学生の力作集う!「第2回クリエイティブコンテスト」結果発表

次世代クリエイターの育成を目的に2021年9月~11月、Cygames 佐賀スタジオ(以下、佐賀スタジオ)は学生を対象とした「第2回サイゲームス クリエイティブコンテスト」を開催しました。「キャライラスト」「背景イラスト」「3DCG」「ゲームコンテンツ」の4部門で作品を募集し、約1300点の応募の中からペンネーム・はたちさんの作品が大賞に輝きました。大賞作品や各部門の受賞作をご紹介します。

「第2回サイゲームス クリエイティブコンテスト」公式サイト

応募総数1300点
大賞はキャラ部門の応募作

佐賀スタジオは「最高のクリエイティブを九州から」というコンセプトのもと、サイゲームスの開発タイトルで使用するイラスト・UI・アニメーション・3DCGなどの制作を担う部門として、2020年4月に設立されました。

佐賀スタジオの理念でもある「次世代デザイナーの育成」に向けた施策を行いたいという想いのもと始まったのが「クリエイティブコンテスト」です。今回は3DCG部門を新設し、前回のフリーコンテンツ部門をゲームコンテンツ部門に変更した他、学校やクラス単位での応募も募集しました。

応募総数は約1300点あり、佐賀スタジオの1次選考で400点、サイゲームスデザイナー部の2次選考で50点、最終選考で11点が通過。最終選考を通過した作品から大賞や各部門賞、審査員賞を選ばせていただいた他、今回は選考後に急遽「高校生部門賞」も新設いたしました。コンテストの運営チームを代表し、佐賀スタジオの六倉と山邉に各受賞作の講評やコンテストの振り返りを聞きました。

Cygames 佐賀スタジオ代表 アートディレクター六倉 千尋
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さまざまなゲームのイラストやコンテンツ制作に携わり、2011年合流。2Dイラスト制作・監修を行い、イラストチームのマネージャーを経て20年に「Cygames 佐賀スタジオ」代表に就任。
Cygames 佐賀スタジオ スタジオマネージャー山邉 純
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Web制作会社を経て、2012年合流。アニメーションデザイナーとしてゲーム制作に携わり、以降はデザイナー部副本部長・デザイナー推進部部長を兼務しながら、20年より佐賀スタジオのマネージャーに就任。

大賞

▲『Chelsea-チェルシー- 「春を導く赤い騎士」』
▲『MIRA-ミラ-「かつて自然の民を守り抜いた大天使の末裔」』

ペンネーム:はたちさん
チェルシーはファンタジー世界のヒロインポジションを想定してデザインしました。彼女が剣を振ると周りからバラが咲き、良い香りがします。ちょっとツンデレなところもありますが基本的にみんなに優しいです。

ミラは大きな角を持つ鹿の守護神と蒼白の炎を宿したランサーで、人々を守るキャラクターをデザインしました。上品でおしとやかな性格でみんなから愛されていますが、敵に対しては凛とした態度と俊敏な行動で果敢に立ち向かいます。

大賞はキャライラスト部門の応募作でした。大賞作品はどのような点を評価しましたか?

山邉 最終選考に残った作品はあらゆる意味で優劣が付け難く、さらに大賞はコンテスト全体を代表するようなものなので非常に決定するのが難しかったですね。ただ、この大賞受賞作は特に六倉さんが推していましたよね。

六倉 配色やキャラのシルエット、立ち絵の部分だとエフェクトやレイアウトに至るまで「描き慣れていらっしゃるな」という印象で、全体的にクオリティーが高いと感じました。服や装飾のデザインも上手いですし、キャラの表情差分や三面図まで用意されているのも良かったですね。ゲームに登場するキャラクターに対するデザイン的要求をほぼ満たしている内容でした。

キャライラスト部門賞(2名)

ペンネーム:潮蛇しおさん
オリジナルゲームの主人公の設定画を制作しました。デバッグがテーマの、パソコンのOSをモチーフとしたキャラクターです。見る人が楽しめるように、表情豊かなイラストや情報を詰め込んでいます。細かなデザインの設定と生き生きとしたキャラクターが見どころです。

『iデバッガー』の講評をお願いします。

六倉 絵の上手さもあり、キャラクターデザインの完成度が高かったですね。本来の姿と美少女に変身した姿のバランスも良く、「この男の子がこうなるんだ」とインパクトが強かったです。

山邉 ポテンシャルの高さを感じますよね。部門賞として文句なしの作品でした。

六倉 1つアドバイスをさせていただくとすれば、カラーが青だけの印象だったのでもう1色追加したり、本来の姿である男の子にもう少し個性があったりすると大賞になり得ました。

▲『雨がやむまで、秘密基地』

ペンネーム:ちゃこたたさん
それぞれが日常を過ごしている中で、壊れかけたおもちゃや古びた本、少しだけ珍しい形の石など……大人は見向きもしないようなガラクタに彼らは心動かされています。そういったものを少しずつ寄せ集めて出来た“僕たちだけの秘密基地”で「雨がやむまでここに居よう」と過ごしている様子です。

『雨がやむまで、秘密基地』はどのような点を評価しましたか?

