【マネージャーの思考】イラストチームの組織づくり 採用・育成・プロジェクトフォロー部門で約300名をフォローアップ

「マネージャーの思考」は、サイゲームスの各部署のマネージャーから、組織づくりの考え方や今後の展望を語ってもらう連載です。今回は採用、育成、フォローの専門部門を作り、各プロジェクトに配属されるイラストレーター300名以上を束ねる「イラストチーム」のマネージャー・アヤミにインタビューを実施。部門発足のきっかけから、高クオリティーのイラストを制作し続けるために行っている施策、そして今後の発展のためにどんな方に来てほしいかなどを語ります。

イラストチーム マネージャーアヤミ
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高校・大学で美術を専攻。大学卒業後、1年間フリーランスとしてイラストの仕事を経験し、2014年に友人の紹介でサイゲームスに合流。『プリンセスコネクト!』の彩色、『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ(配信元:バンダイナムコエンターテインメント)』の彩色を担当しながら、イラストリーダー、イラストディレクター、イラストチームサブマネージャーを兼務した。2022年4月よりイラストチームのマネージャーに就任。

組織を育てたい
チームで仕事をする喜びを知って

最初に、アヤミさんのこれまでのキャリアについて教えてください。

子どもの頃からイラストを描くのが好きで、昔から漠然と「イラストを仕事にしたい」と思っていました。そこから美術を専攻に高校・大学を卒業して、1年間はフリーターをしていましたね。フリーター生活の中で上京をして、うどん屋でアルバイトしながらフリーランスとしてイラストのお仕事を少しずつ受け持っていたんです。当時はキャラクターイラストのお仕事もありましたが、大半はアイコンなどの素材作成をやっていました。
そんなとき、サイゲームスで働いていた旧友と再会しまして。サイゲームスを紹介してもらって、2014年に合流しました。

サイゲームスに入社を決めた理由を教えてください。

何より、会社に入ってチーム制作というものがしたかったというのが大きいです。元々学生の頃から学祭の実行委員をやったりして、みんなで何かを作るということは好きでしたが、フリーランスの経験を経てチームで仕事がしたいなと思うようになって。

フリーランスのときは自宅で1人でイラストを描く仕事だったんですが、数回だけオフィスで働いたことがありました。それがすっごく楽しくて。自席の近くでプランナーやディレクターの会話が聞こえたり、近くにいるデザイナーにリアルタイムでイラストにフィードバックをもらいながら納品まで持っていったりと、貴重な経験ができました。そのときに、同じ空間で同じ目標を持ってチームで仕事をするというのがすごく楽しいと思ったんです。

そんなことを考えているときにサイゲームスの面接を受けました。オフィス案内でイラストレーターが集まるエリアなどを見せてもらって、たくさんの人たちが1つの目標やコンテンツに向き合って仕事をしていて、憧れのイラストレーターさんもたくさんいて……「この人たちと最高のコンテンツを作るのは、絶対に楽しい!」と思ったのが決め手になりました。

サイゲームスではどんなタイトルに関わったのでしょうか。

最初は『プリンセスコネクト!』に合流して、キャラクターの立ち絵やカードイラストの彩色作業をやっていました。その後に『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ(配信元:バンダイナムコエンターテインメント)』に異動して、そこでも彩色を担当しました。その中でイラストリーダー、イラストディレクター、イラストチームのサブマネージャーというポジションを経験して、2022年の4月からマネージャーに就任しました。

合流後から割と早い段階でイラストリーダー、プロジェクトリーダーになっていると思いますが、これはどういった経緯があったのでしょうか?

もちろん最初からリーダーがやりたいと思って合流した訳ではなかったんですが、2~3年ぐらい経って他の人に絵を教えたり監修をしたりすることになった際に、より効率的な作業フローや、より良いフィードバックの仕方、スタッフのケアを考えたりと、イラストチームの体制やシステムをより良くしたいという考えに至ったんです。そうなってきたら自然と、「アヤミさんがそういう考えを持っているならチームリーダーをやってみないか」と任せていただいて、リーダー、マネジメントの方向にキャリアを進めていくことになりました。

300名強を束ねるイラストチーム
育成・採用・プロジェクトフォローの専門機関を設立

イラストチームはサイゲームスの創立初期から存在していますよね。今何人ほど在籍しているのですか?

現在、イラストチームは300名を超えるスタッフが在籍しています。少し変わっているのですが、プロジェクトごとの採用ではなく、セクションとしての採用にし、セクションから各プロジェクトに人員をアサインするかたちをとっていますね。これはセクションでマネジメントすることで、プロジェクトの入れ替えを可能にし、個人の要望に沿いやすく、新たなことにもチャレンジしやすい環境にするためです。
プロジェクトを異動すると1つの絵柄だけでなく別の絵柄も習得することができますし、既存タイトルの運用に関わる作業に加え、新規開発の経験を積むこともできます。ここを柔軟にすることによって、個人的な悩みやキャリア、技術の相談に対応しやすい体制にしています。

最近設立された部門制はどういった経緯で設立されたのでしょうか?

