【となりのお仕事】エンジニアから見たバーチャルナビゲーター・スイちゃん

シリーズ「となりのお仕事」は、ある部署の仕事ぶりを他部署からの目線で紹介する企画です。部署を超えての連携はサイゲームスが得意とするところ。部署を横断して仕事をしたり、他部署のプロフェッショナルな働きぶりから刺激を受けたりといったことが日常的にあります。その様子をリアルなエピソードでお届け!

今回取り上げるのは、デザイナー部の広報担当として活動するバーチャルナビゲーター・スイちゃん。実は3DCGの技術検証用人型モデルとしても活躍している多才な存在です。そんな彼女をプロデュースするスイちゃん運営チームやデザイナー推進部の仕事ぶりを、一緒に仕事をしたことがあるエンジニアが語ります。

エンジニア/CTO室タカノリ
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2018年にサイゲームスに合流し、各種技術の検証や実用化を経験。サイゲームスのアートワークを集めた展覧会「Cygames展 Artworks」(2023年)のAR施策をはじめ、AR演出に関する技術検証・コンテンツ開発を担当している。
エンジニア/AIテクノロジータクヤ
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広告系制作会社でスマホアプリやXRコンテンツ(※)、インスタレーション(空間を体験させる芸術)などの開発を経験した後、2018年にサイゲームスに合流。ARアプリ、VRコンテンツ、デジタルサイネージなど、オフラインイベント向けのコンテンツ開発を多く担当している。

※ XR……クロス・リアリティー。仮想現実を見せる「VR」技術や、実際の風景にバーチャルの映像を重ね合わせて表示する「AR」技術などの総称

デザイナー推進部の大胆なアイディアから始まった!?
スイちゃんとの出会い

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エンジニア/CTO室 タカノリ
我々は以前「先端コンテンツチーム」(※)に所属していて、そのときにスイちゃんの開発に関わりましたね。
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エンジニア/AIテクノロジー タクヤ
そうですね。デザイナー推進部から先端コンテンツチームに相談を持ち込まれたのが始まりでした。
デザイナー推進部が「スイちゃん運営チーム」を立ち上げてデザイナー部の広報担当や技術検証用人型モデルの活動などに取り組んでいて。そこに参加させてもらったんですよね。

※ 先端コンテンツチーム⋯⋯VRやARなどに関わるコンテンツ、VTuber配信コンテンツなど、サイゲームスのIPと先端技術を掛け合わせた様々なコンテンツの開発運営支援をしている。実績として「グラブルフェス」の「VR四騎士」「VR天司」「キャラクタートークスポット」の開発・運用や「Special Character Live」のAR技術コンサルティング・テクニカルディレクション、『プリンセスコネクト!Re:Dive』の「スペシャルキャラライブ」におけるAR技術コンサルティングなどがある

▲バーチャルナビゲーター・スイちゃんのプロフィール。誕生の経緯と、制作に込めたスタッフの想いなどはこちらの記事をご覧ください
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エンジニア/CTO室 タカノリ
スイちゃんは我々が関わり始めたときに基本的なシステムは完成していましたね。2021年12月のデザイナー部の情報共有会で社内デビューして、その後調整を経て、デザイナー部の広報担当として活躍し始めたのが2023年の11月でした。
最初にスイちゃんの企画を聞いたときは、「デザイナー推進部ってそんなことをするんだ」と思いました。既存の技術を活用して社内外の広報をする。上手い横展開だなと。
▲社内のデザイナー部の情報共有会でデビューした時のスイちゃん
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エンジニア/AIテクノロジー タクヤ
スイちゃんを起用した企画はデザイナー推進部のスタッフの情熱で始まったんですよね。デザイナーらしくエンタメ企業らしい発信のかたちとして、バーチャルなキャラクターを起用して部署や会社の良いところを伝えていきたいと。スタート時点で熱のこもった企画でした。
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エンジニア/CTO室 タカノリ
こういうアイディアって、いざ実現しようとするといろんな部署の協力を仰ぐ必要があるし手間もかかるから、アイディアだけで終わることが多いと思うんです。でも実際にかたちにして、スイちゃんは様々な発信の場に登場するようになりました。デザイナー推進部はそういう熱意とパワーがある部署ですね。
最初に話が来たときは「え、本当にやるんですか?」みたいな感じでしたが(笑)。すごく良いキャラクターになりましたね。

