2月6日に発売を迎え、多くのユーザーの方々にプレイしていただいている『グランブルーファンタジー ヴァーサス(以下、GBVS)』。サイゲームスを代表するタイトル『グランブルーファンタジー(以下、グラブル)』のスピンオフであり、またサイゲームス初の格闘ゲームでもある本作。
今回は『GBVS』のクリエイティブディレクターを務めた福原哲也に、作品に懸けた想いや制作の裏側について語ってもらいました。

『グランブルーファンタジー ヴァーサス』クリエイティブディレクター福原 哲也
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2011年入社。『グランブルーファンタジー』のディレクターとして、プロジェクトの立ち上げから今まで開発・運営に携わる。現在は『グランブルーファンタジー ヴァーサス』や『GRANBLUE FANTASY Relink』などのコンシューマー展開に加え、TVアニメシリーズ・グッズなどの監修も務め、『グランブルーファンタジー』の世界を広げ続けている。

「『グラブル』ファンに楽しんでもらう」「eスポーツ展開を意識した開発」
『GBVS』のコンセプトとは?

『GBVS』ついに発売しましたね!発売を迎えての心境はいかがですか?

諸先輩方からは「半年前にマスターアップするから発売する頃にはゲームの事は忘れている」と聞いていたのですが、DAY1パッチ(※発売後最初に実施される調整などのためのアップデート)の開発やストア登録、プロモーションの準備などで発売前日までバタバタしていたので大変でした。実際発売されて、どうやらご好評いただけているようなので本当に良かったです。

今作の企画・開発コンセプトとしてはどのようなものがあったのでしょうか?

大きく2つの軸がありました。1つは「『グラブル』のユーザー層に遊んでもらうこと」です。スピンオフという点から、まずは既存の『グラブル』プレイヤーの方々に楽しんでいただけるコンシューマーゲームを目指しました。『グラブル』を運営するのと並行するかたちでコンシューマーである『GBVS』を発売することで、今現在『グラブル』をプレイしてくださっている方々に新たな楽しみやワクワクできる体験を届けられるのではと思いました。近年は家庭用ゲーム機に馴染みがないという方も多いので、そういった「スマホ世代」の方のためにシステムもシンプルに、遊びやすい仕様にするよう心掛けました。

▲必殺技である「アビリティ」を、コマンド入力の他に、R1ボタン1つで発動できるシンプルさは、これまでの格闘ゲームにない本作の特徴です

もう1つはどういった軸ですか?

もう1つは、サイゲームス自体がゲーム業界全体の盛り上げに貢献していきたいという目標があるので、「eスポーツ展開できること」を意識して開発しました。eスポーツは近年、新しい文化として定着しつつあり、これからさらに盛り上がっていくコンテンツの1つだと思っています。すでにサイゲームスでeスポーツ展開をしている『Shadowverse』に続いて『GBVS』もeスポーツ文化の発展に寄与したいと思ったんです。eスポーツにもさまざまな種目がありますが、格闘ゲームは花形種目の1つなので、その中でもメインのタイトルになれるようなクオリティーの高い、本格的なゲームにすることを目標に開発をしました。プレイをする選手にも、それを観戦する方にも楽しんでもらえるのがeスポーツの素晴らしいところだと思っているので、プレイするだけでなく「観戦する楽しさ」も考慮したゲームデザインになっています。

▲迫力の3Dアニメーションで描かれる奥義や解放奥義を使えば、不利な状態からの形成逆転も可能。対戦にドラマを生み出します!

観戦する側の楽しみ方まで視野に入れて開発に取り組まれたんですね。『グラブル』リリース時から格闘ゲーム化の展開は予定されていたのでしょうか?

いえ、当初そんなことは考えていませんでした。『グラブル』開発中は「このゲームをヒットさせる!」という一念のみで、他のことを考える余裕など全くなかったです。ですが、サービスイン後、『グラブル』が1つのIPとして、多くのファンの方々に支持されるようになるにつれて、こうした展開が徐々に現実味を帯びてきて。社内で話し合って開発を進めることになりました。

『グラブル』を別ジャンルのゲームとして展開するにあたって、格闘ゲームを選んだ理由は何でしょうか?

