大阪モーションキャプチャースタジオ 社内向け3Dモーション素材提供サービス「モーションライブラリー」で開発効率アップ!

サイゲームスは「最高のコンテンツを作る会社」を目指し、開発設備への積極的な投資を行っています。
このたび、社内設備特集Vol.5でもご紹介した「大阪モーションキャプチャースタジオ」で、社内向けの3Dモーション素材提供サービス「モーションライブラリー」の運用を開始しました。
このサービスは主にゲームのプロトタイプ制作時の利用を想定し、開発効率の向上を目指すものです。

本記事では、「モーションライブラリー」の概要をご紹介。あわせて、運用の狙いや活用場面について、担当スタッフに話を聞きました。

モーションライブラリーとは?

モーションキャプチャースタジオで収録した3Dモーションを、サイゲームスのスタッフ向けに提供するサービスです。
提供されるモーションデータはコンテンツ開発にも利用でき、「走る」「待機する」などの汎用性の高いモーションが約1500点(2025年7月時点)アップされています。

プロトタイプ制作や資料作成に
モーションライブラリーの活用方法

次に、モーションライブラリーのデータがどのように活用されているかをご紹介します。

1. プロトタイプ制作における仮モーション

プロトタイプとは、ゲーム開発で大まかなイメージを掴むために初期段階で作成される試作品のことです。
通常、プロトタイプの制作時にはキャラクターの仮モーションを制作して、イメージに合っているかを検証します。しかし、実装して確認してみると当初のイメージと違うことも。そのたびに仮モーションを作成し直すと、大きな手間と時間がかかってしまいます。

モーションライブラリーには約1500点の豊富な種類のモーションをアップしており、それらを使用することで仮モーション制作にかかるコストを軽減し、開発効率の向上に寄与しています。

▲通行人や、立ち話をする人々など幅広いモーションを用意しています

2. 背景のにぎやかしモーション

モーションライブラリーには、「酒場で歓談している様子」や「街中でひそひそ話をしている様子」など、背景のにぎやかしにできるモーションが多数あります。

これらのデータを活用すれば、本当に見せたいキャラクターのモーションや主要シーンに、より多くの制作コストを割くことが可能になります。
「人同士が話している様子」や「複数人で歩いている様子」といった定番の群衆モーションから、「戦場での殺陣」や「闘技場の観客」「クラブでのダンスモーション」など、ややニッチなものまで多種多様なモーションが用意されているため、幅広いシーンに利用できるのが特徴です。

▲多数の兵士による合戦をイメージしたシチュエーションパック
▲酒場で食事や会話をイメージしたシチュエーションパック

3. 資料作成

ライブラリーのモーションはゲーム開発だけでなく、資料作成の場面でも活用できます。
例えば、イラストを制作する際のポーズ資料に利用されています。3Dモーション制作依頼時の依頼書にモーションを活用すれば、言葉だけでは伝わりにくいニュアンスを具体的に示すことが可能です。

上記以外にも、移動動作のモーションセットが用意されており、 接地の自動判定をはじめとしたAIによる解析に利用されています。
また、社内コンテスト「Cygames ゲームコンテスト 2024」 でも、これらの素材が幅広く活用されました。

モーションライブラリー立ち上げの経緯や
こだわりポイントをインタビュー

ここからは立ち上げの経緯やこだわりポイントについて、モーションライブラリーの運用スタッフにインタビューします。

モーションライブラリー立ち上げのきっかけを教えてください。

効率良くゲーム開発を進めたいと考えていました。そこで、歩きやジャンプなど「使用頻度の高いモーションをあらかじめ社内で自由に使えるデータとして用意できないか?」というアイディアが生まれたのがきっかけです。

モーション素材は外部から購入可能ですが、コストや著作権などが障壁になります。
一方、モーションライブラリーは素材を自社で撮影・管理しているため、版権リスクを気にせず即座に利用可能です。コストを抑えつつ、気軽に活用できる点はゲーム開発に大きなメリットがあると考えました。

また、大阪モーションキャプチャースタジオにはプロのアクターが常駐しており、サイゲームスのゲーム開発のニーズに合わせたクオリティーの高いモーションを用意できるのも大きな要因です。
高い技術と経験を持つアクターの協力の下、定期的に収録を行い、日々ライブラリーのデータを更新しています。

モーションライブラリーを実現するまでに苦心したことはありますか?

