イラスト監修者がフィードバックの心得を伝授! 社内勉強会「CyStudy」の講演紹介

「最高のコンテンツ」は、最高のチームで作る。サイゲームスでは「チーム・サイゲームス」の考えのもと、部署やプロジェクトを横断して知見やノウハウを共有する社内勉強会が多く開かれています。
主なものはサイマガに掲載した「CyStudy」や「スキルサーズデー」、「デザイナーズトーク」です。今回は「CyStudy」から講演の1つをご紹介します。「相手との信頼関係を作る!FBの心得」と題し、イラストチームの監修担当者が、イラストをフィードバックするときのコツを伝授しました。

配信形式で行われた講演の動画は、イラストの監修業務を担う「ねこりん」と、イラストの進行管理担当(※)の「くろばこ」2人の会話形式で進行。その形式になぞらえて内容をご紹介します。

※サイゲームスには、毎月制作される膨大なイラストや画像を管理し、イラストレーターが絵の制作に専念できるようにする「制作管理チーム」があります。

絵のスキルが高い≠良い監修ができる

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ねこりん
それでは「相手との信頼関係を作る!FBの心得」の講演を始めます。この講演は現在監修業務を持っている人や、これからその役割を担う人に向けたものです。ただ、どなたでも聞いていただける易しい内容になっています。よろしくお願いします。
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くろばこ
よろしくお願いします。
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ねこりん
そもそもイラストの監修は、絵のスキルが高いだけでは難しいんですよね。
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くろばこ
絵のスキル以外に何か求められるものがあるということですか?
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ねこりん
そうなんです。監修は作業者と監修者のやり取りが大事なので、実はコミュニケーション能力も求められます。「絵が上手いから良い監修ができる」わけではないんです。
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くろばこ
なるほど。それでは最初に、監修の目的について教えてください。
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ねこりん
監修の目的は大きく3つあります。
1点目は「現場のため」に業務が円滑に進むようにすること。2点目は「育てるため」に監修を受ける人の成長に繋げること。そして3点目は「ユーザーのみなさんのため」に喜ばれるコンテンツにすることです。
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ねこりん
監修の目的を達成するためには「正しい指摘」をして、まず何を直してほしいのかをはっきりさせることが大事なんです。
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くろばこ
確かにどこを直すのか、作業者にしっかり把握してもらわないといけませんよね。
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ねこりん
ただ、監修をしていたら気付かないうちに言葉がきつくなったり、場合によっては相手を落ち込ませたりしてしまうこともあるので、作業者に自信を持ってもらうことも意識しましょう。
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くろばこ
指摘しながら自信を持ってもらうって難しそう……。
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ねこりん
確かに難しいのですが、だからこそ伝え方が重要です。フィードバックのコツをこれからご紹介していきます。

正しい指摘とは

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ねこりん
まずは「正しい指摘」について解説します。指摘するとき、ただ正論を話せば良いというわけではありません。監修者が伝えていることが正しくても、それを受け手がきちんと吸収しないと正しい指摘にはならないからです。
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くろばこ
ただの指摘ではなく、しっかり意図を伝えることが「正しい指摘」なんですね。
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ねこりん
そうですね。だから指摘内容は「わかりやすく、簡潔に」を心掛けましょう。
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くろばこ
具体的で的確な指摘ができれば、監修者の手間も最小限になりますしね。
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ねこりん
これは『グランブルーファンタジー』に登場したお寿司の線画で、「消失点」についてフィードバックした事例です。
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ねこりん
「寿司下駄のラインは消失点に向かって描きましょう」「皿の中心を少し画面奥に」の2つが修正ポイントです。
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くろばこ
消失点……難しいですね。
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ねこりん
簡単に言うと、パース(遠近感)の指摘ですね。単に「こうしてください」と言うのではなく、理屈も説明すると作業者も納得してくれると思います。
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くろばこ
なるほど。理屈を添えると作業者が学習して、これから似たような修正を受けなくて済むようにもなりますよね。

自信を持ってもらう

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ねこりん
あとは作業者に自信を持ってもらうことを意識しましょう。フィードバックは良くない部分を指摘することだと考えがちですが、良い点を伝えることも大事です。
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くろばこ
確かに自分のできていた部分を知ると自信に繋がりますよね。良かったところもあるのに修正点だけ伝えると、全部がダメだったようにも見えて絵を描くモチベーションが保てなくなることもありそうですし。
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ねこりん
褒めるのを目的に社交辞令として伝えるのではなく、思ったことを心から伝えることで作業者のモチベーションアップにも繋がります。当たり前のことのように聞こえるかもしれませんが、ちゃんとやるのは難しいことで、普段から監修する相手に関心を持っていないとできないことですね。
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くろばこ
他に自信を持ってもらうために重要なことはありますか?
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ねこりん
答えをすべて伝えるのではなく、相手に自分で考えてもらうように促すこともときには必要です。
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くろばこ
自分で考えてもらう、ですか。伝え方が難しそうですが、どんなフィードバックをしたら良いのでしょう。
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ねこりん
作業を巻き取るのではなく、気になる点だけを伝えて具体的な解決策を相手に委ねるんです。
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くろばこ
でもさっき「正しい指摘」について話しましたよね。具体的に伝えなくて大丈夫なんですか?
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ねこりん
最初にお話しした「育てる」ことが目的の場合、監修者がヒントを与え、具体的な修正内容は任せたほうが良い面もあります。自分で考えて解決できた経験は自信になり、今後は自分で解決策を見出せるようになるので成長に繋がりますから。
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くろばこ
監修者が仕上げたイラストでOKをもらうのと、自分で解決策を考えて修正したイラストでOKをもらうのでは全然違いますもんね。
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ねこりん
そうですね。一方的にフィードバック内容を伝えてそれを遂行させるのではなく、作業者のやりたいことや意志を尊重し、良いものが仕上がるように導く姿勢も監修者には求められるんです。

