『プリコネR』イラストチームに聞く!<前編> コツは遊び心を忘れないこと!120%のクオリティー達成を志したクリエイター魂とは
先日サービス開始2周年を迎えた『プリンセスコネクト!Re:Dive(以下、プリコネR)』。
サイマガでは「サイ技(わざ)」企画として、『プリコネR』のイラスト・アニメ制作陣にインタビューを実施!今回は、メインストーリー及びストーリーイベントにフィーチャーして、イラストレーターやアニメーターたちがどんな想いで『プリコネR』の世界を描いているのかを聞きました。
後編では、『プリコネR』の今後についてもあわせて取材しましたので、前後編合わせてどうぞ最後までご覧ください!
- イラストチームリーダーワオ
- 新卒としてゲーム開発会社に入社後、コンシューマーゲームやソーシャルゲームの立ち上げ・運用を経験し、2014年にサイゲームスへ入社。『プリンセスコネクト!Re:Dive』ではキャラクターや敵モンスターなど幅広いイラスト制作を担当。現在はイラストチームリーダーとして監修やメンバーの育成に取り組む。
- イラストチーム・モンスターチーム リーダーマサタケ
- 2015年新卒としてサイゲームスに入社。『プリンセスコネクト!Re:Dive』に配属後、モンスターを制作するモンスターチームのリーダーを担当。作品内で使用されるモンスター素材の制作、監修を行っている。
- イラストチーム・背景チーム リーダーナツコ
- アニメ背景美術に携わったのち2012年サイゲームスに入社。現在は『プリンセスコネクト!Re:Dive』の背景チームのリーダーを務める。作品内に使用される背景の制作、監修を行っている。
- イラストチーム・アニメ制作チーム 総作画監督ナオコ
- アニメーターとして10年ほど活動後、サイゲームスに入社。『プリンセスコネクト!Re:Dive』内アニメについて、設定作成やクオリティー監修を主に担当。TVアニメ版のキャラクターデザインにも携わっている。
『プリコネR』のグラフィックが生み出されるまで
アニメを中心としたイラスト制作フロー
今回は、『プリコネR』の「イラストチーム」制作陣の中から主にメインストーリー及びストーリーイベントに携わっているメンバーに集まっていただきました。まずはみなさんの職種と仕事内容を教えてください。
ワオ イラストチームのリーダーをしていて、『プリコネR』のキャラクターイラストの原画チームのリーダーも兼任しています。主に、キャラクター全般の監修をしていて、イラストレーターから上がってきたものが設定的に問題ないかをチェックしたり、キャラクターをより魅力的に見せるにはどうしたらいいかを考えたりしています。あとは、新人イラストレーターの育成もしています。
マサタケ 同じくイラストチームで、モンスターをデザインするモンスターチームのリーダーをしています。モンスターのデザインと、そのモーションの監修が主な仕事です。他にもモンスターに関するUIやアイコンなども担当しています。
ナツコ イラストチームで背景チームのリーダーを務めています。メインクエストやストーリーイベントなど、ゲーム内の背景デザイン周りの監修をしています。
ナオコ 私はイラストチームの中のアニメ制作班に所属していて、ゲーム内で再生されるアニメの総作画監督的な役割をしています。主にキャラクター設定資料の作成や、制作してもらった原画の監修とクオリティーコントロールがメインです。
イラストチームの中でも役割が細かく分かれているんですね。どのような流れで各業務が進んでいくのでしょうか?
