サイゲームスのアートが上野の森美術館に大集結!「Cygames展 Artworks」企画・制作担当者が語る見どころ
これまでサイゲームスのゲームを彩ってきた数々のイラスト及びデザインを集めた展覧会「Cygames展 Artworks(以下、Cygames展)」が、2023年9月2日(土)~10月3日(火)に上野の森美術館で開催中です。
『神撃のバハムート』『グランブルーファンタジー』など、人気ゲームのアートワークが集結し、「最高のコンテンツの系譜」をたどる空間になっているという同展覧会。今回は企画・制作を担ったデザイナー部の担当者に見どころについて話を聞きました。
目指したのは
「最高のコンテンツの系譜」を感じられる美術展
まず、「Cygames展」の企画が立ち上がった経緯を教えてください。
現在デザイナー部には約1300名のスタッフがおり、毎日様々なクリエイティブを制作しています。
サイゲームスはこれまで美術展を何度か開催しており、今までは背景アートやモンスターアートなど特定のクリエイティブに焦点を当てた展示を行ってきました。
その中で、いつかキャラクターや武器、衣装などすべてのクリエイティブを網羅した展示ができたら、と構想していたのが「Cygames展」を企画した経緯となります。普段からゲームをプレイしてくださっているユーザーの方々に加えて、イラストやデザインにも興味のある学生さんやクリエイティブを生業としている方々にも足を運んでいただけることを目指しました。
ゲームのアートワークはデジタルが中心ですが、それをあえてリアル展示にしようと決めた理由はなんですか?
ゲーム画面で見るのとはまた違う発見や体験をしていただけたらという想いがあります。普段ゲームで目にするイラストやデザインは、あくまでゲーム全体の中の一要素に過ぎません。美術館という場で大きな絵画のように、あるいはインタラクティブアートのように展示をご覧いただくことで「こんな風に描かれていたんだ」という新たな気付きがきっとあるはずですし、ゲームを未プレイの方にもソーシャルゲームをアートとしてお楽しみいただけたらと思っています。
「Cygames展」の会場を上野の森美術館に決めた理由、経緯などを教えてください。
今回、ゲームアートを「美術」として取り扱いたいというのも目的の一つでした。そのため「美術展」として展示ができる美術館を探しました。中でも、上野の森美術館は格式高いアートとあわせてエンタメ系の展示もよく行われていて、今回実施する展示会の目的との親和性が高いため、この会場に決定しました。
「Cygames展」のコンセプトはどのようなものでしょうか?
展覧会のキャッチコピーは「最高のコンテンツの系譜」です。サイゲームスの代表的な作品や、すでに終了した過去作品などを基本的にはリリース順に沿うかたちで展示しているので、順路通りに進むとサイゲームスの歴史をたどれるようになっています。
こだわったのは、ゲームユーザーのみなさんに向けたファンイベントのような雰囲気とは違う、より削ぎ落とした、シンプルかつフラットな状態でゲームアートの魅力を感じてもらうことです。そのため、各作品の推しポイントを抽出しつつ、全体として「サイゲームスの系譜」を感じてもらえるようなレイアウトを心掛けました。
会場では、美術展ならではの展示や見せ方もあるのでしょうか?
『Shadowverse』のエリアでは、ゲームに登場するすべてのカードを並べました。全カードが揃っている光景はゲームでは見ることができないので、リアル展示ならではですね。また、会社の象徴でもあるバハムートの大きな像を設置しました。会場で見るとかなりの迫力を感じられると思います。
バハムートは、展覧会のビジュアルイメージにもなっていますね。
はい。バハムートはコーポレートロゴにもなっている会社の顔です。コーポレートカラーの黒を基調としたイラストで、展示会ならではの「サイゲームス」をイメージしました。
展示内容を検討していく中で、社内で各プロジェクトのスタッフにインタビューした際、『神撃のバハムート』制作チームのスタイルや動き方が別のプロジェクトにも派生していった……という話を聞くことができたんです。社内のどのプロジェクトにも同作へのリスペクトがあるとあらためて知ったので、やはりバハムートでこの美術展のビジュアルイメージを表現しようと考えました。
また、今展示のために書き下ろした集合イラストも、テーマである「系譜」や「DNA」を絵の具に乗せて表現しています。
九つのエリアで構成された「Cygames展」
見どころ・映える撮影スポットは?
