「異なる者たちの相互理解」を描くために…『ワールドフリッパー』の世界観ができるまで

2019年11月のサービス開始から半年を迎えた『ワールドフリッパー(以下、ワーフリ)』。
サイマガでは、同作のサービス開始時にゲームに込められた気持ち良さについて話を聞きましたが、今回はハーフアニバーサリーを迎えたタイミングでさらに、『ワーフリ』の魅力の1つである“独特の世界観”について深掘りします。
『ワーフリ』の世界で出会う、個性豊かなたくさんの仲間たちとの冒険をユーザーのみなさまに楽しんでもらうために心がけていることを、『ワーフリ』開発チームメンバーにインタビューしました!

サービス開始時のインタビューはこちらからご覧ください。

出発点は「ボール=惑星」!?

タイトルの通り、『ワーフリ』は複数の世界を旅する物語です。この設定が生まれたきっかけはなんだったのでしょうか?

もともとは、『ワーフリ』がピンボールをモチーフにしたゲームであることから生まれた発想です。
ストーリーのアイディアを出し合う中で、ピンボールの「丸いボール」を1つの惑星=世界として見立てるのはどうだろうというアイディアが出たんです。それならゲームに深みのある物語性を持たせることもできるし、面白いんじゃないか?と考えたのがきっかけとなって、主人公たちがいくつもの世界を旅する今の設定が生まれました。

ゲームシステムとのバランスについては、どのように意識していましたか?

まずはユーザーの方を飽きさせないように、という意識は強かったです。「冒険する」という体験を提供するためには、見た目が明らかに異なるステージで遊べることは重要だと考えていました。

▲第1章~第3章のステージ選択画面。それぞれ異なる世界であることがひと目でわかります

また、特色の異なるさまざまな世界を舞台として用意することで、体験のバリエーションを増やせるとも考えました。さらに、ゲームとして提供する上で、定期的に開催されるであろうストーリーイベントにおいても、個々に独立した世界観があることは望ましいだろうと考えました。

確かにプレイしていると、ゲームのシンプルな操作性と、それぞれ特色のあるステージの対比のバランスが心地良さを生んでいる気がします!各ステージに登場するキャラたちも個性豊かですよね。キャラデザインはどのように作られていったのでしょうか?

初期のキャラデザインは、仕様や世界観と並行して作ることが多かったですね。ゲームの試作段階ではドットイラストしか存在しないキャラもいたので、新しい仕様が決まったり、世界観が固まっていったりするたびに意見を出し合って、レギュレーションを固めていきました。

『ワーフリ』のキャラたちは複数の世界ごとに、さまざまな外見のバリエーションがあります。デザインする上で気をつけていたことはありますか?

『ワーフリ』の絵柄で魅力を引き出すために意識していたのは、イラストにギミックを与えることです。
例えばレジスというキャラの場合、解放後のイラストは、レジスの腕が周りのドローンと合体して巨大なバスターになります。そういったキャラを特徴づける変化を、進化の前後で2コマ漫画のように演出することで、そのキャラに対する想像を膨らませやすく、楽しいイラストになるよう心がけています。

▲機人の紳士・レジス(左から進化前/進化後)

他にもいろいろなキャラがいますが、ステージごとの世界観は異なっていても、1つのゲームに登場するキャラとして絵柄に統一感をもたせることは初期の頃から心がけています。
とはいっても、かっちりと絵柄の方向性を固めているわけではなく、イラストレーター同士でコミュニケーションをとる中で「これはいいね」と思ったポイントは他のキャラデザインにも取り入れるなど、柔軟な対応をするようにしています。これからも少しずつ変わっていくかもしれませんね。

「自由を勝ち取る」ために「異なるものを受け入れる」

先ほどはキャラデザインの話をお聞きしましたが、キャラの性格や背景などはどのように決めていったのでしょうか?

これはもう、思いつく限り色々やろう!とチームであれこれアイディアを出し合って決めています。特に、往年の名作群や、多くの人々が子どもの頃に触れていた物語の記憶を呼び起こすようなモチーフを優先して選ぶことが多いですね。

現在、メインストーリーは7章が完結したところです。ストーリーのシナリオを作る上で意識していることはありますか?

メインストーリーは、アルクと対をなす主人公であるステラの変化と成熟に対応させるように世界観を決めていました。
各章で登場するキャラも、その段階のアルクやステラが出会うことで、上記のプロセスを実現するにふさわしいキャラを配置しています。

▲さまざまな人物と出会うことで、ステラの行動にも変化が生まれていきます

『ワーフリ』は、単純に敵を倒すだけではなく、他者を理解し受け入れるエピソードが特徴的ですね。これも意識されていたのでしょうか?

『ワーフリ』には、「自由を勝ち取れ」という共通テーマがあります。
これを実現するために、シナリオを作る際には「逃げる・呪いから離脱する」→「他者を知る・多様性を取り入れ、武器にする」→「再び戦う・真の望みを発見する」というプロセスを踏むことを推奨していました。
これはハリウッド映画の脚本術や、神話の構造を解説した書籍などでも語られることなのですが、『ワーフリ』でも「異なるものを受け入れる」という要素を取り入れることは強く意識していました。

アルクは「現代的な悩みを抱えた」主人公

アルクは、いわゆる王道ファンタジーと違い、旅をする明確な目的や使命を持っていませんよね。ちょっと珍しい主人公という気がしますが、どうしてこのようなキャラになったのでしょうか?

アルクの立ち位置は、ゲーム設計ありきで決定されたものでした。
『ワーフリ』は、自分が集めたキャラを自由に組み合わせてパーティーを編成します。主人公といえども、アルクがパーティーから外されることは十分にありえますし、実際にアルクがいない編成でプレイしている方もたくさんいると思います。
物語上では中心人物なのに、ゲームをプレイするときにはいないという、物語と体験の間に生じてしまう溝を埋めたいと考えた結果生まれた主人公がアルクでした。
壮大な使命を背負っているわけではなくても、自分が何者なのかわからないという、ある意味では現代的な悩みを抱えて冒険の旅に出るアルクは、きっとユーザーのみなさまからも親近感を持ってもらえる主人公になるだろうと考えました。

主人公アルクにまつわるストーリーの中で、特に『ワーフリ』の世界観が表れていると感じるエピソードはありますか?

1つ挙げるとしたら、アルクのキャラエピソード「メテオブレイク」でしょうか。
詳しくお話しするとネタバレになってしまうのですが、「自由を勝ち取れ」というテーマにおいて、アルクは強者でなくても、間違いなく主人公であることを示したエピソードです。それがメインストーリーではなくキャラエピソードで語られるあたりが、実に『ワーフリ』らしいと思っています(笑)。

▲記憶を失った少年、主人公アルクのキャラエピソード「メテオブレイク」より

また個人的には、ジェラールのキャラエピソードも『ワーフリ』らしい話だと思っています。
違う価値観を持つアルクとの交流をきっかけに、ジェラールが自分の真の願いを自覚し、自ら苦悩を振り切ることができたエピソードですが、一方で、アルクのほうは友達に軽口を叩いているだけのつもりだったという、バランスと関係の描き方がいいですね。

▲白き覆面騎士・ジェラールのキャラエピソード「真実よりも強く」より

今後もメインストーリーは続きますし、さらに個性的で魅力的なキャラたちが、さまざまな世界に登場します。
これからの『ワーフリ』の展開にも、ぜひご期待ください!