山邉 キャラクターそれぞれの個性がたっていて、背景からも情景が伝わってくるような画面構成の巧みさもあり、一枚絵としてずば抜けていました。

六倉 3人の表情から場面が引き立っていますよね。

山邉 今回、キャライラスト部門で選ばせていただいた2名はキャラの描き方が対になっていますよね。偶然ではありますが、キャラ単体の見せ方と、一枚絵としての見せ方という観点でどちらも優れていました。

キャライラスト部門の応募作全体で特徴はありましたか?

山邉 キャラ単体の紹介をされていた前回の受賞作に影響されたような作品が多かったです。ただ、色々な方面からキャラの魅力を100%伝えようとしている作品はそれほど多くはありませんでした。その点、キャライラスト部門賞と大賞の受賞作は、より細かいアプローチがなされていました。

背景イラスト部門賞

▲『亀と幻の街』

ペンネーム:bari_kyabeさん
巨大な樹木を背負った亀の上にある街を描きました。亀は巨木でできた森の中に住んでおり、街の住人は食料を与えることで亀と共存関係にある設定です。住人は食料を与えることで亀があまり動かないで済むようにしていますが、亀が移動するとある日突然街ごとどこかにいなくなってしまうため「幻の街」と呼ばれています。

『亀と幻の街』の講評をお願いします。

山邉 イラストの独創性といいますか、モチーフの組み合わせが特異な作品でしたね。雰囲気が圧倒的だなと感じました。

六倉 奥深い森の中の感じや光が差し込んでいる感じなど、背景としてのビジュアルが綺麗に表現されていますよね。その中で亀の存在感もありました。

背景イラスト部門全体について、応募作の傾向はどうでしたか?

山邉 キャライラスト部門に比べて一枚絵としての存在感が強いものが多く、パッと見ただけで場面が想像できるような作品が多かったですね。受賞作はその中でも特に独創性がありましたので、部門賞に選ばせていただきました。

3DCG部門賞(2名)

▲『Halloween Night』

ペンネーム:O-sd!さん
山に佇む怪しげな教会のハロウィンをイメージしました。整備されていない教会に灯る怪しげな明かりや、ジャック・オ・ランタンが持つ不気味さを印象的に演出できるように、光の描写や、老朽化・荒廃した土地の表現に特に力を入れました。また、10月後半の肌寒さを演出するために、全体として寒色をベースにグレーディングを行い、空気感の表現にもこだわっています。

『Halloween Night』はどのような点を評価しましたか?

六倉 うっそうとした雰囲気がよく表現できているなと感じました。その中でもハロウィンの感じがよく伝わってきます。

山邉 一目見ただけで誰が見ても「良いな」と思える作品になっていましたよね。その一言に尽きると言いますか、審査員の中でも評価する声が多かったです。

▲『Tavern』

ペンネーム:Ruhail Ruiさん
「常連以外は入りにくいような、少し危険な雰囲気が漂う居酒屋」がテーマです。質感とライティングにこだわって制作し、Arnoldでレンダリングしました。不穏な空気を醸し出すためにあえて厨房側の明るさを落としたり、映っている人物の顔が見えなったりするなど、全体的な雰囲気を意識して作りました。

『Tavern』は居酒屋を描いた作品ですね。

山邉 こちらは学校・クラス単位での応募作品です。とにかく「面白い」ですよね。学生の方があまり行かないような場所なのではないかと。そういう意味で、想像力を基に構築した居酒屋と捉えると非常に良い出来です。

六倉 大衆居酒屋で、主人が猫好きなんだろうな、など想像が膨らみますよね。ポップなファンタジー系の応募作が多い中、渋い作品でした。

山邉 学校からの応募者にはこちらからフィードバックを返しながら作品をご制作いただいたのですが、具体的に技術的なアドバイスをするのではなく、ブラッシュアップするための方向性をお伝えしていくようなかたちでした。

この作品は、「ゲーム画面として成立させましょう」とお話しをして、ゲームのUI画面のような今のかたちになりました。

3DCG部門は今回から新設されました。どんな作品に期待していましたか?

