【マネージャーの思考】インタラクションデザイナーチームの組織づくり UIとアニメーションの異なるデザイナーを束ねる

「マネージャーの思考」は、サイゲームスの各部署のマネージャーから、組織づくりの考え方や今後の展望を語ってもらう連載です。今回は、UIデザイナーとアニメーションデザイナーを束ねる「インタラクションデザイナーチーム」のマネージャー・タツヤにインタビューを実施。当初は別々だったUIとアニメーション部門が統合した経緯や、デザイナーとして成長するために大切な姿勢などを語ります。

インタラクションデザイナーチーム マネージャータツヤ
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大学卒業後、劇団やWeb制作会社、ゲーム会社を経て2013年にサイゲームスへ合流。複数のゲームタイトルのアニメーション制作を担った後、現在はインタラクションデザイナーチームのマネージャーとして、UIデザイナーとアニメーションデザイナーの連携強化や人材育成に取り組む。

「ハイレベルな環境に身を置きたい」
劇団員からアニメーションデザイナーに転身

最初に、これまでのキャリアについて教えてください。

大学は芸術学部の文芸学科に通っていました。大学4年生のときに演劇を始めて、卒業後も10年くらい劇団員をやっていました。その間にWeb制作会社とご縁があって、Adobe Flash(以下、Flash)を使ったアニメーションを作るようになりました。その会社が劇団も並行して続けていいということだったので、忙しいときは劇場の楽屋でデザインのデータをアップロードして、出番になったら舞台に上がるという生活でしたね(笑)。

Webの仕事はサイト内のミニゲームを制作することもあって、それが今の仕事にも繋がっているようなところがあります。5年くらいWebの経験を積んだ後にソーシャルゲーム会社に移って、2013年からサイゲームスに合流しました。

Webの仕事において文芸学科で劇団員というご経歴の方は珍しいように思います。Flashを使ったアニメーション制作はどのように学んだのでしょうか。

独学ですね。知り合いから「Web制作会社がFlashを使える人を募集している」と紹介されました。当時はFlashにあまり詳しくなかったのですが……2か月間、本を読んで猛勉強したらなんとか入社できました。劇団が活動休止するタイミングを区切りにして、ゲーム会社に転職しました。元々ゲームをいっぱいやっていて好きだったんです。

その後、サイゲームスに入社を決めた理由を教えてください。

合流前からサイゲームスタイトルのクオリティーの高さを感じていたからです。自分も競合他社でアニメーションを作る仕事をしていましたが、実際に作ろうとしても真似できないレベルだったんですよね。高い技術を持った人たちが精魂を込めてゲームを作っている様子がうかがえて、自分もそんな環境に身を置きたいと思いました。

UIデザイナーとアニメーションデザイナーの連携強化
インタラクションデザイナーチームを設立

「インタラクションデザイナーチーム」(以下、インデザチーム)とは、どのような部署でしょうか。

主にゲームのUIと2Dアニメーション制作、一部3D演出のコンテ制作を担う部署です。元々は職種ごとに二つの部署に分かれていましたが、2018年からインデザチームとして一つの部署になりました。

どんな方々が在籍していますか?

前職もゲーム業界だったメンバーが多いのですが、イラストレーターやWebデザイナー、TVアニメの原画や演出を担当していたメンバーなど多種多様です。2023年3月現在で約180名が在籍していて、3分の2がアニメーションデザイナーです。男女比は大体5:5で、年齢層は20~30代が全体の約75%を占めています。

なぜ二つの部署をインデザチームに統合することになったのですか?

一番大きな理由は、よりハイクオリティーなUIアニメーション、画面演出を作るためです。サイゲームスはブラウザゲームからスタートしているので、当初はUIに複雑なアニメーションは付かない前提の組織体制になっていたんですよね。でも、時代の流れとともにネイティブアプリ(※)が出てきて、UIや画面の演出についてもリッチなアニメーションが求められるようになってきました。そういったニーズに対応するにはUIデザイナーとアニメーションデザイナーがより連携を深めていくことが必要不可欠なので、インデザチームとして一つの部署にまとめることになりました。

※ネイティブアプリ……スマホやPCにアプリケーションストア(Google Play、App Storeなど)を介してインストールして使用するアプリのこと

どのような組織体制になっているのか教えてください。

大きくは「UIデザイナー」と「アニメーションデザイナー」のチームに分かれています。その中でさらに「ゲームタイトルに所属しているスタッフ」と「所属していないスタッフ」に分かれた体制を取っています。ゲームタイトルに所属していないスタッフは、職種ごとにUI本部とアニメーションデザイナー本部に所属します。ゲームタイトルを横断した仕事をするベテランや、プロジェクト業務を行いながら育成カリキュラムを受ける新人などが在籍しています。

