挑戦的な作品多数!「サイゲームス クリエイティブコンテスト2023」結果発表 「大賞」「部門賞」編

2023年9月~11月、サイゲームスは次世代クリエイターの育成を目的に、学生を対象とした「サイゲームス クリエイティブコンテスト2023」を開催しました。「キャライラスト部門」「背景イラスト部門」「3DCG部門」「ゲームコンテンツ部門」「広告・映像・衣装デザイン部門」「高校生部門」の6部門で作品を募集し、応募総数は過去最高となる3600点超に。多彩な応募の中から大賞に輝いたのは、ペンネーム・いえのさんの作品です。本記事では「大賞」「部門賞」作品を講評とともにご紹介します。

「サイゲームス クリエイティブコンテスト2023」公式サイト
次世代クリエイターの育成を目的に、サイゲームスは学生を対象としたクリエイティブコンテストを開催。最高のコンテンツを全国から募集しました。

クリエイティブコンテストの公式サイトでは、作品をより大きな画像でご覧いただけます。ぜひ上記リンクからご鑑賞ください。

応募総数3629点
「飛躍」「挑戦」が受賞の決め手に

Cygames 佐賀スタジオ(以下、佐賀スタジオ)が設立された2020年から、「次世代クリエイターの育成」に向けた施策を行いたいという想いのもと始まった「クリエイティブコンテスト」。部門賞が追加されてさらに規模が大きくなったことを受け、昨年からサイゲームスの東京、大阪、佐賀の3拠点合同開催となっています。

今年は昨年応募総数の2092点を大きく超えた3629点ものご応募をいただく大規模なコンテストとなり、応募作品のクオリティーはますます高まってきています。今回はコンテスト事務局による1次選考、サイゲームスデザイナー部の2次選考、最終選考と審査を進め、最終選考を通過した作品から大賞や各部門賞、審査員賞、学校賞を選出しました。

本記事では、コンテストの運営チームを代表し、デザイナー本部に所属するスタッフ5名に各受賞作の講評やコンテストの振り返りを聞きました。前編では「大賞」「部門賞」について、後編では「審査員賞」「学校賞」についてご紹介していきます。記事の最後には先日開催されたばかりの「表彰式」の様子もご紹介していますので、ぜひあわせてご覧ください。

サイゲームス 執行役員 デザイナー本部 本部長トシユキ
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DTPを扱う制作会社にて営業職を経験。その後、イラストを独学し、ゲーム制作会社や映像制作会社にてイラスト、UI、ドット、アニメーション、3DCGなどの制作、ディレクション業務やリーダー職の経験を積み、サイゲームスに合流する。2014年より執行役員に就任。
サイゲームス デザイナー本部 副本部長 デザイン3部部長ジュン
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Web制作会社を経て、2012年合流。アニメーションデザイナーとしてゲーム制作に携わり、以降はデザイナー部副本部長・デザイナー推進部部長を兼務しながら、20年よりCygames 佐賀スタジオの責任者も務める。

大賞

▲『森』

ペンネーム:いえのさん
しんとした静かな森の中で、よく耳をすますと、ぽちゃんと小さく水の音が響いて、遠くに小さな白が、光を受けてきらきらひらひら舞うのが見えて、草木の香りを含んだ少し湿った空気が通り抜けていく、そう言う細かな感覚が伝わればいいなと考えながら制作しました。

『森』は、背景イラスト部門から初の大賞受賞となりましたね。

ジュン これが大賞に決まった瞬間に、選んでいる我々も驚愕しました。というのも、審査員の多くが「実は良いなと思っているけど他の審査員もこの作品を大賞として選ぶだろうか……?」と思っていたんですよね。でも、ふたを開けてみれば大賞はこれしかなかったなと。

トシユキ 確かに、ほぼ満場一致で選ばれた作品ですね。

ジュン 今年は、前回と比較して約1.5倍の3629件の応募がありました。最終まで残ったのが優秀な作品ばかりの中で、受賞において重視したのは「飛躍」と「挑戦」があったかどうかだったんです。そして、大賞に輝いたこの作品は、どこから見ても挑戦的な作品でした。

