マンガ編集者の仕事とは?ゲーム会社から生まれたマンガアプリ「サイコミ」が挑む面白い作品づくり【サイゲームス仕事百科】
サイゲームスはゲームやアニメに加えて漫画事業にも取り組んでおり、マンガ配信サービス「サイコミ」にてマンガをユーザーさんにお届けしています。「サイゲームスの10年後、20年後を支えるコンテンツを作りたい」という想いから出発したサイコミ編集部の仕事について、編集長への取材を基に解説します。
▼とにかく「面白い」作品を届ける
▼感情移入できるかどうかを重視
▼サイコミ編集部のスタッフ編成
▼サイコミのマンガ制作のフロー
▼サイコミ編集者に求められるマインド
▼仕事のやりがいとは?
▼サイコミ編集者のキャリアパス
▼サイコミ編集部を目指す人へのアドバイス
王道の少年マンガを中心として
とにかく「面白い」作品を届ける
2016年5月に創刊したサイコミは、おかげさまで5周年を迎えました。当初はゲームのコミカライズ作品が中心でしたが、2018年11月に大幅リニューアルを実施し、現在はオリジナル作品をメインに展開しています。創刊当初から変わらないサイコミのミッションは「10年後、20年後に会社を支えられるIPを生み出す」ことです。そのために、面白いマンガを世に送り出そうと日々奮闘しています。
もともとサイコミは、王道の少年マンガ誌を作ろうという考えのもとに創刊しました。スポーツものやバトルものなど、少年マンガの定番的な作品が多いのはこのためです。ただし、最近は少年マンガを主軸にしながらも、扱うジャンルやターゲットを広げる戦略をとっており、大人向けや女性向けの作品も増えています。
ラインナップが変化した理由はいくつかありますが、サイコミは紙の雑誌ではなくアプリであることが大きく関係しています。読みたい作品だけ購入して読むスタイルのアプリの場合は、ジャンルやターゲットを広めに設定しても読者の方に受け入れられやすく、むしろより多くの方に読んでいただきやすいという特性があります。
ジャンルやターゲットを広げても、創刊時から変わらず「面白いこと」は絶対に譲れないポイントです。ただし「面白いこと」は当然で、編集者はそれを多くの読者に届ける努力をし続けなければなりません。作品の内容はもちろん、プロモーションの方法まで考える。それがヒット作に、そしてビジネスとしての成功に結び付くのです。
マンガづくりで最も重視しているのは
感情移入できるかどうか
サイコミでは、面白さの1つの基準として「主人公に感情移入できるかどうか」を大事にしています。「主人公がこんな言動をする意味がわからない」と思われると、読まれなくなってしまうからです。その感情が連続すると、継続して作品を読んでもらうのは難しいでしょう。
それから、連載する上でのテクニックとしては、毎回「面白い」と思ってもらえるように、読者の感情を揺さぶるポイントを複数盛り込むように心がけています。週刊連載は1話につき十数ページしかありませんが、その中でも2〜3回は読者の心が動くポイントを入れるように、作家さんと綿密に打ち合わせて話を作っています。さらに、次週に繋がる「引き」も大事です。来週も読みたいと思ってもらうためにはどういう「引き」にするかも、作家さんとしっかり打ち合わせます。
ちなみに、現在サイコミで連載している作品は38本で、これは同種のマンガアプリに比べるとかなり少ない本数と言えます。数を絞り、その分上で述べたようにクオリティーを高めることを優先しています。
サイコミ編集部のスタッフ編成
漫画事業部にはサイコミ編集部の他に「開発・運用」と「営業」のチームがあり、連携しながらサイコミを運営しています。開発・運用チームには、プランナー、データ分析、運用、エンジニアといった職種が含まれます。ここでは編集者に加えて、編集部と関わりの深いプランナーとデータ分析についても説明します。
■編集者
サイコミに掲載するマンガ作品を企画し、作家さんとともに作品を作っていく仕事です。オリジナル作品の制作を外部の作家さんに依頼し、作品の全体的な方向性や1話ごとの展開について作家さんと綿密に打ち合わせ、作品のクオリティーを最大限に高めます。また作品制作だけではなく、プロモ―ションや宣伝に至るまで、担当作品に関わること、担当作品を広めるために必要なことはすべて行います。
■プランナー
「サイコミ」アプリの開発やUIの改善を担う仕事です。より使いやすく楽しめるアプリを目指して、編集長や開発ディレクターと話し合いながら仕様を策定し、エンジニアと協力して開発していきます。コンテンツ内のイベントの企画や運用も担当します。
■データ分析
アプリの使用状況や各コンテンツのアクセス状況などのデータを見ながら、最適なコンテンツ作りのための助言をする仕事です。UIの仕様上の問題点や、コンテンツがヒットした・しなかった理由を分析して改善に繋げます。
