シネマティクス室の仕事とは? ハイエンドCG映像を制作し世界を目指す新組織【サイゲームス仕事百科】

「シネマティクス室」は、全世界に通用するハイクオリティーなCG映像を制作するため、2021年4月に設立された部署です。将来はオリジナルのムービーコンテンツを世に発信していくことを目指す他、ゲームタイトルとも連携し、プロモーション映像、オープニング映像、カットシーン、イベント用のVR映像などを制作していきます。今回はシネマティクス室の仕事について、マネージャーへの取材を基に解説します。

最先端の技術・施設を使って
最高峰のムービーコンテンツを世界に

現在サイゲームスではゲームを中心に、アニメ、マンガなどのエンターテインメントコンテンツを制作しています。社内にはモバイルゲームやコンシューマーゲームなどを制作するCGチームがありますが、今回、さらにコンテンツ制作力を高めるための取り組みとして、プリレンダリングを中心としたシネマティクスムービー制作チームである「シネマティクス室」を2021年に発足しました。

シネマティクス室を説明する際、技術的な側面としてまずは「レンダリング」に触れなくてはなりません。3DCGの制作では、コンピューターのプログラムを用いて、入力された数値の計算結果を映像として生成する「レンダリング」という技術が使われています。レンダリングはその処理が行われるタイミングによって、大きく以下の2つに分けられます。

■リアルタイムレンダリング……コンシューマーゲームなどで、プレイヤーの動き(入力)に応じて瞬時にキャラクターや背景、エフェクトを表示する際に使われるレンダリング手法

■プリレンダリング……映画などで使われているCGのように、より複雑な表現を実現するために事前に幾度も計算を重ねて映像化するレンダリング手法

シネマティクス室は、このうち「プリレンダリング」を中心にさまざまな映像コンテンツの制作を進めています。その上で、将来的にはリアルタイムレンダリングの技術を使った作品制作やR&D(新技術の研究開発)にも取り組む予定です。

さらにシネマティクス室では技術開発の際、国内最大級のカメラ数を誇る「ボディスキャナー」や、「LightCage」を導入した最先端の「フェイススキャナー」、168台のカメラが天井高8mの空間に敷き詰められ高精度の撮影を可能とする「モーションキャプチャースタジオ」など、充実した社内設備を利用できます。これにより、一連の撮影工程を短期間で実施でき、その結果としてキャラクターやアニメーションのクオリティーアップを迅速に実現します。

このようにして、より一層「最高のコンテンツづくり」に注力できるというのがシネマティクス室の大きな強みと言えるでしょう。こういった最先端の技術を用いて最高峰の映像を世に送り出すことで、サイゲームスの技術力、表現力、コンテンツ力を広め、業界をリードする映像体験を提供していくというミッションがあります。

シネマティクス室の体制と主な仕事内容

現在、シネマティクス室には各セクションのリーダーを中心に約20名が所属し、実際の制作をしながらワークフローやパイプライン(※)の整備、技術開発、チームづくりなどを進めています。将来は50名を超える組織になる見込みで、現在スタッフを積極的に募集しています。

※パイプライン……CG映像制作において、モデルやアニメーションなどのデータをスムーズに受け渡すための枠組みやツールのこと

CG映像の制作は、以前紹介した3DCGアーティストと同じように、担当するセクションによって主に下記の職種に分かれています。

■テクニカル
CG映像制作におけるパイプラインやDCCツール(※)など制作サポートツールの開発、保守、運用を行う。
※DCCツール……モデリング、リギングなど3DCGを制作するために必要な機能が揃ったツールのこと。Maya、3ds Max、Blender、Houdiniなどがある

■インフラエンジニア
CG映像制作向けのシステムサーバー構築やインフラ開発、運用を行う。

■コンセプトアーティスト
プロジェクトの世界観やテイストに沿って2D/3Dでキャラクターや背景などのコンセプトアートやプロダクションアート(設計図)を提案する。

■キャラクターアーティスト
キャラクターのコンセプトアートを基に、モデリング、テクスチャリング、シェーディングなどを行い、人物やモンスターなどを制作する。

■レイアウトアーティスト
フレーム(カメラ)及びキャラクターの位置やどのように動かすかなどをそれぞれ設計し、映像内の配置(レイアウト)や各種演出を行う。

■リギングアーティスト
モデルにジョイント(骨・関節)を入れ、それらを制御するための「リグ」と呼ばれるコントローラーを設定する。また、動きに合わせてモデルを変形させる「スキニング」も行う。

