サイゲームス流、おすすめインプット法Vol.2「デザイナー編」

サイゲームスでは、「最高のコンテンツを作る会社」というビジョンを掲げています。そして「最高のコンテンツを作る」ためには、多種多様な「インプット」によってスキルを磨いていくことが大切であるという考えから、行動規範の1つに「良いアイディアは圧倒的なインプットから生まれる」があります。職種を問わず常に貪欲に知識やスキルを吸収して、コンテンツ作りに繋げる姿勢を大切にしています。

本連載では、個人の「インプット」にフォーカスを当てて、サイゲームスで各職種の採用・育成に携わるスタッフたちが推奨する「インプット方法」をご紹介していきます!

連載第2回は、視覚的にコンテンツを魅せる役割を持つ、「デザイナー編」です!今回はデザイナーの新卒研修を取りまとめているマネージャーからの声を直接お届けします。


デザイナーに求められる4つのスキル

ゲームに関わるデザイナーの仕事をシンプルに言うと、企画をより「魅せる」ことです。サイゲームスには「イラスト」「3DCG」「UI」「アニメーション」などさまざまな領域のデザイナーがいますが、次に挙げる4つのスキルが共通基盤であると考えています。

①デッサン・配色・デザイン4原則(コントラスト/近接/整列/反復)などの基礎力
②企画を考慮し、表現したい内容がイメージできる資料を選び出し、提案する力
③資料を参考にゲームテイストに合わせて調整する力
④納期までに制作を仕上げるためのスピード力

①は美術系の学校に通っている方はすでに習っていることかと思います。また③はゲームごとに特徴が異なる部分があるため、一般化して説明するのが難しく、ここでは触れません。本稿では、②資料を選び出し、提案する力、そして④納期までに制作を仕上げるためのスピード力に絞って紹介していきます。  

「イメージのできる資料を選び出す・提案する」ために必要なインプット

デザイナーには描く力も大事ですが、ゲームなどのコンテンツのデザイナーにとっては、企画者からの依頼を実現させるにはどういう情報が必要かを考え、それを集める力・そして逆提案する力も同じくらい重要です。例を出しましょう。「回復アイテムのイラストを描く」というお題があったとします。みなさんがイラストを採用する立場だったら以下のどちらを選びますか?

①「その人が思いつくもの」を描いたもの
②「どのようなモチーフが流行っている世界なのか、その世界でのビンはどのような形状をしているものなのか」といった付加情報を把握したうえで描いたもの

みなさん後者を選びたくなるのではないでしょうか。このように企画をより「魅せる」ためには、「依頼内容を読み解き必要な情報を集めてから描くこと」場合によっては+αの提案を行うことが重要です。そして、そのためには下記の3つの作業が役立ちます。

■1.インターネットや本などで調べて、ブックマークやスクラップすること

依頼が来たら、出来るだけスムーズに探すことも大切です。  

まずは普段使用しているスクラップブック(※)があれば、そこへ保存している情報から探し出すといったやり方も良いでしょう。    

※スクラップブック… デザイナーが、雑誌の切り抜きや良いと思ったデザインをストックするのに使用することが多いファイル

その他の方法としては、インターネットでの情報収集も一般的ですね。まずは「デザイナー 情報収集」といったキーワードでもよいので、デザイナーの先輩陣が活用しているサイトを見て、良いと思ったものを登録しておくところから始めましょう。登録したWebサイトの情報を効率よく収集するRSSリーダーの活用も、デザインの情報収集に役立つのでおすすめです。

最初はたくさんの情報を持っていたほうが、参考にできる資料が増えるので有益です。「ちょっとでも興味を持ったら調べてみるor読んでみる」を積極的に実践して、情報をストックしておきましょう。もしまだやってないぞ、という方がいたら、今からでもスタートしてみましょう。ただし、参考にする場合は、著作権侵害をしないことや、利用許諾の条件確認を徹底しましょう。   

■2.好きなものについて「意見交換(ディスカッション)」をすること

テーマは、ゲームでもいいですし、映画や他のコンテンツなど……、なんでも構いません。積極的に周囲の人と意見交換をしてみましょう。

例えば、とあるゲームをプレイして「面白かった」と感じたとします。大切なのは、「何をどんな風に面白いと感じたのか」という視点です。「バトルシーンのカットインの仕方が今までに見たことのない演出だった」からなのか、「シナリオが予測できなくてドキドキハラハラしたから」なのかで、面白さの視点は全く違います。  

意見交換をする際は、自分がその作品を面白いと思った理由を具体的にし、他の人の考えも聞きながら掘り下げることが重要です。そうすることで、魅力を人に説明する「言語化スキル」を身に付けることができますし、また周囲の意見と比較することで自分の考えを客観的に捉える機会が得られます。    

