デザイン制作管理チームの仕事とは?クリエイターを繋ぐ架け橋として必要なこと【サイゲームス仕事百科】

2Dのキャラクター、背景、各種アイコン、デフォルメキャラ、3DCGのモデル、モーションなど、ゲームにはたくさんのデータ(以下、デザイン物)が使用されています。サイゲームスは、これらのデザイン物の制作進行や管理を行う専門家を置くことで、クリエイターが制作に集中できる環境づくりに努めています。

進捗確認や成果物の取りまとめだけでなく、ときにはデザイナーの背中を押す役割も担いながら、制作物を所定の期間内に最高のクオリティーに引き上げるのが彼らの仕事です。今回はそんなデザイン制作管理チームの仕事について、マネージャーへの取材を基に解説します。

デザイン制作管理チームのミッションは
クリエイターのパフォーマンス最大化

デザイン制作管理チームの主なミッションは、クリエイティブにおける進行管理やデータ管理を行い、デザイナーやイラストレーターのパフォーマンスを最大化することです。制作におけるスケジュール管理やデータ管理の専任担当者がいることで、デザイナーはクリエイティブに割ける時間が増えるため、制作管理の仕事は成果物のクオリティーや生産性の向上に貢献すると言えます。

元々、デザイナーが制作するデザイン物やスケジュールは現場のスタッフが管理していました。次第に各コンテンツの規模が拡大し、ゲーム全体の進捗状況を俯瞰するのが難しく、どのデザイン物がどこにあるかがわからないといった問題も生じ、どうしても非効率的になりがちでした。このような問題を解決するために、現在のデザイン制作管理チームが立ち上がりました。

デザイン制作管理チームの体制と業務内容

デザイン制作管理チームは、「デザイン進行管理」「デザイン外注管理」「画像データ管理」の3つのセクションで構成されています。それぞれのセクションにリーダーがいて、さらにチーム全体を統括するマネージャーが存在する組織構成です。

■デザイン進行管理
各ゲームのプロジェクトに所属し、イラストレーターをはじめとしたデザイナーのスケジュール管理を行うのが主な業務です。発注内容からデザイナーへの制作業務の割り振り、制作物の進捗管理、成果物の取りまとめ、監修者への監修依頼など、デザイン制作における全工程を滞りなく進めるのが進行管理の役割です。

■デザイン外注管理
外部の作家さんや制作会社とコミュニケーションを取り、発注から納品までの窓口業務を担当し、社外と社内を繋ぐことが主な役割です。2Dイラストや3Dデータの発注・管理業務の他、経理処理も行います。
海外の個人作家さんへの依頼する際は翻訳をすることもあり、主に母国語が同じスタッフが担当します。

■画像データ管理
各ゲームのプロジェクトに所属し、デザイナーやイラストレーターが制作したデザイン物からゲーム画面に必要な画像を用途に合わせて大量に書き出しを行ったり、実装に必要な命名規則に合わせたデータの準備や実装などを行ったりします。また、データの保存先である「共有フォルダ」の階層構造を整理し、ゲーム開発をしやすくする環境整備も担っています。

「デザイン進行管理」と「画像データ管理」は2D/3Dなどゲームグラフィックによって、管理する規模感は異なりますが、基本的に各ゲームのプロジェクトに専任担当者を配置しています。プロジェクトに合流するのは、新規タイトルの方向性やコンセプトが決まり、コンセプトやキャラクターデザインをアートディレクターやイラストレーターが制作する時点、つまり、イラスト制作が本格化するタイミングです。ここから大量のデザイン物の制作と管理を円滑に行うために、デザイン制作管理チームが活躍します。

一方、「デザイン外注管理」は基本的にはプロジェクトには所属せず、案件に応じて担当者をアサインしています。

配置するスタッフの人数は、運用タイトルであればプロジェクトの規模によって異なりますが、全セクションで2〜8名規模とさまざまです。
どんなスタッフをどのプロジェクトに配属するかは、それぞれのスタッフの得意分野によります。例えば、大規模なプロジェクトでは、データの特性によって2Dと3Dで管理の方法が異なるため、3Dのデータを多く扱うプロジェクトでは3Dに知見のあるスタッフをアサインする方針です。

デザイン制作管理チームが関わる部署・スタッフ

デザイン制作管理チームはさまざまな部署やスタッフと関わっています。最も関わりが多いのはデザイナーですが、スケジュールやクオリティーライン、発注内容については各ゲームのプロジェクトマネージャーやプランナーとやり取りをして調整します。それに加えて、デザイン制作管理チームが管理しているデザイン物は宣伝や広報、採用活動でも使われることが多いため、メディア室や広報、人事とも関わりがあります。

また、制作した素材データを実装するにあたって適切な形式に書き出す作業は、この作業の自動化にあたって、テクニカルアーティストに相談して専用の書き出しツールを開発してもらうこともあります。
ゲーム開発を行う上で多くの部署と関われるのは、制作管理の魅力の1つでもあると考えています。