■アニメーションアーティスト
キャラクターモデルに動き(モーション/アニメーション)を付ける。動きを手動で付ける「手付け」と、実際の人間の動きを撮影する「モーションキャプチャー」がある。

■背景アーティスト
映像の舞台となる「背景」のモデル作成・レイアウト・ライティングを行う。背景デザインや世界観構築などを行うこともある。

■エフェクトアーティスト
爆発、炎、煙、魔法などのエフェクト(特殊効果)を制作する。エフェクトには動きが加えられるため、アニメーションの知識およびエフェクトを中心とした絵的なデザインセンスも必要。

■ライティングアーティスト
キャラクターや背景にどのように光を当てるかを設計(ライティング)し、映像全体の明るさ・色味などをコントロールする。出力されたレンダリング画像を合成(1枚の画としてなじませるコンポジット工程を含むことが多い)する業務も含まれる。

各職種は高度な技術やクリエイティビティ―を必要とする専門職であるため、それぞれのセクションごとに分かれて業務を行います。さらに、セクションを超えて関わる体制・組織づくりを理想としており、完全な分業ではなく、各専門分野が持つクリエイティビティ―の範囲を広げられるような組織づくりを進めています。コンテンツ制作全体への高い当事者意識を持つことで、映像による最高の体験、最高の時間を提供できるのでは、と考えるからです。

▲シネマティクス室制作イメージ画像

シネマティクス室の具体的な仕事内容は以下の通りです。

  • オリジナル映像作品の制作
  • ゲーム内のオープニング・エンディングムービー、カットシーンの制作
  • プロモーション映像やイベント用CG映像の制作

また他部署と連携しつつ、将来的に下記のような業務を行うことも視野に入れています。

■2D/3Dコンセプトアートの提案
スカルプトやオーバーペイントを用いて、スピーディかつ具体的なコンセプトアートを提案する。

■ゲームモデルのルック提案
ゲームタイトルと連携しながら、キャラクターのルック(見た目)を提案する。

■カットシーン
CG映像単体、およびゲーム内でのカットシーンの演出に携わる。

CG映像制作専門のチームとして、社内の各プロジェクトと協力しながら技術の開発・運用と共有を進めています。

シネマティクス室の業務フロー

続いて、シネマティクス室がプリレンダー映像制作をする際の簡単なフローを紹介します。多くの映像作品は下記の工程で進めていきます。

1.コンセプトアート・絵コンテ

企画やプロット、シナリオを基に、キャラクター、背景、エフェクトなどのコンセプトをデザインし、イメージを固めていきます。

2.レイアウト・アニメーション

  • レイアウト作成
    企画やシナリオ、絵コンテなどから、各シーンで必要な要素とそれらの配置を決定していきます。キャラクターのアクション、カメラワークなどの演出を設計します。
  • アニメーション作成
    キャラクターを動かす工程です。全身の動作以外にも表情のアニメーションを付けることもあります。

3.アセット

  • モデルアセット作成
    コンセプトアートを基に、3DCGソフトを使ってキャラクターや背景のモデルアセットを作成していきます。ポリゴンでモデルの立体的な形状を作り、その表面にテクスチャー(物体の素材を定義する画像)を割り当て、シェーディングにより素材の色や質感を表現していきます。
  • リグ作成
    モデルに対してリギング作業(モデルを動かす仕組みを設定すること)を行います。この工程では、表情、クロス(CGでの衣装のこと)、髪などを動かすシミュレーションも含まれます。
  • エフェクト作成
    世界観に則ったさまざまな視覚効果を生み出す工程です。魔法などの非現実的なものから、チリや煙や炎といったより現実的なシミュレーションまで幅広く作成します。

4.ライティング

モデルやエフェクトのアセット類に対する光の当て方や明るさを調整して各シーンの最終的な見え方を決定します。日の傾きや季節感などを表現し、映像作品全体のトーンを定めます。

5.レンダリング

ライティングを行いつつ、レンダラー(レンダリング専用のアプリケーション)を使用して複雑な計算を行い、画像データとして書き出します。使ったモデル数やPCのスペックなどにもよりますが、一度のレンダリングで10時間以上かかることもあります。

6.コンポジット

レンダリングされた画像群を合成して馴染ませます。一般的にキャラクター、背景、エフェクトなどは別々にレンダリングされるので、さまざまな条件の画像群を調整することで、同じ環境でレンダリングされたかのように、自然に見せることが大事です。