ライブラリーデータの収録は、ゲーム開発案件の収録の合間を縫って行うため、普段の収録業務を圧迫しないよう、収録からデータ制作までの効率的なフローを構築する必要があったんです。
必要最低限の工数でデータを制作するために様々な工夫が必要で、現在のかたちになるまで、半年ほどかかりました。

試行錯誤の末、ライブラリー制作開始後の約1年で1500点ものモーションデータを用意できました。

モーションライブラリーの特長や、特にこだわっている部分などはありますか?

同じ動作であっても性別によって演技の感じが変わってくるものがあります。そのような動きは別のモーションとして用意し、様々なニーズに応えられるライブラリーにしています。

例えば『歩き』モーションでは、男女の差異だけではなく、スニーカーとヒールで別のモーションを用意している他、片足を負傷したり、重い荷物を持っていたり……など、細かなシチュエーションごとにデータを用意しています。

▲『歩き』モーションだけでも様々なバリエーションがあります

特に利用頻度が高いのはどのようなモーションですか?

運用開始後のダウンロード数を解析したところ、やはりゲームの試作などに使いやすいデータが人気で、プレイヤー関係のモーションが特にダウンロード数が多かったです。

それ以外には、暑がる、寒がるなどのジェスチャーも意外と人気が高かったです。細かい演技の需要も多いんだなという発見に繋がりました。

印象的だった撮影があれば教えてください!

特に印象的だったのはワイヤー特有の表現を活かして、水にぷかぷか浮いている感じや泳いでいるモーションを収録したことです。

大阪スタジオではワイヤー設備も常設されています、通常は派手なアクションシーンで使用されることが多いのですが、水中での待機や移動のモーションなどにも使用することで、まるで本当に泳いでいるかのようなモーションを収録できました。

▲空中での激しいアクションから水中での幅広い演技までを収録したワイヤーアクションパック

他に印象的だったのは、大合戦や群集劇のような複数人が登場するモーションの撮影です。

実は、ライブラリーで用意している群衆モーションはアクター1人で演技をしてもらい、撮影しているんです。
大阪スタジオの特徴の一つでもあるエリアプロジェクション(※)を活用し、先に撮影したモーションを床面に投影しながら、タイミングを合わせて複数の異なるモーションを撮影しています。

※ エリアプロジェクション……セッティング時や撮影時に、床面に画像や映像を投影して目印とする技術のこと

▲複数人が登場するモーションの一例
▲上記モーションの撮影風景

本来、群衆やキャラクター同士の接触があるモーションを撮影するには複数のアクターを手配し、入念に演技の確認をするなど撮影の難度が高くなります。しかし大阪スタジオでは、気心の知れた常駐プロアクターとその場で演技を相談しながら素早く収録できるため、少人数ながらも、まるで大人数で演じているかのような高品質なモーションを効率的に収録できます。

今後、モーションライブラリーをどのように活用してもらいたいですか?

コンテンツの世界観を豊かに彩るには、派手なアクションだけでなく、背景を支える膨大な数の「脇役モーション」が必要です。

しかし、それらを毎回一から収録するのは大きな負担となります。モーションライブラリーを活用することで、汎用的なモーションにコストを掛けず、その分コンテンツの個性を際立たせる演出やクオリティーに集中してもらいたい……これが私たちの根底にある想いです。


以上、モーションライブラリーについてお伝えしました。今後も開発効率の向上を目指して、多様なモーションを提供していきます!