デザイナー新卒研修紹介 最高のコンテンツを生み出すデザイナーへ成長するために

サイゲームスには毎年、イラストレーターや3DCGアーティスト、UIデザイナーなど、デザイナー職の新卒スタッフが入社します。新卒たちにプロの開発現場にいち早く慣れてもらうため、デザイナー部が新卒研修で実施している取り組みとは?今回は、2022年新卒デザイナー職に向けて実施した研修内容を例に紹介します。

配属後に向けた基礎固め
デザイナー職向け新卒研修の概要・ポイント

まず、サイゲームスの新卒研修は職種関係なく全員が参加する「全体研修」と、職種ごとに実施する「職種別研修」の大きく2つに分かれています。全体研修の期間は約2週間。その後の職種別研修はその年のカリキュラムや職種にもよりますが、約1~2か月間です。2022年のデザイナー職の場合は、職種別研修を約2か月間実施しました。
デザイナー職向けの新卒研修(以下、デザイナー新卒研修)は、下記のカリキュラムで実施しています。

  1. 座学(2日間)
  2. デザイナー職内のセクションごとの専門課題(1か月半)
  3. プレゼンテーション(1週間
  4. 振り返り+調整(1週間)

※新卒研修の全体概要については、下記の記事でご紹介しています。ぜひご覧ください。

デザイナー新卒研修の目的は、サイゲームスにおけるデザイナーの基本を配属前に理解してもらうこと。そのために研修を通して「グラフィック&デザイン能力(求められる品質の理解)」と「チームコミュニケーション能力」を鍛えます。
1つ目のグラフィック&デザイン能力は、基礎デッサン力はもちろん、魅せる表現力とそれを作るためのツールスキルです。研修では、座学や実制作を通して、サイゲームスが目指すクオリティーを理解した上で業務ができるようになるよう、課題に取り組みます。

2つ目のチームコミュニケーション能力は、相手の求めていることを正しく汲み取ることや、自分の考えを明確に伝えることなど、個人ではなくチームで仕事をする上でスムーズに業務を進められるようになる能力を指します。
大規模な開発や高クオリティーのゲーム開発では、業務が順を追って細分化されている場合があります。例えば、3DCGのキャラクターは2Dのキャラクターデザインができていないと作れません。また、UIのパーツをUIアニメーションとして動かすためには、アニメーションより前にUIのデザインが完成している必要があるといったように、少しずつタイミングをずらして進めなければ上手く回りません。つまり、ゲームを開発するためには、個人のスキルを磨くだけではなく各担当者が連携をして開発を進めていく必要があります。研修では、「作った作品に意見をもらい、フィードバックを作品に反映する」を繰り返すことでこのチームコミュニケーション能力を鍛えます。

デザイナーの基本を知るための期間
2022年度の研修の流れとその効果

ここからは、2022年新卒向けに実施した研修の流れを実際の制作物と合わせてご紹介します。

■研修の流れ①:座学

まず初めに、実制作をする前に把握してほしい知識の共有を行います。主な内容は大きく以下の3つです。

  1. 会社に所属するデザイナーについて
    学生のときの制作と、仕事として行う制作の違いについて紹介します。
  2. 制作進行管理について
    プロジェクトでは多数のデザイナーが連携して開発を進めています。その調整役を担う進行管理のスタッフが行っていること、デザイナーとの確認で気を付けていることなどを紹介し、チームでの制作時に意識すべき項目の理解を深めます。
  3. テクニカルアーティスト制作のツールについて
    サイゲームスでは、テクニカルアーティストがクリエイターからの要望を基に制作に便利なツールを多数開発しています。そのツールについて、新卒スタッフに直接説明をしながら設定を行い、実際に触ってもらう時間を設けています。

