【マネージャーの思考】シナリオ本部の組織づくり「クリエイター一人ひとりの夢や希望に寄り添って」

「マネージャーの思考」は、サイゲームスの各部署のマネージャーから、組織づくりの考え方や今後の展望を語ってもらう連載です。今回はシナリオを制作するシナリオチームと、その制作管理を行う制作管理チームを束ねる「シナリオ本部」の本部長・ショウゴにインタビューを実施。シナリオ本部立ち上げの背景から、どんな人に来てほしいのか、組織の展望までを語ります。

シナリオ本部本部長ショウゴ
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大学時代からゲームのレビュー雑誌でライター業を経験し、フリーランスのシナリオライターを経て2017年にサイゲームスに合流。『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ(配信元:バンダイナムコエンターテインメント)』『ウマ娘 プリティーダービー』でシナリオライターを務める他、『ドラガリアロスト(配信元:任天堂株式会社)』には開発段階からシナリオチームのリーダーとして携わる。2018年にシナリオチームのマネージャーに就任し、2022年から本部長を担う。

きっかけはノベルゲームの流行
長いフリーランス時代を経て

まずはショウゴさんのこれまでのキャリアを教えてください。

ライターを始めたのは、大学生のときにゲームレビュー雑誌のライターに応募して採用されたのがきっかけです。大学では演劇を専攻しつつ、外では小劇団の舞台に出演して……と、大学時代は好きなことをやっていました。雑誌社からライターとして評価はされていましたが、その当時は直接表現する演劇で食べていきたいと思っていました。

そのうちバブルが崩壊して就職しなくてはというタイミングで、声で生計を立てられないかなと思い、大手声優事務所の養成所に入りました。東京校と大阪校があって、東京校の卒業公演で舞台の主演を勝ち取り、プロダクションに合格したんですよ。

細かいことは割愛しますが(笑)、声優のお仕事はそんなに取れなくて。そこから色々とやっていく中で、ノベルゲームブームがやってきたんです。急にブームが来たので、書き手が不足していて、「書いてみない?」という誘いをいただきました。当時はお金もなかったので、「やってみます」と始めてみたら評判が良く、口コミでお仕事をいただいて、約20年フリーランスでシナリオライターをしていました。

すごい経歴ですね。フリーランスでシナリオライターをしていた期間が長かったようですが、そこからサイゲームスへの入社を決めた理由は何でしょうか?

約5年前に、ちょうど担当していたシリーズがひと区切りついたことがきっかけです。私は自分が書いたものは我が子だと思っているので、我が子とずっと寄り添って生きていくものだと思っていたのですが、そのときにシリーズが気持ち良く収まり、次のステップに進んでもよいのでは、というタイミングができたんです。

サイゲームスに入る前から、自分は「最高のものが作りたい」という気持ちだけでやってきましたし、「最高の仕事」を常に求めていました。仕事の前提として最高を求められる環境に身を置きたいと思い、社としてそのポリシーを掲げるサイゲームスに合流を決めました。

サイゲームスに入った後はどんなタイトルに関わってきたのか、教えてください。

『アイドルマスター シンデレラガールズ(配信元:バンダイナムコエンターテインメント)』『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ(配信元:バンダイナムコエンターテインメント)』でシナリオライターを務めて、2018年にシナリオチームのマネージャーに就任しました。その後、『ドラガリアロスト(配信元:任天堂株式会社)』には開発段階からシナリオチームのリーダーとして携わり、無事リリースされた後、現在はシナリオ本部長と『ウマ娘 プリティーダービー』のシナリオライターを兼任しています。

シナリオ制作管理の高度化に伴い設立
個人の成長をサポートできる場へ

シナリオ本部は半年前に設立されたばかりと聞きました。どのような組織なのでしょうか?

シナリオ本部は、ゲームのシナリオを制作する「シナリオチーム」と、シナリオの納品を滞りなく進めるために制作を管理する「シナリオ制作管理チーム」の、2つの組織を束ねる部署として2022年4月に設立されました。

元々「シナリオ制作管理チーム」はなく「シナリオチーム」のみだったのですが、組織を2つに分けることになり、それらを統括する部署としてシナリオ本部が設立されました。

「シナリオチーム」から「シナリオ制作管理チーム」が派生したということですね。どういった理由で2つに分かれたのでしょうか?