トシユキ 緑一色で画面を構成しているのがもう挑戦的ですね。緑を非常に強く、しかも明暗を豊富に使っていて、見た目のインパクトが非常に大きかったです。緑は使うのが難しい色なんですが、これだけ幅広く活用しているのは、色彩を扱う感覚が優れているのだと思います。近づいてよく見てみるとカエルがいたりするのがまた憎いですよね。見た人を楽しませようとする思いが細部に宿った作品だなと感じました。

ジュン 広く見ても拡大してもどこか切り取っても、どこから見ても「森」であるのがすごいと思いました。森の要素を全て含んでいて森と呼ぶ以外の他の解釈を一切許さず、なおかつ挑戦的でもあり、今回のコンテストを象徴するような作品だったと感じています。

キャライラスト部門賞(2名)

▲『電話ボックスでの攻防戦』

ペンネーム:炭化ケイ素9.5さん
この街には妙なモノが棲みついている。それは神か、或いはもっと邪悪なモノか。ひょんなことから不思議な少女と出会ったインチキ霊能力者の青年は、その妙なモノたちと対峙することになっていく。
「ほらほら、早くしないと捕まっちまうよ」
「くっそ~…!舐めやがって…!!!」

『電話ボックスでの攻防戦』の講評をお願いします。

ジュン こちらも非常に挑戦的な作品ですね。キャラクターデザインや表現など荒削りな部分はあるものの、一瞬を捉えつつ躍動感を持って一枚のイラストに収めたところが審査員の心を掴みました。電話ボックスの中と外の対比も非常によかったです。王道的なキャラクターと外の怪異の雰囲気を変えて描写しているのが効果的で、絵全体を見たときにより魅力が伝わってくるイラストだと思います。

トシユキ 自分はこの作品をかなり推しましたね。理由としては、見た瞬間に「かっこいい!」と思ったこと。状況やポージング、画面内に仕掛けられたギミックなどをちゃんとキャラクターたちの説明に繋げて、周りの要素によってキャラクターの魅力を何倍にも引き上げています。最近の若い方なら電話ボックスを使った経験は少ないと思うのですが、そうした世代でありながら、これだけ魅力的に描けるのは面白い才能を持った方だなと思いましたね。絵の中に入りたくなるような作品でした。


▲『Wonderful Hakkenden』

ペンネーム:ワンちゃむさん
犬と可愛い女の子のイラストを描くため、『南総里見八犬伝』に登場する「ヽ大法師」や「八犬士」を元にファンタジーな世界観で描きました。キャラやイラストにイメージカラーを設定してカラフルな雰囲気を意識して彩色しています。

『Wonderful Hakkenden』はどのような点を評価しましたか?

ジュン この方は過去にも審査員賞や学校賞を受賞された方ですね。今回は、これまでの作風に甘んじず新しい表現を追求して仕上げた大作でした。過去作品でも何かを越えていこうとする挑戦の姿勢が見られていたのですが、今回それが最大級の飛躍になったと思います。

トシユキ 八犬伝をモチーフにした作品なので、犬のキャラクターが8匹揃った絵もできれば見たかったなとは思いました。とはいえ、今回ご自身がやりたいことに振り切って大きく羽ばたいた印象があり、これまでずっとこの方の作品を見てきた我々としても感慨深かったです。

第2回クリエイティブコンテストで入賞した『OREGOCONTACT』(左)と第3回クリエイティブコンテストで入賞した『A trip around the world with Devil Dragon Knight』(右)

キャライラスト部門全体でどのような特徴、傾向がありましたか?

