『ウマ娘』発の特撮映像「栄養戦士 キャロットマン」制作秘話 オフショット&歌詞付き!
2025年1月22日、YouTubeで『ウマ娘 プリティーダービー(以下、ウマ娘)』の世界に登場する特撮ヒーローを実写化したWeb動画『栄養戦士キャロットマン ~ラードロン襲来!フケンコー食が世界を覆う!?~』が公開されました。今回は本作の制作スタッフにインタビューし、制作までの経緯やこだわり、作品に込めた想いなどについて聞きました。
さらに、記事の最後にはオフショット集、主題歌『栄養戦士キャロットマン』の歌詞も掲載。本編とあわせてお楽しみください!
ゲーム内コンテンツをまさかの実写化!
キャロットマン制作までの経緯
「キャロットマン」の実写映像を制作することになった経緯を教えてください。
きっかけはCMの企画でした。実写版キャロットマンは、新年に放映するCMの企画会議で20本近くアイディアを出した中の一つだったのです。今回のCM企画の基本方針は「とにかくインパクトがあるものを作る」。以前から特撮ものをCMでやりたいという話が出ていたので、だったらキャロットマンで実写の特撮ヒーローものを作ってみようか、と決定しました。
企画書を書くにあたって、社内スタッフにキャロットマンに関する資料を見せてもらいました。すると「フケンコー帝国」「ラードロン」といった敵勢力の名前や、テーマソングのフレーズの一部など、思った以上に色々な設定が考えられていたのです。元々15秒のCMの想定だったので、「これは映像化できるな」と思いながら企画を書いたのが始まりですね。
最初は15秒の動画になるはずが、制作の過程でエピソード1話分のボリュームを撮ることになり、結果としてYouTubeにアップしたのは10分以上の長尺になりました。
随分なボリュームアップですね。
はい(笑)。今回、屋内のカフェのシーンから屋外のバトルシーンまで、2日間で撮り切ることになりました。制作中に長尺に変更になったこともあり、進行管理に苦心しましたね。
準備期間が2か月強の中で、シナリオや衣装なども一から作りました。この日程でやり切るために自分たちでできることはやろうと決心しました。プロデューサーから「長編でしっかりとキャロットマンの世界観を描きましょう」と背中を押してもらえたことも心強かったです。
今回の企画を立案した際、チームメンバーには『ウマ娘』のシナリオチームは含まれていませんでした。我々は普段、CM映像の企画立案から制作までを担当していますが、今回のような長尺のドラマのシナリオを制作したことはありませんでした。しかし、チーム内に特撮好きがいたため、特撮の王道の展開を取り入れながらプロットや設定、ストーリーを作り上げ、監修はシナリオチームにお願いしました。こうすることで、限られた時間の中で一定のクオリティーを実現できたと思います。
お話の作りとしては特撮ヒーローものの王道という感じで、テイストはコミカルな感じに仕上がっていますよね。
最初はもっとシリアスな路線で考えていました。笑いの要素は一切なくて、敵が悪事を働いているところにキャロットマンが出てきて戦って倒すといったストーリーです。
その後プロデューサーをはじめ各所と意見を交換していくうちに、あまり真面目すぎても面白くないよねという話になって、コミカルな表現にしたり『ウマ娘』のキーワードを会話の中に取り入れたりしながら、現在の方向性に変わっていきました。最終的には『ウマ娘』の派生作品らしい、良いところに着地できたのではないかと思います。
世界観・コスチューム・爆発
映像に込められたこだわり
『ウマ娘』内のコンテンツを実写で表現するにあたってのこだわりを教えてください。
当初はシリアスな展開で考えていたこともあって、最初はキャロットマンがめちゃくちゃ強い設定でシナリオを書いていました。ですが、キャロットマンの設定をよくよく調べてみたら「ヒーローなのに弱い」ということがわかり……。『ウマ娘』での設定を忠実に再現するため、1回やられるストーリーに変えるなど、原作を守るためのチューニングにしっかりとこだわりました。