ここからは、「Cygames展」の見どころをお聞きします。それぞれの作品展示について教えてください。
「Cygames展」は『神撃のバハムート』をはじめ、サイゲームスを代表する七つの作品と過去作品、さらに今後リリース予定作品を展示した計九つのエリアで構成しました。
■『神撃のバハムート』
サイゲームスのプロジェクトの中で最も歴史が長く、かつ会社の象徴でもある『神撃のバハムート』。刻まれた歴史を感じてもらえるような映像やゲーム内の人気イラストを中心に展示します。
■『Shadowverse』
ゲームに登場するすべてのカードをデジタルタッチパネル上に並べ、触れるとカードが進化するインタラクティブな展示を実現。2022年にリリースしたリアルカードゲーム『Shadowverse EVOLVE』のカードも合わせて展示します。
■『グランブルーファンタジー』
作品に登場した印象的なイラストとともに、膨大な数の設定資料やイベントロゴを展示。『グランブルーファンタジー』のこれまでの歩みが伝わるエリアにしました。
■『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ(配信元:バンダイナムコエンターテインメント)』
ゲーム内で活躍する190人のアイドルが全員集結。一人ひとりのイラストやプロフィールを紹介するとともに、ライブイベントで実際に使用した衣装を展示する他、ライブ映像も楽しめるエリアにしました。
■『プリンセスコネクト!Re:Dive』
『プリンセスコネクト!Re:Dive』の展示ではキャラクターにフォーカスを当て、メインキャラのイラスト、キャラモーションなどが出来上がるまでの原画やラフ、設定資料を大量に展示。キャラクターを輝かせるための細かいデザインの工夫などが楽しめるエリアです。
■『ワールドフリッパー』
大きなイラストを制作して展示。ドット絵が魅力の作品ということで、ドットを重ねてゲーム画面をリアルに再現し、あえてのアナログな手法・表現でドット絵の面白さを伝えています。
■『ウマ娘 プリティーダービー』
『ウマ娘 プリティーダービー』はシナリオを非常に大切にしているコンテンツであるため、開発者たちが作品に込めた想いを伝えるべくメインストーリーを伝える展示に。第1章から最終章まで各章の主人公たちがたどった物語をイラストや制作スタッフたちのコメントとともに紹介し、エリア内のモニターでレースシーンやライブシーンの映像も楽しめるようにしました。
■過去作品
サイゲームスの過去の作品から、『三国志パズル大戦』『ナイツオブグローリー』『リトル ノア』『ドラガリアロスト(配信元:任天堂株式会社)』の4タイトルのイラストを展示。過去に遊んだことのある方に懐かしんでもらえるとともに、作品ごとにテイストの異なるイラストからサイゲームスがこれまでにバラエティー豊かで個性的なタイトルを生み出してきた、という歴史を感じていただけるエリアにしました。
■今後のリリース作品
現在開発中の新しいタイトルを展示。『グランブルーファンタジー リリンク』『GARNET ARENA: Mages of Magicary(ガーネット アリーナ:メイジ オブ マジカリー)』(※)の2作品のプロモーションムービーやコンセプトアートが楽しめます。
※ 『GARNET ARENA: Mages of Magicary(ガーネット アリーナ:メイジ オブ マジカリー)』 ……開発中のコンシューマー向け完全新作アクションゲーム。
(英語表記)Garnet Arena: Mages of Magicary
(簡体字表記)幻红战域:魔社术士之争
(繁体字表記)幻紅戰域:魔境鬥宴
(韓国語表記)가넷 아레나: 매지커리의 마법사들
美術展はグッズを買うのも楽しみの一つですが、「Cygames展」ではどんなグッズが購入できるのでしょうか?
各作品のグッズはもちろんのこと、展覧会オリジナルのグッズも販売します。ラインナップは、クリアファイルやポストカード、フレームマグネット、Tシャツ、複製原画、スケボー板など。アートが好きな方向けの趣向を凝らしたデザインのものから日常使いしやすいものまで揃えました。
※グッズは会場とサイゲームスの公式オンラインショップ「CyStore」で販売いたします
※「CyStore」でのご購入には、予約期間中【2023年10月4日(水)15:00~11月6日(月)14:59】のご予約が必要です
会場には、SNS投稿をしたい人向けの撮影可能な場所もあるのでしょうか?
「Cygames展」は一部エリアを除き、撮影OKです。SNSへの投稿も可能ですので、来場された方はぜひ記念に撮影をお楽しみください。おすすめの撮影スポットは立体バハムート像やデジタルパネルが並んだ『Shadowverse』エリア。あとは、『グランブルーファンタジー』エリアも天井までイラストが飾られていて壮観なので、SNSでも映えるスポットだと思います。
アプリ・ARなど
展覧会をより楽しめる施策も
今回、「Cygames展」専用のガイドアプリを制作していますね。
「Cygames展 Artworksアプリ」は展示をより楽しんでいただくために開発したものです。展示作品に関する解説を読めるのはもちろんのこと、声優さんのキャラボイスによる音声ガイドもあり、それぞれのキャラクターと一緒に作品の世界に没入してイラストを見る……といった楽しみ方もできます。
アプリ開発はどのように進めたのでしょうか?