理由はさまざまあるんですが、大きな要因は「制作管理の高度化」です。

運用初期の頃は、タイトルのシナリオリーダーがスケジュールを出し、監修まで行っていました。また、台本を作ったり、収録してきた音声にノイズが混じっていないか、間違っていないかをチェックしたりするスタッフも区分けされていませんでした。

他チームとの複雑な連携が必要な上、リーダーが受け持つ領域が多かったので、業務効率を上げるために補佐する人(=制作管理)を入れてみようというのが最初の流れです。当初は単純ワークだったんですが、そのうちスケジュールを管理してくれる人が合流したり、文章の校正をしてくれる専門家が加わったり、音声に関して深い知識を必要とする専門職ができたりと、シナリオ周りのサポートの仕事も高度化していきました。シナリオライター、シナリオプランナーはシナリオに関してはプロフェッショナルですが、音声収録やスケジュール管理などに関してはそのプロフェッショナルに任せた方がより高いクオリティーを追求できます。そこで「シナリオ制作管理チーム」が新設されたというわけです。

まだ設立から日が浅いですが、これまでやってきた施策・これからやっていく施策を教えてください。

「シナリオ制作管理チーム」が新たにできて、これまで一括でやっていた制作管理のマネジメント業務を引き継いだのがここ半年の流れになります。具体的には、組織の立ち上げと業務のティーチング、各スタッフの個性や目標等をシナリオ制作管理チームへ共有、というところでしょうか。

まだしばらくは、シナリオチームと制作管理チームそれぞれで牽引役を育成することが重要だと思いますが、これからのシナリオ本部には「より個人が成長しやすい環境づくり」が求められていると考えています。

昔は今と比べて開発期間が短かったので、1つのプロジェクトが終わると次のプロジェクトへ、といろんなプロジェクトに関わることができました。そういった“放浪の旅”でさまざまなことを学ぶ機会があり、自然に成長ができていたのだと思います。

しかし、最近は10年、20年と続く息の長いコンテンツが増えてきましたよね。1つのプロジェクトだけに入っていれば当然、外部からの刺激も少なく、向上心が高い人ほど閉塞感を感じがちだと思っています。でもシナリオって10年やってようやく見えてくるキャラもいるんです。同じ人が10年いてこそキャラの深掘りができるという側面もあるので……。

「個人の成長」と「時間をかけた深掘」、この一見矛盾する2つをどう解決して、夢、希望、挑戦をどうやってシステムの中に組み込むかがシナリオ本部の大きなミッションの1つなのかな、と考えています。

組織づくりや人材育成で大切にしていること

現在の「シナリオチーム」「制作管理チーム」はどんな人で構成されていますか?

全体の男女比は半々くらいです。全体の年齢層も大体30代前半くらいが平均だと思います。タイトルによっては女性が強いリーダーシップを発揮していると感じるチームもあります。

組織づくりや育成において大事にしていること、モットーなどを教えてください。

どんなジャンルのプロジェクトに行っても通用するような人材を育成したいと考えています。ゲーム業界は数十年後、どうなるかわからないじゃないですか。これまでも流行っていたものが急に下火になったり、逆にスマートフォンが発売されて新ジャンルが一気に過熱したりすることがありました。ですので、シナリオライター一人ひとりが持ち味を発揮できるようにアドバイスしつつ、適応力の高い人材に育ってくれればと思っていますね。

感動して夢を見て
同じものを作りたいと思った人に来てほしい

シナリオ本部を一言で言うと、何でしょうか?

「初めて空に浮かんだ小島」です。
これまではシナリオ本部のスタッフも地上にいて、みんなが健康に仕事に取り組めているか、最高のシナリオづくりができているかを、真横から見ることしかできませんでした。丁寧にケアはしてきましたが、業界全体の未来まで見わたす広い視野は持てなかったんです。

シナリオ本部ができてからは少し高い視点から島を見渡すことができるようになって、「あれ、あっちの水が干からびているぞ」「天気が怪しいからこのチームはこっちに導こう」とチーム全体を俯瞰しながら、かつ未来志向のリスク察知ができるようになりました。