似たような話で、登場人物のキャラ付けを「どの軸に置くか」も悩みました。「キャロットマンの世界」の軸で考えるのか、「『ウマ娘』の世界」の軸で考えるのかで、シナリオチームとも相談して、最終的には後者で進行することにしました。人間とウマ娘が普通に共存している世界に、キャロットマンがヒーローとして存在しているので、作中では当たり前のようにビコーペガサスが登場し、共闘するわけです。
実は今回の映像は、ビコーペガサスのサポートカード(※)「SSR[必殺!Wキャロットパンチ!]ビコーペガサス」のイラストとエピソードが起点になっています。「爆炎を背にビコーペガサスとキャロットマンがパンチを繰り出す構図」を実写で再現する、というところから企画が進行されました。
※ サポートカード……『ウマ娘』の育成に必要なアイテムの一つで、育成中のステータス上昇やスキル習得、イベント発生をサポートする
あとは、視聴者の方に『ウマ娘』の世界観に自然に入ってもらえるように、随所に小ネタを仕込んでいます。例えば「ウマチューバーのソノンエルフィー」や「カレンチャンのかわいさの秘訣は……」といったワードを入れたり、過去のTVCMで登場した「G1プレート」の写真を使ったり。焼きニンジンやキャロットラッシーといったメニューも『ウマ娘』を意識しました。
キャラクターやコスチュームの造形に関してこだわった点はありますか?
キャロットマンのベルト「キャロッタイザー」ですね。ベルトの中心のパーツである「キャロットスマッシャー」は取り外し可能になっています。といっても劇中で外すシーンはないのですが、ベルトのギミックはロマンなので(笑)。
元になったキャロットマンの絵はサポートカード用のイラストだったので全身が描かれておらず、実写化にあたって、サポートカードのイラスト制作を担当したスタッフにディテールを含めて全身を描き下ろしてもらいました。そのスタッフの熱い想いを受け取ったからには、このギミックは外せないなと。実際に制作された衣装も、ベルトを含め全身かっこよく、スタイリッシュに仕上がりました。
イラストを制作したスタッフは、元々ヒーローショーでスーツアクターをしていた経験があったそうです。どういうデザインならアクターが動きやすいかが考慮されているので、制作会社さんも作りやすかったようです。ラードロンも一見動きにくそうですが、関節の可動域をしっかり考えた造りになっていて、動きを付けたら本当に良いキャラクターになりました。
ビコーペガサスも、ゲーム内の勝負服を完全再現するべく、一から作りました。ウイッグや尻尾も今回のために作ってもらいました。
特撮ならではの撮影技術やエフェクトなどについて、工夫した部分があれば教えてください。
映像のイメージとしては「2000年から2010年代に放映されていた特撮ヒーロー作品」の雰囲気を目指しました。着ぐるみやスーツによるアナログ感のある映像に、CGを適度に入れつつ映像全体の色合いはビビッドにして、懐かしさと新しさを感じられる仕上がりにしました。
今回、ビコーペガサス役の田中あいみさんにワイヤーアクションに挑戦していただいて、特撮ならではの映像になったと思います。また、数多くの特撮作品を手掛けたアクション監督に撮影をお願いしたので、倍速・スローの使い分けやカメラワークをはじめとした「特撮らしい」映像テクニックを随所で観ることができます。
特に殺陣のシーンについてはアクション監督に付いてもらうだけでなく、アクションができるアクターさんに出演してもらって、あらかじめカメラワークをしっかり決めてリハーサルし、撮影しています。
あとはやっぱり、特撮として欠かせないのは爆発ですね(笑)。もちろん、特撮の聖地といわれる栃木県の岩船山(※)までロケに行ってきました。子どもの頃にテレビで見たことがあるロケ地で撮影できること自体感慨深かったですし、やはり実際に目にする爆発は迫力がありました。
※ 岩船山……栃木県栃木市にある、多くの特撮作品や映画のロケ地として知られる山。採石場跡の壮大な景観が特徴
スタッフみんなの熱意のおかげで
難しい局面も乗り越えられた
撮影中や制作中の出来事で印象に残っていることはありますか?