■研修の流れ②:専門課題

座学の後は、デザイナー職内の各担当分野に分かれ、専門課題を実施します。デザイナー新卒研修内で約1か月半かけて行う、メインの項目です。ここでは、実際の担当作業とその前後工程の業務について、制作をしながら学ぶ期間となっています。
専門課題研修では、新卒1人につき1名以上の「トレーナー」が付いて課題を進めます。
トレーナーは制作物を実践ベースのクオリティーに上げるため、監修者兼アドバイザーとして新卒スタッフをサポートします。チームとしての作業工程に慣れてもらうため、研修期間中も開発現場の経験に長けたスタッフが都度制作物に対してチェックを行い、クオリティーアップを図れる体制を設けています。

それでは、具体的な専門課題を、2Dイラストの課題をメインにいくつか紹介します。

【専門課題例:2Dイラスト】

2Dイラスト課題は大きく5つに分かれており、最初のキャラクターデザインから、最終的には作成したデータをUnityに反映させるまでを経験し、1つのゲームを作り上げていきます。

▲2Dイラストの専門課題。自分の描いたイラストがどのようにゲームに反映されているのか、イラスト以外のビジュアルについてどのような工夫をしているのかを理解できます

2Dイラスト制作者は、デザイナーとしては最初の工程を担当するため、現場に入り制作し始めると後工程を詳しく知る機会が減ってしまいます。そのため、現場配属前に自分の業務のポイントを理解しつつ、後工程の担当者たちがどのような取り組みをしているかを学べるような課題になっています。
一部の新卒にとっては、Unityの操作やUI制作など学生時代に経験のない工程もありますが、未経験でも不安なく進められるようにサポートしています。

そして先ほども記載したように、トレーナーが一人ひとりに付いてコミュニケーションを重ねることで、押さえるべきポイントやクオリティーを上げるコツを短時間で掴むことができます。

1. キャラクターデザイン

1つ目の課題であるキャラクターデザインのお題は、指定された設定を活かしたキャラクターの2面図と1枚絵を作成することでした。設定は、①守ってあげたい!可愛い妹、②ボーイッシュな獣人幼なじみ、③天真爛漫王道プリンセスです。
以下は、実際に新卒スタッフが制作した完成キャラクターです。

▲上記2つは同じテーマで制作したイラストです。絵柄は自由としているため、描き手によって雰囲気も異なります

最初は自分の絵柄で、指定された設定を活かしたキャラクターデザインにするためのモチーフや、ポーズの付け方に注目して学ぶところからスタートします。依頼内容に合わせて「どのようにキャラクターに要素を含ませるか」「魅力的になるポーズはどんなものか」「過剰にならないようにはどうするか」といったことを都度トレーナーに確認し、フィードバックを取り入れながら作っています。その結果、1人では気付けなかった細かい部分まで考慮できたキャラクターデザインになり、「意見を取り入れた」からこそのクオリティーに仕上がっています。

2~3. キャラクターのデフォルメ化

次に、制作したキャラクターをゲーム画面に反映させるために、統一したルールに沿ってデフォルメ化します。頭身の高いキャラクターの特徴をデフォルメで残すコツや同じ絵柄に揃えるためのポイントについて、トレーナーとのやり取りを経て学びます。研修では、『プリンセスコネクト!Re:Dive(以下、プリコネR)』のルールに沿ってデフォルメキャラクターの制作を行いました。

4. UIパーツ作成

2Dイラストレーターとして入社した新卒スタッフは、UIの制作が未経験の場合もあります。
この課題では、開発現場でUI制作を担当するスタッフがトレーナーにつき、イラストの描き方と異なる、UIパーツ制作のポイントについてアドバイスをします。

例えばこの制作物は、UI制作の経験がない新卒スタッフが作成したものですが、未経験であっても一定のクオリティーに仕上げることができています。

5. Unityへ反映

最後に、制作したデータをUnityに反映し、ゲームとして動かせるようにします。未経験の新卒スタッフ向けにマニュアルも準備しており、Unityを触ったことがなくてもゲーム画面に反映できるようにしています。
これで2Dイラストレーター向けの専門課題は完成です!