両者の相性の良さですかね。『グラブル』の人気を支える要素として欠かせないのが個性豊かな「キャラクター」です。そして、格闘ゲームは特定のキャラクターを長い時間操作するので、一人ひとりのキャラクターにスポットが当たりやすく、キャラクターの魅力を引き出すフォーマットとして最適なジャンルです。その点で格闘ゲームとしても『グラブル』としても良いゲームにできるのではないかとなった、というわけです。

言われてみれば確かに。『グラブル』のファンなら、好きなキャラを自由自在に動かしたいと一度は思いますよね。

はい。そして企画として具体的に動き出すにあたり、格闘ゲーム開発に強みを持つアークシステムワークスさんと開発できることが決まり、二人三脚で作り上げていくことになりました。私個人も昔から格闘ゲームが大好きで、夢中になってやり込んできたタイプなので、今回『GBVS』で格闘ゲーム開発に携われたことを大変うれしく思っています。

キャラクターの魅力を最大限引き出す
こだわりの演出

本作は対戦格闘ゲームであると同時に、アクションRPGでもあるんですよね?あらためてこちらについて教えていただけますか?

『GBVS』には、対戦格闘の「VSモード」と、アクションRPGとして遊べる「RPGモード」の2つのモードを用意しています。「VSモード」では王道の格闘ゲームを楽しむことができます。一方の「RPGモード」は、『GBVS』オリジナルのストーリーが楽しめるもので、『グラブル』本編でもおなじみのキャラクター育成要素も搭載しています。また、ソロプレイだけでなく、ローカル/オンライン両方で他のプレイヤーとの協力プレイを楽しむこともできます。

▲『GBVS』の「RPGモード」で描かれるのは本作オリジナルのストーリー。主人公であるグランたちはとある理由から、騎空団の仲間同士で戦うことになり……
▲「RPGモード」の見せ場でもある星晶獣とのボス戦。他のプレイヤーと共闘する『グラブル』らしいバトルが楽しめます!

シンプルに格闘ゲームのみにしなかったのはやはり『グラブル』らしさを打ち出すためでしょうか?

そうですね。先ほども述べたようにやはり『グラブル』ユーザーの方々にも遊んでもらえる格闘ゲームを目指したかったのでこういったかたちになりました。
また、本来格闘ゲームとRPGは全く別ジャンルなため、「RPGは好きだけど格闘ゲームは難しそう……」という方にも、まずは勝ち負けのない、自分のペースで進められるRPG要素を楽しんでいただきつつ、「VSモード」と基本操作が同じアクションRPGを通して遊び方を掴んでいただき、そこから対戦に繋がることがあれば良いなとも思っています。

なるほど。『GBVS』のキーにもなっているキャラクターについて、特にこだわった部分はありますか?

『グラブル』本編のグラフィックは2Dですが、『GBVS』は3Dになっています。そして、『グラブル』同様、3Dの本作でも「ビジュアル」には力を入れて開発しました。例えば『GBVS』では、特殊な3D技法を使って、アニメのようにコマ単位でキャラクターの表情を調整しています。

▲『GBVS』のキャラクターは、本編以外にもアニメなど『グラブル』のさまざまな展開からアイディアを拾い上げているとのこと

確かに格闘シーンでのビジュアルはすごくこだわりを感じます!モーションも各キャラクターに合わせてさまざまなバリエーションが必要になりますよね。

はい。そこはやっぱり格闘ゲームならではの部分なので、動きや技などの演出にもこだわりました。これまで『グラブル』では描けていなかった、そのキャラクターらしい動きというものもたくさん盛り込んでいます。

そうなんですね……!例を挙げるとどのようなものがありますか?

例えば、グランは少年らしく、ラフな蹴りも取り入れた自己流の野良剣法で戦います。カタリナは剣士なのであくまで剣で戦い、パンチやキックといった格闘技は使いません。ジータは主に剣で戦いつつ、格闘系の技でいうとパンチは使いませんがハイキックなどは使いますね。

▲グランとカタリナそれぞれの突進技。細かい動きにもキャラクター性が表れています

設定がかなり細かいですね!本作で初めて表現したキャラクターの動きもあったかと思いますが、それらはどのように決めていったのでしょうか?

元々のキャラクター設定を鑑みつつ、一番は「このキャラクターならこう戦うよね」という“ユーザーのみなさんの中にあるであろう各キャラクターのイメージ”を大事にしました。私たち開発側としても初めて構想する部分もあったので、試行錯誤しながら、悪い意味で意外と思われないような演出になっていると思います。
あと、少し細かいですが、演出面でいうと台詞回しにも気をつけています。『GBVS』は格闘ゲームなので『グラブル』内の仲間同士で戦うことになります。格闘ゲームでは勝者が最後に煽るような決め台詞を言うことも多いのですが、仲間同士というキャラクターたちの関係性を考慮して『GBVS』では相手を下に見たり、変に煽ったりする言葉は使わないようにしました。勝ちはしたけど、全員がきちんと相手を尊重するような言葉遣いになっています。

▲ランスロットがファスティバに勝利した時の演出。普段は見られないキャラクター同士の掛け合いも!

細部まで気を配った演出がされているんですね。そういった演出面はアークシステムワークスさんからのご提案、サイゲームスからの依頼、どちら発信で決まるものなのでしょうか?

