ゲームシナリオライターの仕事とは?最高の物語を紡ぐために必要なこと【サイゲームス仕事百科】

シナリオは、ゲームへの没入感を高める重要な要素の1つです。ワクワクするようなストーリーやキャラクターの個性を際立たせるセリフ回しなどによって、私たちはゲームの世界に引き込まれます。
サイゲームスのシナリオチームは、ストーリー執筆のようなテキストライティング以外にも、キャラクターが身に着ける衣装を考えたり、ボイスの収録を行ったりすることもあります。今回はシナリオチームの受け持つ仕事について、マネージャーへの取材を基に解説します。

クオリティーの高いシナリオが
ゲームの面白さを増幅させる

ゲームのシナリオライターというと、メインとなるストーリーやイベントのストーリーなどの「お話」を作る仕事と思う方が多いかもしれません。もちろんそうしたテキストも書きますが、それ以外に、フレーバーテキスト(※)や武器・アイテムなどの名称、スキルや技の名前、イベントやクエストのタイトルなど、ゲーム内で使用されるありとあらゆる文章を作成するのがシナリオライターの仕事です。
サイゲームスでは、キャラクター原案、キャラクターのイラストや衣装の原案、声優によるキャラクターボイス収録などをシナリオチームが担当することも多いです。

※フレーバーテキスト……ゲーム内のキャラクターやアイテムについて、効果や使い方の説明以外の、キャラクター付けや雰囲気づくりのために用意されている文章のこと

ゲーム以外のエンターテインメントでもシナリオ(脚本)は存在しますが、ゲームのシナリオは「素材ありき」で作る点が特徴です。プロジェクトによって異なりますが、背景やキャラクターのイラスト、モーションといった用意されている素材を活かすかたちで話を考えるパターンも多いのです。もちろんシナリオライターが考えた話に合わせてイラストやモーションなどが作られる場合もあります。

シナリオはチームで作る
サイゲームスの体制

サイゲームスのシナリオチームは5年ほど前に発足しました。チームができる前のスタッフ数は10人程度で、リーダーが第一線でバリバリ書きながらまとめ役も務める言わば個人商店の集まりのような形態でした。当初はリリース作品数も限られていたため、それで間に合っていましたが、次第に各コンテンツの規模が拡大していき、また作品数も増えてきたことで、体制を見直しました。

我々は、クオリティーを担保しつつ作業を効率化するためには、単純に人数を増やすだけでなく、リーダー、監修、ライターといった具合に分業をする必要があると考えました。専門特化型の人材を上手く配置し、「チームでシナリオを作る」ことを意識した体制にしたのです。また、高いクオリティーのコンテンツをハイペースで量産するためには内製化が必要だと考え、シナリオライターの社員化も進めました。
現在、シナリオチームは下図のような体制となります。

▲シナリオチームの体制図

現行のシナリオチームは8つの職種に分かれています。主な実制作は、一番右側のライター、キャラクター原案作成、イラスト&衣装原案作成、音声収録担当、サポートが担います。ただし、完全な分業ではなく、プロジェクトによっては複数の職種を兼任するなど、柔軟に対応しています。
各職種の仕事内容は次の通りです。

■ライター
ゲーム内で使用するありとあらゆるテキストを書く仕事です。一般的な「シナリオライター」のイメージに近い職種と言えるでしょう。最初はアイテムの説明文などの作成から始まり、キャラクター別のストーリー、イベントストーリー、メインストーリーと、実力が付くにつれて執筆する物語の規模が大きくなっていきます。

■キャラクター原案作成
ゲームに登場する個々のキャラクターについて、物語の中でそのキャラクターにどんな役割を持たせるかを意識しつつ、外見や性格などの基本設定を考える仕事です。サイゲームスではライターが兼任する場合が多いです。

■イラスト&衣装原案作成
キャラクターを使って、どんなイラストを作るか、どんな衣装を着せるかを考える仕事です。絵心が必要であることと、衣装に対する高度な知識が求められるため、専任で担当することが多いです。プロジェクトによってはイラストレーターがこの役割を担当することもあります。

■音声収録担当
キャスティングを考え、ボイスのスタジオ収録に立ち会う仕事です。どんな声優さんがいるか、どんなキャラクターを演じるのに適しているのかなどを把握している必要があります。専任の場合もありますが、ライターが兼ねることが多いです。

■サポート
台本作成、音声チェック、テキスト校正、納品、資料整理、スケジュール管理などをする仕事です。各プロジェクトマネージャーや他部署とのやり取りなど、対外的な窓口でもあります。ライターや原案作成などの他のスタッフが制作に専念できるように支援する役割であり、チームの仕事を円滑に回すための重要な職種と言えます。