▲他部署・職種との相関図

デザイン制作管理チームの業務フロー

ここからは、『Shadowverse』のイラスト制作を例に挙げてデザイン制作管理チームの業務フローをご紹介します。各ゲームのプロジェクトによって多少の差異はありますが、基本的には下記のような流れで業務が進行します。

1.受注(図①②)

プロデューサーが決めた方向性に基づいて、ディレクター・プランナーが必要なイラストを決め、それらを「デザイン進行管理」チームが受注します。

2.制作依頼(図③④⑤)

「デザイン進行管理」チームが必要なイラストの内容、点数、納期などを整理し、イラストレーターへ仕事を依頼します。外部に依頼する場合は、「デザイン外注管理」チームへ依頼内容を伝達します。また、社内外から納品されたイラストを「デザイン進行管理」チームからアートディレクターに監修してもらい、必要に応じてイラストレーターに修正依頼をし、完成まで導きます。

3.データ書き出し・管理(図⑥⑦⑧)

完成したイラストを「デザイン進行管理」チームから「画像データ管理」チームへ渡します。「画像データ管理」チームは、画像データをゲームに適した形式に書き出し、ゲーム内への実装をエンジニアへ依頼します。また、アニメーションが必要なイラストはアニメーションデザイナーへ、UI用の素材はUIデザイナーへ渡します。それに加えて、共有フォルダにデータを整理して格納するのも「画像データ管理」チームの仕事です。

このようにさまざまな部署との架け橋となって、デザイン物の制作や管理のフローを上手く回すのがデザイン制作管理チームの役割です。業務を円滑に進めるには、各ゲームのプロジェクト全体のスケジュールや各部署の負荷状況を把握することが大切です。どの業務にどれくらい時間がかかるのかの見当をつけるためには、組み込みや実装といった、素材データの制作以外の工程も理解しておく必要があります。

また、突発的な案件が生じることも少なからずあるため、そのことを織り込んでスケジュールに余裕を持たせることも必要です。このあたりはデザイン物そのものの制作にかかる工数や組み込み実装の工程について把握した上で、「去年はこんな案件があったので、今年も起きる可能性がある」といった経験も活きる部分です。

デザイン制作管理チームのスタッフに
求められるスキル・マインド

他部署と関わりが多い仕事のため、やはりコミュニケーション能力は必須です。ディレクターやプランナーの意図を本質的に理解し、それを正確にデザイナーやイラストレーターに伝える理解力や伝達力が求められます。また、必須ではないものの、Adobe系のツールの使用経験や、3Dデータに関する知識があれば、業務に活かせる場面は多いです。それに加えて、下記のようなマインドやスキルが求められます。

■クリエイターの得意分野を心得る

デザイナーやイラストレーターにはそれぞれ得意・不得意があるので、彼らの特性にマッチした仕事を割り振る采配力も求められます。ただし、ときには人員の配分の関係で人物を描くのが得意な人にモンスターを描いてもらうといったケースも起こります。そんなときは、次回の仕事で人物のイラスト制作を依頼するなど、クリエイターのモチベーションを維持・向上させるような気遣いも必要です。

■ゲーム開発全体の工程・スケジュール感を理解する

予期せぬ事態も踏まえてスケジューリングするには、タスクの優先順位や工程全体への理解が欠かせません。スケジュール管理の方法はプロジェクトの規模や管理するカテゴリによっても異なり、ShotGridのような専用ツールを使うこともあれば、Excelで作成したガントチャートを用いることもあります。
しかし、ツールの習得は現場に入ってから覚えるので十分です。それよりも、不測の事態が起こったときに、開発現場全体を俯瞰した調整をしたり、無理のないスケジュールを組み直したりといった調整力や対応力のほうが重要と言えます。
デザインやイラストといったデザイン物の制作以外の工程もスケジュール感を把握し、各ゲームのプロジェクト全体のスケジュール感を的確に掴んでおく必要があります。例えば、素材納品後の組み込み実装などの後工程やそれらの作業にかかる時間についてです。プログラミングそのものの知識はなくても、現場で直接エンジニアとやり取りするなど、リアリティーのあるスケジュール感を学んでいく姿勢が大切です。

■丁寧かつ冷静沈着に進行する

ゲーム開発やコンテンツ制作では突発的な案件が生じ、関係各所との調整や交渉が必要になることも珍しくありません。そんな状況でも、開発の現場が混乱しないよう、現実的にタスクの優先順位や制作期間などを調整する冷静沈着さが求められます。

■新しい技術や表現の情報についてのインプット

好奇心を持って新しい技術やトレンド情報を追いかけ、取り入れていく姿勢が大切です。流行している絵柄や新しく登場した表現手法、ツールなどの情報を集め、ときには自らデザイナーやイラストレーターへ提案します。こうすることで自身の業務効率のアップや成果物のクオリティーアップに繋げられます。もちろん、たくさんのゲームで遊ぶことで得られた情報が制作管理の仕事に役に立つこともあるため、ゲームでのインプットも重要です。
デザイナーや周りのスタッフに対しての提案やきっかけづくりをし、自身の業務効率化などにどう繋げられるかアウトプットしていくことも大切です。

デザイン制作管理チームの
仕事のやりがいとは?