ジュン 今回もこの部門は本当にたくさんの応募がありました。キャラクターの立ち絵、三面図、表情差分、デフォルメなどを集めた、いわゆる「キャラクター紹介」の優れた作品も多数あった中で、審査員が期待した「挑戦」と「飛躍」が含まれていた2作品を選ばせていただきました。

トシユキ 大賞や他の部門賞にも共通して言えることですが、「物語」も選考する際のキーになったと思いますね。作り手のメッセージやストーリー性が伝わってくる作品は、やはり見る者の心を揺さぶります。キャラクターを描く際、そのバックにあるストーリーなどを通してより魅力的に感じてもらうことは、我々の仕事で切り離せない要素でもあり、そうした技術のある方を多く見出していきたい、困難に見えても諦めずに学生さんに挑戦してほしい ……という審査員の期待も選考に反映されたと思います。

背景イラスト部門賞(1名)

▲『New Dream』

ペンネーム:HYLさん
作品の舞台は夢の中の世界で、その世界はレトロなSFの要素に基づいています。
まるで想像力の限りない空間で、
例えば血でできた海、未知の魔法、そしてSF技術が存在します。
私は現実を出発点にし、そこに独自のアイディアを加えて作品を構築しています。
特に建築や装飾にこだわりがあり、それらをインスピレーションにして、自分ならではの創造に活かしています。

『New Dream』の講評をお願いします。

ジュン こちらも素晴らしい作品ですね。SF調でありながらノスタルジックさも随所に感じられて、作り手の意図がしっかり込められていました。

トシユキ 情景や建物にしっかりとした世界観があり、構成や上空からの空撮のような切り取り方にもセンスを感じました。登場人物が何をしているかが明確にわかるよう、動きやポージングなどに意味を持たせていくと、よりイラストの抱える物語が広がると思います。

背景イラスト部門賞は全体的にどのような特徴が見られましたか?

トシユキ 背景というモチーフを通じて世界そのものを能動的に伝えようとする学生さんが増えてきたのを感じました。

ジュン 今回は例年より比較的たくさんの応募がありましたね。目立つ絵というよりはその世界がまさに存在しているような表現の絵が多い傾向があり、非常に興味を引かれる作品が多かったです。しかも今年はこの部門から大賞が出たことから、背景イラストを手掛けられている方にもさらなる可能性が提示できたのではないかと思います。

3DCG部門賞(1名)

▲『侵入者』
▲『ゴンドラ』
▲『繁茂した洞窟』
▲『着陸』

ペンネーム:笹ラブパンダさん
『侵入者』
荒廃した世界に突如現れた謎の飛行物体とそれを見つめる二人の人物。
こだわりは、くすんだ色や破片を散りばめて廃れた雰囲気を出し、メインの飛行物体が際立つように、画面のコントラストを意識したところです。

『ゴンドラ』
荒廃した世界で、とある謎を解明するためにゴンドラを使って2人の人物が移動するシーンです。
こだわりは、体重がかかった時にゴンドラがわずかに揺れるというアニメーション表現と、室内部分と屋外部分を青とオレンジのライティングによる対比で表現したところです。

『繁茂した洞窟』
洞窟を探索してたどり着いた先に、謎のロボットの住処を発見したシーンです。
こだわりは、ロボットそれぞれに個性を感じられるようなアニメーションをつけたところ、画面の両手前に岩を配置して、住処内の空間の広がりや明暗のコントラストによる遠近感を感じられるような画づくりをしたところです。

『着陸』
はるか遠い未来の飛行物体が着陸するシーンです。
こだわりは、風によってなびくリュックの紐や舞い散る紙くず、煙などで臨場感を演出し、着陸時に点滅するライトや遠景の飛行物体のライトが地面に反射することで映像にリアリティを持たせたところです。

上記の4作品について、講評をお願いします。

ジュン 内容もさることながら、4作品すべてがアニメーションとして成立しており、審査員の心を掴んだ作品ですね。一つひとつのモチーフに非常に強いこだわりを持って取り組んでいて、自身の世界観を提示する手段としてアニメーションを用いたことが成功していると思います。

トシユキ ストーリーを感じられる要素が取り入れられ、意図がしっかり伝わってくる作品でしたね。ディストピア的な世界に合わせてあえて汚く表現するこだわり方も良かったです。個人的には『繁茂した洞窟』で見られるカニのデザインのロボットが好きです。すでにこの世界にいない生物を懐かしむ人類のノスタルジーみたいなものが感じられて、魅力的な世界観を構築していると感じました。

3DCG部門では、どんな作品に期待していましたか?