ワオ 毎月末に開催されるストーリーイベントを例にとると、まずリリースの半年くらい前にキックオフミーティングをやります。ミーティングにはイラストチームだけでなく、シナリオやサウンド、エンジニアなど各セクションの担当者が参加します。この時点ではまだ大ざっぱなシナリオだけが決まっており、まずはイベントの方向性を確認して、各担当にどういう業務が発生しそうかという見当をつけていきます。
ナオコ キックオフの時点では「このキャラとこのキャラが登場する○○がテーマのイベント」いった内容だけが決まっている状態です。その後、シナリオ担当が詳細を詰めていく過程で、それぞれのチームへ具体的な発注が行われます。あとは、各セクションで並行的に作業が進んでいく感じですね。
ナツコ 『プリコネR』の特徴として毎回ショートアニメが入るので、スケジュール的にどうしても一番時間がかかるアニメ制作を先行するために、全体像をみんなで把握して早め早めに進めていく感じですよね。
ナオコ そうですね。アニメは性質上、キャラやモンスター、背景などのデザインがすべて決まっていないと作業ができないので、アニメ制作をするために他チームに早めに動いてもらっている部分はあります。例えばゲームだと1枚の背景画像で済む場面も、アニメではいろんな角度から描くので、ゲーム上で見えていない部分の情報も必要なんです。特にモンスターは、造形がどうなっているかは描いた人でないとわからないので、最近はモンスターチームにアニメ用の資料を色々作ってもらっています。
マサタケ ゲーム内では左斜め前からのアングルが多数なのですが、アニメ用としてモンスターを真正面や真後ろから見た設定資料を作っています。スケジュールの問題で、資料を待ってもらう時間がない場合は、アニメ側で「側面(※真横から見た絵)」だけ先行して作ってもらう場合もあります。
半年前からストーリーイベントの制作はスタートしているんですね!比較的余裕を持って制作を進められているのでしょうか?
マサタケ 一応、そういうことになってます(笑)。ですが、運用タイトルの性質上、どうしても流動的な部分はあるので、なかなか計画的にはいかないこともあります。
ワオ そうですね。イベントも、最初は既存キャラのみ登場していたのが、どんどん敵役の新キャラとかも追加されるようになって、新しく設定を起こさないといけない場面も増えてきて……。最初よりはスケジュールの余裕は減ってきたかもしれませんね(笑)。
ナオコ 最初はストーリーイベント中には、瞬きや口パクの動きのみがある、アニメ調イラストの一枚絵の「スチル」のみでショートアニメは入っていませんでした。
ナオコ 「デンジャラスバカンス 渚のグルメプリンセス」(2018年6月末開催)からは60〜90秒程度のショートアニメが入るのが定番になりましたよね。
マサタケ モンスターチームでも、2018年7月ストーリーイベント用からアニメ用の設定資料を作るようになりましたね。
ナオコ さらにストーリーイベント「爆走!ランドソルギルドレース」(2019年12月末開催)からは、1つのイベントに2本、ショートアニメが入るようになりました。1本だけだとバトルシーンばかりになりがちだから、キャラクターの普段のシーンを入れたいという話になって。
『プリコネR』はどんどんコンテンツが盛りだくさんになっていった感がありますね。それに合わせて制作体制も変わっていったんでしょうか?
ナツコ 「新春トゥインクルクライシス!」の制作あたりから、社内でアニメを作る体制がととのい始めましたね。実はアニメ業界出身だったこともあって、ストーリーイベント「黒鉄の亡霊」(2018年8月末開催)あたりまでは私がアニメの美術設定も作っていたんですよ(笑)。
ナオコ そうでしたね……!その頃には私を含め、アニメ畑出身の人がチームに増えてきて、専門チームとしてやっていけるようになりました。徐々にアニメとしてもできることが増えていって、今では小さいアニメ会社みたいな規模になりましたね。
今はアニメ部分の制作は内製だけでまかなっているんですか?
ナオコ 社内に撮影や仕上げといった工程を行えるメンバーもいるので一通りはこなせるのですが、物量もあるため複数の協力会社とともに制作しています。子会社のCygamesPictures(以下、サイピク)もその1つです。制作者が違っても一定のクオリティーを担保しないといけなので、人によって捉え方にばらつきがでないように、キャラの特徴がわかる設定資料を作るのと、制作担当から上がってきた原画を監修して整えたり、修正指示したりすることでぶれないようにしています。
『プリコネR』のかわいい世界観を大事にしながら
いたずら心を随所に盛り込む
ゲームの世界をより魅力的にするために、各セクションで取り組んでいることを教えてください。
ワオ 『プリコネR』は登場するキャラが多いですし、それぞれのキャラの個性も強い作品なので、一人ひとりのキャラがブレないように意識しています。ちょっとでもキャラにブレが生じると、そのキャラが好きな人からすると全然違うものに感じることもあるので。一方で、キャラを固定しすぎると厚みがなくなるので、例えば、イベントで親密度が上がったときなどは彼女たちの違った面を見てもらえるようにしています。
例えば、マコトというキャラは男勝りという設定ですが、ストーリーイベント「真夏のマホマホ王国」(2019年7月末開催)に登場した水着姿のマコト(サマー)の表情差分では恥じらいの表情や仕草を取り入れました。元の設定のままだとイメージと違うため、普段のマコトとは違った「強気だけど恥ずかしがっている」みたいな一面を見せたいという話になったからです。キャラの振れ幅をどこまで許容するかのサジ加減は、シナリオチームと相談しながら決めていますね。
モンスターチームはどうでしょう?「CEDEC 2019」の講演でもそのあたりの話はされていましたよね。
マサタケ 『プリコネR』のかわいい世界観を崩さないというのが基本ですね。どのモンスターもかわいらしい・面白いというのを目指してデザインしています。その上で、ユーザーのみなさんが対面したときに、「なんだコイツは」と思われるようなインパクトや動きの面白さも意識しています。その反面、生物としての説得力がありつつ、キャラとして立つようなデザインを心がけていますね。
生物としての納得感というのは、どういうことでしょう?