山邉 具体的に「こんな作品に期待していた」というより、さまざまな3DCGのコンテストがある中、「サイゲームスが3DCG部門を立ち上げたらどんな作品をご応募いただけるのだろう」というそもそもの期待が大きかったです。

六倉 アニメーションやキャラのモデリングなど、多様な作品をご応募してくださいましたね。その中でも受賞作は、学生なのを抜きにしてもクオリティーの高さが圧倒的でした。

山邉 動画も静止画もあったので選考は難しかったのですが、今回はたまたま静止画の作品が部門賞となりました。ただ、一枚絵を特別視したのではなく、いずれも力強い作品でしたので選ばせていただきました。

ゲームコンテンツ部門賞

▲『AssimilatioN 地下世界のアリス』

ペンネーム:PubiAさん
『不思議の国のアリス』の原作である小説を基にしたモチーフにしたのですが、一般的なアリスの世界観と違う、少しおかしな世界観を作ってみました。ゲームの世界観を作るのは今回が初めてで、考えた世界観や設定を視覚化するのは大変でしたが、制作はとても楽しかったです。

前回のフリーコンテンツ部門が、今回からゲームコンテンツ部門に変更されました。よりゲームに特化した作品を募集した中、応募作の傾向はどうでしたか?

山邉 UIを手掛けた作品が非常に多かったです。ゲームの企画書そのものを送ってくださった方もいて、その中で受賞作のクオリティーが圧倒的に高かったですね。キャラ紹介に場面写に、とにかく作り込まれていました。

六倉 受賞作は設定が詰め込まれたコンセプトアートになっていて、1つの世界観としてよくまとまっていたのでゲームコンテンツ賞に相応しい作品でした。

審査員賞(3名)

今回、3名が審査員賞に輝きました。審査員賞は、どのような作品に贈られる賞なのでしょうか。

山邉 チャレンジ精神を感じる作品ですね。ユニークな発想とそれを形にしようという心意気を感じる内容のものを選ばせていただきました。

▲『OREGOCONTACT』

ペンネーム:ハマちゃむさん
カードゲームが大好きでTCG系のアプリゲームを想定したイラストです。謎の相棒ヤエザクランは男性でも女性でも「カッコ可愛い!」と感じてもらえるように、桜モチーフの鎧兜にし、何度もデザインし直しました。ウキウキワクワクした気分で描けたので楽しかったです。これからも男女共に愛されるキャラクターデザインを目指していきます!

キャライラスト部門からの受賞作『OREGOCONTACT』の講評をお願いします。

山邉 とにかく、90年代や2000年代に流行ったようなカードバトル作品のエッセンスを、この令和の世に再提示したのが面白かったですね。ただ「こういうものをやってみたい」だけでなく、カードバトルに対する深い愛情を感じる作品でした。

六倉 アドバイスさせていただくとしたら、主人公と相棒の描き分けをもう少し上手くできていたらなと。ヤエザクランは半透明な感じを表現されたかったのかなとも思いますが、ラフに見えないような仕上がりになっているとさらに良くなった印象です。とはいえ、パワーを感じる作品でしたね。

▲『空中都市 紅華 南門』

ペンネーム:Lukinoさん
中華圏に残る、過去に繫栄していた空中都市「紅華」の遺跡という設定です。かつてそこに住んでいた、その座標を知る龍だけが遺跡に導くことができます。この日は何故かいつも閉じているはずの南門が開いていました。
中国でよく見られる赤い壁の建物を描きたいという思いから始めた作品です。空気感、高度、大きな影、パースは特に気にして描きました。

背景イラスト部門からの受賞作『空中都市 紅華 南門』の目を引いた点はどこでしたか?

山邉 建物の作り込みが素晴らしかったです。この古びた雰囲気はなかなか出せませんから。

六倉 オリエンタルで、ダイナミックだし堅牢な雰囲気がすごく良いですよね。難しいのですが、手前の龍の存在感をもっと出せれば画面全体がさらにまとまったと思います。良い世界観をお持ちなので、可能性を感じる作品でした。

▲『ラーメン屋台船』

ペンネーム:ヒラムシさん
「日中は仕込みや海辺の洞窟の中でひっそりと営業していて、夜になると近くの港に停泊してラーメンを振る舞っている」という設定です。ラーメンのどんぶりやれんげがモチーフの外観が人気で、地元の漁師やダイバーの憩いの場になっています。

『ラーメン屋台船』も背景イラスト部門の応募作でした。どのような点を評価しましたか?

