ローカライゼーションの仕事とは?コンテンツの海外発信に必要なスキルとマインド【サイゲームス仕事百科】
サイゲームスのコンテンツ(ゲーム、マンガ、アニメなど)は国内にとどまらず、海外へも展開しています。海外へコンテンツを発信する際に活躍するのが、ローカライゼーションチームです。
海外の方々にもサイゲームスのコンテンツをお楽しみいただくために、どんな仕事をしているのでしょうか。
今回はローカライゼーションの主な業務と必要な能力について、同部門のマネージャーへの取材を基に解説します。
▼ローカライゼーションが属する海外事業部の組織体制
▼ローカライゼーションの主な仕事内容
▼ローカライゼーション(翻訳)業務の流れ
▼仕事に必要な3つのスキル
▼求められる姿勢とマインド
▼これぞ醍醐味!ローカライゼーションのやりがいとは?
▼スタッフのキャリアパス
▼ローカライゼーションや翻訳の仕事に携わりたい人へ
ローカライゼーションが属する
海外事業部の組織体制
サイゲームスでは2020年現在、アジア、アメリカ、ヨーロッパなど世界各地に向けて業務を展開しています。翻訳をはじめ地域に合わせたコンテンツの最適化を行うローカライゼーションはこの海外展開に欠かせないチームで、海外事業部のいち組織として存在しています。
海外事業部にはローカライゼーションの他に、展開する地域ごとに分かれたアジア事業部、欧米事業部があります。また、それら地域ごとの事業部とは別に、展開先の地域全体を横断した横串の運営やサポートを行う海外事業推進部というチームも存在します。
本記事では、ローカライゼーションチームの業務内容をご紹介します。
ローカライゼーションの
主な仕事内容
ローカライゼーションとは、一般的には、IPやサービスを現地の環境や市場に適応させることを指します。
コンテンツの品質はそのままに、現地のみなさんにも広く受け入れられるよう、サイゲームスのローカライゼーション部門は主に翻訳を中心とした他言語展開のクリエイティブ関連業務を行っています。
業務内容は大きく下記の3つに分かれます。
■テキストなどの翻訳
コンテンツ内に登場するテキスト、およびそれに付随するプロモーションにおいて発生する翻訳。
■進行管理
納期の設定とスケジュール管理。適切な翻訳者への発注。品質確認と依頼主への納品。
■LQA(品質チェック)
翻訳が文法的に正しいか、作品の世界観や過去のリリース分と統一がとれているか、およびプラットフォーム上で正常に表示されているかなどのチェック。
ローカライゼーション(翻訳)業務の流れ
ここからは、ローカライゼーションの大きな柱の1つである翻訳業務がどのように進行されているかを紹介します。
ゲームのローカライゼーションの場合は主に、依頼の受注→翻訳者への発注と翻訳→LQAによる品質チェック→依頼主への納品という流れで進行していきます。
1.受注
まず、コーディネーター(進行管理の担当者)が依頼主からの相談を受けます。依頼主は、サイゲームス社内のゲームプランナーやメディアプランナーである場合が多いですが、それ以外の事業部から他言語展開の相談やコンテンツ内テキストのローカライゼーションの依頼を受けることもあります。
ゲーム内の要素については、画面上に表示される言葉すべてにおいて翻訳が必要なので、依頼内容はゲーム内のシナリオやキャラクターのセリフ、システム文言、新しい施策の説明文など多岐にわたります。
これらは国や地域の言葉や文化の違いだけでなく、どんなシーンや媒体で使われるテキストなのか、どのような流れで誰に向けて表示されるのかなどによっても適切な翻訳の仕方が異なります。そのため、必要となる情報を事前に集め、翻訳者が最適な成果物を出せるように環境を整えます。
この進行管理の役割は、社内の色々な部署とのやり取りが必要なため、日本語が母国語、もしくはビジネスレベル以上の日本語力を持った人が活躍するケースが多いです。新卒や若手でも比較的チャレンジしやすい業務のため、幅広い方を対象に採用を実施しています。日本語以外の言語が堪能だったり、海外に興味があったりする方には向いている仕事だと言えます。
2.発注・翻訳
翻訳に必要となる情報が揃ったら、次は翻訳の発注です。翻訳者の個々の能力や適性、スケジュール、抱えている他の案件などを調整した上で、適切な人員に翻訳を発注します。翻訳者は発注内容に従って作業を進めていきます。ただ単に他言語への翻訳を行うだけでなく、対象地域によってキャラ設定や表現などの調整(カルチャライゼーション)を同時に行うこともあります。詳しくは、世界各地で変わらぬゲーム体験を!世界観を最適化するローカライゼーションチームが考えていることをお読みください。