自分たちがゲーム開発に携わる人たちの架け橋となり、クオリティーの高いコンテンツをユーザーのみなさんに届けた結果、見てくれた人たちに喜んでもらえたとき、「この仕事をやっていてよかった」と感じます。

最近の例だと2021年5月に発売された「週刊ファミ通」にて、サイゲームス創立10周年記念特集を組んでいただいた際の表紙イラスト制作が挙げられます。これまでリリースしたタイトルのキャラが集合した絵をイラストレーターに描き下ろしてもらい、その制作進行を制作管理のスタッフが担当しました。

▲「週刊ファミ通」サイゲームス創立10周年記念特集(後編)の表紙と付録ポスター

また、誌面内の感謝イラストは各タイトルに所属するイラストレーターによる描き下ろしです。この特集号はたくさんの人の協力があって出来上がった結晶のような作品だと思います。

▲「週刊ファミ通」サイゲームス創立10周年記念特集(前編)に掲載された感謝イラスト
▲「週刊ファミ通」サイゲームス創立10周年記念特集(後編)に掲載された感謝イラスト

うれしいこともたくさんありますが、この仕事の難しさは「人が行う仕事の管理」なので、必ずしも予定通りにはいかない部分があることです。ときにはどうしても納期に間に合わない状況に陥ることもあり、その都度臨機応変にスケジュール調整をします。クリエイターの進捗状況を確認しながら、問題を未然に防げるよう現場スタッフみんなで協力し、スケジュール通りにユーザーのみなさんにお届けできるようすることも大事な役割です。

それから、求められるスキルのところでも述べたように、ディレクターやプランナーなどの発注者の意図を正確に把握・伝達する能力が必要で、それはときに難しい対応となる場合もあります。例えば、「もっと可愛く」という要望の「可愛い」は具体的にどういうことかといった微妙なニュアンスまで含めて読み取り、正確にクリエイターに伝えるのはかなり高度なスキルです。

フィードバックの際も描き手のモチベーションを維持・アップするような伝え方を考える必要があります。これまで蓄積してきた知見に基づいて、修正指示が入りそうだと思われる絵がクリエイターから上がってきたときは、デザイン制作管理チームのスタッフから指摘が出そうなポイントを伝えて、発注者に提出する前に修正してもらうこともあります。相手によって伝え方を工夫するような高度なコミュニケーションは難しいですが、質の高いコミュニケーションによって「最高のコンテンツ」を生み出せると考えています。

デザイン制作管理チームの
キャリアパス

スタッフのバックグラウンドはさまざまです。元々はデザイナーやイラストレーターで、実制作よりも管理業務にやりがいや適性を感じて転向したというのが最もよくあるパターンです。その他、中途採用で合流した人の中には、プロジェクトマネージャーとしてマネジメント業務をしていた人、アニメ業界の制作進行をしていた人、テレビ業界のADだった人、フリーランスでイラストを描いていた人もいます。

未経験でこの仕事を始めて一人前と言えるようになるには、早くて1年ぐらいかかります。以前「SJ対談~メンタートレーナー制度~」にも登場したスタッフは、新卒入社で配属されて、最初の1年は悩みながらも持ち前の突進力で仕事をやり抜き、現在はセクションのリーダーにまで成長しました。

キャリアとしては、所属チームの中で専門性を高めてスペシャリストになるか、チーム運営や人材育成をするマネージャーを目指すかの2つのパターンがあります。

デザイン制作管理チームを
目指す人へのアドバイス

採用面接では、実際にこれまでどのような現場でどのくらいの規模でどのようにスケジュール管理をしてきたか、外部との折衝経験、Photoshopなどのツール使用経験などを伺います。他には、「現場でこんなトラブルが起きたとき、どう解決しますか?」といった現場を想定したシミュレーション的な質問をすることもあります。この質問に正解はなく、どう対応するのか、考え方を教えていただきたいと思います。
面接では経験よりも、「制作管理としてサイゲームススタッフと共に面白いゲームを作りたい!」という熱意とそのために必要なインプットを積極的に行っているかに注目しています。

サイゲームスのビジュアルは、2Dイラスト、3DCG、アニメーションのすべてが業界トップレベルだと自負しています。制作管理は、企画や設定、世界観がビジュアルに落とし込まれていく過程を間近で見られるだけでなく、クリエイターと一緒にこれらを作っていける仕事です。イラストやデザインが好きな方には、魅力的ではないでしょうか。

制作管理に限った話ではないですが、ゲーム開発は1人で行うものではなく、あらゆる専門分野のスタッフが共に最高のコンテンツを作るために切磋琢磨しています。そのスタッフを支え、自分自身もその一員として、さまざまなかたちで活躍できる場や環境を整えていきたいと考えていますので、最高のコンテンツを世に送り出したいという熱意のある方とぜひ働きたいと思っています。


以上、デザイン制作管理チームの仕事についての解説でした。
現在サイゲームスでは、一緒に働く仲間を募集しています。この記事で興味を持った方は、ぜひ一度こちらをチェックしてみてください。

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