▲新卒が制作した完成データ。実機で実際に操作ができるようになっています。※研修で作成したデータです。実際のゲームとは関係ありません

以上がデザイナー新卒研修の基本的な流れです。
ここからは、一部にはなりますが、モバイル3DCGとUIの課題例もご紹介します。

【専門課題例:モバイル3DCG】

モバイル3DCGでは3DCGアーティスト内の各担当分野の基礎知識を得ながら、大まかな一連の制作工程を把握するための課題に取り組みます。一言で「3DCGアーティスト」といっても、実際の開発現場ではキャラクターモデラーやモーション、エフェクトなど業務ごとに担当が細分化されています。そのため、現場配属前の専門課題は、自身の担当業務の基本的な知識と合わせて、前後工程となる他の担当者たちの作業や注意すべき点を学べる内容になっています。

ここでは実際の成果物として、1のモデル部分をお見せします。
3DCGモデル課題は、デザイン画(3面図)を基にモデル作成~ポージングまでを作成することです。

こちらは学生時代モーションをメインに制作をしていた、キャラクターモデリングが専門ではない新卒スタッフの制作物です。こちらもトレーナーからのフィードバックが反映され、一定のクオリティーに仕上げられています。

こちらは別の新卒スタッフが制作したものです。学生時代にキャラクターモデルの制作をした経験があるので、ハイポリゴンのモデルまで作成しています。

【専門課題例:UIデザイン】

UIデザインは「サイゲームスのゲームをベースに音楽ゲームのUIを作成する」という課題でした。情報設計から始めてUIパーツ・アニメーションを制作し、仮想のゲームを作成することで、UI制作に必要な基本的な考え方を広く把握できる内容になっています。

こちらも実際に制作したものを紹介します。

まずは『プリコネR』の音楽ゲームを選択した新卒スタッフの成果物です。コンセプトを「癒やし」「優しさ」、モチーフは「光」として制作しています。

こちらはロゴの完成案(一番上)と途中検討の案(中央)です。中央の途中検討案を見ると、同じテキストでも色や使用するモチーフでかなり印象が変わるのがわかります。最終的にはオリジナルロゴのテイストを残しつつ、決めたテーマが伝わりやすいデザインになっています。

『ウマ娘 プリティーダービー』をベースに作成した新卒スタッフもいました。
オリジナルのロゴにリズムゲームらしさとテーマカラーを組み合わせ、最終的なロゴまで制作しています。
こちらも、見やすさを担保する色の使い方など、トレーナーとのやり取りで別の視点を入れることで、段々とブラッシュアップしていきました。

以上が、専門課題で制作した成果物の一部です。トレーナーが一人ひとりに付くことで、どの専門課題でも業務に必要なクオリティーの水準や、それを達成するためのテクニック、監修とのやり取りの方法を学ぶことができます。
専門課題の紹介の最後に、実際にトレーナーのフィードバックが入るビフォーアフターの一例も紹介します。

こちらは2Dイラスト課題のUI制作の例です。UI制作が未経験の新卒スタッフでしたが、経験者からもっと良くできる点は何かアドバイスをもらい反映させたものです。未経験でも相談を繰り返すことで、ここまでブラッシュアップできました。

こちらは同じく2Dイラストの課題の制作物で、「優しい」という設定があるキャラクターのイラストです。ビフォーとアフターで、まつ毛のラインや目線など、調整されているのがわかるでしょうか。ちょっとした調整でキャラクターの特徴や性格が伝わりやすくなった一例です。

このように、専門課題で「実際に作品に意見をもらい、フィードバックを反映する」ことを経験し、配属に備えてのスキルアップはもちろん、チームコミュニケーション能力を向上させることができます。

■研修の流れ③:プレゼンテーション

専門課題を終えた後は、プレゼンテーション(成果物発表会)を行います。デザイナー部の部長やマネージャーへこれまで制作した成果物および研修の感想を発表する場です。このプレゼンテーションの一番の狙いは「報告・発表を経験する」ことです。加えて、発表のためにさまざまな気付きを整理して言語化していくことで、改めて研修で得たものの振り返りができる機会にもなっています。