サイゲームスの翻訳担当者は翻訳後の言語が母国語である、経験豊富な人が揃っています。
3.品質チェック
翻訳が完了したら、コーディネーターがLQA(品質管理)の担当者に翻訳テキストを渡します。LQA担当者は、翻訳テキストに違和感や問題はないか、文法の誤りはないか、ゲームやキャラクターの世界観と言葉が合っているか……といった細かなチェックを行い、コンテンツのクオリティーを担保します。
ゲームタイトルによっては、コーディネーターが翻訳テキストをゲームの開発環境に実装してから、LQA担当者に渡すこともあります。
この品質管理の業務も各言語の言語ネイティブであるスタッフが中心で、細かいところに目が行き届くような人や文法の知識が深い人が活躍できる職種です。
4.納品
品質チェックをクリアしたら、依頼主へ納品します。単発の依頼は納品まで1週間以内で完結する場合が多いですが、翻訳する文字が多い案件は事前に計画を立て、長期的に取り組みます
ローカライゼーションの仕事に必要な
3つのスキル
ローカライゼーションには、大きく分けて3つのスキルが必要です。
■言語スキル
やはり言語スキルは、あると確実に役立ちます。特にローカライゼーションの翻訳業務や品質チェック業務を行う場合は、使用する言語が母語であることが望ましいです。文法についての知識が深い人や、細かい言葉遣いに目が行き届く人、色々なコンテンツに触れてきて表現の引き出しが多い人などが活躍できる職種と言えるでしょう。
ただし、進行管理業務については、社内のさまざまなスタッフや部署とのスムーズなやり取りが必要になるため、外国語での言語スキルも重要ですが、日本語でのコミュニケーション能力が求められる場面も多くあります。
■海外のカルチャーやトレンドへの興味関心・知見
海外事業部の存在意義は、サイゲームスで作っているものを海外の方々にも楽しんでもらうことです。それを叶えるためには、そのコンテンツが展開される地域でどういうものが流行っているか、どういうイベントが行われているかといった知見が、とても大切です。ローカライゼーションをしていく上でも、ただ単に言語翻訳をするだけでなく、現地の人たちがどのような生活をし、どのようにものを感じるかということへの理解は、私たちが考える「最高のコンテンツ作り」には欠かせないものです。
そういった状況や流行は日々どんどん変化していくので、現地のエンターテインメント事情に対する興味や関心、情報収集力も必要です。
■日本と海外の違いに対する理解力と物事を的確に伝える表現力
ローカライゼーションチームの仕事は言語の違いを克服するためにあります。コンテンツを楽しんでもらう際に、言語の違いがバリアになってはならないというのがサイゲームスのローカライゼーションの基本理念です。その点で1つ目に挙げた言語スキルに加え、日本と比べて他の国と文化がどう違うのか、逆にここは共通している、といった理解があることは大きな強みです。
文化的な違いがあるということは言語化されたときの表現も違ってくるということです。ではその違いを他の言語でどのように表現したら制作側の意図を的確に伝えることができるか、これが翻訳作業の肝になります。
極端なことを言えば、すべてのテキストは翻訳ツールを使った翻訳でも行えます。しかし、そこから一歩深く踏み込み、それを読む人がオリジナルのテキストを読む人と同じ体験ができるように、いちばんしっくりする表現を探したり、作り出したりするところまでを、サイゲームスのローカライゼーションチームでは目指しています。そこの表現力やこだわりを持っていることも大きな資質の1つだと思います。
ローカライゼーションで求められる
姿勢とマインド
世界の人たちに向けたコンテンツを作っているという面では、日本での常識やマナーだけを基準にするのではなく多様な視点で物事を見ることができると良いと思います。
ローカライゼーションチーム自体、色々な国や地域の出身のメンバーが在籍しています。同時に日本の開発チームを中心とした他部署との関わりも頻繁なので、どの職種であれ自分の育ってきた以外の文化や考え方に対しての敬意や、それを理解しようという姿勢が何よりも大事です。同じ言語話者だとなあなあで済ませてしまいがちなことも、明確に言語化したり、複雑な案件を進行する場合はこまめにコミュニケーションを取ったりといった姿勢も必要になります。
それぞれの言語の特性による違いで進行の仕方や翻訳の入れ方を変えることもあります。メンタルでもフィジカルでも、フレキシブルな対応が求められる場面があるので、臨機応変に物事を進められるといいですね。
これぞ醍醐味!