スイちゃん運営チームを立ち上げた
デザイナー推進部のミッション

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エンジニア/AIテクノロジー タクヤ
序盤からスイちゃんのことを熱く語ってしまいましたね(笑)。読者のみなさんに向けて、あらためてスイちゃん運営チームを立ち上げたデザイナー推進部を紹介しましょうか。
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エンジニア/CTO室 タカノリ
そうですね。サイゲームスには2Dのイラストチームや3DCGアーティストチームなど、デザインに関する複数のチームが集まった「デザイナー部」があります。
デザイナー推進部はデザイナー部の中にあり、デザイン業務に関する各種サポートを担う部署です。スイちゃんはデザイナー部や会社の情報を発信するキャラクターとして誕生しました。

デザイナー推進部のミッション

■社内でのミッション
「 最高のコンテンツを作るデザイナーのために、最高のサポートを提供する」

■社外でのミッション
「最高のコンテンツを作る部署・チームの価値を社外で向上させる」

▲デザイナー推進部のミッションが書かれた社内情報共有ページ。部署の役割を示すことで連携を促している
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エンジニア/AIテクノロジー タクヤ
デザイナー部内の情報流通を促して、部全体を可視化する。何かアクションを起こす際の集約点「ハブ」になる部署ですよね。こうしたスイちゃんの取り組みを見ても、推進部の枠を超えてイラストレーターや3DCG、エンジニアのスタッフを集めたスイちゃん運営チームを立ち上げて技術的なチャレンジをしたり、社外へ向けてデザイナー部の広報活動をしたりしていますから。
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エンジニア/CTO室 タカノリ
他部署の私たちから見ても部内の横の連携をよく推進していると思います。社内と社外でミッションを変えているところはアプローチがより明確で良いですよね。スイちゃんはデザイナー推進部が自ら起点になって部内のチーム連携を成功させた例です。

デザイナー部の広報活動に加えて
新技術の検証でも活躍する

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エンジニア/CTO室 タカノリ
スイちゃんの本来の役目は広報担当ですが、新技術の検証でも活躍していますね。「ゲームに組み込むかは未定だけれど、面白い技術があるからスイちゃんで検証してみよう」みたいな感じで。
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エンジニア/AIテクノロジー タクヤ
ゲームと関係のない「人型モデル」って、ありそうでない存在ですよね。そのため検証に利用可能な「スイちゃん」の存在はエンジニアとしても非常にありがたいんです。実装結果を部内ミーティングなどでお披露目することもできていますし、良い存在になっていると思います。
初期の開発に携わったタカノリさんから見ても、現在の活躍は興味深いのでは?
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エンジニア/CTO室 タカノリ
そうですね。目新しい技術が積極的にスイちゃんに実装されています。社内のエンジニア総会でも共有されるので、新技術がどれくらい使えるのか興味深く見ています。新しい技術は可能性ばかりが注目されがちですが、実際にやってみないとわからないことも多いので。
▲社内のエンジニア総会に登場するスイちゃん
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エンジニア/AIテクノロジー タクヤ
確かに。エンジニアとしては既存システムへ組み込んだときに上手くいくか、また上手くいかなかったときにどんな不具合が出るかが気になります。
スイちゃんに関する技術は結構いろんなところで応用されていますよね。
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エンジニア/CTO室 タカノリ
私がかかわったものだと、スイちゃんのシステムに3D Gaussian Splatting(※)を実装した事例が挙げられます。デザイナー推進部から「サイゲームスの図書室を紹介する社内動画で、スイちゃんが図書室を歩くシーンを作りたい」という提案があって実装したんです。
この他にも開発中のゲームに新しい3DCG技術を組み込めないか検証するため、スイちゃんの技術を応用することがあります。

※ 3D Gaussian Splatting⋯⋯ 3次元空間上に分布する多数のガウス分布(楕円体)を用いて、物体やシーンを表現し、それらを重ね合わせて3Dシーンを高速かつ滑らかに描画する手法

▲スイちゃんのシステムに3D Gaussian Splattingを実装した事例
▲図書室を歩いているシーン。描画が滑らかです
▲技術検証の様子
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エンジニア/AIテクノロジー タクヤ
スイちゃんでの検証が3DCGアーティストの仕事に役立つこともあると聞いています。
3DCGの新卒研修でも、モデルやアニメーション作成について学ぶためにスイちゃんが活用されていますよね?
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エンジニア/CTO室 タカノリ
はい。技術面や育成面で積極的に活用されて、そこでのチャレンジがデザイナー推進部の知見として蓄積できていると思います。
▲新卒研修で制作されたスイちゃん