■研修の流れ④:振り返り+調整

最後は振り返りと調整期間です。1週間程度、プレゼンテーション時にもらったフィードバックや、期間中にやりきれなかった課題に対して、取り組む期間を設けています。その後それぞれのプロジェクトへ配属となり、研修は終了です。

実際に受講した新卒の声
配属後の業務が円滑に

研修を終えた新卒スタッフたちは、各プロジェクトに配属されます。プロジェクトからは「この研修があることで配属後も新卒スタッフとのやり取りがスムーズで、業務が止まることはなく円滑に進められている」という声があり、新卒本人からも研修数か月後に「改めて振り返って、研修の内容が現場で活かせていると感じる」といった感想がありました。

2022年デザイナー新卒スタッフへのアンケートの結果では、研修で立てた「現場配属前に把握してほしいデザイナー知識の習得」という目標に対し、全員が「理解できた」「満足した」と回答しています。学びが多く充実した期間だったということで、「今度は自分がトレーナーになり、新卒をサポートできるように成長したい」といった感想を記載する新卒スタッフもいました。

このように、デザイナー新卒研修は新卒を受け入れる開発現場にも新卒自身にも良い効果を与えています。

デザイナー新卒研修に込めた想い
研修担当からのメッセージ

最後にデザイナー新卒研修の運営担当より、研修へ込めた想いや、これからデザイナーとしての就職を考えている学生のみなさんに向けてのお話を聞きました。

研修が今のカリキュラムになった経緯を教えてください。

デザイナー新卒研修は毎年実施していますが、カリキュラムはデザイナー部内の育成方針や各セクションから募ったアンケートの意見に沿って、毎年ブラッシュアップしています。
今のカリキュラムに至るまでは、デザイナー新卒スタッフ共通の研修であったり、反対に各担当分野のみの研修であったりと、さまざまな形式を実施、検討してきました。
現状のかたちになったのは、デザイナー全員に把握してほしいことも、担当分野の専門知識も両方学んでほしいという意図でカリキュラムを組んだ結果です。現在のカリキュラムが一旦の完成形ではありますが、新卒スタッフの活躍に繋げられるよう、時代や状況に合わせた内容を日々模索していく必要があると考えています。

研修の運営体制について教えてください。

サイゲームスのデザイナー部には、「デザイナー推進部」というサポートを専門にする部署があります。事務的な手続きの窓口を担ったり、研修・カンファレンスなどイベントの企画をしたりと、デザイナーが制作以外に手を煩わせることなくポジティブに働ける環境づくりをしています。新卒研修もこの部署が中心に運営をしており、サポート専門の部署だからこそ厚いフォロー体制を敷くことができています。

新卒スタッフには研修をどんな気持ちで受けてほしいですか?

ただ課題をこなすだけでなく、全ての工程で理由を考えながら取り組んでほしいです。また、研修期間は実業務に入る前の練習期間なので、新卒スタッフには「たくさん失敗してほしい」と伝えています。「失敗しないようにやろう」ではなく、「失敗してもいいから、そこから経験を得る」ことを大切にしてほしいですね。

クリエイティブ職での就職を考える学生に向けてメッセージをお願いします。

クリエイティブ職は、世の中で求められていることを常に学び続け、日々成長しなければならない仕事です。大変だと感じることもあると思いますが、成長し続けることはサイゲームスの企業文化でもあります。アドバイスをくれる先輩、意見を伝え合える同期もおり、全体の成長意欲が高いため、チームで成長したい人には向いている会社だと思っています。新卒研修はもちろんですが、それ以外の研修や勉強会などの場も設けています。「成長し続けるクリエイター」になりたい方をぜひお待ちしています!


以上、デザイナー新卒研修のご紹介でした。サイゲームスは一緒に働く仲間を募集しております。ゲームづくりに熱い気持ちを持つ学生のみなさまのエントリーをお待ちしております!

サイゲームス新卒採用サイト

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