アークシステムワークスさんからのご提案と、こちらからの依頼と、半々くらいですかね。奥義など、『グラブル』ベースですでに決まっていることはこちらから要望を出すことが多いですが、方向性だけをお伝えして、アークシステムワークスさんに具体的な提案・設計をいただくこともありました。アークシステムワークスさんの中にも『グラブル』をかなりやり込んでくださっている方がいらっしゃって、そのあたりはかなりお話がしやすかったです。

モバイルもコンシューマーも
どちらも開発できる面白みとやりがい

今回福原さんにとって初めてのコンシューマー開発だったと思いますが、実際開発に携わってみての感想はいかがでしたか?

モバイルとコンシューマーの開発意識の違いを感じつつ、ゲーム開発における根本のマインドは同じかなと感じました。
運用によって短いスパンでアップデートを積み重ね、都度お客様から反響が得られるモバイルと、時間をかけて1つのまとまりである作品を作るコンシューマーは違うものに見えるかもしれませんが、モバイルも近年は開発が大規模化していますし、基本的な作り方や進め方は同じです。特に今回はモバイルの開発・運営と並行してコンシューマー開発ができたので、勉強することが多かったですし、得るものがたくさんありました。『グラブル』のスピード感のある開発・運営と、ハイエンドタイトルの開発をディレクターとしてどちらも経験できる機会というのはなかなかないのでありがたいと思いますね。

『グラブル』発のコンシューマーといえば、『GRANBLUE FANTASY Relink(以下、Relink)』も制作中かと思います。『Relink』についてはどういった経緯で開発に至ったのでしょうか?

『グラブル』のサービスイン間もない頃から「この世界観を家庭用ゲーム機でも楽しみたい」という声をいただいており、その中で最も望まれていて、且つスピンオフとして適したジャンルであるということからアクションRPGで開発することが決まりました。
『GBVS』同様、こちらも『グラブル』ユーザーの方々にはぜひ遊んでいただきたいのですが、『Relink』は特にコンシューマーは好きだけどモバイルはちょっと……という方にも遊んでいただきたいと思っています。

▲昨年末発表された開発中のプレイ画面。『Relink』でもコンシューマーで遊び慣れない方々が楽しめるように意識をしているそうです

『Relink』の開発を担う大阪サイゲームスの潜入取材記事はこちら↓
ゲーム開発現場へ潜入!『GRANBLUE FANTASY Relink』を開発する大阪サイゲームスの今

『グラブル』というIPが多くのファンを獲得しているからこそできる展開ですね。モバイルとコンシューマーをこういったレベルでできる環境はサイゲームスの大きな強みかと思いますが、その点はいかがでしょうか?

そうですね。ゲーム開発に携わる身としてはとてもありがたい環境だと思っています。現在社内ではAAAタイトル『Project Awakening』などの開発にも力を入れているので、このままコンシューマーでも作品をお届けし続けていければ、ゲーム会社としてもっと多くの可能性が見えてくるんじゃないかと思います。

どちらの開発にも携わってみて、モバイルからコンシューマーへ、新たな作品を生み出す面白さはどこにあると思いますか?

IPを通して、どちらの楽しさも知ってもらえるきっかけ作りを経験できることですかね。特に『グラブル』は、長年遊んでくださっているユーザーの方々がとても多いゲームなので、そういった方々にモバイルがリアルタイムで遊べる中で『GBVS』や『Relink』といった別の楽しみを提供できる、というのはゲーム業界ではあまり例のなかった体験かと思います。
『GBVS』は『グラブル』ユーザーの方にも、そうでない方にも楽しんでいただけるゲームになったと感じていますが、『Relink』もそれに追いつけるよう、引き続き開発に力を入れていきます。

▲海外の方が正式に遊べるものとしても、『グラブル』初のタイトルとなった『GBVS』。世界最大級の格闘ゲームの祭典「EVO」でもメインタイトルの1つに選出されました!

最後に、『グラブル』全体の今後の展望をお願いします。

『グラブル』は多くのユーザーのみなさまに支えられ、サイゲームスを代表するIPの1つとなっています。そのおかげで『GBVS』『Relink』などのスピンオフ作品が発売・制作できていますし、アニメシリーズも2期放送できています。
この勢いをさらに加速させ、国内はもちろん、世界にもどんどん『グラブル』を広めていきたいと思っています。日本発の“誰もが知っているゲームタイトル”というものはいくつかありますが、『グラブル』もその1つとして認識してもらえるよう、今後も努力を続けていきます。

最高のコンテンツを作るというビジョンを掲げるサイゲームスだからこそ、それを必ず実現できると思っています。