先ほども例に出しましたが、例えば「回復アイテム」を作る場合でも、自分が作り上げたイラストに対して、どんなところが魅力であるか、それがどうしてなのか、といった話を添えることで、制作物への説得力が増します。また、こうすることで、場合によっては依頼された内容をさらに良くするための逆提案もできるようになります。ぜひ、好きなものに対して「意見交換」をしてみてください。    

ただし、意見交換をする際には、「良い部分」を探し、伝えることを忘れないように注意しましょう。人間には、外敵から身を守るために「悪い部分」を探す能力が標準装備されていて、良い部分を探す能力は後から身に付く、と言われています。自分の好きなもので慣れてきたら、興味のあるもの以外でも良い部分を探す、といったように視野を広げてみると良いでしょう。    

■3.「実体験として経験する」こと

インターネットや本などで調べるのも大切ですが、実はそれだけでは足りないこともあります。昨今は、家に居ながらインターネットで世界各国の街並みを歩いた気分になることもできます。しかし、文字や映像で知った知識と、実際に体験して得た経験とでは、その質が全く異なります。

例えば、私は昔、中東地方の砂漠に行ったことがあります。それまでの印象では、砂漠は「カラッと」「さらっと」していて色は「黄色」といった、一般的かつ断片的なものでした。しかし、実際に行ってみると、まず空気そのものは想像通り「カラッ」としていたものの、昼から夕方にかけては蒸し暑く、汗をかいている顔に髪の毛がまとわりついたり、風と一緒に飛んでくる砂がすねに付着したりして、「さらっ」からは程遠いというのが実感でした。砂漠の色についてもイメージが大きく変わりました。日中はイメージ通りの「黄色」に近かったものの、サンセットの時間は太陽が砂に当たり、砂の色は赤みのある「オレンジ」に変わり、そして夜になるとそれが「青」に変わっていきました。これらのことは、インターネットや本で少し調べただけでは知り得ない、実体験だからこそ知り得た情報でした。    

このような経験は絵を描くことにも活きてきます。仮に、「砂漠にたたずむ○○(キャラクター名)」というざっくりとした依頼が来ても、この経験があるだけで、付随した情報として以下のようなものを付け加えることが可能ですね。    

・ほんのり出る汗に少しけだるげな表情
・なびく髪の毛や衣装
・足にほんのり砂をつけてもいいかも?
・時間帯の想定は?(描く時間帯よって雰囲気が大きく変わりそう)   

このように、実体験があることで、描くものへの理由付けも強固になりますし、逆提案するときにも説得力が出てきます。

特に若いうちは、できる限りさまざまなことを実際に体験しておくと、深みのあるクリエイターになれるかもしれません。  

「納期に制作を仕上げるためのスピード力」に必要なインプット

続いて、スピード力を上げるためのインプット方法についてもご紹介します。仕事としての制作には必ず「納期」が発生します。納期を守るためにはさまざまなテクニックがありますが、まずは単純にスピードを上げることが重要です。なぜなら、作業が早く進めば、完成までに使える他の時間も多くなるため、その分作品のクオリティーが上がる可能性が高いからです。    

他にも、「全体の完成図」から逆説的に作業を分解し、作業時間を割り振るなど、さまざまなテクニックがありますが、スピードはわかりやすく最も確実な方法なので、若いうちに訓練しておくことをおすすめします。そしてスピードを上げるために、とてもシンプルですがぜひ「たくさん創る⇒振り返る。を繰り返す」というインプットをおすすめします。回数を重ねることで、今の自分のスキルでどれくらいの期間で作れるかを肌感覚として計算できるようになります。うまくいっていない点も振り返りをして修正をすることで、次に作業をするときに解消することができます。

インプットとアウトプットを繰り返す
基礎を強化することで成長していく

もっと効率的な方法はないの?と思われるかもしれませんが、「とにかくたくさん絵を制作し、その経験を自分の中へストックしていくこと」は基礎の部分であり、いつまでも必要になることです。もちろん、それぞれのインプット法で1回に得られる情報量は異なりますが、行き詰まったときはまず原点に戻って、情報をインプットする/絵を制作してアウトプットに活かすということを大事にしてほしいなと思います。ぜひ参考にして、ポートフォリオなどをまとめてみてくださいね。


以上、デザイナー新卒研修担当マネージャー直伝のインプット法でした。本記事によって、ゲーム業界のデザイナーという職種に興味を持っていただけた方、今より少しでも良いコンテンツを作りたい!という熱い意志をお持ちの方には、ぜひ今回紹介したインプット法をお試しいただければと思います。  

次回Vol.3では、おすすめインプット法「エンジニア編」についてお届けする予定です。お楽しみに!  

現在サイゲームスでは、一緒に働けるデザイナーを募集しています。詳しくはこちらをご覧ください。 

「新卒デザイナー職 魅せるポートフォリオの作り方 」についてはこちらの連載記事にて紹介しています。

「Vol.1 イラストレーター編」

「Vol.2 3DCGアーティスト編」

「Vol.3 アニメーションデザイナー・UIデザイナー編」