信頼関係を作る

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ねこりん
ここからは「信頼関係を作る」ことについてお話しします。信頼している人の言葉は響きますよね?でもその逆もまた然り。どうすれば信頼してもらえるのかは人それぞれですが、まずは相手と話さないことには始まりません。
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くろばこ
そうですね。進行管理もイラストレーターと信頼関係を築くために普段からたくさんコミュニケーションを取るようにしていますよ。
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ねこりん
監修者も同じで、作業者とコミュニケーションをたくさん取ることで仕事が上手くいくようにするんです。相手に信頼されるのと同時に、自分も相手を信頼していかなければいけません。
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くろばこ
信頼して修正を任せることが相手の成長にも繋がりますしね。あと、ねこりんさんは作業者から相談を受けることが多い印象です。
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ねこりん
そうですね。それはうれしいことですし、個人的にはどんどん相談してほしくて。相談しやすい雰囲気を作ることも大事なんです。
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くろばこ
でも時間を取られて大変なのでは?
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ねこりん
そう見えるかもしれませんが、相手が苦手なことや何に悩んでいるかを知ると、それを基に監修がやりやすくなるから監修者にとっても良いんですよね。

実際のフィードバック例

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くろばこ
ところで、シナリオイベント「幾千の夜を越えて、あなたに届くのなら」のロミオとジュリエットのスチルイラストはユーザーの方々からご好評をいただきましたよね。この絵では作業者とどんなやり取りをしましたか?
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ねこりん
ラフの段階から色々修正をしてもらいました。こちらが最初に作業者から上がってきた絵です。
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くろばこ
この絵に対して、どんなフィードバックをしたのでしょうか。
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ねこりん
Slackでやり取りをしたフィードバックを振り返りますね。

■フィードバックの内容
それぞれの表情やイメージがとても良いです。全体の構図だけちょこっと調整しました。
①左の植え込み
全体的にやや正面か煽っている構図なので、植え込みの高さを腰から肩くらいにするとより自然になりそうです。
②奥の2人
もう少し近くにいて良いかも。ジュリエットのドレスで隠れ過ぎないように、2人の位置を逆にしてみました。
③空の色
グラデーションを入れると、空の空間が伝わりやすくなります。

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ねこりん
このような文章と一緒に送ったフィードバック画像がこちらです。
▲フィードバック前(左)と後のラフ。構図が調整されています
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くろばこ
へぇ~。項目ごとに分けて指摘していたんですね。
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ねこりん
そうですね。どこをどう直してほしいかは、具体的で簡潔に伝えるようにしています。
あと、この絵ではジュリエットの横顔表現に悩んでいて、作業者から打開案を提示してくれた部分もありました。
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くろばこ
作業者自身にも考えてもらいながらイラストの制作が進んだんですね。
▲ラフ、線画、着彩の工程を経て完成したイラスト

監修者が偉いわけではない

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くろばこ
フィードバックのやり方について色々ポイントがあったので、最後にまとめをお願いします。
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ねこりん
1つ目は「適切に伝える」こと。わかりやすく、簡潔な指摘を心掛けましょう。
2つ目は「自信を与える」こと。良いと思ったことを伝えたり、自分で解決策を見出してもらったりすると自信を持って作業をしてくれるようになります。そして何より、楽しんで仕事をしてくれます。
3つ目は「相手に任せる」こと。監修者がすべて修正しようとせず、相手を信頼して任せるところは任せましょう。
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くろばこ
ありがとうございます。
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ねこりん
最後に、決して監修者が偉いわけではありません。たまたま担当業務と自分の得意分野がマッチしていたり、経験が多い分、勝手がわかったりしているだけなんです。監修者はそのことを忘れないようにしましょう!

以上、CyStudyからイラスト監修者の講演をお届けしました。イラスト制作の現場には案件の割り振りやスケジュール調整をする進行管理のスタッフに加え、成果物をしっかり監修するイラストレーターがいます。このようにチームでイラストを仕上げていく環境があるものの、イラストレーター自身が「最高のコンテンツを作る」姿勢を持つことも重要です。

現在サイゲームスでは、一緒に働く仲間を募集しています。この記事で興味を持った方は、ぜひ一度こちらをチェックしてみてください。

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