部門制が設立されたのは2021年10月で、そこから1年強が経ちました。当時、「最高のコンテンツを作る」「クオリティーを追求する」というイラストチームのビジョンに対して、イラストの技術を追求するだけではなく、今後を見据えて組織としての強化を図る必要があるという話が上がったのが設立の背景です。

現在はイラストチームの中に、育成・採用・プロジェクトフォローと大きく3つの部門があります。部門ができる以前にも、自然に「育成が得意だな」「採用が強いな」など強みを持ったスタッフはいましたが、プロジェクト業務と兼任で行っている人がほとんどでした。そこからよりチームとして明確に強化していくため、部門制が出来上がりました。

●採用部門
人事と連携して採用を専門として動く部門。
新卒、中途に関わらず、ポートフォリオのチェックから入り、面接、採用などを行う。インターンの対応やセミナーの資料作りも行っている他、学校訪問も積極的に行い学生のポートフォリオ添削なども担当している。

●育成部門
イラストチーム全体としてカリキュラムを組み、OJTとは別の角度から育成に取り組む部門。
期間を決めて集中的にスキルを身に付けるためのフォローアップや、各分野のトップクリエイターから指導が受けられる講座などがある。スキルトライアルを運営する「技術育成」とイラストチーム強化講座や座談会の運営管理を行う「育成企画」から構成されている。

●プロジェクトフォロー部門
各プロジェクトのイラストリーダーやアートディレクター・イラストディレクターと連携し、フォローを行う部門。
例えば「人手が足りなくて困っている」とあれば採用に繋いだり、「スキルが足りなくて困っている」などは育成に繋いだり、スタッフ個人の悩みがあれば相談に乗ったりとイラストチーム内の困りごとを解決することがメインの業務となる。また発足したばかりの広報企画は、イラストチーム向けの情報マガジンの制作を担当。

それぞれ実際にどんな施策を行っているのか、できるだけ具体的にお教えください。

具体的には各部門で以下のような施策を行っています。

■育成部門

・スキルトライアル
スキルを磨いてほしいスタッフなどに、3か月などの短期間で必要なスキルを集中的に伸ばす目的で受けてもらう制度です。他にも、ポートフォリオを見て伸びしろがあるなと思った中途合流者もプロジェクト配属前にここに入ってもらうことがあります。育成前提の採用ができるという意味では、採用手法としてもかなり効果的ですね。

・イラストチーム強化講座
社内にいる専門分野を極めたイラストレーターを講師に据えて技術や考え方を教えています。自由に受講したい講座を選べるので、自分に必要なスキルを伸ばしていくことが可能です。人気の講座の一例を記載すると、下記のようなものがありますね。

【イラストの考え方とトライ&エラー-初回編‐】
コンセプトに沿ってデザインをしていく課題が出題され、絵を描き進めていくためのノウハウについて学ぶ講座。感覚的にデザインを行うのではなく、ロジカルに進行できるようベテランの講師が対話しながらガイドしてくれるのもこの講座の大きな魅力となっている。

【美術解剖学-入門編-】
キャラクターを描くには、人体の正しいデッサンとその構造の理解が必要になる。本講座では、人体を描く上でのポイントや描きどころ、また体の各部位に関して学ぶ。その上でキャラクターを描く課題が出題され、講師からフィードバックを受けることができる。

■採用部門

未経験者にも積極的にアプローチしたいという想いから、デザイナー部の採用企画室主導でインターンや社外講座を実施しています。
昨年8月末には2日間で「デジタル初心者向けイラスト講座」を開催しました。普段アナログで絵を描いているけれどデジタルツールは使ったことがないという学生を対象とした初心者向け講座です。最初はキャラクターイラスト講座で『ウマ娘』を題材に着彩を教えるという内容でした。次回は背景についての講座を予定しています。

■プロジェクトフォロー部門

「広報企画」が昨年10月から始めたばかりの施策です。イラストレーターのためになり、チームが活気付くような情報を発信したいという想いからスタートしました。今後、チーム内スタッフの活躍や、注目してほしいコンテンツ、息抜きになるようなお話などを掲載する予定です。チーム全体でも懇親会やゲーム会などを企画したいと考えているので、一緒に運用してくれる仲間を募るところからやっていきたいと思っています。

サイゲームスのコンテンツを支えるイラストチーム
組織づくりで大切にしていること

現在、イラストチームにはどのようなメンバーが在籍しているのですか?

経歴は本当にさまざまですね。ゲーム・アニメ業界出身の方や、フリーランスから転向した人、元警察官、元電化製品販売員まで、本当に多種多様な経歴のスタッフがいます。しかし、やはりみなさん趣味でイラストは描いていて、いつか仕事にしたいと思っていた人が集まっています。

元警察官!本当にさまざまなんですね。ということは、採用は経験重視というわけではないのでしょうか?