マサタケ 例えば、ノーマルクエストに登場するモンスター「ホオズキムシ」を制作する際、森に生息しているなら虫タイプで、お尻がカンテラのように光るホタルモチーフのデザインはどうかというアイディアが出ました。そして、さらに特徴を持たせるためにお尻のカンテラをホオズキの形にしようという具合に発想が膨らんでいきました。
背景制作ではどんなことを意識していますか?
ナツコ 『プリコネR』のかわいい世界観を大事にするところは、モンスターと同じですね。ファンタジーではありつつも、ユーザーのみなさんが「自分がその世界にいる」と感じられるような納得感・説得力を意識してデザインしています。
他には色味も大切にしていて、彩色の担当者と相談しながら、キャラクターが引き立つ色味になるようにしています。それと同時に、パッと見たときに色がきれいだなと思えて、冒険しているワクワク感が出る世界観を目指しています。
こだわりとしては、「森」という依頼が来ても、普通の森にならないように、どこかに『プリコネR』感を足せないかなと考えて提案しています。遊び心でこっそり小ネタを入れることもあって、それが採用されたときは密かに喜んでいます(笑)。
マサタケ 小ネタを忍び込ませるのはモンスターも同じですね。発注されたものをそのままやるだけでは面白くなくて、こちらからプランナーとかに提案して、こそっと遊び要素を忍び込ませてます。面白い世界観を作りたいと考えています。
ナツコ モンスターと背景はリンクする部分が多くて、モンスターに生体としての説得力を持たせるには、さっきマサタケさんが言ったように、その生息場所である背景との関係が重要になるんです。なので、モンスターチームの人と発注内容をすり合わせて、お互いのデザインに反映させることもしています。例えば砂漠のステージだったら、砂地にモンスターの足跡を描いて巣に帰っていることを示唆するとか⋯⋯気付かれないことも多いですけど、地味にやっています(笑)。そういうのが、パッと見たときのワクワク感につながるのかなと思っています。
面白さのためにはとことんこだわる!
チーム全体が遊び心を許容する文化
ディテールの部分にこだわりが詰まっているんですね。他のチームも同じでしょうか?
ワオ そうですね。どのチームも遊び心を持ってやっています。言われたことをただやるのではつまらないと思っていますし、アートディレクターも、そういう提案にノってくれるのがありがたいですね。
ナツコ 「もっとこうしたらいいじゃん!」って、むしろ追加のアイディアをくれることもありますね。それで、スケジュール的には自分の首を絞めることになるとわかっていてもやっちゃう(笑)。
ナオコ そういうのがいろんな所で起こりますからね。
マサタケ 変わったデザインのモンスターを作ると、アニメーションデザイナーチームも面白がってアイディアを膨らませてくれる感じはありますね。
ワオ いい風土だと思います。遊び心を大切にしているというか。
ナオコ 言われたことだけやっていると、それ以上のものはできないって、みんな思っているんですよね。
マサタケ スケジュールは厳しくなりますけどね(笑)。でも、誰かの面白いアイディアが別のアイディアを呼んで、全体的なクオリティーが上がっていく過程って、クリエイターとしてすごくやりがいを感じる部分だと思います。
先ほど出てきた砂漠のステージ以外に、こっそりやった実例をぜひ教えてください!