●UIデザイナー
ゲームのUIを設計・デザインする職種。最適なUIを実現し、ゲームの世界への没入感を高め、コンテンツをフルに楽しんでもらうことを追求しています。

●アニメーションデザイナー
ゲーム内の2Dキャラクターのモーション、エフェクト、画面演出やUIアニメーションなどを制作する職種。「ゲームの理解を助ける」「ストレスを与えない」「ゲームを彩る・没入感を高める」役割を重視しています。

なぜそれぞれの職種に「本部」を設けた体制になっているのかといいますと、デザイナーとしての中長期的なキャリアを形成しやすくするためです。必ずしも全員に当てはまるケースではないのですが、ある一つのタイトルに継続的に携わり熟練度の上がったデザイナーが、他のタイトルなどの新しい環境での活躍を想像しにくくなってしまう場合があります。もちろん一つのプロジェクトに専念することで得られる成長は絶大で、大きく成長していくメンバーをたくさん見てきました。しかし、中長期的な視点で見たときに、様々な経験を積みさらに幅広く成長していける環境も整えていく必要があると考えています。それを実現できるような機会を創出することが狙いです。

特定のプロジェクトに所属しながら知見を得たり技術を高めたりしつつ、デザイナーとして成長するためには広い視野を持つことも必要なのですね。UIデザイナーとアニメーションデザイナーは職種が違いますが、インデザチーム全体として大切にしていることはなんでしょうか。

「自分の軸となるスキルを持ちましょう」と伝え続けることと、それを一人ひとりが実現できるようサポートを行うことです。UIデザイナー、アニメーションデザイナーは共に業務の幅が広いのですが、その中でこれという武器がないと活躍しづらい難しさがあります。自分はこのスキルでちゃんと貢献できる!という自信があると仕事を楽しく感じられると思っています。やっぱり、本人が自信を持って楽しみながら仕事をすることで、高いパフォーマンスが発揮されると思うんですよね。

それを実現するために「まず自分の得意分野を見つけ、そのスキルの軸をしっかり持つ」ことが大事になってくるんです。そして何かスキルの軸ができたら、その後に「他のスキルの軸も増やしていきましょう」とアドバイスしています。 例えばキャラモーションを担当するアニメーションデザイナーであれば、まず「バトルのデフォルメキャラクターモーションが得意!」といった軸を構築し、その後頭身の高いキャラクターのモーション、エフェクト、絵コンテの制作の軸を増やしていくことです。

軸を増やすことは時代に適応するためにも必要と感じています。というのも、スマホゲーム業界の技術がかなり速い流れで進化しているので、新しい技術が出てきたときに活躍できなくなるリスクが常に、誰にでもあるんですよね。「普段からスキルを磨き新しいスキルを増やしていくことによって、時代に適応して活躍し続けられる人材に成長してほしい」という思いを日常的に伝えるようにしています。

まずは一つのスキルを磨いて新しいスキルを増やしていくという姿勢は、タツヤさん自身がアニメーション制作者として大事にしてきたことのようにも感じます。

そうですね。元々やっていたWebサイトのアニメーション制作はFlashで演出を作っており、ずっとFlashを使い続けるのかなと思っていたのですが、iPadに対応した技術が求められて、Flashのスキルを活かせる場所が大きく減ったんですよ……。だから「このツールを使えれば、この制作ができればずっと安泰」なんていうものはないんだなと、そのときに実感しました。

その後組織づくりに携われるようになってからは、フットワークを軽く、新しいことに挑戦できる組織にしておかないといけないなと感じていました。ゲームづくりへの情熱を持っていたり、チームのムードメーカーだったりと良い面を持っているメンバーが、技術的な変化に対応できずに活躍しづらくなることは、すごくもったいないことだと思う部分があって……。変化に適応し続ける組織でありたいというのは、実感としてすごくありますね。

ゲーム業界全体でどんどん良いものが世に出てきている昨今、サイゲームスは「最高のコンテンツを作る会社」を掲げているので、「時代が移り変わっても最高のコンテンツを届け続けるために、それぞれが新しい技術や表現を身に付けるのが大事だよね」と現場にいるスタッフと常々話しています。

「UIとアニメーションの二刀流を育てたい」
インデザチームの展望

あらためて、インデザチームを一言でいうと、どんな言葉になりますか?