もちろん技術面も重視しています。ただし、結果的に多種多様なスタッフが集まっているのは、イラストチームがコミュニケーションを重視した組織づくりを目指しているからですね。例えば、前職が教師で人に教える力が秀でている人や、飲食店員や販売員で人と接することが得意な人など、そういった方はチーム制作する上で大事なスキルが身に付いていると思うので積極的に採用したいなと考えています。人柄も大事なポイントですね。

組織づくりや育成において大事にしていることはありますか?

自分がマネージャーになって、組織というのは「人あってこそ」だなと非常に強く感じています。例えば私が一人で良い組織を作ろうと思って座組や枠組みを考えても、そこに適した人材がいないと組織というものは動かないと思っていて。でも、良い人がいればそこを起点に組織を組み立てて動かしていくこともできるんですよね。それをマネージャーになってから何度も痛感しました。

良い組織を作るためには良い人材を増やす必要があります。そこで「良い人材って何なのか?」を考えると、私は「チーム・サイゲームスとして一緒に最高のコンテンツを作ることができる仲間」だと思いました。もちろんイラストレーターは自分とも向き合う仕事ですが、それを「チームの一員として」やっているという気持ちは持っていてほしいです。各々が長所や専門分野を活かして補い合ったり高め合ったりして、できるものを増やしていく、より良いものができる。そういう人を増やして良い組織にしたいと思っています。

イラストチームを一言でいうと?

この質問、すごく悩んで他のスタッフと話し合いました(笑)。四字熟語で、「竜吟虎嘯(りょうぎんこしょう)」という言葉で言い表したいと思います。竜が唸れば雲が湧き起こり、虎が吠えれば風が生まれる……という言葉で、同じ考えや心をもった者は、相手の言動に気持ちが通じ合い、応答し合うという意味です。イラストチームは竜や虎とも言えるほど強いプロフェッショナルが集まっています。そういう人たちだからこそ、「良いものにしていこう」「最高のクオリティーにしよう」などの気持ちが通じ合い、どんどん高め合っていくことができる組織だと思っています。

チームの中で強みを活かしたい方求む!
相乗効果で最高のコンテンツを

イラストチームの展望を教えてください。

技術の発展と組織の強化です。昨今、クリエイティブの技術が飛躍的に進化していますよね。そこに対してサイゲームスとしても遅れは取れないですし、新しい技術や手法を取り入れて推進していき、今後10年を見据えてイラストチームとしてできることの幅を広げていきたいと思っています。

あとは各部門が専門性を追求し、相乗効果を出せる組織にしたいですね。そのためには、手厚いサポートが充実している環境下でも、何でも素直に貪欲に取り組める人、成長したいという前向きな気持ちをもっている人が必要と考えています。チームのサポートを利用してもらって、イラストレーター一人ひとりも最大のパフォーマンスが発揮できるという良いサイクルを作っていきたいですね。

イラストチームにどのような人に来て欲しいですか?

もちろん基礎的な技術力は身に付けていてほしいなと思いますが、これからは3Dのツールが触れる、デザインの三面図が描けるなど、マルチなスキルを持った方も積極的に採用していく予定です。そしてやはり一番大事なのは、「チーム制作をしたい」と思う気持ちを持ってる方です。サイゲームスのコンテンツが好きで、みんなで一緒に作り上げるという想いを持って、チームの中で自分の強みをどのように発揮できるかを考える方に来ていただきたいですね。

最後に、サイゲームスの好きなところを教えてください。

みんなが自然と最高のものを作ろうという考えを持っているところです。「これをやりたいな」と言ったときに、「じゃあこうするのはどう?」とアイディアを広げる人がいたり、「ここが心配だよね」と懸念を出してくれる人がいたり、「このスケジュールで」と具体的に目標を立てて進めてくれる人がいます。そういうスタッフが自然と出てくるんです。「やるからには絶対良いものを作ろう!」という考えがみんな身に付いているので、みんなで意見を出し合って、楽しんでクオリティーの高いものがどんどん出来上がっていくのがサイゲームスの好きなところです。

以上、イラストチームのマネージャーのインタビューをお届けしました。

現在サイゲームスでは、一緒に働く仲間を募集しています。この記事で興味を持った方は、ぜひ一度こちらをチェックしてみてください。

イラストレーターの募集要項

編集後記「マネージャーの横顔」

休日はどんなことをしていますか?

昨年からミニチュアシュナウザーを飼い始めて、休日は遠くまで散歩に出かけるのが趣味です。家の近くに川が流れているので、その川沿いを良く歩いています。昔から運動不足から来る腰痛持ちだったんですが、犬の散歩を始めてからぴたりと止みました……!(笑)散歩の道中で木や花を見て季節を感じることも多いので、気持ちのリフレッシュにぴったりだなと思っています。