▲新卒研修で制作されたスイちゃんの動画

スイちゃんの開発でエンジニアが感じた
デザイナー推進部のプロ意識

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エンジニア/AIテクノロジー タクヤ
スイちゃん運営チームやデザイナー推進部との関わる中で、エンジニアの立場から見た自分たちとの違いやデザイナー推進部のプロ意識のようなものを感じましたね。専門分野なので当然かもしれませんが。
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エンジニア/CTO室 タカノリ
絵づくりについて見る目がシビアで、細かいところまで見ているなと思いました。スイちゃんの動画制作では、セルアニメのように1コマずつ画像を書き出してアニメーションにする方法を採用しており、我々は1枚ずつの画像を作ってスイちゃん運営チームに渡すのが仕事でした。動作確認して渡しても、問題ないと思っていたものに結構フィードバックが入るんです(笑)。
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エンジニア/AIテクノロジー タクヤ
ありましたね。スイちゃんの位置がコマ間でほんの少しずれているとか、サイズが違うとか、ここの動きが速すぎるとか。本当によく気付くなあというところまで。絵や映像に求めるクオリティーラインがすごく高いですね。
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エンジニア/CTO室 タカノリ
ユーザーのみなさんに提供するものは当然ですが、社内広報として使うものでも妥協がない。
コマ落ちが発生すると即撮り直しになるので緊張感を持って作っていました。
▲こだわりを込めたモーションキャプチャーの動き。ペンを自然に出現させたり、描く線がずれないようにしたりするなど、細かく調整しています
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エンジニア/AIテクノロジー タクヤ
すべての仕事に真剣に取り組んでいるのを感じますね。工程を進めるだけでなく、必要と思ったら手戻りもいとわない。
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エンジニア/CTO室 タカノリ
本当にそうですね。手が掛かりますがその分確実に良くなるのでやりがいがあります。社内広報にしっかり取り組むことは組織力アップに欠かせませんから。
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エンジニア/AIテクノロジー タクヤ
それにデザイナー推進部の人がいるスイちゃん運営チームはフットワークが軽いですね。やりたいことがあったら「じゃあスイちゃんで試そう」という感じで、新しいものを取り入れる意欲がすごい。結果、大変なこともよく起きますが(笑)。
我々エンジニアは「本当に大丈夫かな」とついためらいがちですが、スイちゃん運営チームは「きっと面白くなるから、まずはやってみよう」という姿勢ですよね。
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エンジニア/CTO室 タカノリ
エンジニアは現実的な案を優先し、不確定要素については慎重ですね。一方、デザイナー推進部の人は面白そうであればチャレンジングなことにもためらいがない。こうした異なる特性がバランス良く組み合わさって良い仕事に繋がっていると思います。

スイちゃん運営チームに気付かされた
プロとして成長するヒント

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エンジニア/AIテクノロジー タクヤ
スイちゃん運営チームの仕事ぶりには我々も気付かされるところがありましたし、若い人が成長するヒントが詰まっているなと。
デザイナー推進部の人が引っ張っているスイちゃん運営チームは一緒に仕事をして「速く進めるけれど手は抜かない」が成立していると感じました。またプロとして最高を目指すという姿勢があり、「最高のコンテンツを作る会社」というサイゲームスのビジョンを体現しています。それに加えて気配りも抜群だと思います。
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エンジニア/CTO室 タカノリ
そうですね。依頼された作業を言われたとおりにこなすのは大前提ですが、その上で「この仕事は全体の中でどういう意味を持つのか」は常に考え続けたほうが良いです。これはエンジニアも意識すべきことですね。
スイちゃんの話を例に出すと、システム完成後の我々のタスクは「動画用の連番画像書き出し」が大きな割合を占めていましたが、同じタスクでも「本番動画用」「確認用動画」など用途はまちまちでした。
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エンジニア/AIテクノロジー タクヤ
用途を確認して、相手が使いやすいように提出していましたよね。どんな仕事でも単純にこなすだけでなく「何のために仕事をしているのか」を意識しながら臨めば、後工程の人が作業しやすいように気配りができるようになったり、より効率的に進める仕組みを提案できるようになったりすると思います。
若手の方はこれを意識するとあっという間に成長できそうです。
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エンジニア/CTO室 タカノリ
スイちゃん運営チームと一緒に仕事をして、そのようなスピード感と気配りが結果として「最高のコンテンツ」に繋がっていくとあらためて気付かされましたね。
経験が少ない若い人は、まず「このコンテンツが一番良くなるにはどうしたら良いだろう」ときちんと考えた上で仕事をすると良いのではないでしょうか。

以上、となりのお仕事 ~エンジニアから見たバーチャルナビゲーター・スイちゃん~でした。
今後のスイちゃんの活躍にご期待ください!