『Project Awakening』はサイゲームスで開発中のPlayStation® 4向け完全オリジナル作品です。
2016年8月に開催された新作発表会「Cygames NEXT」での発表後、ディレクター・多胡順司、アートディレクター・相場良祐を中心としたメンバーによって制作を進めていた本作は、2018年9月に開催されたソニー・インタラクティブエンタテインメントのイベント「PlayStation® LineUp Tour」にて、最新ティザー映像を発表。国内だけでなく海外からも大きな話題を呼びました。
また、最新鋭の機材・設備が整った、社内の3Dスキャンスタジオやモーションキャプチャースタジオを最大限活用して作られた映像美により、「VFX-JAPANアワード」ゲーム映像部門では最優秀賞を獲得しています。

ここでは、制作陣を代表する2人の対談をお届けいたします。

ディレクター/ Cyllista Game Engine統括マネージャー 多胡順司
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大手ゲーム開発会社でテクニカル・ディレクターとしてゲーム開発やゲームエンジン開発などに携わった後、2016年よりサイゲームスに入社。サイゲームス技術本部Cyllista Game Engine統括マネージャーを務めながら、『Project Awakening』ではディレクターとして関わっている。
アートディレクター/株式会社CyDesignation取締役 相場良祐
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2D・3Dアーティストとしてゲーム開発に従事。ファイナルファンタジーシリーズのアートディレクターなどを担当した後、2012年に株式会社CyDesignationに設立メンバーとして参画。『Project Awakening』ではアートディレクターとして、プロジェクト発足時から開発に関わっている。

コンセプトや世界観の構築
AAAタイトルに相応しいクオリティーを目指して

『Project Awakening』は、どのようなコンセプトで開発されているのですか?

多胡 私は開発全体の舵取りをするディレクターという立場なのですが、チームの立ち上げ当初から「AAAタイトルを作る」という目標を掲げていました。『Project Awakening』では、奇をてらわない、王道的な大作ファンタジーRPGを真正面から作ろうと考えています。

相場 私はアートディレクターとして主にビジュアル面を統括しています。所謂 AAAタイトルに相応しい見た目、ビジュアル体験の実現を目標にして開発を進めています。
会社としても初めての挑戦なので試行錯誤も少なくないですが、チーム立ち上げ当初に多胡が「小さくても正しい努力を積み上げていきたい。最後にはきっと最高のものができる」と言ったのが印象的でした。その言葉がこのプロジェクトの基礎になっている気がします。アートに関しても、チームの中で話し合い、努力を重ねて、徐々に形になってきた感じです。

多胡 実を言うと、最初からこういうゲームにすると明確に決まっていたわけではないんです。プロジェクトが動き出したのが2016年の頭くらいからなんですが、「ハイエンドゲームを作る」という目的のもと、人材は集まってきていたものの、具体的に制作するものに関してはそこから決めていく、という段階でした。

相場 「Cygames NEXT」で発表した、女の子が空から落ちてくるティザー映像と現在の男性の戦士がドラゴンと戦うティザー映像のテイストがまったく違うのは、そういう理由があるからなんですよ。最初のティザー映像を発表した後に、多胡がディレクターをやることが決まり、体制が固まっていく中でだんだんと現在のゲームの方向性が固まっていったんです。

現在の『Project Awakening』の世界観はどのようにして生まれたんですか?

相場 クリエイターとして、誰も思いつかなかったようなユニークで自分にしかできないものを作りたい気持ちが常にあるのですが、本作に関しては「変わってる」という印象を与えたいとは思っていなくて。どちらかと言うと、「初めて見るけど知っている感じがする」ものを目指しています。
もう少し具体的に言うと、ティザー映像に出てくる石造りの建築物は、西洋建築とカンボジアの遺跡を融合させて作りました。西洋建築によく見られるアーチ構造と、アンコール遺跡の石の質感を組み合わせました。

多胡 これはうまくいったと私も思っていて、まさに「見たことがないけど知っている」という景色になっていると思います。

社内製エンジンの開発と最新技術
『Project Awakening』への採用基準とは

多胡さんは サイゲームスの自社内製エンジン「Cyllista Game Engine」の開発責任者も兼任されていますね。自社でエンジンの開発を行っているのはどういう意図からですか?

多胡 一つは効率的な開発のためです。開発環境の起動やデータの読み込みの速さを上げ、エンジニアだけでなくアーティストやレベルデザイナーを含む開発チーム全体がストレスなく作業できるように設計しています。

相場 これは単に作り手の都合というわけではなく、効率化することでクリエイター本来の仕事に労力を割けるようになるんです。ゲーム開発は、作っては調整するという作業を繰り返していくものなのですが、そのサイクルをいかに多く回せるかがクオリティー向上に繋がります。

多胡 もう一つは、『Project Awakening』に合った性能のエンジンの必要性です。『Project Awakening』は従来のゲームエンジンを超越するような性能が必要な程、壮大で大規模な作品になっていく予定です。開発初期段階から、ゲームエンジンの性能を理由にゲームのクオリティーを妥協したくないという思いがあり、自分たちが求めるクオリティー実現のためにゲームエンジンから開発する必要があると考えていました。

……とはいえエンジンの開発は時間がかかるため、エンジンの開発をしている間もゲームの検証を行うために既存のエンジンを利用していました。最終的にはより高いクオリティーを実現できる「Cyllista Game Engine」への移行を行って開発をしていく予定です。

AAAタイトルというと、最先端の技術をふんだんに使って開発するというイメージがありますが、本作の開発体制はどうですか?