サイコミのマンガ制作のフロー
ここではサイコミオリジナル作品制作でのマンガ編集者の仕事の流れを説明します。常にこの制作フローで進むわけではなく、作品によって変わる部分もあるので、1つのパターンとお考えください。
【1話ごとの制作フロー】
1.打ち合わせ
まずは作家さんと打ち合わせを行います。次回の話についてはもちろん、先々の展開や戦略に至るまで話します。
2.プロット
打ち合わせを受けてプロット(※)を作成します。打ち合わせとの齟齬がないか、面白いものになっているか、編集者は出来上がったプロットを綿密にチェックします。
※プロット……物語の流れをテキストで表現したもの
3.ネーム
出来上がったプロットに基づいて、作家さんにネーム(※)を描いてもらいます。プロットと同様に、ネームが提出されたら内容を検討し、必要に応じて修正依頼をします。
※ネーム……コマ割り、コマ内の構図、キャラクターの配置、セリフなどを大まかに表したマンガの設計図のようなもの
4.作画〜校了
出来上がったネームに沿って、作家さんが下描き、ペン入れと作業を進め、作品を仕上げていきます。出来上がった原稿は編集者が印刷所に入稿し、校正紙が出てきます。それを校正(誤字脱字、原稿にミスがないかなどのチェック)し、校了(※)となります。校了した原稿はデータとして印刷所から出てきますので、それをチェックし運用チームに渡し、最終確認をしてアプリでリリースします。
※校了……原稿の最終確認を終え印刷可能な状態(リリース可能な状態)にすること
サイコミ編集部では、作家さんとの打ち合わせを重視しています。ストーリー展開はもちろん、上で述べたような揺さぶりポイントや「引き」についてどうするのがベストかをじっくり話し合います。また、特に連載の勝負所となる回、例えば連載開始時や1つの章が終わるとき、始まるときなどは、入念に打ち合わせをします。
事前にしっかりと打ち合わせをしておけば、作家さんから上がってくるネームが的外れなものになることはありません。つまり、ボツ(ネームの描き直し)が発生しにくいので、進行も良くなりますし、その分クオリティーを高める作業に時間を使えます。毎週十数ページを描くというのは、作家さんにとっては多大な負担がかかる作業なので、少しでも負担を軽減するためにも、綿密な打ち合わせが大切だと考えています。
新連載企画を立てる際も作品のテーマ、世界観、方向性、キャラクター、各種設定などについて作家さんと綿密に企画を練ります。連載が決まった後は上記の1話ごとの制作フローを例として、マンガづくりを進行していきます。
サイコミ編集者に求められるマインド
マンガ編集者になるために特別なスキルはいりませんが、コミュニケーション能力や責任感は必要です。作家さんとやり取りしながら企画から校了までの作業を滞りなく進めることに始まり、書籍化、プロモーション、アニメ化した際の窓口など、マンガにまつわることの一切に責任を持って臨むことが求められます。それに加えて、優れた編集者であるためには下記のような資質が求められます。
■常にインプットする姿勢
マンガのネタは世の中にあふれています。マンガやゲーム、アニメ、映画、小説などのコンテンツはもちろん、ニュースで見聞きしたこと、日常で起こったことなど身の回りにあるものすべてがマンガの題材になり得ます。面白いコンテンツを作り続けるためには、なんにでも好奇心を持って貪欲にインプットし続けることが必要です。
■相手に合わせた伝え方
編集者は作家さんをはじめ、たくさんの関係者とコミュニケーションを取りながら仕事を進めます。最初から完璧にできる人はいませんが、意識して伝え方を磨いてくことが大切です。言葉の選び方1つで相手が受け取る印象は大きく変わります。相手に気持ち良く仕事をしてもらうために、相手に合わせた伝え方をすることが必要です。また、作家さんにとっては耳が痛いことでも、作品を良くするために言うべきことは言う姿勢が求められます。
■スピード感
週刊連載をしていくには、すべての制作工程を円滑に回せるスピード感が必要です。単に自分の作業が速いだけではなく、仕事相手の作業時間を考慮して無駄のないスケジュールを組み立てることが求められます。また、上長や関係者に対して報連相といったコミュニケーションをしっかり取って進捗状況を共有することも大切です。
■切磋琢磨
編集者は「自分が担当しているマンガが一番面白い」と思って仕事をしてほしいですし、そもそも自分が「面白い」と思わない作品を作るべきではありません。面白いマンガを作ることに先輩も後輩も関係なく、一番を目指す姿勢が大切です。ただし、これはチームワークを軽視するという意味ではありません。ライバルたちは同時に仲間でもあり、ともにサイコミを盛り上げていくという意識が必要です。
サイコミ編集者の仕事のやりがいとは?