上記の工程を踏んで、映像作品を納品して完了です。

フローに起こすと分業や流れ作業のように見えますが、実際は「人からもらったデザインを形にする」時間よりも「自分自身で0から1を創り出す」ことが大切です。汎用的なシステムに乗るような量産体型を構築することも大事で、その上でさらに良い映像体験をサイゲームスのシネマティクス室からユーザーに届けるために、「(その選択に)どんな価値があるのか」「誰のための仕事なのか」という本質的な問いを常に突き詰めて制作していくことが求められます。

シネマティクス室のスタッフに
求められるマインドとスキル

ここからは、シネマティクス室のスタッフの求められるスキルやマインドについてご紹介します。

■自分で自身の創造性を引き出せる

フローでも紹介したように、シネマティクス室のスタッフには「クリエイティビティー(創造性)」が必要不可欠です。指示を受けて正しい答えを提示することも大切ですが、さらに踏み込んで自らのセンスを発揮し、世界観を構築したり発案したりすることが求められます。普段から物事を自分なりに観察し、問いを見つけ、深く追究することでアイディアを生み出す力を養っていくことが重要です。

■ものづくりに誠実に向き合う

これはシネマティクス室が一番に掲げるモットーです。「最高のコンテンツを作る」ことについて、とにかく誠実に向き合う。このくらい時間をかけたから、このくらい労力をかけたから、結果、良いコンテンツができるというわけではありません。「お客さまが満足するものを作る」ため、各々が今できる最大限の能力を発揮し、仕事に誠実に向き合うことが期待されます。

■「これで自分は勝負できる!」と思えるものがある

国内最高峰の映像スタジオを目指しているシネマティクス室では、スキルや創造性で強みのあるスタッフを大歓迎します。その力を発揮し、さらにもう一歩踏み込んで「ここから更にブラッシュアップする手段はないか?」と思えることが重要です。幅広く、かつ、深く掘り下げて考えたり行動したりできる人が集まれる場にできればと考えています。

シネマティクス室の仕事のやりがい

CG映像の制作はゲーム制作と比べて制限が少なく、PCに出来る限界を見極めながら、コンテンツのクオリティーと自己のクリエイティビティーの可能性を追求できるので、大変やりがいがあります。

また、各セクションの担当スタッフにそれぞれ異なる専門知識や技術が求められることから、精鋭のスタッフたちが携わった最終成果物を見ると、自分の期待や想像を超えたものが出来上がることがあり、そういったときに心からこの仕事のやりがいや喜びを感じることができます。

しかし自己のクリエイティビティ―を発揮すること、クオリティーを追求し続けることについては、全員が言われてパッとできるものではありません。この点はやりがいと達成感に直結する部分でもあるのでしっかりと取り組む必要があります。土台からチームを作る上でその力をどう高めていくかは、今後ずっと向き合う課題と挑戦でしょう。

シネマティクス室のキャリアパス

現在シネマティクス室には、主に映像業界やCM業界からCG映像制作に携わってきたバックボーンをもったスタッフや、さまざまなプロジェクト、チームをまとめていたスタッフが多く合流しています。

未経験者採用について、現在は第二新卒のスタッフが活躍中で、将来的に新卒としても採用を行う予定です。まだできたばかりの部署がゆえに、映像業界の最先端を走ってきた先輩スタッフから最新の技術やノウハウをすぐに受け取ることができる点は大きな魅力です。本人の意欲によりますが、未経験の場合は一般的に3~5年で主軸として仕事がこなせるようになるでしょう。

シネマティクス室を
目指す人へのアドバイス

現在シネマティクス室では、後発の映像スタジオとして、世界に向けてハイクオリティーな映像を届けるチームづくりを行っています。多様で優れたスキルを持ったスタッフが集まりつつあり、新たな挑戦をするための下地を作っています。

「最高のコンテンツを作る」というビジョンを掲げるサイゲームスには、世界でもトップクラスの機材や設備が充実しており、バックオフィスや情報システムなど最高のバックアップを得られる「最高の環境」が整っています。それはアーティストにとってうれしいことであり、自分の実力そのものと向き合って存分に力を発揮できることでもあります。

期待感を持って、新天地で自分の実力を最大限発揮したいと思った方は、ぜひ前向きにご応募を検討ください。そして採用の面接では、なぜ職業としてクリエイティブな道を選んだのか、そしてその道にどう向き合っていきたいのかについて、あなたの率直な想いを聞かせていただければうれしいです。


以上、シネマティクス室の仕事についての解説でした。
現在サイゲームスでは、一緒に働く仲間を募集しています。この記事で興味を持った方は、ぜひ一度こちらをチェックしてみてください。

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