているとのこと。

・基本的なスタイルは講演形式
勉強会は、1人の登壇者がスライドを見せながら話す講演形式がメインです。その他には、複数の登壇者が対談する形式で開催されることもあります。

・テーマは自由。挙手性で「登壇者が発表したいこと」を幅広く募集
各回のテーマは「登壇者が発表したいこと」です。社内コミュニケーションツールのSlackに「デザイナーズトーク」用のチャンネルがあり、登壇したい人が自ら応募するのが基本です。「業務で学んだことを共有する場」が基本コンセプトなので、講演のテーマは事例紹介やノウハウの共有が多く見られます。ただし、運営側は趣味や学業で培ったことも含め、デザイナーの学びに繋がることなら何でもいいというスタンスで、講演してくれる人を広く募集しています。

▲これまでの開催テーマ一覧(過去1年間)

・運営側から登壇をリクエストすることも
運営側から登壇を依頼することもあります。ニーズのありそうなテーマを決めて「○○プロジェクトの××について話してほしい」と当てはまる部署のマネージャーを通じて依頼します。人前で話すのが苦手というスタッフには、講演までの準備やリハーサルなどを運営側がサポートします。各部署のマネージャーの協力を得ながら、「話したいことはあるけれど講演は気後れする……」というスタッフも安心して講演ができるように運営されています。

・スライド資料は登壇者が用意
講演することが決まったら、登壇者は発表資料を用意します。この資料を作るのも登壇する意義の1つです。わかりやすく資料をまとめることで、自分の知識や考えを端的に整理する機会になり、登壇者自身の学びにも繋がります。

サイゲームスのデザイナーは、外部の勉強会や講演会といったベントに登壇する機会もあります。講演内容ももちろん大切ですが、「デザイナーズトーク」のもう1つの側面として、講演することに慣れてほしい・人前で話す経験を積んでほしいという狙いもあると言います。外部での講演をクオリティーの高いものにするため、この勉強会が練習の場にもなっているのです。

2020年5月以降はオンラインで開催
参加者が増えるといったメリットも

元々「デザイナーズトーク」は東京本社の会議室で開催していましたが、2020年5月以降は、Zoomによるオンライン開催にとなりました。
受講者も登壇者と同様に、Slackのチャンネルで募集します。このチャンネルは全社に公開しているので、デザイナー以外のスタッフも参加できます。リアルで開催していた頃の受講者数は20〜30名でしたが、オンライン化してからは毎回100名近く参加するようになりました。移動の手間がなくなり、大阪や佐賀のスタッフも含めて、パソコンから簡単に参加できるようになったことがプラスに働きました。

また、登壇者の参加ハードルも下がりました。事前のリハーサルと環境が変わりにくいため、登壇者側としては、リアルな講演よりもオンライン講演のほうが緊張しにくいといったメリットがあることがわかりました。最近では社会人向けセミナーなどもオンラインで開催されることが増えたため、オンラインでの講演の経験の場としてもニーズがあると運営側は感じているそうです。

▲「発表初心者でも大丈夫!人前で話すときの4つのコツ」の講演の模様(2018年11月開催)

Zoomの録画機能を使って講演を簡単に記録できるようになったこともメリットです。録画された動画は社内限定サイトで見られるため、スケジュールが合わない人も参加できるようになりました。

ただし、オンラインだからこその難しさもあります。例えば、受講者のリアクションがわかりにくいこと。リアルの講演であれば、話したことに対する感心の声やどよめきなどが聞こえるため、話し方にも自然とメリハリがつきます。しかし、オンラインでは受講者の音声は拾わない設定にしているので、話が相手に響いているのかどうか把握しづらく、結果的に淡々とした語り口になりがちです。

この対策として、チャットでリアクションや質問ができるようにしています。また、運営側がチャットで積極的にリアクションを返すなど、盛り上げる工夫もしています。場所に縛られず参加しやすくなるといった、オンラインにはオンラインの良さがあるのでそれを活かしつつ、最適な講演形式を模索していきたいと考えているようです。