■監修
シナリオチームが制作したコンテンツをチェックし、クオリティーを管理する仕事です。クオリティーにバラつきが生じやすいという分業体制の弱点を補うために、全体を「通し」で見る役割でもあります。以前はリーダーが兼務することも多かったですが、最近は別で複数人立てることも増えてきました。

■リーダー
文字通りチームを引っ張っていく仕事です。監修、スタッフへの仕事の割り振り、他部署との調整、進捗管理、スタッフ育成、チームの士気向上など、チームがフルに実力を発揮できるよう動きます。もちろん自身でシナリオを書くこともあります。

■シナリオディレクター
ディレクターとともに作品世界を根本から把握し、シナリオチームの仕事を監督する仕事です。シナリオだけでなく他部署のクリエイションを助け、IPの方向性を示す役割でもあります。

チームでシナリオを作る上で
意識している4つのポイント

「チームでシナリオを書く」を実践するにあたって、我々は4つのことを意識しています。

1.リーダー・監修を重要視

リーダーや監修はクオリティー担保のための重要な役割を担っており、プロジェクトや作品について熟知していないと務まりません。新規開発で人材が必要になったときも対応できるよう、リーダーや監修ができるスタッフの育成に力を入れています。また、以前は「リーダーは何でもできる」ことが求められていましたが、現在は管理・監修能力寄りにややシフトしています。

2.ライティングの属人化防止

ゲームに登場するたくさんのキャラクターにはそれぞれ個性があります。キャラクターに一貫性と深みを持たせるために、サイゲームスではキャラクターごとに専属のシナリオライターを付けることもあります。とはいえ、スケジュールの都合などで専属ライターのみで対応できないケースも出てくるため、シナリオライター全員が全キャラクターの個性を把握し、担当以外のキャラクターについても書けるように連携しています。

3.確認窓口の一本化

先んじて述べたように、制作陣に仕事に専念してもらうためにサポート職を置いて、渉外の細かな確認は彼らに一任しています。他部署とのコミュニケーションは大事ですが、そこに時間を取られて制作が遅れてしまっては本末転倒です。そこでサポート職を置いて、効率化を図っています。
サポートという名称から補助的な役割のように思えるかもしれませんが、実際にはプロジェクトマネージャーのような、シナリオの業務を円滑にするための重要なポジションです。

4.アクセント統一

キャラクターやアイテムなどの名称を声優さんが発音したときに、人によってアクセントが違うと、ユーザーの方に違和感を与えてしまいます。そこで、固有名詞をどう発音するかをシナリオライター全員で共有し、読み上げるときは常に正しいアクセントでの発音を徹底しています。フルボイス化にも対応できるよう、シナリオライターは書いたものが音声になったときのことを意識する必要があります。

ゲームシナリオの制作フロー

続いて、ゲームシナリオの制作フローをご紹介します。

シナリオ担当者が決まった後、制作するものの具体的な内容は、プランナーから発注されます。依頼内容に疑問点や不明瞭な点がある場合は、極力初期の段階で解消しておきます。プランナー側の発注内容を確認し、シナリオチーム側から「こういうのはどうでしょうか?」と提案することもあります。例えば、「おはよう」というあいさつの言葉1つでも、話すときの感情によっていくつもバリエーションがあります。そこで、どんなシチュエーションで発するセリフなのかを確認して、複数パターンを用意するといったこともします。

テキストやボイスについては、担当者が作成したものをリーダー、監修、シナリオディレクターが確認し、その後サポートを経て納品します。シナリオチームからプランナーに納品する時点で、そのままリリースできる状態にして渡します。

プランナーとシナリオチームの仕事は重複する部分があり、どちらがどこまで担当するかはケースバイケースです。どちらが担当するかは発注のタイミングで決まりますが、仕様面に大きくかかわる内容はプランナーが請け負うことが多く、シナリオライターはテキストライティングの専門家として、その適性に合った領域を担当します。

  • システムメッセージ(プランナー)
    仕様を完全に理解しているプランナーが書くほうが良いため。
  • イベントタイトル(シナリオ)
    キャッチーな文言はシナリオ専門家が考えたほうが良いため。
  • ガチャタイトル(シナリオ)
    イベントタイトル同様、興味を持ってもらうには日本語テクニックが必要なため。
  • アイテムフレーバー(どちらも)
    シンプルな説明ならプランナーが担当。笑わせたり唸らせたりするならシナリオが担当する。
  • ストーリータイトル(シナリオ)
    内容に興味を持たせるテクニックが必要なため。
  • クエストタイトル(共同)
    先に中身を把握しているプランナーが仮のタイトルをつけた後、シナリオが修飾する。
  • テキストを書き入れるファイル用意(プランナー)
    実装に影響するため、全体を把握しているプランナーが担当する。