ローカライゼーションのやりがいとは?
やはり納得のいく内容でリリースを迎えられ、かつそのコンテンツがプレイヤーのみなさんに好評だった場合のやりがいはひとしおです。
いまはリリース直後からSNSで感想がすぐわかるので緊張する部分もありますが、こだわりを持って進めた翻訳の細部にまで気付いてくださるファンの方がいたときは、担当者はもちろんチーム全体の士気が上がります。
私たちのオフィスは日本にあるので、なかなか他の地域の反応を直に見聞きすることが少ないですが、イベントなどで現地のお客さまの生の声を聞いた際には手応えを実感します。
一方で、サイゲームスコンテンツの海外ユーザーの方々は、「元々、日本のコンテンツが好き」という限定的な層が多く、よりたくさんの方々にサイゲームスのコンテンツの魅力を知ってもらうことは、今後の課題とも言えます。
海外展開タイトルも増えているので、「サイゲームスのゲームをきっかけに日本のコンテンツに興味を持った」という方が出てくるくらい上質な作品を作り続けていきたいと思います。
ローカライゼーションのスタッフの
キャリアパス
ローカライゼーションの部門には、海外に何かしらのゆかりがあるだけでなく、ゲーム業界以外の分野から転身したスタッフも多く在籍しており、多彩なバックボーンを強みとしています。まずはその環境の中で自分の役割をしっかり理解し、それを効率良く、高いレベルでこなしていけるようになることが、目指すべきゴールの1つだと言えます。
例えば翻訳者は、「○○の場面で使われる文言は、前回の修正依頼を踏まえて、今回はこういう風に翻訳するほうが良いだろう」と依頼主のニーズがわかるようになってきたら、次は依頼主が想像していた以上の成果物を用意することを目指します。
また、コーディネーターなら、個々の翻訳者の得意分野と依頼主の要求をきちんと照らし合わせ、複数のスケジュール管理を捌けるようになる。LQAなら、依頼をされているチェック範囲以外でも別途確認したほうがよいテキストが事前にわかるようになる。
このようにして、スキルアップを図っていきます。
自身の業務だけでなく、チームとして業務がスムーズに流れるような協力体制も欠かせません。また、いずれマネジメント側にキャリアアップしたら、チームのスタッフたちが良い仕事ができるように環境を整え、機会や場を作っていくスキルも必要です。
色々な経験を持ったスタッフがいるからこそ1つの考え方やフローに凝り固まるのではなく、常により良い業務環境を作っていくような土壌ができつつあります。本人のやる気次第でいくらでも成長の可能性がある職場だと思います。
ローカライゼーションや翻訳の仕事に
携わりたい人へのアドバイス
ローカライゼーションや翻訳の仕事を志すなら、まずは「文化や考えの異なる人たちが仲良くやっていくにはどうすれば良いか」を、日常的に考えておくことが重要です。一見すると単純で簡単そうに聞こえるかもしれませんが、その姿勢が実際に仕事をしていく上で大きな基盤になります。
また、日頃からさまざまなジャンルのエンターテインメントのインプットをまめにするように心掛けたり、色々な立場や考え方の人とコミュニケ―ションを取ったりすることで、アウトプットに必要な知識や知見をストックしておくこともおすすめします。
サイゲームスの海外事業部では、さまざまな言語によるローカライゼーションやプロモーション、イベントの出展などを通じ、おかげさまで創立当時に比べるとより多くの方にコンテンツを楽しんでいただけるようになりました。
しかし、もっとたくさんの方々に楽しんでもらえるように「自分だったらこうしたい!」というアイディアがある人や、「自分のスキルを活かしたい!」と思っている人がいれば、ぜひローカライゼーションの部門に来ていただきたいです。
実際の面接でも、そのアイディアやこれまでの経験を色々と聞かせてもらえるとうれしいです。熱意がある方をお待ちしています!
以上、サイゲームスのローカライゼーションの仕事についての解説でした。
現在サイゲームスでは、一緒に働く仲間を募集しています。この記事で興味を持たれた方は、ぜひ一度こちらをチェックしてみてください。
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