シナリオ本部の今後の展望について教えてください。

シナリオ本部自体も大きくしたいと思いますし、シナリオチーム、シナリオ制作管理共に採用には力を入れていきたいです。

昔はゲームシナリオから有名なライターや大先生になる人が出たのですが、今はなかなかそうなりにくいという現状があります。1人の作家性より全体の作品性が重んじられるようになったといいますか。でも、憧れの人がいないと追いかける人も出てきづらいですよね。憧れられる人を作れるのか、と言われるとそれも難しいとは思いますが……。
だから「もっと夢を見られる仕事だよ」と伝えて、新たにこの職種を目指してもらえる環境を作る方法を模索しています。

どのような人にシナリオ本部に来てほしいかを教えてください。

サイゲームスのゲームをやって「これを作りたい」「目指したい」と思った人はどんどん応募してほしいです。大事なのは「感動」ですね。シナリオに感動して、同じように感動を与えたいと強く強く感じた人に来てほしいと思います。

採用面接では応募してくださった方のどんなところを見ていますか?

豊富な経験こそ第一だと思われがちですが、実はそうでもないです。シナリオライターは選考の中で課題を提出していただきじっくり読んで採用しているので、あまり経験がなくても、シナリオを書く素養や伸びしろがあれば入っていただくことも多いです。

私個人の意見ですが、シナリオライターにとって大切な能力は「ユーザーにどんなふうに感じてもらいたいか狙いを定めて、その狙いを満たせるものを作る力」だと思っています。例えば道路の「止まれ」という標識は車を止まらせる力を持っていて、その狙いのための言葉と形をしています。料理で例えると、新作のトマトラーメンを作るときに「酸味を強く感じさせた後にふわーっと甘みが湧きたってきて、地中海系の後味を残したい」というように、最終的にお客さまをこう楽しませたいという目標をはっきりと持っていて、正確に作り込んでいける人がシナリオライターとして能力が高いと思っています。サンプルはそういう部分を見ますね。

あとは、好きなことについて語るエネルギーが強い方かどうかですね。やはり何かを伝えたいという熱量が強いというのはシナリオライターに向いている要素だと思っています。

会社としての繋がりというよりは同じ業界に生きる人として、一人ひとりにシナリオライターとして必要なスキルや考え方を継承していきたいと考えています。シナリオ本部に合流することで得られる経験が、物書きとして生きていくうえで必ずプラスになるようにしていくつもりなので、強い想いを持った人にぜひ応募してほしいです。ぜひ。

最後に、ショウゴさんはサイゲームスのどんなところが好きですか?

「最高のコンテンツを作る会社」。この一点に尽きますね。ゲーム業界は競争が激しく、最高を目指して作られたものでないとユーザーのみなさんに選んでいただけないと思います。「最高のコンテンツを作る会社」というビジョンに強くシンパシーを感じていますし、いちシナリオライターとしてもこれを目指さず何のために仕事をしているのかと思っています。このビジョンが好きで好きで、このビジョンを抱きしめてこれからも生きていくつもりです。

以上、シナリオ本部のマネージャーのインタビューをお届けしました。

現在サイゲームスでは、一緒に働く仲間を募集しています。この記事で興味を持った方は、ぜひ一度こちらをチェックしてみてください。

シナリオ本部の募集要項

編集後記「マネージャーの横顔」

休日はどんなことをしていますか?

1日は東京をぶらついてご飯を食べて、いろんなお店に行っています。もう1日は体のメンテナンスとして筋トレをしています。

最近は洋服の生地そのものが好きで、新宿や銀座で洋服を見て回っていることが多いです。布は、繊維の配合や目の出方、風合いなどから、歴史や哲学、科学技術の発展なんかも感じられますね。あと服にはルーツみたいなものがあって、ルーツから外れるとしっちゃかめっちゃかになったり、でも狙って外すと良い味が出ていたりして、その辺りはシナリオにも通ずる点があるなーと感じます。

お気に入りの店にお直しもよく出しますよ。レザージャケットの丈を伸ばしたりとか、あえて大きいズボンを買ってからウエストを絞ってワイドパンツにしたりとか、すごい魔改造をしてくれるんです(笑)。

▲ショウゴさんお気に入りの靴。くたびれたものに中敷を詰めて補強しながら大事に履き続けているそうです

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