ゲームシナリオライターに
求められるスキルとマインド

シナリオライターは仕事の性質上、高い日本語能力を有していることが必要です。これに加えて、下記の項目についても重視しています。

■面白い話をたくさん書ける

サービス運用にあたっては、たくさんのキャラクターやストーリーが続々と追加されます。つまり、ライターは高クオリティーのシナリオを高頻度で提供し続ける必要があるのです。また、登場人物の一人ひとりを魅力的に見せる力や、たくさんの登場人物が絡み合う重層的なストーリーを構築できる力は、ライターとしてぜひ持っておきたいスキルです。

■テイストを書き分ける能力

ゲームの中にはシリアスな話、コミカルな話、硬い言葉遣い、くだけた口調など、さまざまなテイストの文章が出てきます。ライターは書き分けのため、さまざまな引き出しを持っているほうが有利と言えます。

■「ありもの素材」を最大限に生かす

すでにある素材から面白い話を作り出す能力も大切です。継続的にアップデートをする作品では、納期やコストの関係から、新たなキャラクターや設定などの素材を作り出さずに、ありものの素材を使って新しい話を作る場面も少なくありません。おいしいご飯を作りたいけど、買い物に行く時間やお金がない。だったら、冷蔵庫に入っている素材でなんとか工夫しよう、という発想です。

■ゲームで映えるものを考案できる

イラスト&衣装原案は、絵心や広範な知識が必要なのはもちろんですが、その知識を活かして、ゲームにしたときに映えるものを考案できる能力が大切です。不要なものを省き、足りないものを加えて、魅力的なグラフィックにするセンスが求められます。

ゲームシナリオライターの
仕事のやりがいとは?

シナリオライターの仕事のやりがいは、自分が書き上げたもので人を喜ばせられることです。「良かった」「最高だった」と言ってもらえたら幸せを感じます。その意味では、この仕事はいわゆるサービス業だと思っています。自分の仕事を最終的に評価してくれるのはユーザーのみなさんなので、突き詰めればリリースするまでは評価はわかりません。「こうしたら楽しんでもらえるのではないか」と作戦を立ててコンテンツを作っていくわけですが、途中で「この作戦は本当に正しいのか」と不安になることもあります。でも、正しいと思ったことをやり抜いた結果、作戦がハマったときの喜びは大きいです。

ゲームシナリオライターの
キャリアパス

実績を積み、本人の意向や適性があればリーダーや監修といった取りまとめ役に就くのがオーソドックスなパターンです。最初から「自分はこういうキャリアを歩みたい」と決めている人は少なく、経験を重ねていくうちにやりたいことが見つかるケースが多いです。ゲーム全体の世界観を見たい人はシナリオディレクターや監修に、人や組織を育てたい人はマネージャーに、といった具合です。もちろん、エースとしてずっと現場でやりたいという人もいます。本人がどうなりたいかを一番大切にしています。

シナリオにまつわるいずれの職種も「手仕事」なので、コツコツと積み重ねて自分の長所を伸ばせる人、あるいは課題を一つひとつ解決していける人が向いています。また、複数の職種を兼務することが多いので、「自分はライターなので書く以外の仕事はやらない」と頑なになるのではなく、未経験のことでもやってみようという柔軟性がある人のほうが伸びると感じています。

ゲームシナリオライターを
目指す人へのアドバイス

ライターであれば言葉の数やパターンをたくさん持っていることは武器になります。ギャル語や漢文など幅広く知り、かっこいい、美しいと感じる言葉を溜め込んでおくことが大切です。古今東西の神話や衣装などに関する知識も役立ちます。本を含め、マンガ、映画、アニメ、ゲームなどさまざまジャンルのエンターテインメントに触れて、語彙や知識のライブラリーを日々拡張していくことが重要です。

採用では実力を見るための課題を出させていただいています。選考ではこの課題を重視していて、採否を決める要素の大部分を占めます。
志望者の中にはコミュニケーションが不得手であったりシャイであったりする方も珍しくありません。しかし、そんな方でも、クリエイティブ面に自信があるなら積極的にご応募ください。コミュニケーション能力は高いに越したことはありませんが、シナリオチームはご紹介した通り、専門特化型の人材で体制を組んで業務を行っていますので、クオリティーの高い物が制作できる方には、ぜひ加わっていただきたいと考えています。

課題選考ののち、面接となりますが、面接のためにご用意いただくことは特にありません。自分がやってきたこと、これからやりたいことをお聞かせください。


以上、ゲームシナリオライターの仕事についての解説でした。
※現在シナリオライターに関連する職種の求人募集は行っておりません

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