制作裏話やワークハックなど
社内勉強会だからこそ聞ける話が人気

中でも、受講者からの反響が特に大きいのはプロジェクトの制作事例です。開発中のプロジェクトの情報は社内でも厳密に管理されています。そのため普段はなかなか聞くことができないので、制作裏話のようなテーマは注目度が高く、デザイナー以外の受講者も多くいます。Twitter上で喜ばれるイラストといった、SNS運用の実務で得られた知見も喜ばれます。

▲「Twitterイラスト制作の考え方 ~喜ばれるイラストのヒント」の講演の1コマ(2020年10月オンライン開催)

デザイン以外のテーマでは、「文章コミュニケーション上達講座」が好評でした。リモートワークに移行してから仕事上のやり取りを文章で行うことが増え、対面とは違うコミュニケーションスキルが求められるようになりました。そんなニーズに応える講演だったため、実務で役立つという声がたくさん寄せられました。他にも、「企画作りにおけるマインドセット」は、デザイナーに限らず幅広い職種に関係のある内容なので人気でした。

▲「伝える&伝わる!文章コミュニケーション上達講座(リモートワーク対応版)」の講演の1コマ(2021年4月オンライン開催)
▲「企画作りにおけるマインドセット」の講演の1コマ(2021年2月オンライン開催)

実務に関するテーマの他にも、意外な学びがあります。例えば「あなたの知らない宝石の世界」の講演では、「宝石の知識をいつか誰かが活かしてくれたら」という想いで、登壇者が自身の趣味として学んでいる宝石の種類やデザインなどを紹介しました。コンテンツ制作事例ではないものの、受講者がアクセサリーのイラストや3Dモデルを制作するときに参考にできます。

デザインという仕事の性格上、他のプロジェクトやセクションの事例を今の仕事にそのまま使えるケースは少ないかもしれません。しかし、他の部署がどんなことをしているのか知るのは、業務の改善や幅を広げることに役立ちます。また、登壇者からはプレゼン資料の作成や話し方のスキルを向上させる良い経験になったという声もあったそうです。

自学自習のみだと、学びの対象は自分が興味のあることに偏りがちですが、「デザイナーズトーク」のような勉強会では自分にはない視点からの知識を吸収できるメリットがあります。現場にいる人の生の声や濃い話を聞くことができますので、これは社内勉強会ならではの魅力だと言えるでしょう。

このように「デザイナーズトーク」だからこそ得られる学びは多々あるので、運営側は登壇者・受講者ともに、インプットの場として「デザイナーズトーク」を活用してもらいたいと考えています。

運営側の失敗談・成功談
そして今後の課題

ここで失敗談と成功談をご紹介します。失敗談としては、元々がチーム内の小規模勉強会だったため、最初はフィードバックをする仕組みがなかったとのこと。本格的に「デザイナーズトーク」の運営を始めてから、受講者の反響がわかるように、講演後にアンケートをとることにしたそうです。フィードバックがあることで、運営側も改善の糸口になりますし、登壇者は講演の良い点や反省点を客観視できます。

成功談としては、前半でも述べたようにオンライン開催のメリットに気付けたことです。以前は「勉強会はリアル開催してこそ意味がある」という先入観がありましたが、オンライン化で参加者が増え、勉強会自体の認知度も上がりました。オンライン化をきっかけに、リマインドの回数を増やす、マネージャーを巻き込むなど、運用面を見直すことで、「デザイナーズトーク」がバージョンアップした実感があったとのこと。

運営側は今後の課題として「体制の強化」を挙げています。人員の強化やマニュアルの整備などで運営内の意思疎通をスムーズにし、講義内容の企画立案にも積極的に取り組んでいきたいと言います。
もっともっと「デザイナーズトーク」のクオリティーを高めて、登壇者も受講者もよりストレスなく楽しめる運用にすることを目標としています。


以上、デザイナー向けの社内勉強会「デザイナーズトーク」をご紹介しました。社内だからこそ聞ける現場の「濃い」話は、参加者にとって貴重なインプットとなります。そうして得た知見をクリエイターたちが次の仕事に活かしながら、今後も「最高のコンテンツを作る」ことに繋げていきます。

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