ジュン 前回までは静止画の作品が受賞していましたが、必ず静止画が良いということではなく、アニメーションでも世界観をきちんと提示してくれる作品があれば受賞できると考えていました。そうした観点から、今回満場一致で選ばれたのが先ほどご紹介したアニメーション作品です。なお、この部門は今回キャラクターイラスト部門に次ぐ応募数で、内容も背景アニメーション、リグなど様々なアプローチがあり、一番幅の広がった部門でした。

ゲームコンテンツ部門賞(2名)

▲『Paletopia』

ペンネーム:巫女ラッシュさん
『Paletopia』は塔を登ることを題材にしたクライミングアクションゲームです。プレイヤーは落下の恐怖と闘いながら塔の頂を目指します。主人公の目的は塔の各階層にエネルギーを接続しその機能を回復することです。エネルギーケーブルを維持し、様々な障害を乗り越えなくてはいけません。

『Paletopia』はどのような点が評価されましたか?

ジュン これは実際にプレイできるゲームというだけでなく、本当に面白そうなゲームになっていましたね。学生さんが作ったものとしてではなく、いわゆるゲームタイトルとして「ここをこうした方がいい」というアドバイスができるレベルまで仕上がっていました。

トシユキ 「こうしたらもっと良くなる」「この要素を追加したら面白くなりそう」などのアイディアを出しやすい、すごく可能性を秘めた作品でしたね。「壁を登る」というシンプルな行動をどうゲームに落とし込むかが肝になっており、その点しっかりとした土台ができていたのが強みだったと思います。


▲『逢魔ケ時ノ件 (オウマガトキノクダン) ―新感覚ドラマティック数字当てTRPGボードゲーム!―』

ペンネーム:にわかえし@リッキーさん
ゲームマスター(GM)対プレイヤー(PL)の対戦型のボードゲームです。
GMは事前にシナリオを数字当てゲームに組み込んでおく必要があります。 PLは基本的に数字当てを行うのですが、その道中でGMから渡される情報からシナリオの謎を推理します。
見事、数字当てに成功した際にシナリオの謎を解明できているかどうかでエンディングが変わります。

今作品には、シナリオ「逢魔ケ時ノ件」が同梱されています。
妹の死。そして時空の歪み。気が付くと目の前には一週間前の景色。
あなたは時空警察の長官として、派遣した調査員に指示を出し事件を解決しよう!
怪しいのは妖怪退治部の5人……。この中に“ループさせている犯人”がいるようだ……。
時空を移動できる特権を駆使して“事件の発端”を未然に防ぐことができれば……。

『逢魔ケ時ノ件 (オウマガトキノクダン) ―新感覚ドラマティック数字当てTRPGボードゲーム!―』はどのようなところを評価しましたか?

ジュン ボードゲームの企画はこれまでも一定数応募がありましたが、これは圧倒的なわかりやすさと面白そうなルール設定で、どうやったらゲームを楽しくできるかを作者が突き詰めていた点を評価しました。確か、トシユキさんはかなり推していましたよね。

トシユキ はい。これはかなりプッシュしました。私自身、昔数字当てゲームやTRPG(テーブルトークRPG)をよく遊んでいて面白さが肌感でわかるのですが、この作品は数字当てゲームとTRPGのような会話劇による進行、ダイスによるランダム発生要素を組み合わせて、面白さや難しさを何倍にも引き上げています。このゲームシステムをベースに様々なかたちで展開できそうなところにも魅力を感じました。

ジュン 作者の方は大変試行錯誤を重ねて作ったそうで、ゲームを作る上で考えたり葛藤したりしたことがしっかり活かされていると感じた作品でもありますね。要素が盛り込めそうなところをあえて極端にそぎ落としている印象もあり、ゲームの面白さへの感度が非常に高い方だと思いました。

ゲームコンテンツ部門への応募作にはどのような特徴がありましたか?