制作会社さんが事前にきちんと準備をしてくださったおかげで、撮影自体はとてもスムーズでした。
みなさんがとても前向きで、楽しく取り組んでいただけたのがありがたかったですね。みなさんのモチベーションが高くて、逆に我々がその熱意に背中を押してもらったくらいです。
それは素敵ですね。出来上がった映像を見た感想はどうでしたか?
「何だこれは!?」ですね。良い意味で変というか。我々も撮影中から手応えは感じていたんですが、プロデューサーが最初に映像を見たときに「これ何の映像だっけ?」と笑っていましたし、社内の人に見せたらみんな同様のリアクションでした。
アニソン界を牽引するアーティストである影山ヒロノブさんの歌が入ったのも感動でした。企画書にはお願いできたら良いな、くらいの気持ちで「影山さんの歌を入れたい」と書いたのですが、まさか本当に実現するとは……。自分たちの作品のためにレジェンドに歌ってもらえたのは感無量でした。
今回の制作を通じて、あらためて感じたサイゲームスの魅力を挙げるとしたら何でしょうか?
部署の垣根を超えて協力してもらえることです。映像制作室とプロモーション2部でチームを組み、ミュージックチームにも協力してもらうことで、強力な制作体制を作ることができました。
イラスト、シナリオ、サウンドなど、それぞれのプロがいるので、社内のメンバーだけでもハイクオリティーな作品を作れるのは魅力だと思います。しかもみんな協力的で熱量も高く、作品をより良くするにはどうしたら良いかを考えてくれました。「面白いことをやろう」という熱が最初から共有されている実感がありましたね。
『ウマ娘』トレーナーと特撮ファン
それぞれに見てほしいポイント
映像で特に注目してほしいポイントはどこですか?
トレーナー(※)のみなさんには、やはりビコーペガサスとキャロットマンの共闘を見てほしいです。
本当はモブに他のウマ娘を入れるとか、もっと遊びを入れるアイディアもあったのですが、やり切れなかった部分があるので、もしキャロットマンの第2弾をやることになったら実現したいですね。
※ トレーナー……ゲーム『ウマ娘』では、プレイヤーの方が「トレーナー」となってトレセン学園に通うウマ娘を育成します
制作会社や監督、アクターのみなさんは、映画やテレビのアクション作品を手掛けているプロ達にご協力いただいたので、特撮ファンの方にはやはり特撮のクオリティーが一番の見どころなのではないかと思います。特に、キャロットマンとアブラギッシュ軍団が闘う殺陣のシーンはとてもかっこいいので注目していただきたいです。
細かいところでは、ジャンプやパンチのシーンなど、昔の特撮ヒーローで定番のカットを随所に盛り込んでいるので、好きな方はその辺りも楽しんでもらえるのではないかと思います。
制作陣のこれからの展望
今回の経験を元に、これから挑戦したいことや展望などがあれば教えてください。
フィギュアやベルトなどキャロットマンのグッズを展開したり、ゲーム内にもキャロットマンの映像を盛り込んだり、ヒーローショーをやったり、多方面に広がっていくことを夢想しています(笑)。あわよくば、日本を代表するヒーローとキャロットマンやウマ娘たちが共演出来たらうれしいですね。
以上、制作スタッフによるインタビューをお届けしました。『ウマ娘』ならびに『キャロットマン』の今後の展開に、どうぞご期待ください!
『ウマ娘 プリティーダービー』公式サイト【オフショットギャラリー】
和気あいあいとした撮影風景をお届け!
【主題歌『栄養戦士キャロットマン』 歌詞】
サイマガだけの特別掲載!歌ってみよう!
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