マサタケ 比較的最近のイベントだと「ドラゴンエクスプローラーズ」(2019年10月末開催)がわかりやすいかもしれません。「ドラゴンもどき」というボスモンスターが巣に棲んでいて、かついろんな物を集めるクセがあるという設定だったので、それをモンスターチームと背景チームで話しているうちに、ポケットに入っている物を背景の中にある巣にも置こうと。それで、その中に過去のストーリーイベント「ハツネのプレゼント大作戦」(2018年3月末開催)に登場したボスモンスター「ジズ」の羽が紛れ込んでいるという小ネタを入れました。
ナツコ 他にも背景にはドラゴンもどきが火を噴くために食べている実を転がしてあります。モンスターチームの人と「実を噛み砕いたらどんな汁が出てくるんだろうね」とか、「火がつくんだからオイリーな液体なんじゃない?」とか、色々と話しながら(笑)。
ナツコ あとは、ストーリーイベント「森の臆病者と聖なる学舎の異端児」(2019年8月末開催)の中のイラストで、教科書の中にボスの「オオドクマンドラゴラ」のちびキャラをこっそり描いたり、左上にアストライア大陸の地図が飾られてたりとか。
ナオコ キャラクターイラストもそうですよね、いろんなキャラの★3イラストにアユミが紛れ込んでいて、「あっ、ここにも出てる!」とか。
言われないとなかなか気付けない部分も盛りだくさんで、聞いている側もすごく楽しいです……!ユーザーの方々も、そういう小ネタに気付くとうれしいかもしれませんね。アニメについてはどんなことを意識していますか?
ナオコ アニメはどうしても整合性を図った画面作りを求められるので、キャラやモンスターの身長と建物の高さ等、対比をゲームよりもシビアに考えています。
キャラごとに身長が設定されているので、アニメ内ではそれを正確に表現するために立ち絵イラストとは微妙に頭身を変えたり、帽子やヒールなどの小物で調整したりしています。ゲーム内のADVパートとは異なり、アニメの場合は全身が入るシーンもあるので。
確かに、アニメを見るとキャラの身長差に驚くことがありますね。キャラのイメージとギャップがあることもありますし。
ナオコ ハツネよりアオイのほうが実は大きい(※ハツネ156cm・アオイ158cm)とか。アートディレクターもアオイは小柄というイメージがあったらしくて、設定通りに描いて持っていったら初め「ん?」ってなっていました(笑)。
ワオ クリスティーナはイメージよりも小さいとか。意外性のあるキャラは結構いますね。
身長以外の要素で苦労していることや工夫していることはありますか?
ナオコ 1つは表情ですね。描く方が迷わないように、下から見上げたときにどう見えるか、怒ったときはどう見えるかなど、その話に出てきそうな表情はなるべく事前に用意して設定資料に記載しています。
あとは体の動きもそうですね。立ち方1つとっても、ユイだったら割と重心真ん中内膝気味・脇を締めて立つ、クリスティーナだったらつま先は外向きで胸を張って堂々と立つ、のようにキャラの性格によって違いますし、歩き方や走り方、腕の振り方や歩幅などがそれぞれ変わってくるので。そのキャラらしさが伝わるように意識しています。
ナオコ ただ、キャラ数が多いこともあって、そのあたりの細かいところまで事前に協力会社の方へ伝えることが難しいので、上がってきたものに修正を入れた上で、「こういう風に立たせてください」とか「表情を抑えてください」といった具合に、文章で補足することもあります。
きちんと整合性をとろうとすると、ゲーム制作用に用意された情報だけでは足りなくて、細かい設定を確認したりデータを補完したりする必要があるわけですね。
ナオコ そうですね。アニメはカメラアングルが大きく変化するし、キャラの動きもあるので、服の裏側なんかが結構見えるんです。だから、「この服の裏側って柄はあるんですか?」とか「このパーツの素材は何ですか?」とか、いつも「ココドウナッテマスカ」って聞く妖怪みたいに思われているかも(笑)。
ゲームのイラストに比べて、アニメは線を減らして単純化する必要があります。この部分は線で描くのではなく影を落とそうとか、印象を変えずに線を減らすためには、素材感を確認しておく必要があるんです。
アニメでは重要なところを見極めて、情報量を減らしていくんですね……!
ナオコ そうですね。例えば、ストーリーイベント「真夏のマホマホ王国」(2019年7月末開催)に登場したボス「マジムン」は、欠けている歯の位置はゲーム内イラストに合わせつつ、体のうろこは思い切って作画していません。
印象は変えずに情報量を減らしながら、ここは手で描き込むとか、描くことが難しい部分は素材を作ってはめ込む、といった処理をチームで相談しながら設定の段階で決めています。アニメは塗って撮影して、と工程が多いので。
共通ゴールはユーザーの満足感!