六倉 モチーフの発想が良いですよね。

山邉 パッと見たときのインパクトもありますし、ユニークさが随一でした。

六倉 ただ、「背景」といわれると少し変化球な作品だなと。細かい部分に遊び心が込められていて、ご本人が楽しみながら描いた感じがこちらにも伝わってくるような作品でしたので審査員賞とさせていただきました。

高校生部門賞

高校生部門賞は今回新設されました。新設の経緯を教えてください。

山邉 大学・専門学校生からのご応募が一番多いものの、応募資格を「2022年3月以降に大学・専門学校を卒業予定の方」としているので高校生以下の方々にも参加資格はあります。その中でも高校生の今後の可能性を見出したいというところで、当初予定になかった高校生部門賞を設けました。

▲『320000kmの旅』
▲『#月面到着』

ペンネーム:ききのきさん
『320000kmの旅』
技術が発達した今、月面旅行が若者の間でブームになっています。描いたのは月面旅行へ電車で出発しようとしている二人組の姉妹です。
架空の街を考えるのは大変でしたが、街の空気感を演出できていたらうれしいです。

『#月面到着』
「月面320000kmの旅」の続きをイメージしています。技術が発達した未来をイメージしているので、今より月が近かったり宇宙服が軽装だったりとファンタジーな要素も取り入れています。月面では月の海で写真を撮るのが定番なので、2人も海のそばで写真を撮っています。この日はちょうど日食だったのでとても映える写真が撮れました。
自撮り棒の360度カメラを使って写真を撮っている設定なので、パースを考えるのが難しかったです。

キャライラスト部門の応募作2点が受賞となりました。講評をお願いします。

山邉 月世界に旅行して自撮りするという発想の面白さもさることながら、イラストから伝わってくる空気感も非常に良かったなという印象でした。

六倉 自分の想像したものを表現しようという意欲が見えますよね。色も繊細な塗り方をされていて技術が高いです。アドバイスとしては、もう少しテキストに気を配るとさらに良くなったかなと思います。

山邉 「Journey」と「Moon」のテキストは、フォント選びや見せ方次第で作品が締まった可能性がありますね。ただ、全体として若さが持つ想像力と勢いがある作品でした。

コンテストの振り返りと
佐賀スタジオの展望

あらためて、コンテストの総評をお願いします。

山邉 とにかくたくさんのご応募をいただけてありがたかったですね。作品の内容も前回より面白いものが増えた印象でした。あとは前回よりゲームに特化した作品が多くなりましたね。作品を拝見するのも大変でしたが、力作ぞろいだったので選考は悩みに悩みました。

六倉 学校・クラス単位でも募集を始めたことで、コンテストの規模が大きくなりましたよね。海外の学校からもアプローチをいただけましたし。

今回、学校を通してご応募いただいた作品に向けた「学校・クラス特別賞」は設けなかったのでしょうか?

山邉 当初は「学校・クラス特別賞」を設ける予定でしたが、学校からご応募いただいた作品が各部門賞に匹敵するクオリティーでしたので、それぞれの部門賞として選出させていただきました。キャライラスト部門賞の『iデバッガー』、背景イラスト部門の『亀と幻の街』、3DCG部門の『Tavern』、審査員賞の『OREGOCONTACT』は学校を通してご応募いただいた作品でした。

今後もコンテストを開催していきますか?

山邉 今後もゲーム業界で国内最大級のコンテストを目指して開催していければと思っています。我々もいろんな作品を見られるのがすごく楽しみですし、学生のみなさんにとっても創作の励みになればという想いがありますので。

佐賀スタジオ設立から約2年となりました。これからどんな人材にきてほしいですか?

山邉 サイゲームスタイトルを好きな方はもちろん、自ら新しいクリエイティブに関わりたいという方をお待ちしています。また、そういった若手を育成したいというベテランの方にも来ていただきたいです。

六倉 私はやりたいことや表現したいことを強く持った方が来てくださるといいなと思っています。佐賀スタジオがまだ小さいスタジオなので、自分で意見が出せる方だとうれしいですね。


運営側の想像を超えるようなたくさんの作品をご応募いただき、ありがとうございました。「最高のクリエイティブを九州から」を掲げる佐賀スタジオは、さまざまなことに挑戦したいという意欲のある方を募集しています。ご興味を持っていただいた方はぜひ採用情報ページをご覧ください。

Cygames 佐賀スタジオ採用ページ

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