サイゲームスで展覧会をやるならば「すべてを最高のクオリティーで」と考えていたので、ガイドアプリを作ることもかなり早い段階で決めていました。私自身はこれまでアプリ開発の経験がなかったため、エンジニアチームと相談して進める中で苦労もありました。しかし、展覧会でアートを展示するだけにとどまらず、会社の技術力を活かしてガイドアプリ開発まで実現できたことは非常に意味があると考えています。
展覧会ではARを活用した演出も楽しめるとのことですが、具体的にどんなものになっているのでしょうか?
ガイドアプリに実装したARカメラを会場のバハムート像にかざすと、マグマや雷などのAR演出が入ります。これもサイゲームスが培ってきた技術ならではのものですね。
なるほど!それはやってみたいですね。ARの演出で工夫したのはどのような点ですか?
バハムート像に対してどういった演出をするか、というのはかなり議論しました。3Dで動きを付けたりしてしまうともはやAR表現ではなく映像表現になってしまいます。また、ブレスを吐く、音響をつけるなどを行うとバハムート像以外の展示とのトーンが合わず展覧会全体の雰囲気を壊しかねません。静的だけれど印象の強い演出にこだわりました。
展覧会では図録も販売していますね。
図録は展示作品の他に各プロジェクトのアートディレクションについての記事などを掲載しています。400ページにも及ぶボリュームに、サイゲームスのものづくりの系譜をまとめました。なお、海外のユーザーの方に読んでいただけるよう英訳も掲載しています。
★「Cygames Magazine」では、図録の一部を無料公開。 イラストチーム歴代マネージャーのインタビューをお読みいただけます
※図録は会場とサイゲームスの公式オンラインショップ「CyStore」で販売いたします
※「CyStore」でのご購入には、予約期間中【2023年10月4日(水)15:00~11月6日(月)14:59】のご予約が必要です
気を付けたのは展示における
「面白さ」の軸がぶれないこと
「Cygames展」を実施する上でチャレンジした点を教えてください。
私たちは普段クリエイティブを“作る”立場ですが、展覧会を企画するにあたって、クリエイティブを“依頼”する立場になったので、どう伝えてどう進めていくか?という点が課題でした。デザイナー部と各プロジェクトの考えをすり合わせながら進めなくてはなりません。それだけに何かあったらすぐに声を掛けるなど、コミュニケーションを重ねて進めていきましたね。
たくさんのプロジェクトや職種の人が関わる中、どのようなことに気を付けましたか?
各プロジェクトとうまく連動しつつ、なおかつ展示全体として「面白さ」の軸がぶれないようにしていました。美術として展示した際に魅力あるものになるかを考え、気を付けていましたね。さらに、企画を進めるうちに現場スタッフの話を聞いて「こんなふうに作っているんだ」とリスペクトを感じる部分が多かったこともあり、各プロジェクトが大切にしている「〇〇イズム」をきちんと展示に落とし込めるよう意識しました。
進める上で、特に難しかったのはどんなところでしたか?
美術館のスケジュールを押さえた時点を「Cygames展」企画のスタートとすると3~4年程経っていますので、途中から参加するスタッフたちに展覧会の趣旨や会社のマインドを伝えて浸透させていかねばならないことには苦心しましたね。加えて、個性の強いプロジェクトがたくさんある中でオーダーや要望などを一つにまとめていく難しさも感じていました。
とはいえ、ミッションステートメントに“常に「チーム・サイゲームス」の意識を忘れない”と掲げられているおかげで連動していけた部分もあり、長い間様々な仕事を一緒に取り組んできた信頼関係によって、「Cygames展」の企画もやり抜くことができました。振り返ってみて、ずっと楽しくモチベーション高く取り組んでいけた良いチームだったと思います。
これまでにない機会に
作品の裏側や新たな発見を楽しんでほしい
「Cygames展」の企画を進めていく中で、心に残ったことがあれば教えてください
過去の作品を見直したときに、自社の作品ながら「めちゃめちゃ絵が上手いな」とあらためて感じました。いわゆる“デザイナー畑”の自分たちから見てもアーティストたちがこだわって描いているのがよくわかりましたし、元々好きだった作品のイラスト制作の奥にあるものを知れたのも楽しかったです。一つの作品を作るためにどれだけ情熱を込めているか、話を聞けたことも非常に勉強になりました。
最後に、「Cygames展」にご来場いただく方に向けて、メッセージをお願いします。
サイゲームス全体の展覧会というこれまでにない機会、ぜひご来場の上「最高のコンテンツの系譜」を感じていただければと思います。好きな作品の裏側を知ったり「このゲーム面白そうだから遊んでみようかな」など新たな発見をしたりして、展示を楽しんでいただけたらうれしいです!
以上、「Cygames展 Artworks」企画・制作者インタビューをお届けしました。
- 「Cygames展 Artworks」
- 上野の森美術館にて2023年9月2日~2023年10月3日まで開催しています。ぜひご来場ください!