多胡 実はそこまで技術を追い求めているわけではないんですよ。もちろん、技術的なトレンドは常にチェックしていますし、必要に応じて取り入れています。現状で言えば、物理ベースレンダリングやGPU駆動レンダリング、リアルタイムグローバルイルミネーション、ボリューメトリックライティングといったモダンな技術を採用しています。
ただし、新しい技術を使うことを目的にはしていません。まず「このゲームを面白くするにはどうしたらいいか」という問いがあって、そこで最新技術が必要であれば採用するし、既存の技術で十分であればそちらを選ぶ場合もあります。

相場 アートについても同様です。アート面で使用している技術を紹介すると、フォトグラメトリーやモーションキャプチャー、プロシージャルモデリング、スカルプトモデリングといった近年主流になってきたものについては一通り取り入れてはいます。
例えば、『Project Awakening』の背景グラフィックでは、フォトグラメトリーとプロシージャルモデリング、2つの手法を組み合わせて作っています。フォトグラメトリーは、実在する人や物を撮影した写真から3Dデータを生成する手法で、プロシージャルモデリングは、数式や数値を用いてゼロから物体を作っていく手法です。この2つを組み合わせることで、フォトリアル(写実的な描写)でありながら、現実にはない壮大さを持った世界観の構築が可能になりました。
ただ、「この技術が使いたいから」という理由で取り入れたわけではなく、順番としては作りたいものが先にあり、それを効率的に実現する方法として採用しました。自分たちが確実に理解して使いこなせることも大切なので、それも考慮して取捨選択しています。

多胡 ユーザーにとっては、技術が最新かどうかはあまり重要でなく、プレイした時に「こんなゲーム見たことない」と新鮮に感じられるかどうかが大切ですよね。我々は開発者であると同時にゲーマーでもあるので、突き詰めると「自分が遊びたいゲーム」を作っているんです。だから、技術についても他のことについても「こういうゲームを遊びたいからこうするんだ」という視点でしか考えていないですね。

相場 もっとも、我々のやり方が常に正解というわけではなく、逆に先端技術を積極的に取り入れることをモチベーションにして、それを使っていかに面白いゲームを作るか、というアプローチもあると思います。実際に欧米などの有名タイトルの中には、技術推しの作品もありますし。

多胡 そうですね。実際、「こういうゲームが作りたい」という要求のラインが高ければ高いほど、最新の技術が必要になる場面は増えてきます。我々も軸足がプロダクトにあるというだけで、技術を追い求めたくないわけではないですから。そういう技術志向の人材もウェルカムですね。

「自分ならAAAタイトルを作れる」「“情熱”を形にする」
『Project Awakening』を最高のゲームにするために

昨年公開したティザー映像は視聴者からの評判が良く、再生数も早い段階で100万回を超えましたよね。まだ開発中とはいえ、一定の達成感はあったのではないでしょうか?

多胡 良いものを作れたという自負はありますが、その一方で、まだまだだなと思っています。私の性格的なものなんですが、発表したものが「受け入れられるかな?」というドキドキはいつもあまり感じないんです。今回できなかったことはたくさんありますが、その時点でやれることはやり切っているので、世の中に出たものに対していただいた評価を受け入れる覚悟はできています。そして、ご意見をいただくことがあれば、それを次に活かしていこうと常に思っています。

相場 私は逆に反響が気になる方なので、SNSなどをずっと検索していました(笑)。でも、好意的なご意見が多かったので安心しました。

これまでの開発を振り返って「ここはキツかった」という部分はありますか?

多胡 大体いつも大変ですけど(笑)、それ以上に作るほうが楽しいです。開発環境としても恵まれ、ゲームを良くすることに集中させてもらえてます。

相場 サイゲームスはチャレンジを常に応援してくれる会社だと感じますね。機材やソフトウェアを含め、何か新しいことを取り入れたい時に、そのきちんと理由を説明できれば、「やってみれば」と言ってもらえることが多いです。私の経験上、この規模の開発チームでこれ以上にやりやすかったことはないですね。

最後に『Project Awakening』を最高のクオリティーにするために、どんなことを意識していますか?

多胡 どんな人ならAAAタイトルを作れるのか、ということです。それは「自分ならAAAタイトルを作れる」と考えている人です。そのために何が必要か、何をするべきかを考え続けることが大切です。自分たちなら最高のものになるまでやり抜くことができると信じて、このプロジェクトに取り組んでいます。

相場 私も同様です。精神論と思われてしまうかもしれませんが、「やってやろう」という気持ちは大切ですね。そういう“情熱”を形にする努力をみんなで積み上げていきたいと思っています。