「マルチスキル・マルチロール」ですね。
マルチスキルについて、UIデザイナーはグラフィック制作からUI設計、エンジンへの実装まで、アニメーションデザイナーはキャラクターに付けるアニメやエフェクトから3D演出のコンテ制作までと、かなりマルチな業務範囲をカバーしています。それぞれ専門性を活かして業務にあたるため、1人で全部を網羅する必要はありません。専門性の高いスキルを持つ人、幅広いスキルを活かした動きができる人のいずれも活躍できる組織になっています。

マルチロールについては、UIデザイナーもアニメーションデザイナーも、プランナーやエンジニアとのコミュニケーションがとても大事になってきます。打ち合わせのときはゲームを作っていくための良き相談役として、自席に戻れば手を動かす制作者として、状況に応じて色々な役割(ロール)を持つところが特徴です。

チームの雰囲気でいうと、ビールの「ハーフアンドハーフ」ですかね。お互いの味をケンカさせずに相乗効果が生まれているといいますか(笑)。UIデザイナーの良いところをアニメーションデザイナーが参考にしたり、またその逆もあったりして、異なる職種ではありますがお互いをリスペクトしてゲーム開発に取り組んでいます。

UI本部とアニメーションデザイナー本部の人材育成について、カリキュラムが整っているそうですね。

はい。インデザチームの発足から約5年が経ち、育成のカリキュラムが一通りできているといっていい状態になりました。最近は、中途で若手の方を採用することも増えてきました。というのも、以前はすぐにプロジェクトに配属できるような即戦力の採用がほとんどだったのですが、人材育成の体制を本部で整えたことによって、「育成枠」として若手の方も採用できるようになったんです。

その結果、デザイナーとしてのセンスやポテンシャルにあふれる若手の方と一緒にお仕事をできることが増えてきました。その方が経験を積みプロジェクトに合流するなど、チームにとって良い効果が生まれています。

若手の人材育成の他にも、チーム全体で知見を共有する「係制度」があるそうですね。これについて教えてください。

係制度は、インデザチームの業務と関連の深い技術やツールについて、半年にわたって有志のメンバーに調査を行ってもらうというものです。例えば、UIでいうとロゴや画面設計の作り方、アニメーションでいうとエフェクトの付け方やAdobe After Effectsの使い方など、インデザチームとして知識を深めていきたい項目を設定して、調査したいメンバーに立候補してもらいます。

それから、調査メンバーが得た知見を社内の共有ページや定例ミーティングで発表してもらい、チーム全体での知的な財産づくりに役立てているんです。誰かにとっては当たり前の情報でも、誰かにとっては当たり前じゃないことがあるので、係制度はこれからも続けていきたいですね。

インデザチームには、どのような人にきてほしいですか?

ゲームが好き、クオリティーに妥協しない、チームで動くのが好き……などが浮かびますが、特に大事なのはポジティブな人ですね。前向きに意気投合できれば大体の課題はなんとかなると思っています。

制作、管理、監修など、幅広いポジションの方にも来ていただきたいので、今興味があることに応じた参画の仕方も話し合えればと思います。様々な職種、幅広い年代のメンバーを迎えてきた実績を元に、しっかりバックアップしていきます。また、今はUIとアニメーション、それぞれの専門家がいるのですが、「どちらもできます!」というような“二刀流”のデザイナーを生み出していけると、チームとしてもう一段階発展していけると思っています。

UIとアニメの二刀流ですね。もし両方できるスタッフが現れた場合、インデザチーム内のポジションはどのようになるのでしょうか。

UIデザイナーとアニメーションデザイナーの真ん中にいて、両方の良さを引き出すような役割を担ってもらえたらと思います。両方ができるとUIデザインをより活かすようなアニメーションを作れたり、その逆も然りだったりと、制作物のクオリティーを上げていける体制を狙います。

最後にサイゲームスの好きなところを教えてください。

「ユーザーのみなさんに最高のコンテンツを届けたい」という熱量が高いところです。色々な価値観を持つメンバーが集まっており、ときに意見が衝突することもあります。でも何がユーザーのみなさんにとって一番良いのかという視点で話を整理していくと、自然と話がまとまっていくんですよね。そういうところが好きです。また、お互いの職種へのリスペクトを持つべきという意識があり、結束力がある点も好きです。

以上、インデザチーム・マネージャーのインタビューをお届けしました。

サイゲームスでは「Cygames Online Meetup」のエントリーを受け付けている他、一緒に働く仲間をお待ちしております。興味を持っていただいた方は、ぜひ下記のリンクをチェックしてください。

Cygames Online Meetup インタラクションデザイナーチームの募集要項

編集後記「マネージャーの横顔」

休日はどんなことをしていますか?

最近ハマっているのは料理ですね。元々は外食が好きだったのですが、ゆっくり家で料理を作り始めた結果、自炊も大好きになりました。得意料理はボロネーゼです。ただ、外食も自炊も好きなので、なかなか体重が減らないというのが悩みですね……。