編集者としては、担当作品がヒットしたときはもちろんうれしいです。制作過程においては、作家さんから想像以上のネームが上がってきたときはテンションが上がります。詳細に打ち合わせをしているので、どんなネームが出来るかはある程度予想がつくものですが、それでも時々、想像を超えるネームが上がってくることがあります。「これは面白い回になる」と確信できて、実際にリリース後の読者の方々からの反応も良いと、クリエイティブワークに携わる人間としては大きな達成感を得られます。
また、編集長視点で言えば、アプリのユーザー数が増えたり、売り上げが伸びたりといったビジネス面で良い結果が出るとうれしいです。2020年4月7日にリリースしたサイコミアプリの大幅アップデート版であるバージョン5.0.0は、リリース後にユーザー数が大きく伸びたので達成感がありました。このバージョンでは1話を読んだ後、22時間待てば次の話が無料で読める「待てばタダ!」機能を搭載したのですが、それが良い結果に結びついたのだと考えています。
さらには、後輩の編集者が仕事をする中で力がついてきて、良い作品を作れるようになったときや、作家さんの腕が上がったときも編集長としての喜びを感じる瞬間です。やはり一緒に仕事をしている仲間の成長を感じるのはうれしいです。
サイコミ編集者のキャリアパス
現在、サイコミの編集者は経験者がメインですが、第二新卒の未経験者として入ったスタッフも徐々に増えてきました。若手スタッフの育成については他の部署と同様にメンタートレーナー制度を導入しており、先輩が後輩について仕事を教えたり、各種サポートを行ったりしています。
編集者としての仕事をこなせるようになったら、ヒット作を出すことでキャリアアップを目指していきます。これ以降は先輩・後輩は関係なく、1人の編集者として面白い作品をいかに生み出していくかが勝負です。
一定のキャリアを積んだあとは、チーフデスク、副編集長、編集長とステップアップしていくのが一般的ですが、サイコミ編集部は部署が発足してから歴史が浅く、これから具体的なステップアップを目指していくスタッフが多い状況です。当面は編集者としてキャリアを積み、そこからチーフデスク以上を目指すのか、あるいはマネジメント側に進むのか、考えていくことになります。
サイコミ編集部を
目指す人へのアドバイス
採用の面接では、「サイコミ編集者に求められるマインド」で述べたような資質があるかどうかを1つのポイントと考えています。特に重視しているのは、エンタメコンテンツが好きで常にインプットをしていることと、高いコミュニケーション能力を備えているかです。
インプットに関しては、さまざまなコンテンツに積極的に触れているかが大切だと思っていますので、好きなことや追いかけていることがあればぜひアピールしてほしいです。コミュニケーション能力については、人当たりが良いか、物怖じしないか、的確な受け答えができるかなどを重視しています。編集者の仕事は明るい性格の方のほうが合っていますが、単に調子が良いだけではサイコミ編集部には向かないと思われます。それよりも会話のキャッチボールができることや、適切な言葉を選んで相手に伝える配慮ができることのほうが重要だと考えています。
以上、サイコミ編集部の仕事についての解説でした。
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