やりがいを感じる瞬間とは
これまで『プリコネR』の制作に関わってきた中で、やりがいを感じたことを教えてください。
ワオ やりがいを感じるのは、やっぱり作ったものがユーザーのみなさんに届いたときですね。ファンアートなどを見て、ユーザーのみなさんの中で『プリコネR』の世界観が広がっていることを感じると心躍るものがあります。
それに、自分が考えたキャラが動くのを見られるのは単純にうれしいですね。自分が考えたキャラが、数か月後にはアニメになるなんて、『プリコネR』以外ではまずないことなので(笑)。
ナツコ すごいスピード感!
自分が作ったキャラがアニメになって動くというのは、ゲームになるのとは別の喜びがあるんですね。
ナオコ モンスターチームにもたまに言われますね(笑)。「アニメいつも楽しみにしてます!」って。こちらも「頑張ります!」みたいな。
マサタケ 他のゲームだとモンスターにこんなに見せ場ってないですから。ウチの子が動いてるー!ってなります(笑)。
わかる気がします!モンスターチームで苦労している部分はありますか?
マサタケ モンスターチーム特有の苦労としては、人によって「気持ち悪い」の度合いが違うので、サジ加減が難しいというのがありますね。例えば、ストーリーイベント「バトルオブバレンタイン」(2019年1月末開催)で登場したボス「アグリーラブリー」は見る人によっては恐竜みたいでかっこいいと言われたり、ゾンビみたいで気持ち悪いって言われたりしました。制作中も人によってかなり意見がわかれましたね。制作サイド内でも意見が分かれることがあるので、探り探りやっている感じですね。
背景チームはどうでしょう?
ナツコ 私たちもテイストのサジ加減については悩みますね。『プリコネR』はかわいい世界観ですが、中にはシリアスな場面も出てきます。背景にもそういう雰囲気を出していく必要があるんですが、やりすぎるとダークファンタジーになってしまうので、どこに落とし込むかというのは悩みどころです。
例えば、昨年のハロウィンのストーリーイベント「リトル・ブレイブ・ハロウィンナイト!」(2019年9月末開催)では、舞台はお墓に囲まれた幽霊屋敷だし、死してなお娘に執着する父親がボスという、設定だけ聞くとすごくホラーでシリアスな話なんです。それを『プリコネR』らしさを活かしつつ、単なる「ホラー」にならないようにするために苦労しました。『プリコネR』の世界観とストーリーとのバランスをとる作業が大変ですね。でも、最終的に出来たものが良くなったら、その苦労が報われる気がします。
背景で『プリコネR』のかわいらしい世界を演出するための方程式というか、ルールみたいなものはあるんでしょうか?
ナツコ 『プリコネR』の舞台の中心であるランドソルは、全体的にデフォルメを効かせた造形や鮮やかな色味でファンタジー系のテーマパークみたいな雰囲気になるようにしています。また、もう少し広くアストルムの世界全体としては、柔らかく幻想的な世界観を描くようにしていますね。あと、『プリコネR』にはもう1つ「夢の世界」もあって、そちらは造形や色味も現実に近付けて描いています。2つの世界がパッと見でわかるように差をつけています。
なるほど……!アニメはどうでしょう?先ほど苦労話を聞いたので、喜びを感じる瞬間とか。
ナオコ 見てくれた方のリアクションを知ったときでしょうか。SNSなどで感想が書かれているととても励みになります!また、社内コミュニケーションツールの中に、『プリコネR』に関して自由に発言するチャンネル(チャットルーム)があるんですが、そこにアニメのカットがキャプチャーして貼られていたりするのも「おおっ」となりますね。
ストーリーイベント「トワイライトブレイカーズ」(2018年10月末開催)でエリコが斧を引きずって歩いているシーンは特にキャプチャーが貼られているのをたくさん見た気がします。実は私もエリコが好きで楽しみながら監修したシーンだったので……見てくれた人の記憶に残ったならうれしいですね、あの狂気が伝わったなら幸いです(笑)。
明日、2月26日に公開する後編では、それぞれの思い出に残るキャラやイベント、『プリコネR』第1部のクライマックスとなった特別イベント「王都終末決戦」(2019年12月開催)の制作エピソードなどを聞いていきます。お楽しみに!