トシユキ ゲームとして実際にプレイできる作品が本当に増えました。今後も前回のように企画書で受賞できる場合もあるとは思いますが、体験が加わると見方が変わるので、実際にプレイできるのは大きなアドバンテージです。そもそも「作りきる」こと自体が難しいことですが、実際に作ってみることでゲームに対する解像度は上がるので、動かせるものを作ることに挑戦する人が増えているのは喜ばしい傾向でもあります。今回の受賞作をふまえて、来年どんな作品が送られてくるかが楽しみです。

ジュン 今回、ゲームそのものの応募が多い中でも、グラフィックのクオリティーが一定以上あり、かつ面白そうでプレイアブルな作品が賞を獲得しました。引き続き企画書で応募していただくのももちろんありですが、受賞を目指す方には「その企画書は他のプレイアブルなゲーム作品に対抗できるものか?」という点は問いかけていきたいと思っています。

広告・映像・衣装デザイン部門賞(2名)

▲『たべまるズ』

ペンネーム:鯨津こーすけさん
たべものあにまるズ、略してたべまるズ。
動物が捕食者から身を守るために行う“擬態”

だけど……

たべものに“ギタイ”しちゃった⁉
バレてない……?けどどっちみち食べられる!
そんなおっちょこちょいなアニマルたちをみつけて あつめて つかまえて……
かわいい絵柄にシビアな現実!まさに「今までとは一味ちがう!」グッズキャラクターシリーズです!

『たべまるズ』の講評をお願いします。

ジュン 広告そのものを制作した作品です。圧倒的な密度があり、拡大すればするほど良さが伝わってきましたね。また、デフォルメでもリアルでもない珍しいタッチのアプローチや作品の展開が非常に新鮮でした。作品一つひとつに対する考えが徹底されていて、それをまとめる画力や多彩に展開する能力もあり、イラストを描くだけでなくグッズを制作して実際に販売しているのも評価された点です。

トシユキ 非常に不思議な魅力を感じました。食べ物にしきらず動物の生き物らしさも残して、境界すれすれのラインをコミカルさとデフォルメで成立させています。独特のバランス感覚で審査員の心に残り続けた作品だったと思います。作品数の多さやグッズ展開を踏まえてデザインしている点も良かったですね。

ジュン 動物に対する距離の取り方が独特ですよね。これ以上かわいくなると成り立たないし、食べ物のように見えてしまうと伝わらない。本当にギリギリのラインで作っていて、作者独自のセンスが発揮された作品であると感じました。


▲『レインボとあこがれの時』

ペンネーム:うずらうおさん
これは、毎朝同じ時間に起きてその日の天気を決めるという仕事をしているロボット「レインボ」が主人公の3DCGアニメーションです。

ロボットが壊れないよう雨が禁止されたこのドーム内において、毎朝同じ時間に起きてその日の天気を決める仕事をしているロボット「レインボ」はとても退屈であり、雨への憧れを抑え込んで同じような毎日の「時」を過ごしていました。ある時、ついにレインボはついに気持ちを抑えきれなくなり雨のボタンを押そうとするのですが、それに呼応したように嵐で天井に穴が開き外の雨が入ってきてしまいます。

「時」というものは絶対的で規則的なもののようにも思われますが、人によって、体調によって、そして感情によって長さや速さが相対的に変わるように私には感じられます。決意を抱いて毎日同じことの繰り返しである日々を抜け出すレインボのストーリーを通して、観た人が自分自身の感覚を大切にしようと思っていただけたら嬉しいです。

『レインボとあこがれの時』はロボットを主人公にした3DCGアニメーションでしたね。

ジュン こちらは今回送られてきた映像作品の中でも特に面白く、審査員の支持が厚かった作品ですね。ストーリーのわかりやすさや内容のシンプルさも評価されました。

トシユキ 王道の作品ではありますが、切り出し方や伝え方などに引き込まれるものがありました。ストーリーの構成が上手いのでロボットが本当に愛らしく感じられて、映像を作る総合力の高さ、センスの良さという点でかなり可能性を感じた作品です。特にロボットが傘を差す場面のギミックの加え方やエッセンスの付け方が上手くて、「かわいい……」と正直、私はメロメロでした(笑)。

広告・映像・衣装デザイン部門賞を全体的に見ていかがでしたか?

ジュン 今回、この部門でもアニメーションそのものや広告そのものの応募がありましたが、まだみなさんが何を送ればいいのか迷っている印象もありました。まだまだこれからの部門なので、広告映像や衣装デザインを作った方はぜひ送っていただきたいですね。他の部門に比べて受賞の可能性が高いという点でもおすすめです。

トシユキ 部門設立から2年目でしたが、尖った作品や王道の展開でしっかりと表現した作品が受賞し、ある程度指針もできてきたかなと思います。映像作品の応募は増えたのですが、一方、広告展開などを見せてくる学生さんはまだ少ない印象ですね。幅広く挑戦してデザインセンスが発揮できると思いますし、この先もっと面白くできる部門なので、次回も引き続き期待しています。

高校生部門賞(1名)

▲『GENESIS』

ペンネーム:TTM81さん
少年がジャンキーなガレージの中でスクラップパーツからメカを組み立てたシーンです。とにかくリアリズムを追求し、自分が少年だったらと想像しながら工具や部品のアセットを追加していきました。また、ハリウッド映画を参考にしながらコンポジションにこだわり、ポストプロセッシングでは画像にノイズを加えて映画のワンフレームのようなショットを目指しました。少年が本当にこの場で作業していたかのように感じていただければ幸いです。

高校生部門賞の受賞作『GENESIS』への講評をお願いします。

ジュン 高校生以下が応募できるこの部門の選考では、審査員が自身の高校生時代を思い出さざるを得ないのですが……(笑)、この作品は審査員それぞれが「自分が高校生の時にこういう作品を作れたか?」という気持ちで見ていました。

トシユキ そう、「無理無理無理」という感じで(笑)。

ジュン 非常にコンセプチュアルな3DCG作品で、「すごい」の一言に尽きます。

トシユキ まだ高校一年生の方(取材当時)だそうで、それだけ若くしてこの世界観を作れるということは、クリエイティブに対する意識が非常に高いのだと思いました。日頃から純度高く学んだり観察したりしていないとここまでの解像度で作品は作れません。いつもしているであろう努力が作品にも出ています。10代でこのクオリティーを作ることができるなら、社会に出る頃には一体どうなっているんだろう?と、戦慄しましたね。

高校生部門賞にはどのような作品が集まりましたか?

ジュン 高校生部門でもゲーム作品そのものの応募が増えて、ゲームづくりの裾野が非常に広がったなと感じました。また、この部門は「高校生以下」から応募が可能なのですが、小中学生の方からの応募もすでに珍しくなくなりましたね。

トシユキ 今は学生でもプロと同じツールを手に入れられる時代ですから、高校生部門でも技術が高い作品が増えてきました。とはいえ、大事なのはツールを習得することではなく、何を伝えたいか、相手にどう感じてほしいか、自身がクリエイターとして何をやりたいのかを追い求めることが非常に大切です。技術的に未熟でも思いがこもった作品ならば受賞する可能性は大いにあるので、ぜひみなさんの熱量や可能性をこの部門では叩きつけてほしいです!

「大賞」「部門賞」の表彰式が開催されました

今年度のクリエイティブコンテストでは、「大賞」「部門賞」の受賞者のみが対象ではありますが、来られる方をお呼びして先日ささやかな表彰式を執り行いました。

2020年のコロナ禍で始まったコンテストだったため、授賞式は今年度が初の開催でした。表彰式の会場に集まった受賞者は当初緊張した様子でしたが、その後の社内見学ツアーでは社内スタッフに対して熱心に質問する様子も。合間の時間にも受賞者同志の交流が行われ、最後にはすっかり打ち解けた様子でした。

あらためて、受賞したみなさま、おめでとうございました!


以上、「大賞」「部門賞」作品と表彰式の様子をご紹介しました。
「審査員賞」「学校賞」の作品はこちらの記事でご紹介しておりますので、ぜひご覧ください!